熊谷汐のハットトリックで完勝!悲願の決勝の舞台へ

ア式蹴球女子

 関東女子選手権兼皇后杯関東予選の準決勝。きのう行われた3回戦では見事完勝し、本戦への切符を手にした。しかし優勝を目指すア式蹴球部女子(ア女)としては、ここで負けるわけにはいかなかった。立ち上がりはボールを支配するが、あと一歩のところで決めきれず惜しい場面が続く。しかし前半も終盤に差しかかってくると、相手のペースに飲まれ、無得点のまま後半へ突入した。ところがそこからチームの雰囲気は一変。43分にMF熊谷汐華(スポ3=東京・十文字)が先制点を決めると、勢い付いたア女は5得点無失点で完勝。優勝まであと一歩のところまでたどり着いた。

 これまで2試合勝ち進んできたことで勢いのあるア女は前半、果敢に攻め続けた。開始早々から惜しい場面が続く。4分、DF中田有紀(スポ2=兵庫・日ノ本学園)が高めのクロスを上げ、FW河野朱里(スポ3=静岡・藤枝順心)が足で綺麗に合わせるが、決めきれず。その後は相手のディフェンスラインの高さに苦しめられることが多くなる。13分にはMF村上真帆(スポ1=東京・十文字)が相手のDFをうまく切り抜け放ったミドルシュートはゴールネットを揺らしたが、これは無情にもオフサイドの判定。終盤は相手に隙を許してしまうシーンも何度か見られたが、DF陣がしっかりカバーし、無失点に抑えた。40分にはMF大井美波(社3=大阪・大商学園)がドリブルで左サイドへ抜け、中田へとパスをつなぎ、センタリングをあげる。それに河野が合わせるも枠を捉えることができなかった。中盤以降、「相手にペースをつかまれてしまって、それを自分たちが打ち返せなかった」(DF三浦紗津紀、スポ3=浦和レッズレディースユース)。前半のうちに何とか先制点を取りたいア女であったが、結局無得点のまま試合を折り返した。

熊谷汐の持ち味が最大限に出た試合に

 後半に入ると流れは一変。自分達のペースへと持ち込んだ。ここで後半交代して入ったMF熊谷汐華(スポ3=東京・十文字)が魅せる。43分、CKからのこぼれ球をDF奥川千沙(スポ4=静岡・藤枝順心)が拾い、熊谷汐が押し込む。さらに59分、相手GKのミスを誘い、ボールを奪った熊谷汐がDFも振り切り無人のゴールにシュートを流し込んだ。ア女は畳み掛けるように攻撃を続ける。71分、CKを獲得すると、MF中村みづき(スポ4=浦和レッズレディースユース)からのボールにMF松原有沙主将(スポ4=大阪・大商学園)が飛び込んだが、これは惜しくもゴール上。しかしその後すぐ、ア女の華麗なパス回しで再びチャンスが訪れる。72分、オーバーラップした中田が、MF中井仁美(スポ4=兵庫・日ノ本学園)からのパスを受け、左サイドから切り込んでいきセンタリングを供給。そこに滑り込んだ中村がゴールを奪った。試合終了までア女のペースは続き、79分、ここで輝きを見せたのは1年生コンビだった。村上が一度相手にボールを奪われるも懸命に食らいつき、センタリング。それをMF冨田実侑(スポ1=岡山・作陽)が押し込んだ。80分には熊谷が冨田からのパスを受けて放った鋭いシュートはゴールネットを揺らし、ハットトリックを達成した。

優勝まであと1勝だ

 5得点無失点で完勝したア女。前半なかなかペースがつかめない苦しい展開となったが、「試合の中でも臨機応変に対応できたのは良かった」と松原が振り返るように、相手の戦術に対して徐々に順応していけたことがきょうのこの結果につながった。決勝に向け、「何よりも結果だけじゃなくて内容にもこだわって試合をして優勝したい」と意気込む熊谷。悲願の決勝の舞台でア女の選手たちがどんなプレーを魅せてくれるのか楽しみだ。

(記事 大島実咲、写真 大山遼佳・栗村智弘)

スターティングメンバー

関東女子選手権 準決勝
早大 0-0
5-0
東洋大
【早大 得点者】43,60,80+1熊谷汐/73中村/80冨田
早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK 木付優衣 スポ3 ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
DF 15 中田有紀 スポ2 兵庫・日ノ本学園
DF 三浦紗津紀 スポ3 浦和レッズレディースユース
DF 奥川千沙 スポ4 静岡・藤枝順心
DF 渡部那月 社3 兵庫・日ノ本学園
MF ◎5 松原有紗 スポ4 大阪・大商学園
MF →76分 安倍由希子 スポ3 宮城・聖和学園
MF 27 村上真帆 スポ1 東京・十文字
MF 平國瑞希 スポ4 宮城・常盤木学園
MF →69分 冨田 実侑 スポ1 岡山・作陽
MF 10 中村みづき スポ4 浦和レッズレディース
MF →76分 柳澤 紗希 スポ3 浦和レッズレディースユース
MF 17 大井美波 社3 大阪・大商学園
MF →41分 熊谷汐華 スポ3 東京・十文字
FW 河野朱里 スポ3 静岡・藤枝順心
MF →71分 中井仁美 スポ4 兵庫・日ノ本学園
◎はゲームキャプテン
監督:福島廣樹(昭45教卒=東京・独協)
コメント

