【連載】インカレ直前特集『CHALLENGER』 第8回 高倉悠輔主将×井山裕太郎主務(8/3)

軟式庭球

 自分たちにできることはなにかーー。プレーでワセダを牽引できないからこそ、常に考えてきたことだ。この一年、主将高倉悠輔(商4=東京・早実)、主務井山裕太郎(基理4=埼玉・松山)は『誠実』に最高のチームを作り上げた。その日本一の努力がこの夏、石川の地で証明される。

※この取材は7月29日に行われたものです。

『熱誠』

この一年ワセダの主将として模索してきた高倉

――『熱誠』というスローガンを掲げて始まった今チームですが、どのような思いを込めていますか

高倉 僕らの代になったのがきょねんの9月ごろなんですけど、その頃からスローガンを何にしようかという話は上がっていました。

井山 本当は9月に決めたかったんだけど、案がありすぎてなかなか決まらなくてね(笑)。

高倉 ね、一年間のことだから慎重にね!(笑)。たくさんの言葉を調べて行く中でこの『熱誠』って言葉に出会って、この言葉には「熱く、ひたむきに誠実に」のような意味やニュアンスが含まれるんですけど。当時はまだ熱くなりきれていない部分があったので、これからの自分たちに足りない部分である熱意を強く持って行こうという意味で『熱誠』を掲げました。

――4年生が決めるのですね

井山 そうですね、4年生で集まって決めました。確かに足りない部分としては熱量だったんですけど、あとは自分たちの代のカラーもこの言葉の中に含まれています。僕たちの代には団体戦に出られる人はいないんですけど、その試合に出られない中でも真面目で誠実な人は多いなって。たとえ試合に出られなくても、一生懸命練習する、そういった選手が多いので、チームで伸ばしていきたい「熱さ」と僕たちのカラーの「誠実」を合わせての『熱誠』です。

――『熱誠』で熱量を成長させたいとのことでしたが、最もチームが変わった大会は

高倉 大会ではないんですけど、チームが変わったのは僕は高地合宿だと思います。高地合宿は毎年OBさんも来られて、軟式庭球部の中ではかなり重きを置いている合宿です。内面的にも技術的にも質の高い合宿にできるか否かが今後のチームの在り方や戦績につながってくると思っていました。特に高地合宿は『熱誠』の熱さの部分を心がけて練習していました。

――その合宿の成果が出た大会はありますか

井山 でも一番チームの雰囲気が良かったのは、王座(全日本大学王座決定戦)じゃないかな。王座の決勝で、普段だったら勝てるんですけど1番の内本(隆文、スポ2=大阪・上宮)・星野(慎平、スポ3=奈良・高田商)がまさかの負けで、その後のシングルスが因(京将、スポ2=石川・能登)でファイナルにもつれて、チームとしては結構窮地に立たされていたんですよね。結果的には日体大の棄権で勝ったんですけど、その時の応援などは本当にチームが一体となっている感じがしました。チームのみんなが団結して応援やサポートをしていたあの雰囲気は自分たちが追い求めてきた理想像にかなり近かったので、これがインカレまで継続できれば良いのかなと思いました。

――その後何かチームに変化はありましたか

井山 王座の次の次の日から通常練習だったんですけど、そこでのミーティングで苦しい状況を乗り越えて勝利したことを通して、今までよりももっとみんなの懸ける思いが強くなったと感じました。

高倉 僕たちの代になってから毎月、月の初めにミーティングすることを習慣づけました。その月初めのミーティングで現状とチームの方針を確認した上で、今自分たちには何が足りないのかということを話し合えていたので、王座に限らずその後の東インカレ(東日本学生大学対抗競技大会)などでも試合に対する一人一人の姿勢というものは作れていたかなと思います。

井山 今までもミーティング自体はあったんですけど、月の初めに「今月はこういった月にしよう」のように毎月のミーティングに習慣づけをしたのは僕たちの代からですね。だいぶ、ミーティングの数が増えたよね(笑)

