蔵田の2ゴール! 伝統の一戦制す

ア式蹴球女子
第33回関東大学女子リーグ戦
早大 0-0
4-0
慶大
【得点】
(早大)54’、80’蔵田あかり、71’村上真帆、81’高橋雛
(慶大)なし

 外にいるだけで汗ばむ午後、ア式蹴球部女子(ア女)はホーム東伏見での一戦を迎えた。関東大学女子リーグ戦(関カレ)第3節、相手は慶大。前半は慶大のペースに押され、ア女らしいつなぐサッカーはさせてもらえない。しかし54分、自ら獲得したPKからMF蔵田あかり(スポ2=東京・十文字)が待望の先制点をもぎ取る。これを機にア女はゲームの主導権を握ることに成功し、立て続けに得点を追加。4-0の快勝で東京国際大からの白星に続いて2連勝を飾った。

 開始早々自陣右サイドを崩され、立て続けにゴールに迫られたア女はファウルを取られ、ゴール左から小川愛(3年)に直接FKを狙われる。GK川端涼朱(スポ3=東京・十文字)が落ち着いてキャッチするが、直後にパスミスから再びピンチを招く。DF中條結衣副将(スポ4=JFAアカデミー福島)のカットで事なきを得たものの相手にクロスを許してしまい、出だしは明らかに精彩を欠いたプレーが続く。9分、慶大GKが前に出たのを見てMF高瀬はな主将(スポ4=ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU—18)がこぼれ球を拾い、センターライン付近からロングシュートを打つも得点ならず。18分にもCKからDF小林菜々子(スポ4=ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)がヘディングで狙うが押し込めない。得点が欲しいア女だが慶大のパスカットに苦しめられ、思うような攻撃をさせてもらえない。26分には再び高瀬が逆足でロングシュートするもGKに阻まれる。その後カウンターから招いたピンチには、決死の守りで慶大にゴールを許さない。膠着(こうちゃく)状態から、38分にスルーパスからFWブラフフェイ(1年)にシュートを許したものの、失点は免れた。反撃したいア女は直後のセットプレーからFW山田仁衣奈(スポ4=大阪・大商学園)がシュートを放つ。これはブロックされたがCKを獲得。DFブラフシャーン(スポ1=スフィーダ世田谷FCユース)がヘディングでゴール左を狙うも慶大GKのジャンピングセーブで阻まれた。反撃に出た慶大は40分、FW山本華乃(3年)がスルーパスから抜け出しゴールを狙うも、川端がナイスセーブで得点を許さない。セットプレーから攻撃のリズムをつかんだア女だったが、度重なる慶大GKのファインセーブによって前半を無得点で折り返した。

PKを決めた蔵田

 後半は蔵田、DF中田有紀(スポ4=兵庫・日ノ本学園)を投入。前半はパスカットされる場面が多くなかなかチャンスをものにできていなかったア女が、ようやく落ち着きを取り戻す。前半よりキーパーに対して積極的にチャージしていく姿勢が見受けられた。すると51分、松本茉奈加(スポ3=東京・十文字)のスライディングブロックからカウンターを発動。中央でボールを運ぶMF村上真帆(スポ3=東京・十文字)からのスルーパスに反応した蔵田がエリア内で倒されPKを獲得する。蔵田が冷静にゴール左上にPKを決め、先制することに成功した。慶大も同点に追いつくべく猛攻を仕掛ける。66分には山本にニアサイドからシュートに持ち込まれるもサイドネットにはずれ、九死に一生を得た。慶大は焦りからか激しくチャージするが、終始ア女ペースでゲームは進む。72分には、流れるようなパスワークから村上がゴール下に蹴り込み追加点。前半と比べて明らかにパスミスが減り、攻撃にリズムが出る。79分、慶大GKのパスをカットした蔵田がそのままシュートして本日2得点目を挙げる。82分にはMF高橋雛(社1=兵庫・日ノ本学園)が、GKが出たところを見てフリーでそのまま流し込み、だめ押しの4点目。その後立て続けに慶大にシュートされるも枠外に外れ、後半も無失点に抑えた。