MF松原有沙主将(スポ4=大阪・大商学園)

――試合を振り返って

前半、いい流れで何個かチャンスはあったんですけど決めきれずに0ー0で折り返して。後半は絶対に先に点を取ろうって言っていたところで、汐華(MF熊谷、スポ3=東京・十文字)がCKから決めてくれてそこから流れに乗っていけて良かったかなと思います。

――後半にあれだけ切り替えが出来た理由は何だったかと思いますか

大きい展開が増えたというのと、オフサイドにはなってしまったんですけど何人も裏に抜けて、サイドから攻めることができたのは良かった点かと思います。

――相手のDFラインがかなり高かったですね

かなり高かったですね。でも2列目から飛び出したりすればああやって高かったとしてもオフサイドにはならなかったですし、そうやって試合の中でも臨機応変に対応できたのは良かったと思います。

――だんだんと慣れてきたということでしょうか

そうですね、少し後ろ目からスタートしたりだとか。自分たちでしっかり変えることができたと思います。

――無失点での勝利です

全体通してしっかり集中してできてはいたんですけど、前半は少し前からいけていない部分があって、相手をフリーにしてしまうこともあったので。後半はしっかり前からいこうというようには言っていました。前からプレスをかけられたかと言われればできてはいないんですけど、前半よりは狙い所がはっきりしたというか。そういったように試合中に変えることができたのは良かったと思います。

――松原選手ご自身の惜しいシュートもありました

監督(福島廣樹、昭45教卒=東京・独協)からも言われているんですが、最近あまり打てていなくて。きょうはチャンスもあったんですけど、決め切れなかったのでこれからは少ないチャンスも決められるようにしたいです。

――次戦への意気込みをお願いします

本戦出場は決まっているんですけど、自分たちの目指すところは優勝なので。まずは来週しっかり勝って一冠とれるようにこの1週間練習してがんばりたいと思います。

DF三浦紗津紀(スポ3=浦和レッズレディースユース)

――前半はなかなか落ち着かない展開となりました

相手にペースをつかまれてしまって、それを自分たちが打ち返せなかったという印象ですね。

――後半は一転してゴールラッシュでした。どの辺りにその要因があったと思いますか

自分たちの中で、順応されているなという印象だったので、選手交代も含めて、自分たちに変化を加えることができたのが、5得点につながったと思います。

――交代で入った選手が大活躍を収めました

今はスタメンが固定されている状況で、そうやって途中で入ってくる選手が結果を残してくれると、チーム全体の雰囲気としてもますます厳しくできると思いますし、そういうのは本当にうれしいというか、もっとチームが強くなるためにも、このまま続けていければと思います。

――無失点で終えられたことについてはいかがですか

自分たちの中でも、失点してしまうというイメージが付いてしまっているところがあって、こういうふうに一試合一試合、無失点で終えていくことが大事だと思います。

――決勝に向けてはどういった取り組みをしていきたいですか

皇后杯本戦への出場は決まっている中で、そこに向けて自分たちがどれくらいレベルアップできるかということで、次の決勝も含めて残された試合で、今の自分たちへのチャレンジというのを、この状況に満足することなくしていきたいです。

MF熊谷汐華(スポ3=東京・十文字)

――試合お疲れ様でした。そしてハットトリックおめでとうございます

ありがとうございます(笑)。

――昨日からの連戦でしたが、コンディションはいかがでしたか

そうですね、連戦っていうのは前からわかっていたことなので、滅多にないことなんですけど。でもやっぱりインカレとか、そういう試合になってくると連戦とかあるので、そういうのを意識して出来たらいいなと思って臨みました。

――きょう決めた3点を振り返って

後半から入って、チームの流れを変えたいと思って入ったので、それを得点という形で出せたのは良かったと思います。

――前半ベンチの方から客観的に見ていて、後半入る時にどのような気持ちで望みましたか

前半は結構相手に合わせてしまっている部分があったと思うので、そこをやっぱり自分たちのサッカーを出していかなければいけないなというのを感じていたので、そこを自分なりに考えて、自分のストロングポイントを出せるように意識しました。

――どのように相手を崩していくか、考えていた作戦はありますか

自分はチームに求められている役割としてはサイドからの仕掛けであったり、クロスとかシュートの部分だったので、監督にもシュートを狙っていけというのは言われていたので、そこを特に意識しました。

――最後に、来週の決勝に向けて意気込みをお願いします

まず、絶対勝ちたいっていうのはもちろんですし、何よりも結果だけじゃなくて内容にもこだわって試合をして優勝したいと思います。

DF冨田実侑(スポ1=岡山・作陽)

――得点シーン振り返ってみてどうでしたか

色々な試合でチャンスはあったんですけど、全然決め切れないところがあったのできょうは決めれて嬉しい気持ちはあります。次からもチャンスがあったときにしっかり決められるように練習したいです。

――きのうスタメンで連日の試合のコンディションはどうでしたか

トレーナーさんにケアしてもらったり、ちょっと早く寝たりしました。コンディションは良かったと思います。

――次の試合に向けて

自分が試合に出場することができたら、自分に求められているのはスピードを生かしたプレーなので、そういうのを何回も繰り返してチャンスをつくり出して、シュートチャンスもあれば自分で狙ったりしていきたいです。