やっとつかんだ勝ち点3 関カレ7戦ぶりの勝利に笑顔戻る

ア式蹴球女子
第36回関東大学女子リーグ後期第8節
早大 1-0
0-0
筑波大
【得点】
(早大)15分:吉野真央
(筑波大)なし

 ア式蹴球部女子(ア女)は8日、関東大学女子リーグ(関カレ)後期8節を戦い1-0で勝利した。今季ここまで4戦全て完封勝利している筑波大を、またも完封に抑えた。関カレでは7月31日の国際武道大戦以降勝利から遠のいていたが、今節でその流れを止めた。先制点をあげたのはFW吉野真央(スポ4=宮城・聖和学園)。クロスに反応して放ったシュートは一度ブロックされたが、そのこぼれ球を押し込みネットを揺らした。その後はチャンスを決め切れない状況が続いた一方で、終盤の反撃に対しては盤石の守備で抑え切った。

 

得点後に喜ぶ吉野(写真左)と起点となるクロスを上げた廣澤

 

 陣形を変えて挑んだ今節。CBとして堅守を支えてきたMFブラフ・シャーン(スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)が右SBに入り、FW髙橋雛(社4=兵庫・日ノ本学園)がトップに、吉野が右WGに入った。さらにはDF浦部美月(スポ3=スフィーダ世田谷FCユース)やMF宗形みなみ(スポ1=マイナビ仙台レディースユース)が関カレのピッチに戻るなど、人と配置が大きく変わった。それでもア女のサッカーは変わらず、15分に幸先よく先制する。DF夏目歩実(スポ3=宮城・聖和学園)、MF笠原綺乃(スポ3=横須賀シーガルズJOY)、FW廣澤真穂(スポ4=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)と最終ラインから最前線までテンポよくボールを届けると、廣澤がドリブルで相手をはがしクロスを上げる。逆サイドで待っていた吉野はこれをダイレクトでシュート。一度ブロックされたが「難しいシュートではなかった」と、そのこぼれ球を堅実にゴールに押し込んだ。その後も流動性のある攻撃は続き、18分には流動的なパスワークから廣澤が、40分にはブラフの突破から笠原が、43分には再び廣澤が、それぞれ追加点のチャンスを迎えるなど流れは完全にア女にあった。

 

今節は右WGとしてスタートした吉野。ワイドレーンで随所に質の高いプレーを見せ右WGへの適性を示した

 「もっと決められる部分はあった」(吉野)、「シュートチャンスを決められないところが今の課題」(宗形)と、選手が口をそろえて課題に挙げるのが決定力。後半は前半以上に期待値の高い決定機を迎えた。53分のCKでは吉野が合わせるも、ボールはバーを叩く。73分には重心の高い相手の裏を廣澤が完璧に抜け出したゴール前でタッチが大きくなりシュートには至らず。その後もア女の攻勢はやむことなく、終わってみれば12本のシュートを放ったが、複数得点とはならず攻撃に関しては十分な伸びしろを残した状態で今節を終えた。一方でア女が常にボール保持を続ける展開に、筑波大が打てたシュートはたったの2本。守備陣はこの日も隙を見せることなく関カレでは2戦連続で完封に抑えた。ア女は完勝で順位を一つ上げ4位とした。

 

約2カ月ぶりにピッチに立った宗形。「めっちゃ楽しかった」と、攻撃の潤滑油として存在感を放った

 

