インカレを締めくくる全日本学生シングルス選手権。ワセダをプレーで引っ張る２年生の後衛コンビが決勝で激突し、安藤優作（社２＝岐阜・中京）を下して船水颯人（スポ２＝宮城・東北）が頂点に立った。船水は大学対抗、ダブルス、シングルスを制して３冠を成し遂げた！
★エンジのエース、船水が快挙！
勝利して喜びをチームメイトに表す船水
大学対抗で５連覇というインカレ史上初の偉業を成し遂げた船水が、再びインカレの歴史に名を刻んだ。いまだかつて鹿島鉄平（平２３スポ卒＝現ヨネックス）しか前例のない大学対抗、ダブルス、シングルスの３冠を達成した！決して楽に勝ち上がってきた訳ではない。１回戦はシードで勝ち上がり、そこから決勝までの６試合のうち３試合がファイナルにもつれた。大学対抗からダブルスを経てシングルスまで、炎天下の中の試合で体力的にも消耗していたはずだが、国内大会では唯一獲得したことがないインカレのシングルスのタイトルには強い思い入れがあった。準々決勝では明大のルーキー、丸山海斗と激突。序盤から相手に先制され、１年生らしい勢いで前に詰めて積極的にスマッシュを打ち込まれる。やはり疲労の影響なのか、船水は普段の圧倒的なカバーリングよりも心なしかキレがない。勝負の行方はファイナルへ。ツイストなどで相手に揺さぶりをかけようと試みるも、相手の力強いボレーとスマッシュで２－６され、先にマッチポイントを握られる。しかしここで攻めの姿勢を貫くのが船水だ。バックラインぎりぎりに力強いシュートボールを打ち込む。その攻めの姿勢に圧倒されたか、相手にもネットやダブルフォルトなどのミスが出始め、逆転勝利を果たした。準決勝の塩田顯（日体大）を０で振り切り、迎えた決勝は安藤優との同士討ちだ。船水はそれまでの疲れを感じさせないようなテニスを展開し、揺さぶられてもコートを縦横無尽に駆ける。この１年間互いに切磋琢磨してきた安藤優との真剣勝負は船水に軍配が上がった。船水は見事３冠を果たし、同時に関東春季リーグ戦、東インカレ、そして今大会でのシングルス３連覇という記録も達成した。ワセダを背負うエンジのエースからこれからも目が離せない。
★安藤優が２位、成長の証
ワンツーフィニッシュで笑顔の安藤優（右）と船水
安藤優が思い切りの良さでシングルス２位の座を射止めた。昨年のインカレではダブルスで優勝、ことしは団体戦の大将ペアとして史上初の５連覇を支えた実力者。ダブルスは課題が残る結果となったが、最終日のシングルスで本領を発揮した。準々決勝は岡本光生（日体大）との一戦。テンポ良く攻めゲームカウントを２－１とすると、第４ゲームでは二本のリターンエースを決めて流れを手繰り寄せる。チャンスがあればネット際まで上がり鋭い打球を打ち込む戦略が奏功し、ゲームカウント４－１で準決勝へ進出した。準決勝ではまたも日体大の第一線級として早大を苦しめてきた今田瑞貴と激突。連戦の疲れから今田の足どりが重い中、安藤優は序盤からボレー、ライジングショット、クロスラリーからのストレートを自在に放つ。終始ゲームをコントロールし、ゲームカウント４－０で今田を退けた。決勝の相手は大学も学年も同じであり日々切磋琢磨（せっさたくま）する船水。試合前、「互いに真剣勝負をしよう」と話してインカレ最後の一戦に臨んだという。船水は持ち前のコートカバーリング能力がこの日も冴え、安藤優が決めにかかるボールもしぶとくつなぐ。体力的な疲れもあったという安藤優は厳しいラリーでも粘りネットプレーなどで応戦したが、「攻め急いでしまった」(安藤優）。決勝でさらにギアを上げてきた船水を攻略できず、ゲームカウント０－４で敗れた。それでも、安藤優は「インカレで決勝まで行けると思わなかった。思い切ってプレーできたことが良かった」と悔しさの中にも笑顔を見せた。来季はシングルス決勝戦のフィールドに立った船水と安藤優のダブルエースが早大を引っ張ることになる。「来年は６連覇して、またその次の年につなげたい」（安藤優）と意欲も十分。飛躍の３年目に向けて、インカレを良いかたちで締めくくった。
（記事、写真 吉澤奈生）
コメント
安藤優作（社２＝岐阜・中京）
――シングルス２位という結果ですがいかがですか
シングルスは関東学生春季リーグ戦（リーグ戦）で３位、東日本学生大学対抗競技大会（東日本インカレ）でも３位でけっこう上には行けていましたが、インカレで決勝まで行けるとは思っていなかったのでびっくりしています。
――この結果は嬉しいですか
そうですね、満足しています。船水颯人（スポ２＝宮城・東北）と戦えたことも嬉しかったです。
――体力面はいかがでしたか
昨日よりも暑くて、個人戦は特にきつくなることが多かったのでまた鍛え直したいなと思っています。
――準々決勝、準決勝は日体大の主力とぶつかりましたね
相手もしんどい試合をしてきて疲れていたのもあります。僕も体力的にラリーでつなげるよりあのように点を取った方が良くて、ミスしてもしょうがないと割り切って思い切りやりました。それが上手くはまったので良かったです。
――決勝の前に船水さんと話したことはありましたか
