【連載】王座直前特集『全てはこの日のために』 第5回 巽寛人×村松勇紀

庭球男子

 関東大学リーグ(リーグ)12連覇を成し遂げ、全日本大学対抗王座決定試合(王座)12連覇を目指す男子庭球部。先輩たちが紡いできた歴史の重みにプレッシャーも感じる中で、優勝に欠かせないのはやはり最上級生の奮起であろう。いよいよ現役最後の王座を控えた巽寛人(スポ4=福岡・柳川)、村松勇紀(社4=青森山田)の両選手。長く戦い続けてきた二人にチームの現況、そして王座に向けた意気込みを伺った。

※この取材は9月24日に行われたものです。

「まとまりがあるような勝ち方ではなかった」(巽)

リーグ5戦すべてで勝ち星を挙げた巽

――まずは関東学生リーグ(リーグ)を振り返っていかがですか

 5戦あったんですけど、チーム的にはあまりまとまりがあるような勝ち方ではなかったなということを感じていて。どちらかというと個人個人が一つ一つ勝って、それが勝ちにつながったという印象を持っています。僕個人的にも第1戦、第2戦はそういう勝ち方だったかなというのがあって、優勝できたことは良かったんですけど、チームとしてはあまりいい勝ち方ではなかったかなと思います。

村松 巽も言ったように、最後の2戦はともに5-4ということで1年生に最後勝負が懸かってぎりぎり勝てたという感じだったので、僕ら4年生を含めまだまだチーム力が足りていないかなと。ただそれでも勝てたということは、いい意味で捉えればチーム力を上げていけばもっと楽に勝てるチームかなと思うリーグだったので、チーム力、一体感というのが今テーマになっています。僕らで一体感を出していこうということがリーグでの課題であり、王座では一体感を出せるようにという感じです。

――最後は5-4が2度続いたということで他大も実力を上げてきている印象がありますが、他大に対してはどのようなイメージを持たれていますか

 僕たちが1、2年生の時よりもやはり実力が拮抗(きっこう)しているなという印象で。1、2年生の時にはパッとしなかった選手が強くなっていたりしていて、そのいい例が明大だと思います。今の4年生が4人いて、その4年生を主体にチームが成り立っていて。各個人の結果を並べてみた時に、明大の方が多く勝ち上がっていたり、4年生だけ見ても多く勝ち上がっていたりします。また先ほど、村松が「最後1年生に勝負が懸かってしまった」と言っていましたが、他大でも若い世代の良い選手が頑張って伸び伸びやっていて、その例が中大や慶大で。慶大は今4年生で出ている人はいないんですけど、2、3年生が主体のチームということで。実力が追いつかれている中で、後半に伸びてきたチームだったり下級生が主体となっているチームだったり、各大学で色は違うんですけど、そういう意味ですごく拮抗(きっこう)しているなという印象です。

村松 巽が今ほとんど話してしまったので(笑)。僕らも最後4年ということで、昔は見る選手見る選手みんな新しいというか、下級生の頃は大学のテニスがすごく新鮮で、いろいろな選手がいるなと思っていたんですけど。年を追うごとに、1、2年の頃はパッとしなかったけど伸びてきた選手とかも見ていて、それこそさっき言った明大がそうで。4年が頑張っているというのは僕らにとってすごく刺激が強いですし、僕らも負けられないなというのがあるので、周りの選手の活躍というのはすごく刺激になっていますね。

――全日本学生選手権(インカレ)についてはいかがでしたか

 僕は単複両方出て、ペアの子には悪いんですけどどちらかというとシングルスに重きを置いていました。去年がベスト16でことしが32ということで、ことしは去年よりも一つでも多く勝ち上がりたいという目標を掲げて挑んだのに、去年よりも早く負けてしまってすごく悔しかったですし、落ち込み具合もすごくて。単複出たのはことしが初めてで、逆にダブルスはベスト16までいって。今までダブルスであまり結果が出ていなかったんですけど、意外とできるんだなというか。周りの勝ち上がっている選手からしたら、ダブルスとして見るとあまりうまいとは言えなかったと思うんですけど、やっていけるなというのは感じていて。悔しい反面、新鮮だったインカレでした。