――月初めのミーティングはどういった意図があったのですか

井山 ミーティングを増やし始めたのが冬の時期だったんですけど、冬ってやっぱり団体戦などが少ないのであまりチームとしてのモチベーションが上がらないんです。けれども冬にいかに頑張れたかが夏の結果に繋がってくるので、気持ちが盛り上がらない時期でもしっかりとモチベーションを上げて取り組んでいきたいと思って、月ごとにチームの目的意識を持って練習に臨めるように始めました。

――ミーティングを増やしたことでチームに生まれた変化は

高倉 そうですね、始めたきっかけが「このままだとダメだ」という思いからでした。僕たちの練習形態は土日以外はどうしても自主練習が主になってしまうんですけど、自主練習が多いからこそ個人の意識の高さが大切だと思っています。ミーティングで毎月の振り返りや課題を考える機会を作ることで、練習にも一人一人が以前よりも課題意識を持って取り組むようになりました。

井山 あとは、後輩がチームに対して思っていることや課題をそのミーティングを通して聞けるので。僕らも経験してきたことなんですけど、話し合う機会などがないとあまり後輩から意見って言い出しにくいものなので、そうすると必然的に4年生だけでチームの方針を決めたりだとか練習メニューを決めることに繋がります。それだとやっぱり後輩は嫌だなと思う子も出てくると思うんですけど、そういった部分も含めてミーティングで意見を言ってもらえるようになったので、学年の垣根は良い意味で無くなったと思ってます。

高倉 歴代と比べても仲良いよね。組織としてどうかは分からないけど(笑)。

――先日の安藤優作(社3=岐阜・中京)・内田理久(社1=三重)対談でも安藤選手から「一番お世話になった先輩方」といったお話が出ました

井山 あいつ、そんなこと言ってたの!(笑)

高倉 素直にうれしいね(笑)。1年生が準備とかするんですけど、やっぱり下の代が実力のある子が多いので、(安藤が1年生の時代には)試合に出る分人手が足りなくなってしまっていたんです。やっぱりそこを補うのは僕らしかいなかったですし、僕らが活躍できる部分・支えられる部分はそういうところだと当時は思っていたので、そう言ってもらえてうれしいです。

井山 本当に高倉の言う通りで。僕たちの実力が足りない分、大会時にはそういったサポートをしっかりしてチームを支えていきたいという思いがありました。後輩がそんなふうに思ってくれてるとは知らなかったけど、うれしいな。

――テニス面だけでなくチームの総合力がやはりワセダの強さの一因でもありますか

井山 そうですね、やっぱり組織力は強いと思います。仲はいいとは言いましたけど、その一方でやることはやりますし。1年生の仕事はしっかりあって、先輩は指導するだとか。他の大学だと(仲が良いと)締まりが無いというかオンとオフの切り替えがなかったりすると思うんですけど、ワセダはそういった部分がすごくしっかりしてますし、組織としての力があることは大会面でも活きてくる強みだなと思います。

高倉 やっぱり一番他の大学とは違うのは、今までの実績を取るだけに見合った練習の質を保っているということです。5連覇すごいね、って言われるけどそれに見合うだけの練習をしてきているのがワセダなので、そこの部分の差は大きいと思います。

――主将・主務から見たレギュラー陣各ペアの印象を教えてください。まずは内本・星野組からお願いします

高倉 多分試合でみなさんが見たまんまのペアです(笑)。どのペアもですけど。特に内本・星野で言えばすごく元気なんですけど、一番ちゃらんぽらんしてるというか(笑)。自由闊達なので!

一同 (笑)

高倉 だからこそ、一番の資質はすごく高いと思うんですよね。やっぱり団体戦の一番はチームの先駆けとなって元気に雰囲気作ることが求められるので、そういった部分で二人はいつも頑張ってくれているなと思っています。まあ、悪い部分としては、元気だけど自由闊達ゆえにうまく歯車が合わない時もあるのでそこは僕らが支えていけたらいいなと。

井山 特に慎平はきょねんのインカレが病気で出られていないので、悔しい部分は見せないタイプの前衛なんですけど、やっぱり悔しい気持ちは抱いていたと思うし、だからこそ今年のインカレに懸ける思いっていうのは人一倍強いと思うので一番らしく暴れて欲しいな。あと、レギュラー陣の中では最年長の前衛なので、上松(俊貴、スポ1=岡山理大付)、内田(理久、社1=三重)って良い前衛がいますけど、僕はプレー面で一番慎平を信頼しているので頑張ってほしいです!

