「前半戦の大一番」(大城光主将、スポ4=埼玉・秀明英光)。この言葉が示すように、新チームが発足してから早大は早慶対抗試合(早慶戦)で勝利を収めるために日々の練習に取り組んできた。選手だけではなく、サポートの力も十分に必要とした今回の一戦。勝負は最終試合までもつれ込んだが、シングルス1の岡村一成(スポ4=岡山操山)が激戦を制し、男子は33連覇を達成した。
全力を出すも敗れた古田・今井(左)組
冬場の取り組みが功を奏し、関東学生トーナメント(春関)で好成績を残した男子ダブルス。今回の早慶戦も万全な態勢で臨んでいた。春関で優勝し勢いに乗る岡村一成(スポ4=岡山操山)・梶修登(政経3=東京・早実)組はダブルス2で出場。慶大の4年生ペアを相手に試合を有利に展開し、3-0のストレートでけりをつけた。昨季から団体戦の経験を積む大城・小堀良太(スポ2=東京・大成)組もダブルス3を務める。接戦となった第1セットを取り切ると、勝利への執念を見せ勝ち星を挙げた。ここでポイントとなったのはダブルス1の古田陸人(スポ4=愛知・名古屋)・今井慎太郎(スポ3=神奈川・湘南工大付)組。慶大はこの重要なポジションに新戦力の上杉海斗を起用し、チャレンジャー精神で立て続けに攻め込んできた。サーブやボレーに押され、チャンスでポイントを奪われた古田・今井組。本調子を取り戻せず、この試合を落とした。
2日目のシングルス、対戦はどれも厳しい組み合わせとなった。初めに入った3試合の中で、栗林聡真(スポ3=大阪・清風)が上杉に食らいつくも及ばず、古田も波に乗り切れず逆転負けを喫した。ここで奮起したのは松崎勇太郎(スポ2=神奈川・湘南工大付)。一時セットカウントを1-2とされるも、ベンチからのアドバイスや応援を力に変え気持ちを一新。最後は落ち着いてフォアハンドを相手コートに収めた。残る3試合も必死の攻防が続く。大城は以前にも対戦経験のある相手に対し6-1、6-0、6-1と手堅く勝利したが、今井は前日に続き苦戦を強いられる。勝負の行方は最終試合に託された。岡村は昨季の早慶戦で、シングルスに出場したものの敗戦の悔しさを味わっている。ことしは勝負がかかった試合。会場からは一球一球に歓声を上がり、緊張感が漂っていた。しかしその緊張感を拭い、攻めの姿勢を貫いた岡村。試合後のあいさつ時には手を膝にあて、それは全力を出し切ったことを物語っていた。
安定したラリーを披露した岡村
アウェーという厳しい環境の中でこの一戦をものにしたことは大きい。しかし目標とする全日本大学対抗王座決定試合(王座)で偉業の10連覇を達成するためには、まだまだ改善できる点もある。秋に控える団体戦に向け、いままで以上に部員の力を結集することが必要だ。
(記事 松下優、写真 石丸諒、豊田光司)
結果
▽男子
○早大5-4慶大
ダブルス1
●古田陸人・今井慎太郎(3-6、6-7(4)、7-5、6-2、4-6)高田航輝・上杉海斗
ダブルス2
○岡村一成・梶修登(6-3、6-4、6-4)井上義文・近藤大基
ダブルス3
○大城光・小堀良太(7-6(2)、5-7、6-2、6-3)権大亮・谷本真人
シングルス1
○岡村一成(7-6(6)、4-6、6-1、6-4)谷本真人
シングルス2
●今井慎太郎(2-6、4-6、5-7)近藤大基
シングルス3
○大城光(6-1、6-0、6-1)渡邉将司
シングルス4
●古田陸人(7-6(6)、6-7(4)、3-6、3-6)高田航輝
シングルス5
○松崎勇太郎(6-4、3-6、4-6、7-5、6-3)権大亮
シングルス6
●栗林聡真(4-6、4-6、6-3、4-6)上杉海斗
※通算成績=95勝83敗
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コメント
※1日目終了時
大城光主将(スポ4=埼玉・秀明英光)
――春先から団体戦を重視したいとおっしゃっていましたが、きょうはどのような意気込みで臨みましたか
早慶戦(早慶対抗試合)は5月の春関(関東学生トーナメント)が終わってすぐにやるのが普通ですが、ことしはそれがずれ込んで、春関が終わって十分な時間があったので、この日のためだけに頑張ってきました。毎年、これが前半戦の大一番になるんですけど、ことしは特にその時期の関係もあって力を入れてきました。