村松 ジュニアの頃に日本一は取っていて、もうことしで引退なので、最後もう一回やってやろうという感じでいって。プレッシャーもそんなになく、思い切りプレーしようということを考えていました。シングルスはベスト16だったんですけど、これが実力かなと。相手が慶大の上杉(海斗)で強いというのは分かっていて、そこで勝てればチャンスがあるかなと思っていました。ただダブルスでも勝ちたいというのがあって。(ダブルスは)シングルスより勝ちたいという思いが強過ぎて、あまり思い切ったプレーができなくて初戦敗退だったので、そこは少し悔しさが残る大会になりました。

――ことしの王座は慶大ではなく明大が出場しますが、明大はどういったチームでしょうか

 普段対校戦でも頼んだらやってくれて、リーグ戦以外でもとても対戦している大学です。各個人でプレースタイルは違うんですけど、勝ちにどん欲というか、ポイントを取りに行く勢いでは慶大とは違った意味での勢いを感じています。

村松 少数精鋭かなと。人数が少なくて、寮もテニスコートの近くにあって。場所もここから近くて、個人的には仲は一番いいかなと思います。その分いい刺激を受けているかなと。4年生で最近勝っている選手も多いです。あまり憎たらしさはないというか良いやつが多いので、結構真っ向勝負してくる選手が多いかなと思います。僕はやっていてやりやすい選手が多いイメージです。

――4年生のお二人から見て、ことしのチームは始まったころに比べて何か変化した点などはございますか

 今までのワセダであれば4年生に強い人がいて、その人が引っ張ってチームが成り立っていたかなと思います。ことしの春関(関東学生トーナメント)でも(シングルスでワセダが)優勝できなくて、チームにエースが不在という状況の中でスタートしていて、さらに1、2年生が多いです。

村松 4年生はテニスもすごく強くて立場も別格で、言うことも上からガンガン言うというのが今までの3年間で見てきた4年生で。でもことしは1年生も強いですし、僕らもそこに刺激を受けながらみんなで頑張っていこうという感じでやっていたと思います。でもそれではチーム力がまだまだということをリーグで感じましたし、春先の早関戦でも負けを経験して、上級生がもっとチームを引っ張っていく存在であるべきということで。王座まで残り少ないですが、リーグ戦の反省を踏まえて今まさに変わろうとしているというというか、これからの成長に期待というところです。

――テニスも含め、いろいろな面で引っ張っていくということでしょうか

 テニスで引っ張るというのは当たり前というか、テニスに対してひたむきになれない人についていこうとは思いませんし、そういった意味で練習に正面から向き合って取り組むということが前提だと思います。それ以外では私生活で羽目を外し過ぎないとか、オフの日でも少し練習するとか。オフの日だとみんな体を休めたいところですけど、それでも何人かは部室に来ていて。そこで自主練して努力している姿を見ると刺激を受けます。

「結果と態度で示したい」(村松)

4年生として最後の王座に挑む村松

――お二人だけでの対談は初めてですが、巽選手は村松選手にどういった印象をお持ちですか

 村松の印象は、練習の時でもあまり目立つようなことをしないというか、なよなよしているところはよく見ます。でもテニスがすごく大好きだなというイメージがあって。自分で少しここが違うと感じたことを直すであったり、もっと突き詰めるであったり、納得がいったらすぐ次はこれが違うなとか、練習中だとそういうイメージがあって。テニスをしている時が一番笑っているなと感じていて、テニスが大好きなんだなという印象があります。普段は静かだよね。何考えているか分からないですけど、すぐしょうもないダジャレとかを言おうとして、すべって、すぐ寒くなって。何を言いたいか分からない時もあるんですけど、真面目なんじゃないかなと思います。同期だけで集まったミーティングでもあまり発言はしないんですけど、すごく正統派というか、そのことに対して真正面から向き合う真面目さがあると思います。

