【特集】早慶戦前対談 平久江卓監督×倉石平ヘッドコーチ

男子バスケットボール

 第80回早慶定期戦(早慶戦)が7月2日、東京・代々木第二体育館で開催される。3年ぶりの有観客開催となる、この大会に向けてチームの状況や見所を平久江卓監督(昭59卒)と倉石平ヘッドコーチ(昭54卒)に伺った。

※この取材は4月26日に行われたものです。

今年のチームについて

試合中、選手に声をかける倉石ヘッドコーチ

――自己紹介をお願いします

倉石 ヘッドコーチの倉石です。スポーツ科学部学術院の教授です。

平久江 監督をしています、平久江と言います。大学の職員ではなくて、会社で働いています。部のOBです。

――今年の早大バスケ部の方針は

倉石 ここ数年インカレには出られてベスト8くらいにはなったけれど、昨年は2回戦で負けてしまって。今年こそは上位を狙おうとしています。もう一つは、新人がかなり入ってきました。自分たちとしてはビッグマンもバランス良く取りたいのですが、今はそのような状況下ではなく、入学するのが厳しい部分もあります。そのため我々としては、心意気のいい、本人がやる気を持ってやれるプレイヤーを優先させた結果、どちらかというとサイズがあまりないプレイヤーが多くなりました。それを生かさないとゲームが成り立たないので、小さい選手を生かすよう変化をさせました。

――具体的な変化とは、走るバスケットでしょうか

倉石 走るだけならもっとすごい選手がいます。それだけではなくて、ディフェンスや、そういうプレイヤーだからこそのずる賢さなどです。人からずるいと言われても、我々としてはそれが正攻法かなと思うような、ゲーム巧者であるバスケットをやりたいと思います。

――チーム練習の雰囲気は

倉石 コロナ禍で、本来は全てやらなければいけなかったのですが、全くできていないのが現状です。来週はトーナメント(関東大学選手権)になるのですが、試合の前日までに10回くらいしか練習できないので、今はさわりだけです。ゲームをやりながら少し変化をさせて、秋につなげていこうと思っています。ただ、新人が多く入ったので、新人戦(関東大学新人戦)は楽しみにしているところはあります。

平久江 今年は全員がそろって練習できている回数が本当になくて。ちゃんと全員集まって、チームのバスケットを話したのが、1週間くらい前です。トーナメントが来週なので、あとわずかな中でスタートを切って、10回ちょっとくらいの練習で臨むので、みんな必死です。新人も入ってきてチームとしては新しくなったのですが、1年生はまだチームルールが分からないです。なので最低限のところだけ抑えていくという感じです。練習は必死にやっているのですが、終わってからの時間で覚えなければいけないので、まだ満足はできない状況ですが、やれる範囲で最大の力を出していければと思います。まだシーズンは長く、必ずその先の新人戦や早慶戦、リーグ戦(関東大学リーグ戦)、インカレ(全日本大学選手権)とあります。全てがインカレに向かって一歩ずつ進んでいくような練習をしていけば、最後はいい結果になると思っています。

早慶戦に向けて

試合前、選手を集める平久江監督

――慶大の印象は

倉石 慶應さんは、慶應のバスケを踏襲していて、見ていて慶應だと分かるようなバスケットをずっとしています。日本のバスケ界の始まりをつくったのは早稲田と慶應なので、そこからずっと受け継いだものがあります。世界や日本の進化はあるのですが、独特なかたちを持っている印象です。

――具体的に独特なかたちとは

倉石 つかみどころはないのですが、慶應らしさがあります。しつこくて諦めない姿勢やパッシング、みんなで協力するなどです。(早慶)どちらとも日本代表選手が山ほどいるのですが、ここ近年はほぼ出ていなくて。突出したスーパースターがいない分、みんなで助け合わないといけないのがあります。もし(早慶で)ユニフォームが変わっても、早稲田だな慶應だなと分かるのは確かですね。

平久江 慶應のバスケというのは、私が現役の頃とあまり変わっていないのかなと思っています。個人の力で勝つというよりチーム全体で戦ってくる。最後までどんな時でも諦めないし、劣勢になっても最後の最後まで必死にやってくるので、他大学とやるのとは意識が違います。いい意味で、頑張るチームだなと思います。