――船水颯人(スポ3=宮城・東北)・上松組はいかがですか

高倉 船水・上松は、もう、そこ組んじゃったか~っていう(笑)。他大からしても二人揃っちゃったか~~という思いはあると思うので、仲間としては本当に頼もしいですよね。

――船水選手のストイックさは普段の練習からなんですか

二人 そうですね!

高倉 一番うまいのに、誰よりも頑張っているんですよ!船水を見ていると、本当にアスリートだなと思います。上松も今しっかりやっていってくれてるんで、他に流されないで(笑)。本当にこれからも楽しみなペアですよね。

――上松選手は鳴り物入りで入学されましたけど、印象は

高倉 最初どんな子が入ってくるのかなと思っていて、テニスが上手くて自信家だと思っていたんです。でも入部してきてからの印象は、本当にしっかりしているなという印象ですね。テニスだけに打ち込んできたとは思えないほど、話せますし頭も良いですし。そういった意味では、自分の良いところを保ったまま船水と一緒に成長していってほしいですね。今のところ、船水がキャプテンやることになりそうなので、切磋琢磨(せっさたくま)してペアとしても支えていってあげてほしいです。

井山 僕も同じ思いです(笑)。同じ前衛なんですけど、1年生に見えないです。身長もありますし、テニスコート入ったらさらに大きく見えるので。堂々とプレーしてくれて、さすが高校の時から活躍している選手だなと思います。入部前は「テニスはすごいけど、ほかはそうでもないよ」という話を小耳に挟んでいたので(笑)。

高倉 ちょっと心配だったよね!?めちゃくちゃ生意気なやつ入ってきたらどうしようって(笑)

井山 いきなりタメ語で話されたらどうしようって(笑)。

一同 (笑)

井山 そしたら、全然そんなことないですね(笑)。もちろんふざけ合う時はありますけど、礼儀正しくて良い子です!

――安藤・内田組はいかがですか

井山 優作は、もしかしたら船水・上松以上に団体戦には必要かもしれない。本当に頼もしいです。東インカレも少し危ない試合だったんですけど、一番が負けて二番は勝ったけどギリギリでした。そんな中、安藤・内田が出てきて結構実力のある相手に5-0のもう完璧と言えるテニスで倒してくれて。そういったチームの息を吹き返してくれるような試合が、団体戦で優作はいつもしてくれるんですよ。個人戦では抜けてしまうこともあるんですけど、団体戦では必ずと言っていいほどあのプレーの質でいつも勝利をもぎ取ってきてくれるので安心感がすごくあります。もちろん、船水・上松組もワセダとして必要なんですけど、それ以上に安藤・内田というペアは絶対に必要だなって思います。

――安藤選手は1年生の時から団体戦に出ていますが、成長は感じますか

高倉 1年生の頃から3番を背負ってくれていて、先輩方も言っているんですけど正直優作がここまで強くなるとは思っていませんでした。入学当時は、インカレで3番を務めるような選手ではなかったと聞くんですけど、本当に大学入ってからは船水と良い刺激を与え合うような選手に実力的にも内面的にも成長してくれているので、本当に優作の存在は大きいです。優作が3番にいるからこそ、内本・星野もああいったプレーができていると思うので、本当にそれぞれが信頼し合っている良いチームになったと思います。

「成長できる機会を与えてもらった」(高倉)

二人でチームを支えてきた

――お二人もペアとしても組まれていますが、お互いの印象を教えてください

二人 何だろうな、恥ずかしい!(笑)

高倉 僕は井山と組み始めてから勝てるようになったんです。そういった意味でも井山に感謝していて、自分は最初は雁行陣でなく平行陣でプレーしていたり、思い通りのプレーができなかったので、井山と組んでやっと思ったようなプレーができているなと思っています。井山の思い切りの良いプレーに助けられることも多いですし、組みやすいです。今は井山以外と組むと、違和感がある(笑)。慣れちゃったんですよね、この手足の長さに(笑)。

一同 (笑)

