全日本大学女子選手権(インカレ)の準々決勝が行われ、早大は関西第1代表の姫路獨協大と対戦した。創部史上初の4連覇達成に向けて、決して負けられない『東京ラウンド』。「ばたばたした展開が続いた」とMF熊谷汐華主将(スポ4=東京・十文字)が振り返るように序盤は落ち着かない試合展開となる。28分には熊谷の先制点で均衡を破ったものの、後半相手にFKを直接決められ、試合を振り出しに戻される。意地を見せたい早大は、75分に見事なパスワークから再び熊谷が渾身の一発を押し込み、逆転に成功。このリードを守りきり、20日に行われる決勝進出を決めた。
姫路獨協大は初のインカレ準決勝進出ではあるものの、ユニバーシアード日本女子代表選手を擁する実力あるチーム。試合の立ち上がりは早大も主導権を握ることができず、MF柳澤紗希副将(スポ4=浦和レッズレディースユース)やMF中條結衣(スポ3=JFAアカデミー福島)が遠い位置から積極的にシュートを放つが、わずかに枠を捉えることができない。22分には早大の守備陣が相手にかわされ、フリーでシュートを打たれるなど我慢の時間帯が続く。リズムをつかめず、ピッチに立ちこめる重い空気を打ち破ったのは1年間チームを率いてきた主将だった。MF山田仁衣奈(スポ3=大阪・大商学園)から大きなサイドチェンジのパスを受けると、得意のドリブルで縦に切り込んでいく。最後は思い切りよく左足を振り抜き、右のサイドネットを揺らし1-0とした。苦しい時間帯に貴重な1点を得た早大は、前半終了間際にFKを獲得。クロスボールにDF三浦紗津紀(スポ4=浦和レッズレディースユース)が反応し、最後は山田仁が頭でシュートを狙ったが、これはわずかにゴールの上。1点リードで前半を終えた。
苦しい時間に待望の先制点が決まった
後半の立ち上がりは、早大が守備に回る時間が増える。13分、早大ゴール前に迫ってきた相手を懸命に守ったものの転倒させてしまい、これがファウルの判定に。ペナルティエリアの近くからFKを直接決められ、試合は白紙に戻った。69分、早大は攻撃の活性化を図るべくMF松本茉奈加(スポ2=東京・十文字)を投入。75分には、その松本が持ち味であるスピードを生かして右サイドを崩し、FW河野朱里(スポ4=静岡・藤枝順心)に預ける。最後はMF村上真帆(スポ2=東京・十文字)のアシストから再び熊谷主将が左サイドからチームを救う2発目を決め、リードを奪い返した。その直後、素早く攻撃を仕掛けてきた相手にシュートを放たれたものの、これはバー直撃。失点のピンチをしのいだ早大が試合終了までリードを守り切り、決勝進出となった。
河野も攻撃の中心としてチームを引っ張った
「(失点して)雰囲気も相手に一回飲み込まれそうになったんですけど、そこでもう一回ゴールを奪えて良かった」(熊谷)。苦しい時間の先制点、そして勝ち越しゴールを決めた熊谷。主将としての意地とここ一番での勝負強さを示し、早大を勝利に導いた。中1日で行われる決勝の相手は、日体大。早大が関東大学女子リーグ戦で敗れた(●1-2)帝京平成大を4-0で下して勝ち上がってきた。このチームでできる試合も残り1試合となった今、最高の舞台と最高の相手が整った。悲願の4連覇まで、あと一勝だ。
(記事 下長根沙羅、写真 守屋郁宏、永池隼人、柴田侑佳、菅沼恒輝)
スターティングイレブン
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第27回全日本大学女子選手権 | ||||
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早大 | 2 | 1-0 1-1 |
1 | 姫路獨協大 |
【得点】 (早大)28’、75’熊谷汐華 (姫路獨協大)60’渡邊佳奈美 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属(加入内定) |
GK | 1 | 木付 優衣 | スポ4 | ジェフユナイテッド市原・千葉レディース |
