等々力にこだまする『紺碧の空』、伝統の一戦で3年ぶりの白星

ア式蹴球女子

 両校の誇りを懸けた伝統の一戦が、ことしも等々力陸上競技場(等々力)で開催された。過去2試合を引き分けいう悔しい結果で終えているだけに、今大会に臨む選手たちの意気込みは並大抵のものではなかった。「絶対に負けられない」(MF熊谷汐華、スポ2=東京・十文字)。全員が『勝利』への強い気持ちを持って、ワセダは序盤から相手ゴールに果敢に攻め込む。前半に2得点を挙げ波に乗ると、後半も息の合った攻撃で相手を翻弄(ほんろう)する。終盤に1点を返されたものの、相手のオウンゴールもあり3-1で試合は終了。関東リーグで首位を独走しているワセダが力の差を見せつけ、2年間の屈辱を晴らした。

FW河野朱里(スポ2=静岡・藤枝順心)が幸先よく先制点を挙げた

 試合開始直後からワセダがゲームを支配する。1分、MF中村みづき(スポ3=浦和レッズレディース)が右サイドから駆け上がり、この日最初のシュートを放った。惜しくもゴールとはならなかったが、このシュートを皮切りに攻撃陣がケイオーを攻め立てる。10分、中村のFKのこぼれ球を「狙っていた」と語った河野が押し込み、幸先よく先制に成功。その後も息の合ったワン・ツーや強烈なシュートでチャンスを演出すると、23分、MF平國瑞希(スポ3=宮城・常盤木学園)のスルーパスに反応した中村が相手ディフェンスからうまく抜け出し追加点を奪う。33分にはケイオーにGK山田紅葉主将(スポ4=東京・十文字)が弾いたこぼれ球を押し込まれそうになるも、DF中田有紀(スポ1=兵庫・日ノ本学園)がカットし事なきを得る。持ち前の攻撃力と堅い守備が光り2-0で試合を折り返した。

 後半の立ち上がりはシュートの打ち合いに。ワセダは河野を中心に相手ゴールを積極的に攻めるも決め切れない。前半より勢いづいたケイオーも攻撃を仕掛けてくるが得点には至らず。拮抗(きっこう)した展開が続いた。そんな状況を打開しようと動いたのはワセダ。51分と57分に3人の選手を交代する。これが功を奏し、徐々にリズムを取り戻したワセダは、前半同様の巧みなパス回しを見せる。65分には途中出場のDF杉森愛希(スポ4=東京・十文字)のクロスが相手DFのオウンゴールを誘い、思わぬかたちで3点目を挙げた。そのまま無失点で試合を終えるかと思われた矢先の70分、ポストに直撃したシュートを処理しきれずに失点。「しっかり反応して弾くことができなかった」と山田が振り返ったように、相手に押された場面での対処の仕方が課題として残った。そのまま時間は進み、鳴り響いた試合終了のホイッスル。求め続けた『勝利』の二文字を手にした瞬間、等々力の地が歓声に沸いた。

1アシスト、1ゴールの活躍を見せMVPを受賞した中村

 「本当に勝てて良かったです。肩の荷が下りたというか、ほっとした気持ちです」(山田主将)。3年ぶりの早慶戦白星に喜びの声をあげた選手たち。しかし一方で、「内容的にはまだまだ課題はありました」(MF中井仁美、スポ3=兵庫・日ノ本学園)や「ディフェンスラインまでボールが来たときにボールに対してアプローチできなかった」(DF奥川千沙、スポ3=静岡・藤枝順心)と語るように、点を許したことへの悔しさや各々の課題も挙がった。普段とは異なる雰囲気の中でも、貪欲に点を欲し勝ちに行く姿勢。そして、現状に決して満足することなくどこまでも高みを目指す姿勢。これこそがワセダの強みであり、女王としての在り方だ。「早めに関東女子リーグ戦の優勝を決めたい」と語った河野の言葉からも分かるように、選手たちはもう次の試合を見据えている。勝者の誇りと課題を胸にさらなる飛躍を誓ったワセダは、これからの戦いでもきっと我々を楽しませてくれるに違いない。

(記事 山下夢未、写真 進藤翔太、高橋弘樹)

3年ぶりの勝利をつかみ取った!

