【連載】 インカレ直前特集 『覇者の誓い』 第2回  木村理沙×平久保安純 (7/30)

軟式庭球

 木村理沙(スポ3=徳島・脇町)・平久保安純(社3=和歌山信愛)組はワセダでは珍しいダブル後衛だ。力強いシュートボール、ネットプレーの対応力が持ち味の木村、多彩なショットを織り交ぜ相手を崩す平久保。プレースタイルの違う二人だからこそ、互いが互いを高め合える。そんな二人が語るインカレ団体1番への思いとは――。

※この取材は7月24日に行われたものです。

「1番でしっかり勝って2番に回したい」(平久保)

早大をプレーで引っ張る平久保

――今期の振り返りとして関東学生春季リーグ(関東リーグ)については振り返ってみていかがですか

平久保準決勝の東女体大戦の時に2番で登場し、負けました。そこから気持ちを切り替えて最後の試合に臨んだので、逆にそれが良くでて立大戦の勝利につながったと思います。とはいえ、負けたことが大きな課題になりました。どんなタイプの相手でも自分のペースでテニスを先にやらなければとすごく感じましたね。

――その東女体大戦では先に相手が仕掛けてきたという感じでしょうか

平久保そうですね。結構打ってくる相手だったので、それに返すだけに精一杯になってしまいました。自分から全く攻められなかったので、先にサーブレシーブでしっかり攻めていければ良かったかなと思いました。

――その最終戦の立大戦で平久保選手は勝ちましたが、1番と3番で惜しくも敗れてしまいました。その時のチームの雰囲気や様子を振り返ってみていかがですか

平久保試合に入る前に3本中1本入れば優勝と知っていました。それで結構チームが緩んでいたのかなと思います。結構みんな誰かは勝てるという考えが頭の中にあったからちょっと油断しちゃったのかな。

――木村選手は外から見ていてどのように感じましたか

木村理自分は1本勝ったら優勝って知りませんでした。だから応援で勝たせようと思っていましたし、チーム全員にそういった雰囲気で応援しようという気持ちがありましたね。

――リーグ後からチーム内で話し合ったことはありますか

木村理向かってくる相手に対して、自分たちから攻めていくのが大事という話はしました。

――関東リーグ優勝後の全日本大学王座決定戦(王座)、平久保選手はシングルスで出場されたと思いますがそれに関してはいかがですか

平久保インドアの試合だったので、外での試合に比べて打たれたボールがはねました。その分、返しやすくなるので基本的に余裕がありました。それがすごくやりやすかったし、関東リーグでやはり立大に負けた分リベンジしようと感じていました。みんなの気持ち的にも相手に向かっていこうぐらいの感じで行けたので、それが一人一人の勝ちにつながったのかなと思います。

――王座では6連覇がかかっていたと思うのですが、プレッシャーなどはいかがでしたか

平久保王座の前に、全体でミーティングをしたのですがその時に6連覇はあまり意識しすぎず、しっかりと自分のプレーを出し切る。人任せにするのではなく、自分で1点取りにいくという気持ちでやっていこうと話していました。その分、やることが決まっていたのでやりやすかったかなと思います。

――その後お二人で出場された東日本大学対抗競技大会(東インカレ)について、振り返ってみていかがですか

木村理今季4月から自分が怪我をしてしまっていて、そこで出遅れてしまいました。また平久保が日本代表の合宿でいない日が続く中、やはりペア間のぎこちなさが結構あって、それを払拭できないまま試合に入ってしまいました。そこから歯車が崩れたというか、悪い方に悪い方に行ってしまったなという感じがします。

平久保ダブル後衛は自分たちから攻めていかないとポイント取れない陣形です。けれど、団体に出るプレッシャーやペアで練習できていなかったこともあってプレーのキレが悪かったし、ボールを入れにいってしまいました。開き直れなかったことが負けたことの原因かなとすごく思いました。

――すべての試合にファイナルに持ち込みましたが、体力的にもきつかったですか

木村理体力面は大丈夫でした。むしろ精神的に良いイメージがわかなくて自分たちで焦っていました。

――試合中二人で話し合っている時も、具体的な解決策は出せなかったのですか

平久保私たちは基本的にどういう展開で点を取っていくのかは個人個人でわかっているので、試合中はあまり喋りません。点を取られている時は自分たちのミスが原因なので、個人個人で反省してます(笑)。

――東インカレで見つかった課題などはありますか

木村理団体戦では自分たちが最初に出て負けてしまったので、チームの雰囲気的にも波に乗せられるようなプレーをしなきゃいけないなと思いました。また、自分たちのテニスを出し切ることが大切だと改めて感じましたし、そのために普段の平常練も意識を高く持って取り組んでいきたいです。