追加点を奪い喜ぶ村上(左)と松本

 前半は特にパスがかみ合わず、手に汗握る展開となった。得点後に浮足立たずにペースを自分たちに引き寄せることができたところは評価すべきだが、序盤の細かいミスの積み重ねはやや気になるところだ。快勝したものの、早い時間帯での先制点で主導権を握りたかったゲームであったことは間違いない。しかし、前半に押されていたア女はペースを崩さなかった。「回されたというより、自分たちのペースで守備ができた」(高瀬)というように、後半になって当初の戦術がはまって攻撃が流動的になっていくのが手に取るように分かった。今節はセットプレーという強みも光ったア女。次節の大東文化大戦では、前半から早稲田色を出してくれることに期待したい。まだまだ負けられない戦いは続く。

(記事 手代木慶、写真 森迫雄介、石井尚紀、永池隼人)

スターティングイレブン

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早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 16 川端 涼朱 スポ3 東京・十文字
DF 36 ブラフ シャーン スポ1 スフィーダ世田谷FCユース
→HT 中田 有紀 スポ4 兵庫・日ノ本学園
DF 小林 菜々子 スポ4 ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
DF 中條 結衣 スポ4 JFAアカデミー福島
DF 源関 清花 スポ4 ちふれASエルフェン埼玉
MF ◎8 高瀬 はな スポ4 ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18
→83分 26 加藤 希 スポ2 アンジュヴィオレ広島
MF 17 阪本 未周 スポ3 大阪・大商学園
→HT 13 蔵田 あかり スポ2 東京・十文字
MF 32 高橋 雛 社1 兵庫・日ノ本学園
MF 10 村上 真帆 スポ3 東京・十文字
MF 11 松本 茉奈加 スポ3 東京・十文字
→76分 冨田 実侑 スポ3 岡山・作陽
FW 山田 仁衣奈 スポ4 大阪・大商学園
→76分 30 土居 明日香 スポ4 ちふれASエルフェン埼玉
リザーブ:GK33近澤澪菜(スポ1)、MF12並木千夏(スポ2)、MF14田中実夏(スポ4)、MF19桝田花蓮(スポ2)
◎=ゲームキャプテン
監督:川上嘉郎(昭51商卒=神奈川・横浜緑ケ丘)

コメント

MF高瀬はな主将(スポ4=ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)

――きょうの試合を振り返って

きょうも前半スコアが動かず我慢する時間帯が続きましたが、我慢することは自分たちの強みでもあるのかなと感じていて。後半自分たちの力を発揮し続けられたことは大きかったなと思います。

――きょうのゲームプランは

相手が下からつないでくるという戦術だったので、変に食いつくと簡単に裏を取られてしまうということで。いつもとは違ったはめ方というか守備の仕方でマークを取りました。うまくいった場面もけっこう多かったし、仁衣奈(MF山田、大阪・大商学園)を中心にうまくスイッチを入れられていたので、その部分はよかったと思います。

――前半は押されていた印象です。攻められてる中、あまりプレスに行かなかったのは戦術ということでしょうか

そうですね、普段だったらガンガン前からいこうとスタンスなのですが、自分たちのペースで受け身になるのではなくて、回させることをテーマにやっていて。仁衣奈がスイッチを入れたタイミングで周りが(プレスを)かけることができればということだったので、回されたというよりは自分たちのペースで守備ができたかなという印象です。

――その中でピンチが多かった印象ですが

そうですね、相手のラッキーなミスもあって失点を防ぐことができましたが、その中で流れを崩さないというか、自分たちのペースで戦い続けることができたことは手応えとしてあります。ですがおっしゃる通り、ピンチは多かったですし、まだ防げるというか自分たちのミスでピンチを招いてしまうことが多かったので、自陣でのプレーの質をもっと上げていかないといけないと思います。