第15回早慶女子サッカー定期戦
早大 2-0
1-1
慶大
【得点者】(早)10河野、23中村、65OG(慶)70下山田
早大メンバー
ポジション 背番号 名前 学部学年 前所属
GK ◎1 山田紅葉 スポ4 東京・十文字
DF 渡部那月 社2 兵庫・日ノ本学園
DF 奥川千沙 スポ3 静岡・藤枝順心
DF 三浦紗津紀 スポ2 浦和レッズレディースユース
DF →69分 福井菜月 スポ4 宮城・常盤木学園
DF 32 中田有紀 スポ1 兵庫・日ノ本学園
DF →51分 杉森愛希 スポ4 東京・十文字
MF 中井仁美 スポ3 兵庫・日ノ本学園
FW 平國瑞希 スポ3 宮城・常盤木学園
MF →51分 熊谷遥楓 スポ3 北海道大谷室蘭
MF 10 中村みづき スポ3 浦和レッズレディース
MF 22 熊谷汐華 スポ2 東京・十文字
MF 26 大井美波 社2 大阪・大商学園
MF →57分 柳澤紗希 スポ2 浦和レッズレディースユース
FW 河野朱里 スポ2 静岡・藤枝順心
◎はゲームキャプテン
監督:福島廣樹(昭45教卒)
コメント(一部抜粋)

GK山田紅葉主将(スポ4=東京・十文字)

――3年ぶりの勝利おめでとうございます。いまのお気持ちはいかがでしょうか

本当に勝てて良かったです。2年ぶりに勝てたという喜びもあるのですが、肩の荷が下りたというか、いまはそんな気持ちです。

――GKとしてはどんなことを意識してこの定期戦に臨みましたか

福島廣樹(昭45教卒)監督の指示にもあったのですが、背後のケアというのを意識してプレスするように言われていたので、意識しながらやっていました。

――開始10分で河野選手が先制点を挙げていい立ち上がりになりました

チームの中で先制点を取るというのが、自分たちのきまりというか、そのようなかたちにしようと話し合っていました。なので、早い段階で彼女が取ってくれていい流れができたきっかけになったと思います。

――後半の失点シーンを振り返っていかがでしょうか

あれは言ったら運みたいなところもあるのですが、ポストに当たっている時点でインコースではあったので、しっかり反応して弾くことができなかった自分のスキルの足りなさなのかなと思います。跳ね返って当たってしまったというのはしょうがないかなとは思うのですが、その前の段階で対処できなかったのが課題です。自分のセービングスキルの向上と、相手に押されてもしっかりクリアすることができなかった部分はチームとして改善していきたいし、個人としても改善していかなければいけないですね。

――無失点勝利とはならずも、早慶戦勝利ということしの目標の1つが達成されましたね

自分たちの今年度の目標である「日本一」の中に、早慶戦勝利も含んで掲げていました。先ほども言ったように、責任を果たすことができたのは自分にとっても大きな成長です。チームとしても糧になっていくことだなと思いました。

――今週末から再び関東リーグが続いていきます

後期もいいかたちで入れているのですが最後の一戦まで手を抜くことなく勝ち続けるようにやっていきたいです。関東大学女子リーグ戦、皇后杯予選、全日本大学女子選手権とまだまだ残っていますので、それに向けてしっかりチームで合わせていけるように頑張ります。

DF杉森愛希(スポ4=東京・十文字)

――等々力で経験する初の早慶戦、雰囲気はいかがでしたでしょうか

4年間、運営などに携わってきたんですけど、実際にピッチに立ってみて応援とか周りの雰囲気もあって少し緊張しました。でも楽しむという気持ちを持ってやりました。同じ学年の山田紅葉(スポ4=東京・十文字)もいたので一緒に頑張って勝てたらいいと話していました。

――途中出場する際に福島監督からどんな指示がありましたか

サイド攻撃に積極的に関わって何かしら得点につながるようなプレーを、ということでした。

――実際に得点に絡む働きでした

監督や周りのみんなから求められているプレーを体現できたので結果としても納得できています。

――残りのリーグ戦、どんな戦い方をしたいですか

チームとしては関東リーグで全勝優勝。8月末から関カレが始まりますし、目標はインカレで優勝すること、最後は日本一になることなので。きょうも課題が残ったのでこれから改善して日本一につなげていきます。

DF奥川千沙(スポ3=静岡・藤枝順心)

――早慶戦はいかがでしたか

前半の良い時間帯に点を取れたので優位に試合を進められたと思うのですが、やはり後半の悪くなったときに立ち直せなかったなと思っています。

――後半に立ち直せなかったことについてはディフェンス陣の課題ですか

両方あります。ディフェンス陣が立ち回ることができなかったりひとつひとつのプレーで慌ててしまった部分もあったので、話し合ってトレーニングを積んで改善していこうと思います。

