シングルスの頂点にワセダが君臨

軟式庭球

 クラブチームから実業団の選手まで、年齢の垣根を越え日本一の座を奪い合う全日本シングルス選手権。全国のトッププレーヤーとの死闘を制し、決勝は男女ともにワセダ対決となった。

 男子部からは船水雄太主将(スポ4=宮城・東北)を始めとする4人がベスト32へ進出し、大会2日目へ。4人ともにベスト8へ駒を進め、ワセダの層の厚さを見せつけた。ルーキー・星野慎平(スポ1=奈良・高田商)、関東学生リーグ戦でシングラーとして活躍した名取敬恩(スポ3=秋田・大館鳳鳴)は惜しくもここで敗退。「来年チャンスがあったら、上に行けるように頑張る」(名取)と見据えるのは次のステージだ。一方、船水雄が前王者・長江光一氏(平22スポ卒=現NTT西日本)、船水颯人(スポ1=宮城・東北)が村上雄人(NTT西日本)を下し、決勝はワセダ、そして兄弟対決に。いままでにないドラマチックな展開にギャラリーも詰め掛けた。皆が固唾(かたず)をのんで見守る中、両者がコートに登場。「兄弟関係なく向かっていった」(船水颯)。その言葉通り、風下からのツイストでボールをネット前に落とすプレーで、序盤からコートを支配し3-0で船水颯がリードする。しかし船水雄も兄の意地を発揮。第4ゲーム、鋭いショットが打ち交わされるラリー戦を制し、1ゲーム奪取。このまま巻き返しを図りたいところだったが、あと一勝で届く栄光を前に体が固くなる。「完全に勝ちを意識してしまった」(船水雄)。終始攻めの姿勢を崩さなかった船水颯に比べ、幅のある攻撃を仕掛けられない。最後はコースを狙うもレシーブはアウトラインの外へ。兄弟対決の軍配は弟に上がった。「颯人の頑張っている姿をずっと見てきているので弟が決勝に来れてよかったという気持ちもあった」(船水雄)。さまざまな感情を抱きつつ戦った決勝戦。次は挑戦者として。互いに鍛え合い、成長を続けていく。

卓越したカバーリング力を持つ船水颯

 同時刻に別コートで行われていた女子決勝戦も、小林奈央(スポ4=香川・尽誠学園)と平久保安純(社2=和歌山信愛)のワセダ同士討ち。昨年は1年間ペアを組み、お互いの手は知り尽くした相手だ。平久保がツイストレシーブで先に勝負を仕掛けるも小林がショートクロスを狙ったカウンターを披露。デュースが続き両者1歩も譲らない展開が続く。「先輩の意地として負けられない」(小林)。最終ゲーム、強豪相手に戦ってきた疲労が出たか、平久保がレシーブミスを見せる。一方の小林は、自身では「得意ではない」と言うバックハンドでも強烈なショットをコースに打ち込み最後は3ポイント連取。3年ぶりにシングルス女王の座を奪還した。惜しくも敗北を喫したが、社会人の選手のプレーに刺激される場面も見られた平久保。「自分も攻めていくプレーを取り入れていきたい」と次戦へのやる気は十分だ。

最後まで力強いストロークを打ち込んだ小林

 学生ながら全日本シングルスでもアベック優勝を収め、向かうところ敵なしのワセダ。「(結果に)満足せずに目標を持って取り組んでいきたい」(船水颯)と努力を続ける王者に他大が付け入る隙はない。全日本大学選手権で頂点に輝くその日まで――。選手は上だけを見つめ続ける。

(記事、写真 三佐川唯)

※掲載が遅くなり、申し訳ありません

結果

▼男子シングルス

▽優勝

船水颯人(スポ1=宮城・東北)



▽2位

船水雄太(スポ4=宮城・東北)

▼女子シングルス

▽優勝

小林奈央(スポ4=香川・尽誠学園)


▽2位

平久保安純(社2=和歌山信愛)

コメント

船水雄太主将(スポ4=宮城・東北)

――2位ということですが、いまの率直なお気持ちは

そうですね、いま代表でやっているトッププレーヤーの長江さんとかと準決勝で勝つことができて非常に嬉しい反面、このタイトルはシングラーとして絶対に欲しいものだったので少し勝ちを意識してしまいました。あんまりこういったチャンスは無いのでちょっと、残念な気持ちがあります。

――準決勝は、先ほどおっしゃっていたトッププレーヤーの長江さんでした。勝ち切れた要因とは

そうですね、非常に大きな意味のある試合でしたし、代表の合宿で何十試合もやっている相手なので、手の内を知り尽くした結果あまりゲームにならなかった感がありました。運がこちらに傾いたかなと。まあでも勝ちは勝ちなのでこれから頑張る前向きな材料になりました。