――春関はシングルスが不本意な結果となってしまいました。ここまでどのように持ち直してきたのですか
春関は全力でいったのですが、シングルスは不本意な結果でした。でもやはり早慶戦は譲れないものがあるので、気持ちの面でここに向けて頑張るというのはぶれることはありませんでした。そういう意味でもあすのシングルスに向けても気持ちは高まっています。
――試合の内容は後半、尻上りに調子が上がってきましたね
試合の内容ですが、最初リードしたので流れを呼び込める場面はいくつかありました。でもその中で自分たちがブレークバックされる展開が多すぎて、そこで流れをつかめなくて、少しストレスがたまる苦しい展開でした。それでも、しっかりリードを広げていければ終始自分たちの流れで試合を展開できたと思うので、焦る気持ちというよりあともう一息のところをつめていかなければいけないなと思ってやっていました。
――それでは2セット目を取られた時に焦りはなかったのですか
そうですね。ファーストセットを取れて良かったです。そこがあったのである程度持ち直せたというか余裕を持てました。もしファーストセット取られていたら、悪い流れを断ち切るのが難しくなっていました。1-1になって目が覚めたという感じですね。
――きょうのダブルスでの2-1という結果についてはどう捉えていますか
僕らは春関でベスト8に6組残ることができて3-0取りたいという目標はあったんですけれども、慶大も強くて2-1でも想定内です。この結果がどうというより、この結果を受けてあすどう戦っていくのかというのが重要だと思います。
――それではそのシングルスに向けて意気込みをお願いします
自分が勝利を挙げるのはもちろんですし、ワセダらしい戦い方というのを自分から示していければと思います。勝ち負けは後からついてくるものとして、みんなもすごく応援してくれているので、最大限の力を出してチーム全体がもっと良い雰囲気になることを目指します。
今井慎太郎(スポ3=神奈川・湘南工大付)
――きょうの試合を振り返っていかがでしたか
こっちは序盤硬くなっている部分もあって、向こうは新1年生も混ざっていますし、チャレンジャーの気持ちで来てるいなというのを最初から感じ取っていた試合でした。出だしはその勢いに押されてしまったかなと思っています。途中で切り替えはしたんですが、最後の最後で向こうの方に勢いがあったというのがきょうの敗因だったのではと思います。
――対戦相手の印象についてはどうですか
やっぱり本当に勢いのある選手のペアで、こっちが少しでも引いてしまったらそこを突かれてしまうので、これからは引かないことが大事になってくるのではと思います。
――ご自身の調子はいかがでしたか
正直あまり良くはなかったですけれども、気合だけはいつでも出せるものですし、テニスの調子はその日によって違いますし、それが自分の実力だっていうのは受け入れて、あとは気持ちを前面に出して雰囲気を良くしていこうっていう一心でしたね。
――暑い中での試合でしたが、体力面はどうでしたか
終盤きつかったですけれど、こっちも気持ちが入ってますし、そこで体力きついなと思ってやっている感じではなかったですね。まあ暑いとは思いましたけど、一球一球に集中していたのでそこまできつさを感じるほどではありませんでした。
――これからのダブルスの目標としては何かございますか
もちろんインカレ(全日本学生選手権)で優勝することです。ですが古田さん(陸人、スポ4=愛知・名古屋)も自分であまり調子は良くないって言っていますし、これから夏に向かってしっかりと練習して実力を上げて、安定した実力を維持できるように。それで夏に臨めるように頑張っていくだけですね。
――あすのシングルスに向けて意気込みをお願いします
予報ではあしたも暑くなるとのことなので、もちろん体力勝負となってくるところもありますが、やっぱり気持ちは落とさずに、かつきょうはきょう、あしたはあしたと切り替えて、シングルスでも良いプレーができるように頑張りたいと思います。
※2日目終了時
大城光主将(スポ4=埼玉・秀明英光)
――5勝4敗で早慶戦を終えましたが結果を見ていかがですか