DF | 2 | 渡部 那月 | 社4 | 兵庫・日ノ本学園 (オルカ鴨川FC内定) |
DF | 4 | 三浦 紗津紀 | スポ4 | 浦和レッズレディースユース (INAC神戸レオネッサ内定) |
DF | 23 | 源関 清花 | スポ3 | ちふれASエルフェン埼玉 |
DF | 3 | 中田 有紀 | スポ3 | 兵庫・日ノ本学園 |
MF | 6 | 柳澤 紗希 | スポ4 | 浦和レッズレディースユース (浦和レッズレディース内定) |
MF | 20 | 中條 結衣 | スポ3 | JFAアカデミー福島 |
MF | 9 | 山田 仁衣奈 | スポ3 | 大阪・大商学園 |
→69分 | 17 | 松本 茉奈加 | スポ2 | 東京・十文字 |
MF | 7 | 村上 真帆 | スポ2 | 東京・十文字 |
→88分 | 13 | 高瀬 はな | スポ3 | ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18 |
MF | ◎11 | 熊谷 汐華 | スポ4 | 東京・十文字 (スフィーダ世田谷FC内定) |
FW | 10 | 河野 朱里 | スポ4 | 静岡・藤枝順心 (INAC神戸レオネッサ内定) |
リザーブ:GK16鈴木佐和子(スポ2)、MF冨田実侑(スポ2)、MF蔵田あかり(スポ1)、MF並木千夏(スポ1)、FW山田彩未(スポ4) | ||||
◎=ゲームキャプテン 監督:川上嘉郎(昭51商卒=神奈川・横浜緑ケ丘) |
コメント
MF熊谷汐華主将(スポ4=東京・十文字)
――熊谷さんの2得点で決勝進出が決まりました。今のお気持ちはいかがですか
試合展開も苦しいものだったので、勝ち切れてほっとしています。
――試合全体を振り返っていかがですか
先制できたことは良かったのですが、FKで同点に追いつかれてしまったので雰囲気も相手に一回飲み込まれそうになったんですけど、そこでもう一回ゴールを奪えて良かったです。最後押し込まれる時間も続いたんですけど、ゴールを許すことなくできて良かったと思います。
――関西のチームということで戦い慣れていないチームだったと思います。やりづらさはありましたか
私が1年生の時に獨協さんとやったことがあったのですが、その時とはもう人も変わっているのでどういう感じか分からないというのは正直ありました。ただ、そこで怖さとかは無かったです。
――準決勝からきょうまで時間があったと思いますが、どのようなことを準備してきましたか
相手の分析をしっかりして自分たちがどういう戦いをするのか話し合いました。自分たちの強みとしてセットプレーがあると思うので、そこを大事に練習でもやってきました。セットプレーからきょうは得点できませんでしたが、惜しいところもあったので練習したことは少し出せたと思います。
――立ち上がりは苦しかったと思いますが
もう少し早い時間というか、前半15分くらいで点を決めたかったというのがあるんですけど、1点入るまではばたばたした展開が続きました。点を取った後も、相手の勢いも落ちなかったし試合を通してばたばたしてしまったという印象があります。全部、パスも縦ばかり狙ってしまったので、横に一回出して落ち着かせるパスだったりをしたいと思います。
――得点シーンを振り返っていかがですか
自分の得意な角度だったので、ボールをもらった時にコースが見えたので思い切って打ちました。2点目も、自分が割とフリーでボールを受けられたので、最後パスも出せたんですけど1点目を決めていたので思い切って打ちました。
――相手に決定機を与えるような場面もあったと思いますが、守備のできとしてはいかがですか
緩さはところどころで多かったかなと思いますね。ポストにも助けられたし、相手が結構ロングシュートを打ってくるっていうのがあったんですけど、そこは自分たちが分析して分かっていたのにやらせてしまったところがあったので、寄せるところだったりは甘いかなと思いました。