――その中でセットプレーから流れをつかんでいました

そうですね、いい位置でセットプレーを何回か取れました。そこで点が取れればまた違ったと思うのですが、その中で流れをつかめたことは次にはつながると思いますし、次は必ずそういうところで点を取りたいと思います。

――CKではDF小林(菜々子、スポ4=ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)選手へのマークが厳しかった印象です

そうですね、最初自分も狙ったところに蹴れましたし菜々子もそこにいたのですが、タイトにマークに付かれていたので、そこは難しかったかなと思います。ですが他の選手もたくさん競れる選手はいるので、得点につなげたかったなと思います。

――後半に入って、前節からのプレスがより目立ちました

相手の守備で足が止まってきたこともあって、1点取った後は顕著にそれが表れたので、自分たちはどんどんいけるという気持ちだったので、気持ちの面で上回ることができたのかなという印象はあります。

――MF蔵田(あかり、スポ3=東京・十文字)選手に得点が生まれました

普段出ていなかった選手がこういう風に結果を残してくれるのは、チームにとってすごくいい刺激ですし、普段出ている選手の危機感にもつながるので、こういう選手がどんどん増えてくれるといいなと思います。

――きょうは前節の課題であった流れの中でのゴールが生まれました

逆にきょうはセットプレーからの得点はありませんでしたが、流れの中で(得点を)取れるようになってきましたし、まだまだ試合は続くので、いろんなかたちで点を取れるチームになっていければと思います。

――早慶戦を快勝でものにできたことはチームにとって大きいと思いますが

早慶戦ということもあって、気持ちも普段とは違うと言ったら変ですが、やっぱり負けたくないという気持ちが強かったですし、みんなも勝てたことですごく自信になったかなと思います。何より勝ち点3を積み上げられたことは大きかったと思います。

――最後に次節への意気込みをお願いします

大東文化大も関東女子リーグ戦にはいないので、どういうチームかわかっていませんが、いつも通り自分たちの力を発揮できれば必ず勝ち点3を積み上げられると思うので、自分たちの力を信じてやっていくだけだと思います。チーム一丸となって頑張ります。

DF中條結衣副将(スポ4=JFAアカデミー福島)

――きょうの試合を振り返って

無失点で勝ててよかったです!

――前節から修正を加えた点などはありましたか

個人的な話になるのですが、(関カレ開幕で)久しぶりにセンターバックをやるようになってからラインの上下動とかでバタついている時があったので、守備的な面を意識して変えた部分はあります。

――関カレでは3試合続けてセンターバックでプレーなさっていますが、徐々に慣れてきているのでは

そうですね。自分なりに感覚を思い出したなって感じです。

――前半は慶大が前からガツガツ来ていましたが、何を考えてプレーしていましたか

ゴール前まで攻めてきていたのですが、シュートまでこなかったりしたので「ヤバイ!」という感じではありませんでした。けれど相手のペースに合わせていてはダメだなというのは感じていました。

――後半になって前線から積極的にプレスを掛けに行くようになりました

そうですね、仁衣奈(山田、スポ4=大阪・大商学園)中心にFW陣で前から行こうと話していました。慶応の勢いがなくなり、自分たちも前から行こうと意識していたので、上手くはまったかなと思います。

――きょうは流れの中からの得点も生まれました

今までセットプレーからしか取れていなかったので。守備側としても得点を取ってくれることで頑張れるのでよかったです。

――ここまでのチームの雰囲気はいかがでしょう

多分いいと思います(笑)。いい緊張感の中、試合にはちゃんと入れているので。

――次の試合に向けて

次は1週間空きますし、代表組も帰ってくるので、またチームを作り直して無失点で勝てるよう頑張ります。

MF蔵田あかり(スポ2=東京・十文字)