 「悲観するようなデータは出ていない。(勝てない状況が続いた中でも)ネガティブに捉えてきたわけではなかった」と語るのは後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)。首位で折り返した関カレも6戦勝ちなしの影響は優勝争いに大きく響き、内容がいい中でも敗戦と引き分けが続いた期間で5位まで転落した。内容が改善されていただけに白星がつかないことだけがおもりになっていたのかもしれない。試合後、長らく見なかった笑顔が見えたのは印象的だった。次の2戦では山梨学院大、帝京平成大と相まみえることになる。関カレも残りわずかとなり皇后杯やインカレが刻一刻と迫ってくるなか、貴重な試金石で勝利し更なる自信を付けたい。
結果以外にもうれしいニュースがある。先日関東女子リーグで復帰を果たした浦部に続き、MF築地育(スポ2=静岡・常葉大橘)と宗形が復帰した。さらには、7日にWEリーグ特別指定選手の承認が発表されたDF船木和夏主将(スポ4=日テレ・メニーナ)に加え、DF後藤若葉(スポ3=日テレ・メニーナ)やMF三谷和華奈(スポ3=東京・十文字)などといったチームの核となる選手がピッチに戻る日も近づいている。離脱者多発という今季抱え続けた悩みも「ここから競争が激しくなる」(後藤監督)と、うれしい悩みに変わりそうだ。部員も来たる早慶女子クラシコに向け運営面でも忙しい日々を送る毎日。ア女はピッチ内外で充実の秋を過ごしている。

(記事、写真 前田篤宏)

 

途中出場での復帰戦となった築地。6月25日、帝京平成大での劇的決勝ゴール以来のプレー。中盤の選手が2人同時に復帰し、選手層の厚みが一気に増した

 

早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK ◎1 近澤澪菜 スポ4 JFAアカデミー福島
DF 夏目歩実 スポ3 宮城・聖和学園
DF 堀内璃子 スポ3 宮城・常盤木学園
DF 井上萌 スポ4 東京・十文字
DF 13 浦部美月 スポ3 スフィーダ世田谷FCユース
MF ブラフ・シャーン スポ4 スフィーダ世田谷FCユース
MF 14 笠原綺乃 スポ3 横須賀シーガルズJOY
MF 26 宗形みなみ スポ1 マイナビ仙台レディースユース
→90+2分 18 白井美羽 スポ2 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
FW 廣澤真穂 スポ4 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
FW 10 髙橋雛 社4 兵庫・日ノ本学園
FW 11 吉野真央 スポ4 宮城・聖和学園
→61分 19 築地育 スポ2 静岡・常葉大橘
◎=ゲームキャプテン

 

スターティングイレブン

 

後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)

――関カレでは久々の勝ち点3になりました

結果という部分で毎試合受け止めながら進んできたんですけど、試合の内容だった利自分たちが積み重ねてきていることを毎試合さらに積み重ねて、という中で結果が伴っていなかったので、単純に勝つというのはうれしいことですし、勝ち切ったことは選手たちの頑張りで素晴らしいことだと思っています。そもそも、そこまで勝ち切れてないことをネガティブに捉えてきたわけではなかったので、ここから山梨学院大と帝京平成大という上位行との戦いが来るので、そこで勝ち切ることが大切なのかなと思います。

――ブラフ選手や髙橋選手など人の配置が変わっていましたが、どういう意図がありましたか

1年間のプランの中で3段階くらいある中で、ここから皇后杯とインカレに向けてチームを最終段階にしていく上で、考えていたプランではあったんですけど、そのプランとけが人の状態だったり、の中で今日の布陣になりました。宗形も浦部も、今まで頑張ってきた選手に加えてここから復帰する選手が増えていく中で、ここから競争が激しくなるのかなと思っています。

――選手の中でも決定力の部分に課題意識を持っています。チャンスを作ってる中で、決め切る部分についてはどう考えてますか

2年前はそもそもシュート本数が少なくて決められないことがあったんですけど。得点という分かりやすい数字にとらわれるとそうなるんですけど、どこでシュートを打ってるのか、無理やり打たされているのか、技術的な問題なのか、というところをしっかり分析したうえで得点が少ないところを捉えないといけないのが一つです。そういう点においてはそこまで悲観するようなデータは出ていないので、問題ないのかなとは思っています。それよりもその時のチームの雰囲気が大事ですよね。今日なんかは廣澤が決定的なシーンを外してしまったことに対して、ポジティブな声がかかっていましたし、その代わりにすぐ戻って守備に入ってるとか、そっちの方が大事だと思うのでそういう意味ではみんなよかったんじゃないかなと思います。

