早大相撲部試練の夏、この悔しさは成長の証し

相撲

 東日本大会でのベスト8からおよそ1ヶ月。金沢の地で、早大相撲部が選抜大会に臨んだ。団体戦予選は10位に終わり、惜しくも決勝トーナメント進出は果たせず。しかし、西の雄・近大を相手に2点を奪い、さらには優勝した東洋大との戦いも、前に攻める相撲が見られた。室伏渉監督(平6人卒)も、「手応えは本当に感じた試合」と語る。手応えがあるからこそ、あと一歩だからこそ、残る悔しさ。すでに集大成の舞台、11月のインカレも意識している選手たち。強豪校の背中は、日を追うごとに近づいていきている。

 近大を相手に迎えた、団体予選第1回戦。早大はいきなり鮮烈な印象を残した。先鋒に入った橋本侑京(スポ2=東京・足立新田)は、突いてきた相手を粘り強く下からあてがう。たまらず相手が引いてきたところをすかさず出て、向正面へ押し出した。さらに続く二陣・鬼谷智之主将(スポ4=愛知・愛工大名電)も、立ち合いの馬力で相手を圧倒する。左ハズ押しで攻め、押し倒し。これで2ー0となり、早大が流れを手にしたかに見えた。しかし中堅・市川拓弥(社4=長野・更級農)が右からの上手投げで土をつけられると、本田に代わって急遽出場し、期待された若林魁(スポ3=岐阜農林)も、突き合いの後右に体を開かれ、突き落としに屈してしまう。新人ながら大将戦を任された長谷川聖記(スポ1=愛知・愛工大名電)も押し出され、近大相手に2ー3で敗戦。主将が語ったように、あと一歩のところで「勝ちきれない」という面は出たものの、強豪と渡り合える力が備わっていることを、証明する内容だった。

近大に勝利した橋本。チームの柱になりつつある

 続く2回戦の相手は、東洋大。選抜宇佐大会や、東日本大会でも決勝トーナメントで対戦し、5戦全敗と圧倒された相手だ。しかし、近大戦では悔しい一番になった若林が、鋭い当たりから左前ミツをつかみ白星を挙げたほか、橋本も敗れはしたものの体格で勝る相手の下にもぐりかけ、粘りを見せた。試合後、室伏監督は、東洋大戦の「内容が変わった」と振り返った。最強の東洋大。その背中はまだ遠いが、成長は見られた戦いだった。3回戦の同大戦では、地力の差を見せつけた早大。4点を奪い勝利したが、予選は10位に終わり、ベスト8の決勝トーナメントには進出できなかった。一方、個人戦では、橋本が唯一3回戦まで残った。2戦目の相手は、日大でレギュラーを張る古川貴博。橋本は粘り強く攻め、右を差す。古川の左上手投げに反応し、外掛けで実力者を下した。また、若林は2回戦敗退に終わったが、2回戦では大きな黒川宏次朗(拓大)を下から突き上げ続け、熱戦に持ち込んだ。ご当地石川県出身の新人、浅田大介(社1=石川・金沢学院)も個人戦に出場したが、こちらは初戦で右上手をつかまれ、寄り切られてしまった。今後の成長が期待される。

東洋大に対してチーム唯一の白星を挙げた若林

 室伏監督、鬼谷主将がともに口にした、団体戦で強豪相手に「勝ちきれない」という反省。しかし、それは強豪との差が縮まってきているという実感の表れでもある。2週間後には東日本の体重別選手権、さらに8月には選抜十和田大会が控える早大相撲部。集大成の秋に栄光をつかむべく、経験を積む夏にしたいところだ。この悔しさは成長の証し。強豪に手が届く日は、必ずやってくる。

(記事 元田蒼、写真 松本一葉)

結果

団体戦予選

1回戦 対近大 2勝3敗

先鋒 ○橋本弐段(押し出し)渡辺参段

二陣 ○鬼谷参段(押し倒し)山口弐段

中堅 ●市川参段(上手投げ)谷岡弐段

副将 ●若林参段(突き落とし)中井参段

大将 ●長谷川参段(押し出し)肥後参段


2回戦 対東洋大 1勝4敗

先鋒 ●橋本弐段(押し倒し)西野参段

二陣 ●鬼谷参段(小手投げ)寺沢参段

中堅 ●市川参段(突き出し)中嶋参段

副将 ○若林参段(寄り切り)深井参段

大将 ●長谷川参段(上手出し投げ)白石参段


3回戦 対同大 4勝1敗

先鋒 ○橋本弐段(寄り切り)トゥルトクトホ弐段

二陣 ●鬼谷参段(突き落とし)高橋参段

中堅 ○谷本参段(はたき込み)田中弐段

副将 ○若林参段(突き出し)竹林弐段

大将 ○長谷川参段(寄り倒し)北村参段

※予選10位 決勝進出を逃す


個人戦

鬼谷智之参段(スポ4=愛知・愛工大名電)

一回戦 ○対岩間初段(専大)押し出し

二回戦 ●対瀧弐段(近大)はたき込み

本田煕誉志参段(社4=大分・楊志館)

一回戦 棄権

谷本将也参段(スポ4=鳥取城北)

一回戦 ●津田参段(日体大)寄り切り

市川拓弥参段(社4=長野・更級農)

一回戦 棄権

若林魁参段(スポ3=岐阜農林)

一回戦 ○対白坂弐段(駒大)はたき込み

二回戦 ●対黒川参段(拓大)押し出し

橋本侑京弐段(スポ2=東京・足立新田)

一回戦 ○対松浦参段(法大)突き出し

二回戦 ○対古川貴参段(日大)外掛け

三回戦 ●対石崎初段(日体大)寄り倒し

浅田大介参段(社1=石川・金沢学院)