高倉 真ん中を割られたボールとかも他の人は届かないのに井山だったら届くので、他の人と組むと「あ!そっか届かないのか!」って井山の長さを思い知らされます(笑)。

――井山選手から高倉選手の印象はいかがですか

井山 組みやすいです、本当に!今まで組んできたペアというのが自分からガツガツいったり気持ちの部分で強い人が多くて結構言ってくる人が多かったんですけど、高倉はおとなしいので(笑)。お互いに自分のやりたいプレーができます。本当に二人で一本取りに行くというか、大学入って初めてこんなに自分がやりたいプレーができていると思います。高校までのペアも強かったんですけど、うるさかったので(笑)。

高倉 僕らはでもその分、よく話し合いますよ。練習試合でも負けたら、二人で良くなかった点の反省を長くしますし。それが次に生きているのかはわからないですけど(笑)。女子部は結構ペアでの話し合いをしているんですけど、男子は話さない人ばかりなので、他のペアと比べても話していると思います。

――女子部の木村日奈主務(社4=群馬・高崎健康福祉大高崎)から「選手も主務も」というビジョンが井山選手と同じという話がありました

井山 そうですね、それができていたらうれしいです。選手と主務の両立というのは僕も思っていたことなので。主務としてマネジメントするだけでなくて、2年前の船水先輩(雄太、平28スポ卒=現NTT西日本)の代の住吉さん(住吉優征、平28スポ卒=長野・吉田)も主務としての一方で団体メンバーに出たりもしていたのでそういった主務の在り方が僕の理想像かなと思って取り組んできました。木村も理想像はやっぱりそうでないかなと思うので、仕事もスタンスが同じなのでやりやすいですね。自分で与えられているとは言えないんですけど、主務が選手としても頑張る姿がチームに良い影響を与えられていたらいいなと思います。

――井山選手が主務をやるにあたって、どのような気持ちでスタートを切りましたか

井山 やっぱり主務ってワセダの顔なんですよ。OBさんから見ても、一番最初に主務とか主将に目が行くと思うので、私生活も含め自分が一番しっかりしていないと後輩に言う資格はないですし、示しがつかないですよね。そういった普段の振る舞いは自分でも気をつけて、「井山さんが言うんなら仕方ないよね」と後輩に納得してもらえるような主務になろうと思っていましたし、実際に行動してきました。選手としても、僕が頑張ることで「主務としてでなくて、選手としても井山さんが頑張っているんだから」と思ってもらえればいいなと思いながらやっています。

――高倉選手の目に主務としての井山さんはどう映りますか

高倉 井山は私生活では結構抜けてると思うんですけど、なんというか常識がないと言うか(笑)

井山 高倉よりはあるよ!(笑)

高倉 そんなにきっちりやる方ではなかったので、どういった主務になるかなと思っていたんですけど、ここまでしっかりやってきてくれたと自分は思ってますし、OBさんからも井山はしっかりしているという話も聞くので、頼もしいです。テキトーにやってるやつだとやっぱり主務は務まらないので、井山は真面目で、マメなので、だからこそ担える仕事なのかなって。やっぱり理系ですしね(笑)。

――井山選手から見て高倉選手の主将像はいかがですか

井山 いや、大変ですよね、やっぱり。僕には絶対主将はできないなと思っていたので。実力があってもワセダの主将は大変だと思うんです。歴代の主将の苦悩している姿も見てきていますし、きょねんの安藤さん(圭祐、平29スポ卒=現東邦ガス)も主将やって白髪すごい増えたって言ってたので(笑)。でも歴代の主将は実力がある分、コートで背中を見せられたりして、後輩が付いてくると思うんです。そんな中、高倉は実力がないって言ったら失礼だけど、歴代の主将と比べるとやっぱり無い方だとは思うのでそう言った意味でもチームを率いるのはなかなか大変だなと思って最初は見てました。でも高倉の良いところはやっぱり頭がいいので話せますし、あと人の良さと高倉スマイルがチームにも後輩にも安心感を与えていてそこが歴代の主将にない高倉らしさだと思います。プレーがなくても後輩が「高倉さん!」って慕っているので、高倉にしかできない主将像を自分で見つけて、確立したなって。歴代と比べても遜色ないくらい、一番ちゃんとやっているんじゃないかな。

――やはりチームを盛り上げたりだとか、精神的な支えになる主将を目指しているのですか

高倉 そうですね。できるだけそういった役割を担えるように努力はしているんですけど、自分はこういったキャラなので無理に支柱になろうとしても限界はあると思うんです。どうやって元気があるやつらを良い方向に焚きつけるかというのが自分の役割だと思っています。

――主将に決まった時、率直にどう思いましたか

高倉 正直、不安よりも楽しみの方が大きかったんです!