――前半に大きなピンチがあったと思いますが

そうですね。ボールを失った場面も良くなかったですし、そこからディフェンスラインまでボールが来たときにボールに対してアプローチできなかったのが一番ダメだったなと思いますね。これからはボールへの執着心をもっと強く持とうと感じています。

――残りのリーグ戦に向けて

ディフェンス陣は『攻撃につなげる第一歩』だと考えているので、この点そこをしっかり押さえていくことと、自分自身はしっかりと声を出して皆を引っ張っていこうと思ってやっていこうと思います。

MF中井仁美(スポ3=兵庫・日ノ本学園)

――初の早慶戦の舞台はいかがでしたか

観客がすごくて外から見てるよりすごい感じでした。

――緊張などはありましたか

最初はしていましたが、試合に入ったらそんなにしなかったです。

――前半を振り返って

ケイオーはボールに対しての集中力がすごいので、細かくパスを回していると奪われるということを監督から言われていました。もうちょっと大きいプレーかできたら楽に試合を運べると思いました。

――後半はいかがですか

後半は立ち上がりから少しケイオーがボールを持つ時間が長かったので、そういうところでも落ち着いて自分たちのペースに持っていける力が必要かなと思います。

――今後のリーグ戦に向けた意気込みをお願いします

前期は1試合負けしてしまいましたが後期はまだ無敗なので、このまま全勝できるように頑張りたいです。

MF平國瑞希(スポ3=宮城・常盤木学園)

――まずは勝利おめでとうございます。試合を振り返っていかがですか

去年と一昨年引き分けてて、今年勝ちきることができたので良かったなと思います。

――試合を前半、後半と振り返っていかがですか

前半は特に右も左も裏が空いていたので、自分と汐華(熊谷汐華、スポ2=東京・十文字)も縦に行きやすかったんですけど、後半はガンガンプレッシャーをかけてきたので、それで結構後ろに下げてしまって、それで取られてしまったので、もっと動きのバリエーションを増やしていけたらなと思います。

――2得点目は平國選手のアシストからでしたが、得点を振り返っていかがですか

自分的にもああいったプレーは得意なので、相手を引きつけて、味方を生かせたので良かったかなと思います。

――今後も試合が続きますが、今後に向けて意気込みをお願いします

暑くなってくるので体力面とかが課題としてあるので、まず体力を上げていって、チームに90分間通して貢献できるように頑張っていきたいです。

MF中村みづき(スポ3=浦和レッズレディース)

――勝利並びにMVPおめでとございます。いまのお気持ちは

点を決められたのはよかったと思うんですけど、パスミスだったり、トラップミスだったり、そういったものを始めとして個人的なミスが多かったので、そういう意味では満足はできなかった試合なんですけど、チームとしてしっかり勝利を収められたのはよかったと思います。

――どのような気持ちで試合に臨まれましたか

ケイオーっていうのは負けてはいけない相手だと思っていて、リーグ戦でもしっかり勝つことができていたので、この定期戦っていう伝統のある場でしっかり勝利を収めなければいけないということは、チームとしてもしっかり分かっていました。それを表現できるように試合に臨みました。

――ゴールシーンを振り返っていかがですか

ゴールシーンは平國がドリブルしてて、そこのエリアだったら平國がスルーパス狙えるかなと思ったので、信じて走ってよかったと思います。

――今後に向けて意気込みをお願いします

週末の試合は、今期失点してしまった相手なので、そこでしっかり無失点に抑えて自分たちの成長っていうのを実感できたらいいと思いますし、インカレに向けて優勝できるようなチームづくりを目指していきたいと思います。

DF渡部那月(社2=兵庫・日ノ本学園)

――おめでとうございます。いまのお気持ちは

勝ててほんとによかったです。

――やはり早慶戦の空気は特別でしたか

はい。最初からもう応援がすごくて、周りの声があんまり伝わらないくらいで(笑)でも、みなさんに応援してもらっている環境の中でできてよかったです。

――積極的な攻撃参加については

毎試合、前線にボールが入ったらサイドバックが厚みを増やすために攻撃に参加しないといけないと自分は思っているんで。あと、ことしから意識しているのはサイドバックでも点がとれるようにっていうこともあるので。今回はあまりチャンスはなかったんですけど、また来年とれるようにがんばります。

――次節に向けての意気込みをお願いします

連戦でみんな疲れているとは思うんですけど、関係なく無失点で優勝を目指しているので次節も無失点で勝てるようにがんばりたいです。

DF三浦紗津紀(スポ2=浦和レッズレディースユース)