――後半から出場される時にどのようなことを意識されましたか

前半は押されている場面が多かったので、自分はボールをもらったら、どんどん縦に仕掛けて、前への推進力を高めようと思って試合に入りました。

――前半に比べて後半はプレスがはまっていました

相手がGKからつないでくるので、サイドハーフの位置を絞り過ぎても、サイドに張り付き過ぎてもうまくはめることができないので、どちらにボールを出されてもいけるようなポジショニングを心掛けました。

――自ら獲得したPKでチームに先制点をもたらされました

スルーパスを出してくれた真帆さん(MF村上真帆、スポ3=東京・十文字)が、欲しいタイミングで欲しい場所にボールを出してくれたので、あとは自分が決めるだけでした。守備でボールを取ってくれたり、真帆さんのスルーパスだったり、みんなの得点だと思います。

――2点目は振り返られていかがですか

相手のキーパーがサイドバックにボールを出すキックモーションをしていたので、そこを狙いにいって、ボールを取ることができました。DFと1対1で、いつもは縦にいっているんですけど、中に切れ込んですぐにシュートを打つという選択肢もあったので、それが狙い通りにできました。

――ここ数試合、後半から流れを変えるプレーを披露されていますが、ご自身の調子をどのように感じていますか

怪我から復帰して、徐々に体力的にもコンディション的にも上がっていると思うので、怪我をしないように少しずつ頑張っていきたいです。

――今後に向けて意気込みをお願いします

試合に出られたらうれしいので、出場するために練習を頑張っていきたいです。

MF高橋雛(社1=兵庫・日ノ本学園)

――きょうの試合を振り返って

最初は結構相手のペースでしたが、だんだん自分たちでこうしていこうと声を掛け合いました。後半から自分たちのペースになって4点取れたので結果的にはよかったです。

――前節出場がありませんでしたが、個人としてどのような準備をしてきましたか

やっぱりみんなうまいので誰が出てもおかしくないです。自分はどんな時でも、出たら出たで出ていない人の分まで頑張るし、出ていなければいつ出ても万全の状態で自分の力を出せるように準備はするようにしていました。

――前半を振り返って

本当に慶応さんのペースで、流れはすごく悪かったと思うし、良いか悪いかといえば悪かったのですがそれを乗り越えて修正して、後半はサイドからの攻撃を増やしていったので結構中央も空いてきてゴールに結びついたと思います。

――ハーフタイムでの指示は

真ん中の三人のうちのトップ下の二人がもっとFWに入った人と関われるように、前半は重かったので前の方でプレーするようにということを心掛けるように言われました。

――後半に入って前線へのプレスが目立ちましたが

後ろが間に合っている状況なら強くいくということをみんなが意識していたので、スイッチを意識するようにしていました。

――自身の得点シーンを振り返って

後半の最後の方で自分も結構しんどかったですが、そういう時こそ相手も絶対疲れていると思うので、その隙を狙って狙い通りの奪い方で得点できました。

――キーパーが前に出ていて自分の得点を確信しましたか

かわせば行けると思っていて、イメージ通りでした。

――前期と違ってポジションが移動しましたが、変化はありましたか

やることは、攻撃もポジションによって変わってきます。試合前にコーチが言ってくださいますが、それぞれのポジションでできることをしようというのをみんなで意識して入ったので、どのポジションでも、そのポジションをやろうとシンプルな思いで入りました。

――きょうの感想を改めてお願いします

無失点で勝てて、4得点は大きいので次につながったと思います。

――次節への意気込みお願いします

まだまだ入りが悪いので、そういうところをまた修正して次勝って終わりたいです。

――どうすれば最初の流れをつかめるでしょうか

ちょっとした球際だったり、最初は結構パスが弱かったり、強くいけないのでそういう細かいところを取りこぼしなく、細かいところに勝っていけば流れがこっちに来るのかなと思います。