――決勝では弟である颯人選手との対戦になりました

そうなんです(笑)。非常に悔しいです、完全に勝ちを意識してしまって。そういった感じもありましたけど、実は長江さんのさっきの試合で足をつってしまって決勝の一本目でもまたふくらはぎをつってしまいました。ベストの状態でできなかったんですけど、まあそれも実力のうちなので体をもう一度作り直して、次の国際大会で、インドなんですけど、ちゃんと戦えるように。次、弟とやるときは向かっていく立場なのでやりやすいと思いますし、絶対に勝ちます。

――向かって来られたということですが、ご自身の気持ちの面ではどのように思っていましたか

なんか、優しさ?というか、よく分からないですけど、多分優しさのようなものが出てしまって(笑)。弟も頑張ってきているのをみているので、「決勝に来れてよかったな」とそういった気持ちになっちゃって(笑)。素直に弟が優勝してくれて嬉しいなと思っちゃってます。(そういった思いは)ダメだとは思うんですけど。これから戦わなきゃいけない立場だと思うので、考え方をもうちょっと変えて、試合のときはそういった気持ち抜きに頑張りたいです。

――勝ち切れなかった要因はどのように思われていますか

そうですね、ここまで来たら技術面というよりも気持ちの面が大きいと思います。試合で結果が見えてしまうとどうしても固くなったりしてしまうので、やることをやり切れなかったなと。あともう一試合勝てば優勝だという葛藤する自分に負けてしまいました。その面では弟の方がやることをやるというか、戦術的にやり切れていたので、そういったところですかね。見えなくなると戦術の幅も狭くなるので。

――颯人選手のツイストに苦しめられる場面が見られました。

そうですね、風も結構あったので颯人の使った時は(自分にとっては)風上で、颯人が風下の時ですね。使うところが非常にうまいところで使っていたので、僕はああいったプレイはできないので、それができればもうちょっと幅のあるプレーができることに気づかされましたし、短いボールへの対処も1球でも2球でもうまく繋げれば、あの球は打ってこなかったかもしれない。もう少しあの球への対処の仕方を追求してやる必要があるかと思いました。

――ご自身の課題は

ボールが短いことですね。コートカバーリングを重視してオープンスタンスで打っている分、ボールが飛ばないというのがあるので、オープンスタンスでコースをケアしつつもボールを相手のベースライン上に飛ばせれば、さっき言っていた弟のような短いツイストなども長短のメリハリが出てくるのではないかなと。今後深いボール、ベースライン際に打つボールを意識してやっていければと思います。

――次の大会への目標をお願いします

次は東日本インカレがあって、僕教育実習があって団体戦しか出ることができないんですけど、シングルス切り替えてこんどはワセダのとめにダブルスで戦えるようにまたあしたから調整して頑張りたいです。

名取敬恩(スポ3=秋田・大館鳳鳴)

――今大会を振り返っていかがですか

今回でこの大会3回目で、いままではすべて初日で負けてしまっていました。出場するたびに全国のカベは厚いなと感じていたんですけど
今回自分でもシングルのこと考え直して、ベスト8まで行くとは思っていなかったのですが自分なりにしっかり勝つためのことを考えながらやろうと思っていました。

――その考えの中で、詳しく意識した点というのは

いままでより、風の向きとツイストをどのように使うかを考えました。

――2日間の総括をお願いします

最後は相手の実力も強かったんですけど、自分の体力不足を試合中に感じてたので、そこは一番の土台となる部分でもありますし、体力負けしてしまったかなと思います。

――プラスの考えではあると思いますが、ベスト8という戦績に関してはいかがでしょうか

あと1本でベスト4取れたのに、ベスト8止まりということで、自分的にはチャンス逃したという後悔しかないです。でも、こんな自分でも今回8に入れたので、来年チャンスがあったらことし以上の戦績を取りたいです。

――試合を通してバックでコースをついて相手を抜くというのが見られました

シングルス、僕そんな練習してこなかったんですけど、バックは自分が打つのが好きなのでそれを軸にしてストレート打ったら入ったのでよかったなと。

――最後勝ち切れなかった要因とは

やはり、さっき言ったように体力不足ですかね。足が重くなったというのと、もっと細かいところまで集中して練習していかなければ本番でも打てないなという普段の甘さを感じました。

――逆に評価できる点は

崩れたらそのままということが以前は多かったんですけどちゃんと自分で作り直して、そのまま負けるということがなくて、そのまま負けるということがなかったので成長したなと思います。