――3―1で勝利しましたが、結果についていかがですか

もうちょっと点が取れたと思います。自分たちらしいサッカーがあんまりできなかったのかなと、悔しいです。

――試合を振り返っていががですか

先日5―0で勝っていたので、物足りないです。失点してしまった原因も突き詰めていかないといけないと思います。

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――前半ゴール前で危ない場面がありましたが、振り返っていかがですか

ディフェンスラインを簡単に抜かれてしまったのですが、ヤマさん(GK山田紅葉主将(東京・十文字))がしっかり止めてくれてすごく信頼しています。もうちょっとディフェンスラインが抜かれないようにやっていきたいと思います。

――今週末にはリーグ戦が控えていますが、リーグ戦に向けて意気込みをお願いします

暑くなってきて厳しい部分もありますが、しっかり自分たちの力を出して無失点で頑張っていきたいと思います。

MF熊谷汐華(スポ2=東京・十文字)

――まずは勝利おめでとうございます。今日の試合を振り返って率直な感想をお聞かせください

前半は結構自分たちのペースでできたんですけど、後半になって相手に攻め込まれた時間にしっかり跳ね返すことができなくて、失点をしてしまったので、終わり方はあまり良くなかったのかなと思います。

――試合の内容を前半、後半と振り返っていかがですか

前半は結構自分の左サイドも積極的にできたし、両サイドから攻撃できたと思うんですけど、後半、攻撃がワンパターンになってしまったり、守備面でもミスが多かったりしたので、そこは修正していかなきゃいけないと思います。

――ご自身のプレーを振り返っていかがですか

もっとクロスとかシュートとか打ちたかったですけど。まあそんな良くはなかったです、個人的には。けど周りがすごい頑張ってくれてたのでありがたかったなと思います。

――試合が続き、厳しい日程になるかとは思うのですが、今後に向けて一言お願いします

そうですね、これからどんどん暑くもなってくると思うんですけど、調子を落とさないように、個人としても、チームとしてもやっていきたいと思います。

MF大井美波(社2=大阪・大商学園)

――初めての早慶戦の雰囲気はいかがでしたか

いつもより観客や応援が多くて緊張しましたが、力になりました。

――試合を振りかえっていかがですか

先週くらいに慶大と戦ったのですがそのときの反省を生かして戦えたかなと思います。

――1点目の得点に関わるようなプレーをされていたと思いますが、その点はいかがですか

朱里が早く反応してくれて、私は見てたという感じです。

――今週末のリーグ戦に向けて意気込みをお願いします

試合が続いていますが、そんなのは関係ないので、今週の試合もまだ負けがないので必ず点をとって勝ちたいと思います。

FW河野朱里(スポ2=静岡・藤枝順心)

――早慶戦3年ぶりの勝利となりましたが

きょねんは自分たちのサッカーができなくて引き分けというかたちになってしまったので、今回は力の差を見せつけることができたかなと思います。

――先制点はFKのこぼれ球を押し込むというかたちでした

みっちゃん(中村みづき、スポ3=浦和レッズレディースユース)が蹴ったボールが結構鋭かったので、キーパーも取りづらいだろうなと思いました。そこは狙っていたので、決められて良かったです。

――相手DFをどう攻略しようとお考えでしたか

関東リーグでケイオーと戦ったときとバックラインの人が結構変わっていて、そういう面では対応しなければいけなかったのですが、相手の5番が両足で蹴れる人でそこを潰せなかったというのは課題です。逆にあまり足の速い選手ではなかったので、その裏を突くことができたのは良かった点だと思います。

――次戦への意気込みをお願いします

早めに関東リーグ優勝を決めたいので、次の試合も必ず勝って、自分たちの成長につなげられるようにしたいです。

DF中田有紀(スポ1=兵庫・日ノ本学園)

――早慶戦で勝利されましたがいまのお気持ちをお願いします

去年も一昨年も引き分けで勝ち切れていなかったので勝てて嬉しかったです。

――きょうの試合を振り返っていかがでしたか

相手も勝ちに来ていましたが、自分たちも勝つために先制点を取りました。失点する場面もあったのですが、やり切れたと思います。

――積極的な攻撃参加が見られましたがご自身のプレーを振り返っていかがでしたか

積極的に攻撃参加するのが自分の持ち味だと思っています。でも、点に絡めなかったのでもっと質を上げていきたいと思います。

――次の試合に向けての意気込みをお願いします

まだ関東リーグの後期が続くので、最後まで勝ち切れるように勝利にこだわって頑張りたいと思います。

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