昇格組に勝ち点を献上。不安材料が浮き彫りに

ア式蹴球女子
第25回関東女子リーグ戦
早大 0-1
1-1
群馬FCホワイトスター
【得点】
(早大)81’土居明日香
(群馬FCホワイトスター)12’目黒真里奈、48’関口真由

 群馬FCホワイトスター(ホワイトスター)のホームに乗り込んだ関東女子リーグ戦(関東リーグ)第2節。開幕戦(尚美学園大戦、◯5-1)に引き続き昇格組との一戦で勝ち点を積み重ねたいア式蹴球部女子(ア女)であったが、主導権を握られ、2点ビハインドで試合終盤へ。81分に生まれた新加入FW土居明日香(スポ4=ちふれASエルフェン埼玉)のゴールは空砲に終わり、1-2でタイムアップ。関東リーグ10連覇中の女王が早くも黒星を喫した。

 なでしこリーグ参戦を目標として掲げ、昨季は関東女子リーグ戦(関東リーグ)2部を無敗で勝ち上がってきたホワイトスターに対し、ア女は序盤から後手に回った。3分、自陣右サイドから上げられたクロスを、FW佐藤亜美にフリーでヘディングを打たれてしまう。ゴール右上に放たれたシュートはGK鈴木佐和子(スポ3=浦和レッズレディースユース)が片手でかき出すが、不穏な空気が漂う。すると12分、ビルドアップのパスをカットされ、またしても自陣右サイドからのクロスを許す。一度は鈴木がセーブするが、こぼれ球をDF目黒真里奈に押し込まれて先制点を献上した。劣勢に立たされたア女は、3バックを敷く相手ディフェンスの裏のスペースにパスを狙う。しかし守備時には5バック気味になる相手にことごとく跳ね返された。中盤でもスペースをうまく消してくる相手のプレスをいなすことができず、セカンドボールの回収が思うように進まない。それでも21分、ペナルティーエリア手前でFK獲得。MF高瀬はな主将(スポ4=ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)がゴール左上を狙うが、枠外へ外れた。さらに29分のMF村上真帆(スポ3=東京・十文字)の縦パスに反応した29分MF松本茉奈加(スポ3=東京・十文字)がドリブルでエリア内に侵入。GK小髙愛理との1対1の勝負となったが、惜しくもセーブされてしまった。ア女は数少ない好機をものにできず、0-1で最初の45分を終える。

スタメンに抜擢された松本だったが、惜しくも決定機を逃してしまった

 後半開始直後の48分、再び自陣右サイドを崩された。前半から幾度も前線でボールを収め、ホワイトスターの起点となっていたFW兼重紗里から、オーバーラップをしてきたDF関口真由にフリーでボールが渡る。関口のシュート性のボールはブロックに入った味方選手の足に当たり、ゴールに吸い込まれてしまった。後がなくなったア女は、53分にMF中條結衣(スポ4=JFAアカデミー福島)、68分に土居を投入。中條は積極的にパス回しに関与し、土居は前線で動きながらボールを引き出していく。77分には、中條の縦パスをFW廣澤真穂(スポ1=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)が落とし、土居がシュートを放つなど、徐々に敵陣内でのスペースを活用できるようになる。そして81分、土居のスルーパスから相手ディフェンスラインの背後を取った廣澤がGK小髙と1対1に。これは小髙にブロックされるが、「こぼれてきたボールを狙ってあの場所にいました」と振り返った土居が冷静に流し込んで1点差とした。この得点で流れに乗ると、84分には、DF小林菜々子(スポ4=ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)のロングフィードに土居が抜け出す。浮き玉のシュートは惜しくもサイドネットとなったが、同点への機運は高まり、残り時間もわずかとなったところで絶好のチャンスを迎える。村上からのロブパスを土居が受けると、左サイドを駆け上がったDF中田有紀(スポ4=兵庫・日ノ本学園)に展開。中田はバイタルエリアに侵入すると、ペナルティーエリア手前でファウルを誘い、ゴール正面でFKを獲得。しかし、中條の抑えの効いたシュートは無情にも相手の壁に阻まれ、こぼれ球を拾った高瀬のシュートは枠外へ消えていき万事休す。第2節は昇格組相手に手痛い敗戦に終わった。