――次の大会への目標をお願いします

次は東日本インカレがあって、きょねんの戦績は関係ないのでことしは一球一球自分のできることをやっていきたいです。

星野慎平(スポ1=奈良・高田商)

――ベスト8という結果についてはどのように思っていますか

正直そこまでいけると自分でも思ってなかったので、びっくりしています。

――試合前の意気込みとしては上を狙っていたのでしょうか

そうですね、気持ちとしてはそうだったんですけど、実際に考えたときにここまで来れるとはという感じです。

――ダブルスとシングルスとで心掛けていることは

ダブルスだと僕は前衛なんですけど、シングルスはストロークが重要になってくるんですけど、自分、そんなにストロークには自信はないので。シングルスだったら、チャンスがあったらすぐ前にでて、シングルスでもダブルスと同じ状況を作れるようにして攻めようと考えていました。

――どちらが好きとかはありますか

ダブルスです(笑)。

――準々決勝ではトッププレーヤーの長江選手との試合でした

1ゲーム目はセットを取れて、まあ、相手がトップ選手なので自分のミスもあったんですけど、その後はなかなか取りきれず、まさにやられたという感じでした。

――実際に戦ってみて自分でも取り入れたいと思った点などは

僕はあまりツイストとかで相手を崩すことしないんですけど。やはり強い選手、長江さんとかペアの船水はカットをよく使って相手を動かして、強打を打ち込むなど真っ向勝負というか力勝負はしてなかったなと。僕もそういったようにプレーできたらいいなと思います。

――収穫としては何かありますか

あまり自分では得意ではないシングルの大会でしかも全日本シングルでベスト8は自信になりました。

船水颯人(スポ1=宮城・東北)

――優勝おめでとうございます。いまの率直なお気持ちをお願いします

ずっと獲りたかったタイトルであって、今回も優勝を目標にしてやってきてはいるんですけど、まさかこんなに早く取れるとは思わなかったので驚きもあり、でも何より嬉しいです。

――ご自身で勝ち切れた要因とは何だと思っていますか

そうですね、今回は向かっていく、チャレンジャーの気持ちで挑んでいたので、受け身になることなく全試合を通して先手先手で行けました。そこがやっぱり勝利につながったかなと。

――全試合を通して3ゲームしか落としてませんね

いや、スコアは全然意識してなかったんですけど終わってみると0だったり1だったり。競る試合がそんなになかったので、競るカウントになったときにはどうしようかとずっと頭には入れていました。最後の試合も逆転される兆しはあったんですけど、一回一回考えながらやっていたので冷静に対応できて勝ち切れました。

――詳しくはどのように考えていましたか

受けることはないと思っていたので、向かって行くことを意識して、やっぱりいつもは勝ちたいと思っちゃうんですけど今回はそういった欲を捨てて自分のやることを決めて今大会に臨んでいたのでそのままというか。そう思っていたことをプレーで表現できたかなって思います。

――決勝戦はお兄さんである船水雄太選手と対戦でした

いや、まさかここで当たるとは思ってなかったです。いつも学校でも一緒に練習してますし、加えて本番で当たったのは初めてだったんです。ダブルスはあるんですけど、シングルスでは。向こうも練習とかでは全部が全部出し切っている訳ではないので、本番でどういったように来るのかなと楽しみな反面、兄弟対決で弟からしたらやり辛さはないんですけど、向こうからしたらあっただろうなと思ってます。

――では、結構向かっていくことを最終戦でも意識したということですか

そうですね、兄弟は関係なく向かっていくことを。全試合を通してですけど。

――ツイストでポイントを奪っていましたね

今回の大会を通して、勝因は多分ツイストでした。あんまり、プレッシャーはなかったんですけど、大学入ってからプレースタイルを変えて試合に出るまで少し空いたので練習してたんです。この前の関東リーグでツイストが効いてたので今回も積極的に使っていきました。

――以前はどのようなプレースタイルだったのでしょうか

結構守る感じで、高校生の大会では勝てたんですけど、全国のシングルスの大会では負けてたので、最高でもベスト16とか。それ以上に行くためにはどうしたらいいか考えた時にもっと自分でポイントを稼ぎに行かなければと思いました。相手のミス待ちのテニスだったので、今回は大会を通して自分から獲りにいけたと思います。

――最期に次の試合に向けての意気込みをお願いします

シングルスは勝てたんですけどソフトテニスはダブルスが主流なので、僕自身もシングルスに重きを置きつつも、ダブルスでこの前の試合で負けてるというのがあるので気持ちを切り替えて、満足せずに目標を持って取り組んでいきたいです。