厳しい戦いになることは予想していたのですが、最終戦にまでもつれこみました。なかなか厳しかったですね。
――きょうのオーダーはどういうことを意識されたのですか
向こうが全部入れ替えてくるということだったので、考えた部分もありました。しかしとにかく誰と当たっても目の前の敵を倒すという意識でやりました。
――ご自身の試合が始まる前の3試合を見られていかがでしたか
本当に接戦でどうなってもおかしくなく、全部取られてもおかしくないという展開で、その中でも自分がどこかに入ったら良いスコアで勝って1勝をもぎ取れるように準備をしていました。応援もしたかったのですが、自分の試合に集中しました。
――ご自身が出た後の2試合については熱心に応援されていましたね
自分の試合が終わっても勝負が決まっていないということはほとんどこれまでなかったので、本当に勝ってほしかったし勝たないといけないと思ったので、自分の試合が終わったらすぐ切り替えて応援をしました。
――チームとして今後どのようにしていきたいですか
やりきれていない部分が出てしまった試合で、本当にどっちに転んでもおかしくなかったと思いますし、そういう隙をなくしていきたいです。やはり相手も強かったですし、今回は早慶戦でしたが他にも強い学校はたくさんあるので、シンプルですが自分たちに厳しく、追い込んでもっと良いものにしていきたいなと思います。
岡村一成(スポ4=岡山操山)
――早慶戦を終えての感想をお願いします
きょねんはシングルスに出場しましたが、完敗してしまいました。ことしは、(自分の試合が終わるまで)4勝4敗と同じ勝利数で、緊張しました。しかし勝ち切れたので良かったです。この勝利は周りの人々に支えられて得られたものだと思っています。ことしはダブルスに初めて出場しました。とても緊張しましたが勝つことができ、良かったと思います。
――単複両方での出場となりました。2勝で終えられたことに関してはいかがでしょうか
結果的に単複両方で勝てたことに満足しています。
――きのうの試合を振り返って
臆することなく、積極的にプレーすることができました。また、ペアで声を掛け合いながら、勝つぞという気持ちを持ち続けて、最後まで集中して戦えました。こうした精神面での働きかけこそが僅差での戦いを制することができた原因だと思います。
――シングルス1での出場をどのような気持ちで迎えましたか
いままでの団体戦とも、個人戦とも全く違った気持ちでした。ことしの試合ではきょねんのリベンジを果たそうという気持ちで臨みました。
――最初の3試合も接戦でした。それらの試合を見てどんな気持ちでしたか
慶大も実力をつけてきていることを実感しました。緊張している場合ではなく、頑張らなければいけないと強く思いました。
――きょうの試合内容を振り返って、1セット目を先取できたことは勝因の1つであると思います。タイブレークの際、どんなことを考えてプレーしていましたか
相手が攻めのプレーをしてくると思い、僕も強気でいこうと考えていました。結果的には守りに入ってしまいましたが、(タイブレークを制することができて)良かったと思います。
――4セットの末に勝利を決めた瞬間について
ただただ、ほっとしました。試合中は集中してプレーしていたというのもあり、試合が終わってようやく(勝利が)現実味を帯びてきました。勝利することができて良かったという気持ちでいっぱいです。
――たくさんの応援についてはどのように感じていましたか
応援が力になって勝つことができたといっても過言ではありません。応援だけではなく、多くのサポートの方々の存在があったからこそ、勝つことができました。
――今後の課題と目標について
今回の試合は僕だけの力で勝てたわけではありません。個人戦や、団体戦でもっと堂々と戦えるように、技術面よりも、精神面を磨いていきたいです。
松崎勇太郎(スポ2=神奈川・湘南工大付)
――2日間を振り返って
結果的には5-4ということで、(厳しい戦いを)予想をしていたので、勝てて良かったなという感じです。やはり慶大もすごく迫ってきていて、男女ともにぎりぎりの戦いになりました。でもその中で最後の1勝まで食らいつけたのはこれまでやってきていたからなのかなと思います。なので、きょうはきょうで良い結果なのだと思います。