新加入の土居にゴールが生まれた

 春先から『ラインコントロール』が課題に挙がっていたが、この日は縦に速く攻めてくる相手に裏のスペースを頻繁に突かれてしまった。また、「ディフェンスラインからどのように組み立てていくのかがまだはっきりしていない」と鈴木が語るように、ビルドアップの方向性が確立されていない現状もある。ルーキーの廣澤や船木がスタメンに名を連ねるなど、昨季のメンバーから変化がある中で、チーム内で共通認識をより深めていくことが求められそうだ。第3節の浦和レッズレディースユース戦は、1週間後の4月28日。「すぐ次の試合があるので、前向きにチームとして課題を改善できるようにしていければ」(高瀬)と選手たちは敗戦を悲観的に捉えていない。この試練を乗り越え、今年のア女のカラーを示していきたいところだ。

(記事 石井尚紀、写真 永池隼人、森迫雄介)

スターティングイレブン

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早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 鈴木 佐和子 スポ3 浦和レッズレディースユース
DF 中田 有紀 スポ3 兵庫・日ノ本学園
DF 小林 菜々子 スポ4 ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
DF 源関 清花 スポ4 ちふれASエルフェン埼玉
→86分 36 ブラフ シャーン スポ1 スフィーダ世田谷FCユース
DF 35 船木 和夏 スポ1 日テレ・メニーナ
MF ◎8 高瀬 はな スポ4 ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18
MF 10 村上 真帆 スポ3 東京・十文字
MF 11 松本 茉奈加 スポ3 東京・十文字
MF 12 並木 千夏 スポ2 静岡・藤枝順心
→68分 30 土居 明日香 スポ4 ちふれASエルフェン埼玉
MF 17 阪本 未周 スポ3 大阪・大商学園
→53分 中條 結衣 スポ4 JFAアカデミー福島
FW 34 廣澤 真穂 スポ1 ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ
リザーブ:GK16川端涼朱(スポ3)、DF吉野真央(スポ1)、田中実夏(スポ4)、MF20秋山由奈(スポ4)、MF26加藤希(スポ2)、FW荻原優花(スポ3)
◎=ゲームキャプテン
監督:川上嘉郎(昭51商卒=神奈川・横浜緑ケ丘)

コメント

MF高瀬はな主将(スポ4=ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)

――試合を振り返って

相手のシステムが今までと違って3枚のバックだったのでどういう風に戦うかみんなで話してきたんですけど、実際やってみて初めてだったので、うまくいかないところが多くて前半はそれが修正できずに早い時間帯での失点につながってしまったと思います。

――攻撃面の戦略は

やっぱり3バックだとサイドバックの裏が空くので、そこのスペースをうまく使っていこうという話だったんですけど、中盤の枚数は相手より不利だったので、そこを使われてしまったのが今回の一番の反省かなと思います。

――相手は組織的な守備でスペースをうまく消していましたがその中でなかなか流れを変えるプレーがチームとしてできなかった印象でした

本当にその通りで、ずっとテンポが同じで自分たちでも変化を加えられなかったし、ずっと相手の勢いに押されっぱなしの時間帯が多かったので、我慢する中でも少しテンポを変えるプレーを増やしていかないと今後勝ち切れない試合が続いちゃうのかなと思います。

――ビルドアップについてチームで方針が固まってなかったというお話も伺いましたが

そうですね、きょうはピッチの状態を言い訳にはできないんですけど、それがビルドアップの不安材料となってしまって、そこを自分たちで改善できればよかったんですけど、うまく距離感を保てずビルドアップができなかったので、今後課題になってくるのかなと思います。