平久保自分はシングルスでの出場のときに関東リーグや王座でも1番が負けた後の2番はすごくやりにくいなと思って、やはり1番はすごく大事なポジションだなと感じました。1番でしっかり勝って2番に回したい。勝ち切るためにどうしたらいいかが今後の課題です。東インカレの時はあまり前に行ってプレーできない事がすごく多かったので、相手にプレッシャーをかけるという意味でも前にいくことが大切だなと思いました。

「今の4年生の代で勝ちたい」(木村)

精神面でも強化された木村理

――お二人で組んで2年目だと思うのですが、何かお互いの印象など変化したことはありますか

木村理平久保はずっと日本代表だったので今も変わらず素晴らしいです(笑)。

――ダブル後衛を組み始めてから成長した点はありますか

木村理今もそうなんですけど、組み始めの時は自分のところにボールがたくさん来るんですよ。それだけでも当時はメンタルがぶれてしまいました。

――今はいかがですか

木村理メンタルがぶれないわけではないです(笑)。でも、組み始めの頃に比べたら、余裕を持って出来ていると思います。

――木村選手はかなりストロークが強くてかっこいいイメージがあるのですが

木村理ありがとうございます(笑)。

一同(笑)

――精神面が強化されたターニングポイントとは

木村理これでなくなったという具体的な試合はなくて、試合数をこなすうちに徐々に徐々にって感じですかね。

――平久保さんはダブル後衛を組み始めてから成長した点はありますか

平久保1年の時奈央さん(小林奈央、平28スポ卒=香川・尽誠学園)と組ませてもらった時は自分のところにボールが集まってきていました。たまに奈央さんのところにボールがいった時は、奈央さんが確実に点に変えてくれていたのですごく助けられました。そういった役割を自分がしなくてはいけないなという自覚が出てきました。そこが成長した点ですかね。

――東インカレではあまり噛み合っていなかったということですが、10日後のインカレに向けての調子はどうですか

平久保東インカレの時よりは大分ましだと思います。(笑)

木村理はい。(笑)東インカレの時はもう落ちるところまで落ちたっていう感じだったよね。

平久保本当にひどかった(笑)。

――すごくお二人仲良いように見えるにですが、選手としてではなく、普段ではお互いどんな印象ですか

木村理めっちゃバカにしてきます(笑)。

一同(笑)

平久保みんなそうじゃん(笑)。

木村理だそうです(笑)。

――面白キャラなんですか

木村理まあ、そうだと思ってます。自分で。

――どういった面白さでしょうか

木村理ツッコミかな?やっぱり、杉脇とかがいてこその自分だと思います。ボケ散らかされたのを突っ込むみたいな感じです。

平久保基本的にみんなボケで、木村が突っ込むっていう感じです。

木村理うちだけ?

平久保そうじゃない?(笑)

――平久保さんのコート外の印象はどうですか

木村理第三者からの印象と違って、実際は結構汚キャラ(笑)。なんか定着しちゃったよね?

――汚キャラの具体的なエビソードはありますか

平久保食べてる時、ポロポロこぼすとか(笑)。そうなったら、木村も汚キャラじゃん。部屋とか汚い。

木村理それはそうだね…。もう何も言えない(笑)。

――では、テニス面でお互い信頼や尊敬していることはありますか

木村理いや、ほんといつも助かってます。平久保は何でもできるんで。足も速くて、自分の分も取ってくれたりするので、本当にありがとうっていう感じです(笑)。

平久保自分は結構コースを突いていこうという感じなんですけど、木村は思い切って前衛の所にぶつけていったり、思いもよらぬタイミングで前に出たりします。だから勢いがあって、自分には出来ないプレーを木村は出来るなって思います。自分もやってみたいなというプレーをいつもやってくれます。お互いのプレースタイルが違うからこそ機能できるという部分が大きいですよね。

――話は変わりますが、オフの日に3年生で遊んだりはするのですか

平久保オフの日というより、練習後によくご飯に行きます。

――3年生すごく仲いいですよね

木村理気持ち悪いですよね(笑)。

一同(笑)

――仲の良さの秘訣って何ですか

平久保仲いいというか、みんなそれぞれすごい尊敬できるところがあります。みんないい子だよね?