井山 まじか!すげえな!?

高倉 いや、不安もあったよ、不安も大きかったけど。自分の今までの人生を振り返った時、こんな経験できることないな、このチャンスは二度と巡ってこないなと思ったんですよ。成長できる機会を与えてもらったと思いますし、主将になった以上はがむしゃらに頑張るしかないので四年間を最後の最後まで頑張れる責任というのを自分に課せられるなと思って。それを考えると楽しみの方が大きかったです。

――主将には自分から立候補したのですか

高倉 自分からは立候補してないんですけど、3年の夏くらいから多少意識はし始めていたので、そこから少し準備はしていました。

――なぜ意識し始めるようになったのでしょう

高倉 本当に1、2年の頃は主将なんて自分にはできないって思ってました。

井山 絶対ありえないです。まだ僕の方が可能性ありましたよ(笑)。

高倉 1年の頃の自分が主将やってるって知ったら腰抜かすと思います。

井山 チームでミーティングをしても、意見を言うのが僕とか小西(健人、商4=東京・早実)とかなんで高倉は自分から意見を言うタイプではなかったです。そう思うと高倉は主将になって大分変わりました。ミーティングでも自分から意見を言いますし。すごいね、変わったよね?

高倉 変わった。変わらされました。

――変わるきっかけはなんでしょうか

高倉 1、2年の頃は選手として活躍したいって思いがありました。3年になって、来年からは自分たちの代になるってことで最上級生がどんな動きをしてるのか、チームにどんな影響を与えているのかを注意して見るようになりました。チームにおける自分の役割や、自分がどういうふうにチームにいい影響を与えられるかっていうのを探すようになったんです。ただ見つかっていなくて。そういった中で上級生の方と話す機会があって、お前がキャプテンやるかもしれないんだからと言われて。そこからは本当にそういう目線で安藤主将を見ていましたし、自分がキャプテンになったらこういうふうにしたいなという理想があったので、ターニングポイントとしては3年生の代になってからですね。

――例年とは違った主将になったわけですが、どのようなチームにしたいと思いましたか

高倉 自分のチームにおける役割としては、この人たちのために勝ちたいと思えるような役割を担えたらなって思っていて。やはり自分が最前線に立って引っ張ることができないので、自分はプレーで示すのではなく、言葉で一人一人に声がけして、後ろから支えられるようなキャプテンになれたらなと思っていました。

――試合に出ない主将だからこそ見えてくるものがあると思います

高倉 やはり下の番手であったり、ベンチ側っていうのが今までのキャプテンはあまり見てこなかった部分だと思います。そこには気配りするようにしていて、校内戦であったり日頃の練習から全員のモチベーションをどう上げるかを考えています。例えば校内戦であれば、今まで上同士で当てたり下同士で当てたりしてたんですけど、それだけだと下の番手がなかなか上に挑戦する機会がもらえないです。僕自身も不満に感じていたので、自分が不満に思っていたことは解消しようかなと。

「チームとして日本一の取り組みをしてきた」(井山)

主務として選手をまとめた井山

――今は上の番手にいなくてもこの子は頑張ってるから期待してるという選手はいますか

高倉 たくさんいます!頑張ってるなって思うのは、井山の後輩の高橋(圭介、基理2=埼玉・松山)、前衛で言ったら田嶋(皓介、社2=長崎・西陵)とかはあまり目立ってないかもしれないですけど、常に1コート、僕いつも手前のコートでやってるんですけど、そこにレギュラーが何人か集まってて、常にその1コートに入ってきたりしていて。もっと頑張って欲しいです。けどそういう思いだけで試合に出すことはできないので、自分で結果を出して団体戦で活躍してもらいたいなと思います。