小林奈央(スポ4=香川・尽誠学園)

――優勝おめでとうございます。いまの率直なお気持ちをおねがいします

まさか優勝できるとは思ってなかったのでやり切ることができてホッとしている気持ちが大きいです。

――今大会の目標や意気込みはどのように位置付けていましたか

とりあえず、2日目に残ろうと頑張っていました

――優勝などは意識していなかったのですか

そうですね、あんまり調子も良くなかったので1試合ずつ頑張っていこうと。

――2日間の試合を振り返っていかがですか

2日目の初戦と次の試合が、ファイナルの試合で、自分のテニスができなくて苦しい戦いが続いたんですけど、それ以降はすることができたのでよかったかなと思います。

――苦しい展開を勝ち切れた要因は

やっぱり、ゲームの流れから相手が次打ってくるコースを読んで後半はそれに対応することができたところが良かったかなと思います。

――今回は実業団のトッププレーヤーも集結しました

やっぱりみんな強いのでしっかり、自分から向かっていって自分のテニスをしようという気持ちが大きかったです。

――決勝の相手は手の内を知り尽くしている、平久保選手でした

校内でも何回も練習したりしてるので、打つコースなどもお互いにわかっているしやりにくさはあったんですけど、やっぱり先輩の意地として(笑)。負けられないなと思いました。

――試合ではデュースが続いている場面がありましたが、気持ちの面ではいかがでしたか

サーブゲームで自分がカットサーブなので、守備範囲が広くなってどこに返ってくるかも予想しづらい中だったので、サーブゲームは苦しかったです。でもレシーブゲームでしっかりやることができたのでよかったかなと思います。

――勝てた要因は

あまりバックハンドが得意ではないんですけど、途中でもあまりミスすることができたのでそこが良かったかなと思います。

――全国のトッププレーヤーが集まる大会でしたが、何か取り入れたいと思ったプレーなどは

フォアではツイストとか何でもできるんですけど、バックだとシュートになりがちなのでバックでも多彩なショットを打てるようにしたいです。

――次の大会への意気込みをお願いします

東インカレでもしっかり、力出し切って優勝目指して頑張りたいと思います。

平久保安純(社2=和歌山信愛)

――今大会の意気込みや目標は

ことしはシングルスを中心に頑張ると決めていたのでこの大会はきょねんのベスト8以上に頑張って入るというのが目標でした。なので、結果としては嬉しかったです。

――2位という順位についてはいかがですか

満足いく結果ではあるんですけど、やはり勝ちたかったですね。課題もたくさんあるので次に向けて頑張りたいです。

――2日間の試合内容に関してはいかがですか

基本的につなげて、相手がミスしてくれるという場面が多くて体力的にもすごくきつかったです。なので、もっと体力をつけていかなければなと思いました。

――やはり実業団の方がひしめく中での戦いはきついものがありましたか

はい、社会人の方はすごい攻めてくるというか、学生と比べて前に来たりネットプレーもすごいしてくる相手も多いのでやりにくかったです。でも自分も攻めていくプレーを取り入れていきたいなと感じました。

――決勝戦では小林選手との対戦でしたね

決勝なのに、緊張とか全然なくて(笑)。向かっていこうと思いました。勝ちにいくというよりも、楽しむっていうわけじゃないんですけど、思い切りやろう、向かっていこうと思ったので、それなりの結果だったので、また頑張ります。

――結構デュースが続くシーンが見られましたが、勝ち切れなかった要因とは

大事なところでファーストサーブ入らなかったり、レシーブミスがあったのでそこをしっかり入れるようにしたいです。

――以前、スライスやツイストで動かして取りにいくというのをおっしゃっていましたが、小林選手に対して通用しましたか

カットサーブを返した次のボールで攻められることがあったので、攻められるとやっぱり自分がツイストとかで攻めることができませんでした。先にもっと攻めなければなと感じました。

――今大会はトッププレーヤーが顔をそろえましたが、自分以外で印象に残ったプレーヤーやプレーは

やっぱりさっきも言ったんですけど、社会人の人は前衛の方とかもいるので、チャンスボールのときにしっかりネットプレーで決めるというのがすごく多く見られました。それを取り入れたいです。

――攻めてくるプレーヤーが多い中で、どのように対処して決勝まで登り詰めましたか

横風も結構吹いてたので、攻めてきたボールをしっかり切り返したり、何本もつなげて相手にミスさせるようにですかね。

――最後に次の大会への意気込みをお願いします

次は東インカレなんですけど、それもシングルス入ってくるので、インカレに向けてどんな相手がいるのかとかしっかり見て調整していきたいです。