村松 もうそんな感じですね。テニスの時に笑っているという感覚がないので、周りから「テニス好きだね」と言われても自覚がないですね。

――逆に村松選手から見た巽選手はどのような方ですか

村松 いやあ、もう尊敬します(笑)。テニスのことで言うと、1年の時に僕は先輩から良いように言ってもらうことが多くて、でも巽とかは結果も出なかったですし、結構へこむようなことも言われている時期がありました。でもそういうことに負けないで、しっかり今はこの立場にいるというか、リーグとかで活躍できる立場にいるということは、4年間一緒にいてすごいなというのがありますね。後はしつこいですかね。テニスとかを見ていても思います。僕にはそのしつこさがなくて、すぐ新しいことを試しちゃうタイプなんですけど、巽は同じことを20回も繰り返せる気持ちがあるなと思います。私生活ではマイペースですかね。自分のやりたいことは曲げないですね。でも巽も結構、テニスしている時が一番笑っているイメージがありますね(笑)。

 褒められましたね。テニスは好きですし、テニスをしたいがためにワセダに来たので。マイペースなのかな。決めたことは曲げないですね。いい意味で言われたのかなと思います。

――決めたことを曲げないという点では、テニスにも表れているのではないですか

 テニスに関してはさっき村松が自分で「新しいことを試したくなる」と言っていたんですけど、村松はいろいろなショットを打てて、いろいろな技術があってどれも完成度が高くて。他の選手を通しても、自分だけの色をしっかり持っているという印象があります。それと自分を比べると、スピードボールを打つこともあまりできないし、かといっていろいろな球種を打てるかと言えば打てないので。できることが少ないので、何か絶対にできることが一つあればということで、そういう印象を持ってくれたのかなと思います。

村松 そういう感じですね。一個でもいいのがあれば。

――巽選手は何か今極めているものがあるのでしょうか

 極めているものはないんですけど、単純に基本ができればということくらいですかね。

――お二人は4年生ですが、4年生はどういった学年なのでしょうか

 みんなが自分の色を持っているというか、みんなが自分のことをしたいという学年なのかなと思います。

村松 結構いろいろ言われてきた学年なので、その分徐々にですけど成長もしてきていると思います。僕らの代になってから、今まで言われてきたことを何とか自分たちでいいものにしたいなという気持ちは芽生えてきているので、後は結果と態度で示したいなというところです。あと20日間くらいしかないですけど、カラーを出すというのはこれからですね。今まではそんなイメージもなかったと思うので。

――後輩たちにはどういった印象をお持ちですか

 各学年に色はあるんですけど、一つまとめて言うとすれば4年生よりみんな元気だなということで。活発ではきはきしていて、よく部室で話していたりとか、くだらないことで言い合いしているとか。それだけ学年の中で仲が良いのかなと感じます。

村松 下の学年はみんなで一緒にいるのが好きなんだろうなという印象で。僕らの代は1人でも2人でもいいかなという感じの人もいたりするんですけど、1、2、3年は3人くらいでいないとじっとしていられないというか、1人でいるということがほとんどないので。その分うるさかったりもしますけど、それくらいでいいのかなと。リラックスしている時はそれくらいの元気があって、コートに入ってもその元気を出してくれればいいチームになるんじゃないかなというイメージです。

最高の瞬間を、最高の仲間と

王座への思いを語る巽と村松

――あと2週間と少しで最後の大会である王座を迎えますが、今はどういった心境で練習されていますか

 選手で出る以上、いろいろ応援してくれている人とか練習中もサポートに回ってくれる方とかがいっぱいいるんですけど、試合に出ると結局やるのは自分なので。そういった意味では自分で自分を盛り上げるというか、自分がやらなければいけないことは自分でやれるようにというか。とりあえずやるしかないという感じです。

村松 僕らにとっては最後ですし、このチームで戦える、後輩が一緒に戦ってくれるのもあと2週間しかないですし、本当に時間も限られていると思うので。きつい練習や長い練習もありますけど、本当にやれることをやるしかないということを肝に銘じてやっていくのみです。