井山 高橋とか、あと奥村(健太郎、基理2=茨城・竜ヶ崎第一)だったり、次の主務になる佐々木(一輝、人3=秋田・本荘)だったりとかは結果出てないんですけど頑張ってますね。どうにかして結果を出させてあげたいなと思うんですけど、今のワセダはここ数年で一番層が厚いので前衛も後衛もなかなか上の番手の人と組めなくて、かわいそうだなと思いますけど、これから期待ですね。

――校内戦で決めて公式戦に出すって感じなんですか

高倉 団体戦のメンバーは校外戦の結果で決めています。仲間同士で勝っていても、一番大事なのは外で勝つことなので。ワセダに勝てる選手ではなく他大に勝てる選手でないと意味がないって監督さんにも言われています。

――高倉選手は一年間主将をやってきて良かったと思う時はありますか

高倉 視野が広がったことですかね。今までは自分しか見えてなかったです。もっと周りを見るようになりました。自分に足りないものがたくさんあるなということは痛感したんですけど、そういうところをどう同期で補っていくのかを考えるのが一番大切だと思います。自分の非力さもわかりましたし、自分のいいところもわかったので、自分を知るっていう意味ではやっててよかったなと思います。あと後輩たちが僕のところに「キャプテン、キャプテン」って近寄ってきてくれるのが嬉しい瞬間です。

――井山さんは主務をやられていますが主務をやっててよかったなと思う点はありますか

井山 大変なことも多いんですけど、主務をやってるとマネジメントな部分で社会人になる前から色々経験できるので、社会人になる前の練習ができるのでいいです。あとは普段僕はあんまり後輩に注意できないタイプだったんですけど、主務になってから後輩をしっかり指導するというか教育的なことをすることができるようになったかなと思います。喋ることとかも前は結構苦手だったので、以前と比べると少し喋れるようになりました。

――昨年の主務である下田さん(純平、平29商卒=東京・早実)が主将はコート内の主将で、主務はコート外での主将っていう言葉があると聞きました

井山 コート内のことは高倉にやってもらって、コートの外では僕がやるようにしてますね。なのでワセダの目標としてインカレ団体優勝と、一流の社会人になるっていう目標があるんですけど、一流の社会人になるための部員の普段の生活を正していくのは僕だと思うので、そういったところではコート外の主将なのかなと思います。

――男子部は人数も多いですし、まとめるの大変そうだなと思うのですが

井山 大変です。

高倉 めちゃめちゃ大変です。みんな自由すぎるんですよね。

――結構前衛と後衛で性格違うって言いますよね

井山 後衛の方が真面目な奴が多いですね。

高倉 井山は前衛だけど後衛っぽいです。だいたい問題起こすのは下なんですよ。

井山 2年生が特に。

――問題が起きたら結構怒るタイプですか

井山 結構いいますけど、全部言ってもしょうがないんで。言うべきところでいいます。きょねんに比べるとだいぶ良くなったと思いますけどね。きょねんの先輩方はあまり注意しない方だったので、怒るのは僕で、高倉は怒るというよりは前でなんか言う感じです。

高倉 僕の考えとしては、僕が上からガミガミ言ってもあんまり聞かないのではないかと思っていて、

井山 見ての通りいいやつなんで、あんまり怒れないんですよ。

高倉 怒れないんですよね、、、どうにかしたいと持ってるんですけど、主将になる時も絶対怒らなきゃいけない場面ってあると思うので変わらなきゃなって思ってたんです。けどなかなか変われなかったです。怒るよりも諭すような感じでやってます。

井山 注意するのは僕と小西ですね。あとは3年生の船水もよく言ってくれるので。

高倉 そのおかげでバランス取れてます。

――お互いで補い合ってるって感じですかね

高倉 ひとりじゃ絶対できないです。

井山 できないですね。

――インカレの質問に移りますが、今のチームの状態はいかがですか

高倉 ここまで団体戦全勝でこれてるので勢いに乗っています。しっかりここで油断せずに、この勢いのままインカレに臨めたら他大を寄せ付けることなく優勝できるかなと思っています。いい状態です 。