勝ったことがなくて１ゲーム取るのが今までも限界だったので、「無理や〜っ」て言ったら、颯人は「そういうこと言って真剣にやって来るやつじゃん」と言っていましたね。お互いに真剣勝負しようということも話していました。
――実際に対戦してみていかがでしたか
今までの人と全然違くて粘りがあって、僕の方が攻め急いでしまったかなと思います。
――シングルスでいうと我慢が課題になってきますか
そうですね。我慢というよりは体力的なところだと思います。
――インカレの総括と今後への意気込みを最後にお願いします
個人戦、特にダブルスでは課題が残る試合になってしまいました。ですが、メインは団体戦で史上初の５連覇というものも達成できたので、来年は６連覇して、またさらにその来年につなげて行きたいと思います。
船水颯人（スポ２＝宮城・東北）
――優勝おめでとうございました！３冠はやはり意識していましたか
今まで男子で３冠を成し遂げたのは７０年の歴史の中でワセダの先輩の鹿島さん（鉄平、平２３スポ卒＝現ヨネックス）しかいないとのことでした。今回は運良く団体も勝ってダブルスも勝ってという３冠に挑戦できるチャンスがあったので、シングルスは一試合目からキツい試合ばかりで体力的にも辛い部分がありましたが、気持ちで折れないようにと決めて臨みました。
――達成してみて率直な感想は
もともとシングルスは自分が得意としていた種目だったので、このインカレで勝ちたいという気持ちは大きかったです。昨年はあまりうまくいかなかったのですが、ことしは団体戦から良い調子で来ていたのでもしかしたらいけるかなという自信が自分の中でありました。ことしは団体戦、ダブルスで勝ってシングルスでは無難に行ってしまうことがあったので、そこはこれからの課題となるかと思います。
――リーグ戦、東インカレ、インカレと３連覇です
リーグ戦と東インカレは状態も良かった時で、ちょうどシングルスにも力を入れている時でした。東インカレ終わってから団体戦に照準を合わせてダブルスに重きを置いていたので、今回シングルスは不安も少しありましたが、今まで積み重ねてきたものが自信となって上手くいったかなと思います。
――疲労を感じさせない試合が多かったですが、ご自身では疲れはかなりありますか
そうですね、１番ダブルスがキツかったですね。その疲労がきょうに響いている部分もあって、１発目からシングルスでも強い選手と当たって、もちろん勝ちたいという気持ちはあったのですがどうしても体がついていかないところもありました。ですがそんな苦しい中でも勝ちきれたら本当の実力だと思っていたので、結果を出せて良かったです。
――大学対抗やダブルスでもぶつかった相手との対戦も見られました
強い相手は大体いつも一部の人に限られてくると思います。日体大の今田さんや明大の丸山だったりですね。合宿とかでも何度かやらせてもらうことがあって、特徴とかは分かっていたのですが、本番になると僕自身も３冠が懸かっているということもあり無難に行ってしまったことがあって。いつもの状態ならもっと簡単に優勝できたのかもしれませんが、タイトルが懸かっていると自分が力んでいるなと思う部分もありました。
――このタイトルはこれからの自信となるのではないでしょうか
はい、全日本シングルスも昨年取って、日本のシングルスではインカレだけ取れていなかったので、高校の時のシングルスも全て取っていましたし、４年間で一度は取りたいタイトルと思ってやってきました。さらにことしは運良く３冠だったので、これからの大きな自信になると思います。
ーー決勝は優作選手との同士討ちになりました
タイトルも懸かっていて、ラリーも激しくなっていたので、結果は４－０だったのですが内容としてはすごく良い試合だったかなと思います。
――これから２人でワセダの後衛の２本柱になっていくと思います
昨年同じ１年生の優作がインカレのダブルスで優勝して、団体戦の優勝も決めてということだったので、ことし１年はそれを妬いていたという訳ではありませんが良いなと思う部分がありました。ことし１年は安藤安藤と船水星野でワセダの２本柱として２ペアで切磋琢磨してきた結果として今回のインカレがあると思います。優作とは昨年からずっと同じチームで戦ってきて、お互い良いところは吸収し合ってやっています。学部は違うので練習場所なども一緒ではないことが多いのですが、一緒にやる時にはライバルが近くにいるので僕自身もさらに高いところを目指さないといけないなと思わされますね。
――新チームへの意気込み
チームでは今の３年生が主体となっていくのですが、試合に出る選手では２年生や下級生中心となっていくと思うので、今まで以上に責任を背負っていかなくてはと思います。今までは安藤さん（圭祐主将、スポ４＝岐阜・中京）がいて、どこかに逃げ道があった部分もあったと思います。何かあったら助けてくれるという最後の頼みのような思いがあったのですが、来年からはそうはいかないと思うので、自分にもっと厳しく結果にこだわらなくてはと思っています。