木村理まとめるとそうなるね。

――尊敬するところはテニス面だけではないということですか

平久保しっかり自分の考えを持っていたりするので。

――確かに杉脇さん(麻侑子、スポ3=東京・文化学園大杉並)などはインタビューなどでもストイックさが垣間見えます

木村理あの人は、メリハリがきちんとしています。やるときはやるって感じです。

平久保背中で見せるタイプですね。よく泣いちゃうけどね。

――今年のチーム全体の雰囲気はどうですか

平久保チーム発足時は縦の関係であまりいい雰囲気ではなかったのですが、先輩がたがすごく心を開いてくれました。それで、後輩の私たちもやりやすくなりました。それが今のいい雰囲気につながっているのかなと思います。

――全日本大学対抗選手権(インカレ)に向けていい状態で向かっていますね

木村理いい方向に向かっていってると思います。大会では、部屋割りが団体メンバーの部屋とそれ以外の部屋ってなるのですが、里佳さんも4年生一人、上原も2年生一人なんですけど、それでも気まずい空気感がなくて楽しいです。そういったところにもチームの雰囲気の良さが出ていると思います。

――主将の永井さんのテニス面やそれ以外の印象はどうですか

木村理プレーのこととかを冷静に見てくれていて、アドバイスをしてくださいます。逆に、アドバイスを求められることもあります。先輩なんですけど、いい意味で気を使わなくて接することができます。

平久保テニスの時は自分の芯を強く持っている方で、やることを決めているっていうのがプレーにも表れていますよね。コート外ではふざけたりもするし、意外と面白い人です。前までは後輩と絡まないという感じだったんですけど、最近は結構そういった素を出してくれています(笑)。

――インカレでは、3年生が多く出場されますが話し合っていることはありますか

平久保やはり3年生が多いので負けたら3年生の責任も大きいと思います。勝たなくてはいけないというのもありますが、雰囲気を作っていくのも3年生が多い分、私たちが積極的にしていかなくてはいけないと感じています。

――雰囲気作りでの面で何か意識されていることはありますか

平久保コート外でもコミュニケーションをとったり、先輩と後輩をつなげたりするのも3年生ならではの役割だと思っています。プレーではしっかり切り替えてやるということを意識しています。

木村理4年生と接していく中で、今の4年生の代で勝ちたいという思いがあるので、できることをやっていこうという感じです。

「1番に出るという意味を噛みしめなければ」(平久保)

インカレで見せるダブル後衛に期待が懸かる

――ここからはインカレに関してお伺いします。団体戦のメンバーは決まっていますか

木村理 まだ、完璧には決まっていないんですけど、出ます(笑)!

一同(笑)

――それでは、お二人にとって団体戦は初の出場となりますね

木村理 そうですね、でももうやるしかないと思っています。勝ち負けももちろん大事なんですけど、それよりもチームの波をつくるということを意識してやっていきたいです。やっぱり東インカレで、他の2ペアに頼ってしまい申し訳なかったので次は自分たちがという思いが強いです。しっかり自分たちが貢献して優勝したいですね。

平久保 そうですね、去年は奈央さんがいるからという思いがあって、それはチームみんなも感じていたことだと思うしそういった雰囲気がありました。けど今年は奈央さんがいないので、やっぱり一人一人が勝ちにいかなければ勝てないと思います。一人一点の気持ちを持たなければ、今年は厳しい戦いかなと。

――やはりインカレ独特の雰囲気の中での緊張はありますか

木村理 まあ、あるにはありますが、コートを自分たちの世界にしてやろうと思ってます。

――インカレはやはり他の大会とは違う雰囲気がありますか

平久保 うん、違いますね。

木村理 ね、何かがいるって感じ。昨年、一昨年を経験していると何が起こるか分からないし、本当に最後まで油断はできないと感じますよね。

平久保 私は去年の試合を見ていて勢いって大切だなと感じました。昨年の東女体大は応援もすごかったですし、インカレに向けて本当に取り組んできたことが雰囲気からも感じられて、逆に相手を見て学びましたね。

――昨年の試合を振り返っていかがですか

木村理 本当にワセダが苦しい状況まで追い詰められたんですけど、ずっと信じていました。

平久保 うん、信じてたよね。昨年のあの一戦を見たからこそ、自分たちも信じてもらえる選手になりたいという思いはあります。

――インカレでは形式も変わって殲滅(せんめつ)戦となりますね

平久保 私、実は殲滅戦、経験したことあるんです。1年の東インカレで地味に出てた(笑)。殲滅戦の怖いところは勝っても安心できないところだと思っていて、みんなが3-0で潰しにいくくらいの隙のなさで行かなければダメだと思います。

――そういった形式の中で意識することはありますか

平久保 これは殲滅戦に限らないことで、里佳さんにもいつも言われることなんですけど、団体戦は何か一つやることを決めてそれをただやり抜くことを意識して試合をしようというのはいつも考えています。まだインカレで何をしようといった具体的な一つは考えていませんが、これからまた決めてそれをやり抜くことだけを考えて戦っていきたいです。