井山 僕もいい状態だと思いますね。当初目指していたのは、僕たちが上から後輩を力で押さえつけるのではなく、後輩たちの一人一人の良さを引き立てて、一人一人が自由に、楽しくできるようにすることでした。そういうチームの雰囲気はできてると思います。少し切り替えがうまくできてないかなって部分もありますが、それも最近少なくなってきてますし、このチームの状態のままインカレまで持っていければいいのではないかなと思ってます。

――やはり自分達の代でプレーで6連覇を果たすことができない事にもどかしさは感じますか

高倉 めっちゃありますよ。全部託しちゃうので、僕らは応援側で祈ることしかできないです。そこは本当にもどかしく思いますね。自分にもっと力があればなって。

井山  やはり入学する時は団体メンバーに入っている姿を想像していたので。毎年4年生が必ず1人はいます。よくOBさんたちからも「インカレは4年生が主役だから、4年生がいないチームはどこかで必ず弱さが出る」とよく言われます。実際に試合には出れてないので何も言い返せないんですけど、悔しさは感じていました。出れないからこそ僕らにできることを見つけてやってきたので、しっかり勝って、出てなくても4年生としてしっかりやってきたんだということを証明したいなとは思います。

――レギュラーメンバーへの思いは

高倉 全員信頼できるメンバーなので自分たちが今までやってきたことを全て託せるような人たちなので、僕らは安心していられるメンバーです。

井山  思い切ってプレーしてくれたらいいです。負けたら出てるメンバーではなく僕ら4年生の責任だと思うので。レギュラーとして1年生も出ます。3番勝負には内田が出てるので、ワセダの重みとか気にせずにのびのびとやってくれれば嬉しいです。

――6連覇に関してのプレッシャーは

井山 重すぎるよね。

高倉  こういう挑戦できるのは僕らだけですし、6連覇に挑めるのも僕らの代だけです。今までの先輩たちに感謝して、やりたいです。ただ6連覇と言っても僕らの代での優勝っていうのは初めてなので、6という数字にとらわれすぎずに、自分達の代で優勝することだけを考えてやっていきたいです。

井山  高倉の言うとおりで、6連覇目指して頑張りますけど、それ以上にこのチームで勝ちたいという気持ちが強いので、6連覇ってあまり考えすぎずにこのチームでインカレに臨みたいです。

――個人戦の目標は

高倉 最後くらいね、勝ちたいね。

井山 勝って、インタビューされたいです(笑)。

高倉  インカレ個人でもしっかり最後まで残って、レギュラーたちと戦って、同士討ちで先輩の意地を見せたいです。まあ、でも僕らの組は1日目で躓くかもわからないんで、そんな上まで見つめないでまずは目の前の一戦一戦頑張ります。

井山 僕は高校の時にインターハイベスト32でした。優作に16入りを阻止されて。かねてから全国ベスト16以上には入りたいと思ってたので、そこを目指して頑張りたいです。あと僕の親がテニス見るのがすごい好きで、いつも大会会場に見に来てくれてました。僕のプレーを見せる最後の大会になると思うので親に感謝の気持ちを込めて勝てたらなと思います。

――インカレの意気込みをお願いします

井山  チームとして日本一の取り組みをしてきたと思いますし、今日本一のチームの状態だと思うのであとは結果で今までを証明したいです。

高倉 ここまで熱くなれる事なんて人生でないと思うので、人生で一番熱い夏にできるように6連覇目指して頑張りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 三佐川唯氏、栗林桜子)

主将と主務としても、ペアとしても息がぴったりです!

◆高倉悠輔主将(たかくら・ゆうすけ)(※写真左)

1995年(平7)8月5日生まれ。身長175センチ。東京・早実出身。商学部4年。後衛。爽やかな笑顔が印象的で、後輩から好かれる理由がわかりました。インタビュー中たくさんのメンバーの名前を挙げて喋っていて、高倉主将がチームの細部まで目を向けていることが伝わってきます!

◆井山裕太郎主務(いやま・ゆうたろう)(※写真右)

1995年(平7)5月31日生まれ。身長184センチ。埼玉・松山高出身。基幹理工学部4年。前衛。チームワセダを支える縁の下の力持ち。井山選手の言葉の節々に真の強さと知性が感じられました。手足が長いのも印象的!手足の長さを生かしたプレーは必見です。