一回戦 ●対乙咩(九州情報大)寄り切り

長谷川聖記参段(スポ1=愛知・愛工大名電)

一回戦 ●対花下参段(東農大)寄り倒し

コメント

室伏渉監督(平6人卒=東京・明大中野)

――団体戦についてお聞きします。決勝には進めませんでしたが、強豪・近大から2点を取るなど、良い面もあったように思います。いかがでしたか

決勝トーナメントに行くためには、今回は16チーム出ているので2勝しなければいけなかったので、最初の近大に勝とう、そうすれば2勝できるという話をみんなでしていました。入り方の面では、アップをかなりさせて、ポンポンと2点取れました。ただ、計算外だったのは、本田がメンバーで出ていたのですが、腰の状態があまり良くないということで、自分が迷惑をかけては嫌だということで、急遽代えました。ただ、(代役の)若林も、エンジンかかるのがちょっと遅かったなという。あそこは若林が勝つべきところだったと思います、3年生としても。長谷川もいいんですけれど、まだ1年生ですし、緊張もあったと思うので、その辺りは非常にもったいなかったなという感じですね。

――続く東洋大との戦い、印象はいかがでしたか

東洋にも、1点でも2点でも取りに行こうというところでした。この間の東日本大会よりも内容が変わった大会になったと思うんですよ。だから、手応えは本当に感じた試合であって、なんとか勝ちたいなという思いが強かったです。残念です。

――急遽、最初からの出場になった若林選手は、東洋大戦でも白星があり、個人戦でも奮闘が見られました

そうですね。この間の東日本で、初っ端ですぐ代えられてしまったというのが本人はすごくショックだったようで、稽古では今一番良くなってきていてすごく調子が良いです。どうするかという面で、コーチ陣ともいろいろ話をしています。この調子が持続できれば、非常に面白いなと思います。本人も、来年は最上級生になるというところで、思いがあるようですね。

――チームとしての反省点はどこでしょうか

勝ちきれなかったことですね。近大戦では、前の2点は絶対取るというところで、作戦通りでした。ただ、そこで勝ちを奪えるような形を取っていかなければいけません。西の近大や同大ともできたというところは、最後のインカレに向けても、大きな収穫だったなと思います。目指しているところは、上位入賞ができるかどうか。そこのためには、今回拓大が2位になったりもしたのですが、どの対戦相手でも勝てるようなチームにしないと、本当の意味でのベスト4にはなれないなと思います。そこを追求していきたいなと思っています。

――体重別や選抜十和田大会が控えています。今後への期待をお願いします

十和田では絶対にベスト8に残ろうという話は、さっき試合が終わった後にしました。そこを目標に、頑張ってやりたいなと。あとは、体重別の方は、1人でも全国大会に出られるように、頑張らせたいです。

鬼谷智之主将(スポ4=愛知・愛工大名電)

――団体戦についてですが、近大には惜しくも及びませんでした

そうですね。東日本大会もそうでしたが、あと1歩勝ちきれないというところが、チームの課題だと思います。

――8位には入ることはできませんでしたが、東洋大戦では内容が前回からは変わってきているように思います

前に比べると、みんなが攻められるようになってきています。まだ勝っていないので、そこはまだ力が足りないなと思いました。

――ご自身の相撲で、今日の反省はありますか

今日は、足が出なかったことですね。1回戦はいい相撲を取れたのですが、そこからは、個人戦も含めて、相手の相撲に合わせてしまって、自分の相撲が取りきれませんでした。そこが課題かなと思いました。

――最後に、今後体重別や十和田大会が控えていますが、意気込みや目標があればお願いします

今回は、ベスト8やその上は達成できなかったので、十和田の団体では必ずベスト8に残って、ベスト4を狙っていきたいですね。体重別は、個人戦ですが、しっかりみんなが上位を狙って、また明日からしっかり課題に取り組みたいと思います。

若林魁(スポ3=岐阜農林)

――急遽メンバー入りということでいかがでしたか

最初は本田先輩のところに入る可能性なんてほとんどなくて、本田先輩はいつもレギュラーで出ているので。聞いてからしっかりとアップはできたかなと思いますね。

――東洋大戦ではチーム唯一の白星でしたね

思い切ってやろうと。1回戦が本当に自分が勝たなきゃいけないってところで負けちゃってすごいチームに申し訳ないことをしてしまったので。2回戦からはもっと思い切ってやろうって感じで思い切ってやった結果がよかったかなと思います。

――団体戦10位と言う結果でしたがいかがですか

やっぱりベスト8以上は残らなきゃいけないって言う目標で、僕ら3位以上ってのが目標でそれくらいの実力はだんだん付いてきてると思うし、結果は残さなきゃいけないので、10位っていうのは本当に悔しくて、反省しなきゃいけないっていうのが多分みんな思ってることだと思うので。また選抜大会もあるので、次はベスト8以上を目指して行けるように頑張りたいと思います。

――やっぱりベスト8以上になれなかった原因は第1試合でしたか

はい。自分のせいで通過できなかったっていう、自分が勝たなきゃいけないところで、っていうところだったので。

――個人戦での黒川(拓大)との一戦は長い相撲になりました

東日本でも一応戦って、それも際どい試合で同じように2回戦で当たったんですけど、その時も際どい相撲で負けて今回はっていう気持ちがあったんですけど。実力は黒川さんの方が上なんで、思い切ってっていう感じはありました。

――では最後に、今後に向けての意気込みをお願いします

体重別は個人なので、3位以上とか、全国への出場権を獲得するってのが目標です。団体戦は十和田と最後にインカレがあるので、そこでチームの目標としてインカレ優勝ってのを今年は掲げているのでそれに向かって頑張っていきたいと思います。