木村理 自分はまだ殲滅戦の形式をやったことがないのでどういった感じになるのかまだ分からないんですけど、やり切りたいし、自分の力を出しきりたいです。いい意味で後先を考えずに試合をしなければ、考えすぎるとどこかで自分が守りに入ってしまいそうなので、直感や自分の思ったままのことを信じて最後までやり通したいです。

――今回特集を行う4ペアの印象を教えてください

木村理 そうですね、まず永井・上原(上原由佳、社2=群馬・高崎健康福祉大高崎)組はなんていうかごちゃごちゃしない。シンプルな陣形を敷くんですけど、里佳さんのボールだったり上原のスマッシュだったりそれぞれの打球に威力があるので 見ているとこっちが「よっしゃ!」となれるテニスをします。ね、わかる?(笑)。

平久保 分かるよ、分かる(笑)。見ているこっちが勢いづくテニスってことね。上原はすごく勝負強いんですよ。練習のときは調子悪くても試合になるとすごく動きも良かったりするのでそういった面での安心感もあります。2年生なのに貫禄ありますよね(笑)。

――杉脇・佐々木(佐々木聖花、スポ3=東京・文大杉並)組はいかがですか

木村理 すぎささは安定感がすごい。

平久保 そう、ミスが少ないんだよね。

木村理 あと、作戦が多くない?

平久保 そうなんですよ、あの二人はまさに二人で一本という感じで。試合の合間のペアの話し合いも長いですし、本当に考えて一本を取るために綿密な作戦を二人で話し合っているイメージです。

木村理 それは本当にすごいよね、試合の合間に話し合いが長すぎて注意されることもあるんですよ(笑)。

――小山(小山舞、スポ1=和歌山信愛)・草野(草野絵美菜、教3=群馬・高崎健康福祉大高崎)組の印象もお願いします

木村理 そうですね、あの二人はすごく堅実なテニスをしてくる印象があります。小山が繋げてチャンスを作って絵美菜がスマッシュみたいな。絵美菜のスマッシュの威力が本当に強いんですよね。校内戦でもさっき打ち込まれました(笑)。

――個人戦では杉脇・上原組との同士討ちの決勝戦となりましたね

木村理 そうなんです、杉脇に負けました(笑)。

平久保 そのまま合宿の調子でいってくれれば良かったのに(笑)。実は事前合宿では勝ってたんですよ!去年は一試合一試合頑張ろうという感じで個人戦に集中してやっていました。でも今年は団体戦しか目に入らないというか、団体戦でどう勝つかということしか考えていないですね。なので個人戦はあんまり意識しすぎず、プレッシャーとかもなしにのびのびやろうかなと思っています。

木村理 そうですね、団体戦の方に重きをおいてそこで全力で臨みたいですね。

――平久保選手はシングルスでは連覇かかりますね

平久保 そうなんですよ、プレッシャーはありますよね(笑)。シングルスは最終日のこともあって体力的にもきついので最も体力付けなきゃなと思っているところです。でもあまり勝ち負けを意識して臨むのではなくてアジア選手権も控えているので、それの練習のような気持ちで内容にこだわってインカレのシングルスに挑みたいです。

――それでは最後にインカレの意気込みをお願いします

木村理 やっぱり、戦う前って色々な思いが出てきてしまうものだと思うんですけど、でも一度コートに立ったら目の前の相手を倒すことだけに集中して自分たちらしいプレーで優勝したいです!

平久保 私たちが1番に出るという意味をもう一度噛みしめて、やはり勝つことが最も目指すべきものなんですけど、たとえ負けても良い雰囲気で次に繋げられるよう思い切った姿勢を忘れずに臨みたいと思います!

――ありがとうございました!

(取材・編集 栗林桜子、三佐川唯)

◆木村理沙(きむら・りさ)

1995年(平7)8月1日生まれ。身長161センチ。徳島・脇町高出身。スポーツ科学部3年。チームの盛り上げ隊長だという木村選手。普段は天然キャラが多い3年生に対してキレのいいツッコミ役として楽しい雰囲気をつくりだしているそうです!木村さんの明るい性格がチームの良い環境にも貢献しているのかもしれませんね!

◆平久保安純(ひらくぼ・あすみ)

1995年(平7)8月8日生まれ。身長165センチ。和歌山信愛高出身。社会科学部3年。コートの中では冷静沈着に多彩なショットで相手を封じる平久保選手。いつものクールなプレーとは違って、インタビューからは1番に懸ける熱い思いが伝わってきました。インカレでは1番の木村・平久保組が作り出すチームの勢いに期待大です!