西陽の差す敵地・神奈川大のグラウンド。試合終了のホイッスルを聞き、ア式蹴球部女子(ア女)の選手たちはがっくりと肩を落としていた。先制されながらも追いつき、アディショナルタイムでの勝ち越しゴールで、勝ち星をつかんだかに思えた矢先の失点。今季の関東女子リーグ戦(関東リーグ)で、すでに2回引き分けているア女としてはなんとしても勝ちたい一戦だっただけに、非常に悔しい結果となった。
2週間のインターバルを挟み、関東リーグの後半戦がスタートした。今節の相手は神奈川大。MF松原有沙主将(スポ4=大阪・大商学園)を始め、多くの選手が口をそろえる神奈川大の特徴は『足元の上手い選手が多いチーム』。その言葉通り相手は少ないタッチ数でパスを回し、ア女のゴールに襲いかかってきた。「相手のいいところをつぶせず、自由にさせてしまった」(松原)。神奈川大のプレーに翻弄(ほんろう)され、自分たちのサッカーをさせてもらえない時間帯が続いた。ア女もMF中村みづき副将(スポ4=浦和レッズレディース)とFW河野朱里(スポ3=静岡・藤枝順心)のホットラインで相手の守備を崩し、得意とするサイドからの攻撃で応戦するが、決定的なチャンスはつくらせてもらえず。すると前半42分、抜け出した相手FWが放った強烈なシュートをGK木付優衣(スポ3=ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)が一度は防いだが、こぼれ球を押し込まれ、ついにゴールを割られてしまった。このまま0−1で前半は終了、勝利を目指すア女にとっては苦しい展開となった。
同点弾のアシストを記録した中田
後半12分、ワセダベンチが動いた。MF平國瑞希(スポ4=宮城・常盤木学園)とMF熊谷汐華(スポ3=東京・十文字)を投入。これを機に少しずつア女のプレーにリズムが戻ってきた。DF陣からのロングフィードも好機を演出し、得点を予感させるプレーが増えた。迎えた後半34分、きょう多くのチャンスをつくっていたDF中田有紀(スポ2=兵庫・日ノ本学園)が1人で相手陣内に持ち込み、絶妙なセンタリング。これを中村が危なげなく決めて同点に追い付いた。流れに乗ったア女はここから怒涛(どとう)の攻撃をみせる。平國の相手DFを置き去りにするドリブル突破や、後半42分には中村の放ったシュートが惜しくもクロスバーを直撃するなど、ゴールまであと一歩のところに迫る。すると後半46分、左サイドを駆け上がった熊谷汐がエリア内で倒され、PKを獲得。プレッシャーのかかる中で松原主将がしっかりと決め、土壇場で逆転に成功した。ところがこのまま終わるかに思われた試合終了間際、痛恨の同点弾を浴びてしまい、結果は2-2のドロー。またも勝ち切ることができなかった。
逆転勝利を確信したが…
2失点という結果からもわかるように、売りであるはずの堅守が機能しなかった今節。中盤の選手の守備への関わり方、セットプレーでの守備、失点の増加などいまのア女には課題が山積みだ。さらに、「きょねんとあまりチームが変わっていないので(相手に)慣れられている部分があると思う」(木付)。チームはいま、絶対的女王ならではの難しさにも直面している。しかし、「つぎは無失点に抑えて、絶対に勝ち点3を取りにいく」(中村副将)。選手たちはけっして下を向いていない。チームの目標である『9連覇』を達成するために――。見つかった課題を一人ひとりが、そしてチーム全体がしっかりと消化をして、次節こそは確実に白星をつかみたいところだ。
(記事 篠原希沙、写真 大山遼佳)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません
スターティングメンバー
関東女子リーグ戦 第8節 | ||||
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早大 | 2 | 0-1 2-1 |
2 | 神奈川大 |
【早大 得点者】34中村、90+1松原 |
早大メンバー | ||||
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ポジション | 背番号 | 名前 | 学部学年 | 前所属 |
GK | 1 | 木付優衣 | スポ3 | ジェフユナイテッド市原・千葉レディース |
DF | 15 | 中田有紀 | スポ2 | 兵庫・日ノ本学園 |
DF | 4 | 三浦紗津紀 | スポ3 | 浦和レッズレディースユース |
DF | 20 | 高瀬はな | スポ2 | ジェフ千葉レディースユース |
DF | 2 | 渡部那月 | 社3 | 兵庫・日ノ本学園 |
MF | ◎5 | 松原有紗 | スポ4 | 大阪・大商学園 |
MF | 6 | 柳澤 紗希 | スポ3 | 浦和レッズレディースユース |
MF | →70分 | 村上真帆 | スポ1 | 東京・十文字 |
MF | 28 | 松本茉奈加 | スポ1 | 東京・十文字 |
MF | →57分 | 平國瑞希 | スポ4 | 宮城・常盤木学園 |
MF | 10 | 中村みづき | スポ4 | 浦和レッズレディース |
MF | 17 | 大井美波 | 社3 | 大阪・大商学園 |
MF | →57分 | 熊谷汐華 | スポ3 | 東京・十文字 |
FW | 7 | 河野朱里 | スポ3 | 静岡・藤枝順心 | ◎はゲームキャプテン 監督:福島廣樹(昭45教卒=東京・独協) |
コメント
MF松原有沙主将(スポ4=大阪・大商学園)
――率直な感想をお願いします
自分たちのプレーができず、攻め込まれる時間が続いてしまって、前半を負けて折り返すということになりました。球際の部分で負けてると思ったので、後半はそこをしっかりいこうということを話し合いました。あとは絶対2点取りにいこうということで、なんとか2点返せたんですけど。最後あのような形で失点してしまって。勝てる試合を落としてしまったなという感じです。