――攻撃面ではFW土居明日香(スポ4=ちふれエルフェン埼玉)が大きなポイントとなりました

そうですね、土居ちゃんが入ってから高い位置でボールが収まるようになっていたので、そういった意味では交代した選手が流れを変えてくれたというのは、チームにとっていい印象だったかなと思います。

――単調な攻撃が続いてしまった中でチームで何か話していたことは

ハーフタイムでもっと収めようという話はしていたんですけど、実際前に蹴っても、蹴るボールの質もそうですし受け手の問題もあって、なかなか縦へのパスがかみ合わなかったのが今回の敗因ですかね。

――早くもリーグ戦黒星となりましたが次戦への意気込みは

今回すごい課題が残ったんですけど、すぐ次の試合があるので、前向きにチームとして課題を改善できるようにしていければいいなと思います。

FW土居明日花(スポ4=ちふれエルフェン埼玉)

――交代で出場するにあたって、何か心がけていたプレーはありますか

負けていましたし、FWなので点を取ることを意識していました。

――前半は攻撃が機能していないシーンが多かったと思いますが、ベンチから見ていてどのような印象を受けましたか

空いているスペースを使えていなかったし、相手に使われていたので、そこが良くなかったと思います。

――その中でも土居選手のゴールで1点を返しました、あのシーンを振り返って

ヒロ(FW廣澤真穂、スポ1=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)は自分でドリブルしていくのが得意なタイプなので、こぼれてきたボールを狙ってあの場所にいました。

――きょうのプレーに自分で評価をつけるならどのくらいになりますか

3点分チャンスがあったのですが1点しか取れなかったので、30点くらいですかね。

――途中加入とのことですが、現在は連携面などの手応えはいかがですか

最近やっと合うようになってきました。選手同士でどこが見えているのか、どこに走っているのかがわかるようになってきたので、これからもっと連携できるよう頑張りたいです。

――自分が強化したいポイントがあれば教えてください

自分はそんなに足が速いタイプではないんですけど、タイミングよく裏に抜け出すことだったり、中盤に落ちることだったり、味方のプレーを見てタイミングをはかれるようにしたいです。

GK鈴木佐和子(スポ3=浦和レッズレディースユース)

――1-2という結果をどのように受け止めていらっしゃいますか

第1節が順調過ぎたので、そこであまり調子に乗らないようにするには良かったと思います。

――きょうは右サイドから崩されるシーンが散見されました

右サイドでやられてしまう場面が多くて、ケアをしようとしたんですけど、最終的には局面局面でみんな負けていたので、失点も当然の結果という状況です。

――春から課題として挙がっていたラインコントロールの面はいかがでしたか

ディフェンスラインのビルドアップの時からリスク管理をしないと、1失点目もその部分ができていなくてやられてしまったので、もっと詰めていかなければいけないですし、ディフェンスラインだけではなくてキーパーも含めてラインコントロールは合わせていかないといけないと思います。

――相手のフィジカルの強い選手に苦戦を強いられてしまったことはいかがでしたか

大きくボールを蹴ると跳ね返されてしまったり、相手の方がルーズボールも強く、拾われていたので、途中から近くに距離感を取って、短いパスをつなごうということは伝えたんですけど、それも試合の後半の方で、みんな体力的にも厳しかったと思うので、試合の最初からやることが必要だったと思います。

――鈴木選手とディフェンスライン間での意思の疎通がうまくいっていない印象でした

ディフェンスラインからどのように組み立てていくのかがまだはっきりしていないので、そこは試合を重ねていくごとにはっきりさせていきたいです。

――最後に次戦以降に向けて意気込みをお願いします

負けることはできないので、失点をしないところだったり、楽に試合を運ぶことだったりで、改善する部分やできることもあるので、次の試合までにつくり上げていきたいです。