――春の早慶戦は初となりましたがいかがでしたか
秋のリーグ(関東大学リーグ)での早慶戦は経験しましたが、早慶戦だけというのは初めてでした。すごく良い経験になったというか、早慶戦とはこういうものだというのを改めて感じさせられました。
――試合を振り返ってみていかがですか
ファーストセットは本当にお互い緊張がある中で、ある程度お互いを見ながら、ここを取ったらどうか、と考えて試合をしていたと思います。そういった中でファーストセットはキープキープで続いていましたが、良い場面でしっかりブレークできました。やはり緊張もありましたし、自分もなかなか試合に入っていけていないというのを感じていた中で、相手を見ながらやれた結果ファーストセットは取れたのだと思います。セカンドセット、サードセットは、ファーストセットを取れたことで少し勝ちを意識し始めて、勝たなければという思いがありました。周りも押され気味な試合展開だったので、僕が勝たなければいけないと硬くなった部分もありましたし、少し気持ちの部分で焦りが出て急いでしまった結果、簡単に落としてしまいました。フォースセットは3-5までいって、ぎりぎりまで追い込まれて、その時に、仲間の顔を見たり、自分がここまでやってきたという自分を信じる気持ちだったりというのをその場面でしっかり考えることができたおかげで、3-5の展開からカムバックできたというのは、本当に僕一人の力ではなかったなと感じましたし、おかげでそのセットをとれてイーブンになれました。ファイナルセットは自分の中で変な落ち着きというのがあって、みんなもついてくれているし絶対いけるという気持ちがありました。絶対に勝ってやるという気持ちで焦りもなくしっかりやることをやって取れたという感じです。
――ベンチやサポートの部員の熱心な応援が見られましたが、そういったものはどのように感じていましたか
田川さん(翔太、平26教卒)と富崎さん(優也コーチ、平23スポ卒)にベンチに入ってもらっていました。富崎さんは普段からお世話になっている先輩であって信頼のおけるコーチです。田川さんは高校の時からの長い付き合いで、自分のだめなところや良いところ、気持ちの動きというのをとても理解してくれているなと感じて、ベンチで気持ちの持っていき方のアドバイスをしてくださり、本当に強い味方になりました。他にも、同期や先輩が一生懸命応援してくれているのを見てすごく勇気づけられて、団体戦は1人じゃないなというのを改めて感じさせられる素晴らしい1日になったなと思います。
――最終セットに臨む前はどういったことを考えていましたか
フォースセットを挽回していったことによって少し気持ちが落ち着いていました。相手も体調はきついだろうと思っていたのですが、自分としては体がきついとは感じていませんでした。こういう状況の時こそしっかりとラリーをして、相手のミスを待つではないですけれど、強気でラリーを続けるというのを徹底して、いくところはいく、そういうふうにメリハリを作るプレーに専念しようと思いました。実際にそうできた結果、勝ちにつなげられたのかなと思います。
――早慶戦を経て得た収穫はありますか
自分の技術的な課題というよりも、気持ち的な課題を多く感じました。でも、アップダウンの激しさという前からの課題がある中でしっかり上げるところは上げるというコントロールができるようになっていて、そういった収穫はありました。もしきょう負けていたら収穫はなかったと思いますが、気持ちのコントロールという部分で今後につながる良い戦いになったと思います。
――今後の意気込みを教えてください
しばらく試合がなくて、夏関(関東学生選手権)、インカレ、リーグ(関東大学リーグ)、王座(全日本大学対抗王座決定試合)と続いていく中で、ここでもう1段階レベルアップしなければ、やはり慶大だけでなく強いライバルもたくさんいますし、個人戦でも団体戦でも本当に勝っていくにはもっともっとレベルアップしなくてはいけないなと感じたので、やっぱりいままで以上に自分のやっていることに責任感を持って努力していかなければいけないかなと感じました。なので、目標どうこうというよりは、一日一日やることのベストを尽くせば、おのずと結果はついてくると感じています。