――前半、攻め込まれてしまった原因はなんだったかと思いますか
距離感が遠くなってしまって、ファーストがはっきりしなかったので全部遅れてディフェンスになってしまいました。あとは相手は足元がうまいので、細かく速いパス回しをしてくる中で、自分たちはそれに振り回されてしまったなと感じました。そこは1人1人の球際の強さだったり、声をかけたりしてカバーしていかないといけないなと思います。
――きょうの松原選手の低めのポジション取りにはどのような意図があったのでしょうか
攻撃のときは自分は少し引いて、サイドバックをあげるという意識はしていました。ディフェンスのときはもう少し高い位置にいて、セカンドとかを狙えるようにしたいなと思います。
――きょうみつかった課題はありますか
攻撃以前に守備が全然だめだったので。スローインの守備だったり、マークを外さないだったり、1つ1つをこだわってやっていかないといけないなと。できていると勘違いしていた部分がこのような結果に出てしまったと思います。
――今季2回目の対戦となった神奈川大の印象は
足元がうまくて、少ないタッチ数でパスをつないでいくチームだなと思います。本当に相手のいいところをつぶせず、自由にさせてしまったなという印象です。
――次戦に向けての意気込みをお願いします
前回は勝っているんですけど、きょう守備の面での課題がたくさんみつかったので、しっかりとそこを修正して、絶対に勝ち点3を取りにいきたいと思います。
MF中村みづき副将(スポ4=浦和レッズレディース)
――きょうの試合を振り返って
後期始まっていい流れをつくるためにもきょうの試合は勝たなければいけない試合って皆分かっていたんですけど、なかなか序盤からゲームの流れをつかむことができずに押し込まれて失点を許してしまいました。そこから一瞬逆転できたのは良かったんですけど、最後のところでもう一度やられてしまうのはいまのチームの弱さかな、と思います。
――前回の神奈川大戦も先制を許してしまいましたが
特に最近の試合は失点が多くなってしまっているので、もちろん攻撃のところでも改善するところは多いんですけど、守備のところをもう一回見直してつぎの試合は失点ゼロでいきたいと思います。
――自身の得点シーンを振り返って
自分が欲しかったところにちょうどパスをしてくれて、自分のファーストタッチもうまくいったので、いい流れで決められたと思います。
――次回の試合に向けて
筑波も前回試合をしたときにPKで失点を許してしまっているので失点ら課題だと思います。きちんとゼロに抑えてつぎは絶対勝ち点3をとりたいと思います。
GK木付優衣(スポ3=ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)
――率直な感想をお願いします
勝ち切りたかったっていうのが大きいです。
――GKから見たいまのチームの守備については
ディフェンスラインというよりかは、一個前の中盤のところから後追いになっていたので、ファーストのいける距離でコンパクトにできたらよかったんじゃないかなというのが印象深いです。
――勝ちから少し遠ざかってしまっていますが、チームの雰囲気は
勝ちに飢えてる感じはあるんですけど、なんとか自分たちで修正してやっていこうっていう姿勢はあるので、そこが噛み合っていけばうまくいくんじゃないかなとは思います。
――修正しようとしている部分についてですが、具体的には
きょねんとチームが変わっていないので、相手も対応してきているんじゃないかなと。そんな中で私たちが取り組んでいるのは中盤が1人下がってきて、SBがあがるというのを意識しています。
――昨季と編成があまり変わっていないチームならではの難しさがあるということでしょうか
そうですね。相手もイメージができてしまうと思うので。研究されているというよりかは、慣れられてしまっているという感じだと思います。
――次戦に向けての意気込みをお願いします
最近失点数が増えてきてしまっているので、無失点で勝ち切って、勝ち点3をしっかりと取りたいと思います。
DF中田有紀(スポ2=兵庫・日ノ本学園)
――率直な感想をお願いします
勝ち切りたかったので、悔しいの一言です。
――1点目について振り返っていただけますか
相手がそこしか出さないなというのがわかったので、インターセプトをすることができて、なかみさん(MF中村みづき副将、スポ4=浦和レッズレディース)も朱里さん(FW河野、スポ3=静岡・藤枝順心)も関わっていて。あとはなかみさん(中村)に任せました。
――先ほど中村選手もばっちりのところに来たと言っていましたが
狙い通りにいきましたね。うまく崩せて良かったと思います。
――前半、かなり攻められる時間帯が続いていました。その原因は
球際の厳しさだったり、2列目からの飛び出しや、ワンツーにマークが付いていけていない部分があって。数的不利な状況で、苦しい時間帯に失点してしまったのは、改善しないといけないなと感じました。
――失点してしまったときのチームの雰囲気は
点を決められてしまうと、いれるしかなくなるので。無失点で勝つということがこれからも求められることだなと思います。
――ハーフタイムで話し合ったことはありますか
点を取るしかないので、前に人数をかけて点を取りにいこう意識はみんなあったかなと思います。
――きょうのご自身のプレーについては
あれ以上点は取られたくなかったので。球際に厳しくいって、点に絡むことができたのは良かったかなと思います。
――次戦に向けての意気込みをお願いします
無失点に抑えれば負けることはないですし、あとは自分たちのサッカーをして、勝ち点3を取りたい、それだけです。