――早慶戦への思いは

 慶応は3部です。しかし我々もそういう期間があって、どうなるか分からないです。将来またひっくり返るかもしれないです。なので、我々としては今はとにかく最善の力を振り絞って対戦しようと思います。

平久江 2年連続で結果としては、点差が離れてしまいました。早慶戦は伝統ある戦いなので、現状どのような力の差であろうが、全力で戦いたいです。他大学では経験できないのが早慶戦で、我々はその時点での最大の力を発揮して戦うのが礼儀だと思うので、今年もしっかりとやれたらと思います。

 

――早慶戦は他の大会と異なりますか

平久江 2年連続無観客だったのですが、今年は代々木第二体育館で有観客でやろうと思っています。そうなると、2〜3千人という規模になると思いますが、大学バスケの試合でこんなに入るのはないので、そういう意味では他の大会とは違う、特別な思いがあります。

――早大のキーマンとなる選手はいますか

倉石 まとめるといえばキャプテン(神田誠仁主将、社4=静岡・浜松開誠館)かな。自分たちはいつも通り全員が出るような戦い方をしたいのですが、新人に責任を持たせるのは、いいことではないです。ゲームのプランやチームをまとめること、伝統の重みを感じてもらうことなど、上級生やキャプテンがそういうものを引き継いでいかないとつながらないと思います。キーマンというより、この大会の重みを感じながら、そういう戦いに臨むときの考え方や歴史的なものを受け継いでいってほしいと思います。

平久江 4年生がポイントになると思います。伝統を下の代に受け継いでいくためには、コートに立とうが立たまいが、選手でなくスタッフであっても4年生としての態度を示せるかが一番のポイントになると思います。4年生のためにあるような大会だと思うので。

――神田主将に期待することは

平久江 今年のチームは4年生が4人、3年生が3人で上級生が7人しかいません。それに対して、2年生が8人、1年生が7人で下級生が15人です。下級生が多いチームなので、神田主将に期待するのは、このチームをどうまとめていくのかです。秀でた選手がいない中で、これから関東の1部の中で勝ち上がってインカレ優勝を目指すためには、ただバスケットをやっていてもダメだと思います。神田主将が普段の生活を含めて、このチームをどうまとめていくのか。早稲田はスタッフも含めた全員で戦うチームだと思っていて、それができなければ強いところには勝てないです。マネジャーや学生コーチ、トレーナー、学連派遣などのスタッフ陣も一丸となって、全員で強いチームにしていきたいです。バスケット以外でも、常に誰が見ても早稲田はナンバーワンだよねと言われるようなチームのトップにいるのが主将だと思うので、リーダーシップには大いに期待しています。

――今年の早慶戦の注目ポイントは

倉石 1年生も2年生も有観客の早慶戦という雰囲気を味わったことがないので、どのようになるか分かりません。4年生は一度でも経験しているので、分かると思いますが、ゲーム以上の興奮や伝統の重みを一番肌で感じられるので、注目するとしたらそこが一番です。関東大学のリーグ戦と比べても、一番お客さんが入ると思います。今まで感じた中では、学生界で一番観客が入る試合だと思うので、そういうのを肌で感じてもらって、戦っている熱を伝えられたら、うれしいです。

平久江 代々木体育館を借りて定期戦ができる大学と言ったら、早稲田と慶應くらいしかないと思うので、そのありがたさや喜びを感じてもらいたいです。4年生以外はみんな(有観客が)初めてだと思うので、いい意味で感謝の気持ちと喜びを持ってやってほしいです。また学生の運営側がいることで初めてできるので、感謝の気持ちを持ってぜひやってほしいと思います。選手が目一杯やれるためにスタッフがどれだけ苦労しているのかを感じて、お客さんの前で最高の早慶戦をしてほしいです。

――最後に早慶戦の意気込みをお願いします

倉石 我々としては誠心誠意、100パーセント以上の力を発揮できるように準備を整えて向かいます。

平久江 最後の最後まで全力で戦うことが礼儀だと思うので、早稲田の選手には実行してもらいたいです。

 

――ありがとうございました!

(取材・編集 落合俊)