――強豪との対戦が続く2週間をどういうふうな形で終えるのが理想だと考えていますか

今日もそうですけど、ここからどんどんプレッシャーは高まっていくと思うので皇后杯とインカレは一度負けたら終わりなので、そういうプレッシャーの中で一人一人がしっかり戦える準備をいかにできるか、それをいかに発揮するかということに焦点を当てていきたいと思います。

 

FW吉野真央(スポ4=宮城・聖和学園)

――7戦ぶりの関カレ勝利となりましたが率直な感想はいかがですか

ボールを持ててシュートまで行けるシーンがたくさんあった中で、そこで決められるシーンが少なかったのでそこは課題だなと思いました。その中で自分的にはしっかりと点を決めることができて良かったかなと思います

――最近の戦いからすれば勝つという部分が重要だったと思います

7戦ぶりなので素直にうれしいですけど、もっともっと点を決められる部分はあって質をもっとこだわれる部分があったので、こだわっていかないとこの先勝てないと思うので、うれしいけれどまだまだ課題はあるかなと思います。

――得点を振り返っていただきたいです

(廣澤)真穂からいいクロスが上がって、来るなと思ってそのまま左で振りかぶったんですけど相手に当たってもう一回右でという。しっかり決められて良かったです。あまり難しいシュートではなかったです。

――配置も変わった中での試合でした

自分は最近トップもやるし左サイドも右サイドもやったり、いろんな人がいろんなポジションをできるようになるのは一番ベストですし、これからいろんなチームとやっていく上で対策をされていくと思うので、そういう面でもバリエーションもあって良いと思うので、冬に向けて誰がどこでもできるようにやっていけたらいいア女になるのかなと思います

――次節から2戦続けて強豪との対戦になります

どこのチームとやる試合に対しても特別こうだということはあまり考えていなくて、どこのチームに対しても自分たちのサッカーで勝つというのが一番だと思うので、今までも同じように準備してきましたし、その中で来週も勝ちにつなげられるように頑張っていきたいと思います。

――関カレ優勝が難しくなっている中でチームのモチベーションはどういうところにありますか

順位というより、一つ一つの試合に勝つということがみんなが一番思っていることなので、そこは変わらないので勝っていければまだまだ優勝がないってわけではないし、それは勝つということだけだと思います。

 

MF宗形みなみ(スポ1=マイナビ仙台レディースユース)

――久々の試合を終えていかがですか

素直にめっちゃ楽しかったです。

――入学して初めての離脱でしたけど、どういう思いでリハビリに励んでいましたか

診断を受けた以上、(脱臼は)はまって治ってはいたんですけど、2回目やると反復しやすいと聞いてたので慎重に、改めて自分の体と向き合ういい時間と、ポジティブに捉えてリハビリに集中できていたのかなと思いました。

――ピッチに立った時はうれしかったですか

関カレに出られるチャンスをもらって、自分が求められていることは明確だったので、その部分で自分の力を発揮してチームが勝てていないなかで自分が少しでも勝利に貢献したいなという思いでした。

――勝利に結びつきましたけど、ご自身のプレーに関してはどういうふうに振り返っていますか

最初は段差を付けるようにと言われてピッチに入って、前半は高い位置に入ってプレーできてたんですけど、後半に入ってボールが回らなくなって後ろに引き過ぎてバランスが悪くなった部分があったんですけど、史さん(監督)に言われてから少しずつ前めのポジションを取ることができて、シュートチャンスもあったんですけどそこを決め切れないところが今の課題かなと思います。

――実質的には7月31日以来の公式戦でしたけど、試合勘はいかがでしたか

メンバーも変わった中で、自分が担う役割が変わっていたので最初試合に入って不安と焦りがあったんですけど、(夏目)歩実さんや(浦部)美月さんと左で組んで声をかけてくれて、(廣澤)真穂さんも練習からやりやすくプレーさせてくれているので、そこに関してはスムーズに試合に入れました。

――次の2戦は強豪とぶつかります

山梨学院大には勝ててなくて個人としても前回は何もできなかったので、そこに向けてチームとしても個人としても、1対1の競り合いだったりゴールにつながるプレーでチャンスメイクできたらなと思います。