――最後に決勝に向けて一言お願いします
中1日しかなくて体的にはきついんですけど、しっかり明日調整して、日体大を倒して優勝したいと思います。
FW河野朱里(スポ4=静岡・藤枝順心)
――前回の試合から長い間が空きましたが、どのような準備をされましたか
神戸ラウンドの時も1チーム1チームの分析をしているので、空いた時間っていうのは基礎的な体力だったり基礎練だったりの見直しもしましたし、シンプルに獨協大のスカウティングをして獨協対策としてその練習をしたり、日体大と帝京平成大のスカウティングもしていたのでそれにむけて球際だったり獨協の強さを消すような練習をしてきました。
――勝利して決勝進出が決まった今の気持ちを教えてください
自分たちが目指しているのはタイトルなので、内容にこだわりすぎるのもよくないとは思うんですけど、あんまり納得できる試合ではなかったというのが個人的な感想としてはあります。でもチームとしては勝つことが1番なのでみんなで勝つことが出来てよかったと思います。
――試合内容を振り返っていかがでしたか
前半相手が結構様子を見てきているような試合展開だったのに対して、自分たちが主導権を握りきれなかったことが反省点としてあります。2点とも個人技で取ったような点だったので、そこはもう少しみんなで関わって枚数多くゴールに迫っていかないといけないと思いますし、ディフェンス面でも切り替えが少し遅いところで相手にいい場面を作られてしまったので、切り替えの部分とゴール前の厚みをもう少し出していきたいと思います。
――自身に良い形でボールが入ってこなかったと思いますが
想定していたということもあってあまりイライラすることもなかったんですけど、自分がボールを触れなかったことで縦へのリズムが無くなってしまったし、もう少し自分も関わって(ボールを)引き出す動きが出来たらよかったかなと思うのと、自分が下がって受けていたところはいいリズムで縦に入れることができていた思うので、前で受けられなくても下で受ければいいと思っているのでそこは日体戦でも続けていこうと思います。
――インカレでは初先発ということでしたが、難しさなどはありましたか
西が丘でやるというのは誰でもプレッシャーはあると思うんですけど、自分にとっては今までやってきてる会場ですし雰囲気だったりも結構経験してきてるので、今年初先発だからといって特に緊張とかは無かったです。
――あと1勝でついにインカレ4連覇です、意気込みをお願いします
1年生の時からインカレ4連覇っていうのを言い出して、その代が自分たちの代だったので自分たちが最高学年となった今年に取らないと意味がないですし、相手に不足はないので自分たちがやることをしっかりやって、内容でも結果でも相手を上回れるように明日いい調整をしようと思います。
DF中田有紀(スポ3=兵庫・日ノ本学園)
――試合を振り返って
前半は自分たちがボールを持てる時間帯が長かったと思うのですが、その中で先制点を決めることができて、前半を1−0で折り返すことができたのはよかったと思っていますし、後半は失点してから我慢する時間帯が増えましたが、その中でも粘り強い対応ができたと思います。追加点を決めて結果として勝ちきれたことはよかったと思います。
――守備を振り返って
球際に対しては厳しく対応できていたからこそ、セカンドボールだったり、相手より先にというところを意識できていたのかなと思います。
――準々決勝から少し期間が空きましたが、どのような準備をして試合に臨みましたか
相手のスカウティングを通して、自分たちの持ち味を出すためにはどういうプレーが効果的なのかを考えて、この3週間練習しました。
――普段対戦しない関西のチームとの試合でしたが、やりにくさとかはありましたか
やりにくさというには特になかったですね。
――決勝に向けて意気込みをお願いします
4連覇がかかっている試合という中でプレッシャーもあると思うのですが、試合を楽しんで結果として4連覇できるように、粘り強く泥臭く点を決めて笑顔で終わりたいなと思います。