――これまでの3年間を踏まえて、王座という大会にはどういった印象をお持ちですか

 連覇が続いている大会なので、早慶戦に何連勝中ということよりも重く感じています。1年間ある団体戦の試合の中で一番プレッシャーがかかる大会だと思います。

村松 王座に出場したことはまだないので選手がどう思っているかは分からないですけど、やはり一番プレッシャーもあるけどもその分それを乗り越えたら1年間やってきたことが良かったと思える大会かなと思います。他の大会でも満足はしますけど、やはり王座で勝つからこそ今までこの仲間ときつい練習をやってきたんだなと実感するかなと。勝てば一番楽しいというか充実する3日間なので、一番真剣に戦える素晴らしい試合だなと思います。

――今お話にも出ましたが、現在11連覇中ということで連覇のプレッシャーなどはやはり感じていらっしゃいますか

 そうですね。プレッシャーは感じているんですけど、1年進むごとにチームのメンツも変わるので。4年生が抜けて新しく1年生が入ってくるので、このチームで戦えるのは1回きりで。そういうことを感じているので、王座の連覇とこのチームではこの1回しか戦えないという、2つのことを僕はプレッシャーに感じています。

村松 連覇の重圧というよりは、ことしは特に4年としての王座というのがあって。それが連覇の重圧でもあるとは思うんですけど、僕らの代で絶対に勝つというプレッシャーや、巽も言ったようにこのチームで戦える王座で絶対に勝つというプレッシャーはあって。その上にもちろん連覇のプレッシャーもあるとは思うんですけど、いい意味でそこは自信にもしていきたいとは思いますし、どんな時でも信じる力の源にできればいいのかなと思います。

――今個人的に強化している点などはございますか

 僕はリーグとかで見つかった課題があるんですけど、それでもなお基本に忠実に、ただそれだけを思ってやっています。

村松 ハートですね。どんなにプレッシャーがある場面でも常に楽しめるくらい、真剣にやるけど心には余裕を持ってテニスができるように、普段の練習から意識してやっています。

――チーム全体で心掛けていることなどは

 最初にも言ったようにリーグなどではチームとして勝つことができなかったということで、一体感です。選手にも課題はあるんですけど、各個人が『チームで勝つ』ということに対して、自分に何ができるかということを常に考えて行動してほしいということを伝えていて。個人個人それぞれ違うので何がということは言えないんですけど、そういうことを心掛けています。

村松 チームとして自分がどういった立場でどういうふうに貢献するのかということを一人一人が考えて、それを表現することができれば、一体感やいい練習にもつながって、試合で今まで以上のものが出せるように常に呼び掛けるようにしています。

――王座で自分のここに注目してほしい、といったようなことはございますか

 僕は試合時間の長さには自信があるので、もし競った試合であれば試合時間の長さに注目してほしいです。

村松 オールラウンドなプレーですね。ボレーやサーブ、ストロークでも、全部のショットに注目していただきたいです。

――最後に王座に向けて意気込みをお願いします

 リーグと違ってトーナメントで、負けたらそこで終わりなので、出た試合では絶対勝ち星を挙げてチームに貢献したいと思います。

村松 最高の瞬間を、最高の仲間と一緒に味わいたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 中丸卓己)

※王座への意気込みを書いていただきました!

◆巽寛人(たつみ・ひろと)(※写真右)

1994年(平6)10月12日生まれ。身長168センチ、体重53キロ。福岡・柳川高出身。スポーツ科学部4年。今季の主な成績は関東学生トーナメント男子シングルスベスト16、全日本学生選手権男子シングルスベスト32、男子ダブルスベスト16。全日本学生ランキング男子シングルス21位(2016年9月付)。どんな質問に対しても、分かりやすく丁寧に答えてくださった巽選手。村松選手の印象についてお伺いした時もそれは同様で、お二人の仲の良さがうかがえました!

◆村松勇紀(むらまつ・ゆうき)(※写真左)

1994年(平6)12月1日生まれ。身長170センチ、体重62キロ。青森山田高出身。社会科学部4年。今季の主な成績は関東学生トーナメント男子ダブルスベスト16、全日本学生選手権男子シングルスベスト16、男子ダブルスベスト32。全日本学生ランキング男子シングルス16位(2016年9月付)。時にはユーモアも交えながら取材を受けてくださった村松選手。テニスをしている時はとても楽しそうにプレーしているそうですが、村松選手ご自身は自覚がないとのことでした。夢中でプレーされているのですね!