延長13回、4時間10分の死闘 惜敗も「やり切った」/決勝 中大戦

準硬式野球
決勝 10 11 12 13
中大
早大
(早)清水、前田、●杉山-吉田龍
♢(三塁打)竹本(1裏)

 吉田龍平主将(スポ4=東京・小山台)率いる現チームも、ついに最後の試合を迎えた。関東地区大学・社会人王座決定戦(関東王座)決勝、相手は準硬式野球界最強との呼び声高い中大。試合は初回に先発・清水佑樹(スポ2=早稲田佐賀)が3点を失うが、打線が竹本周平(人3=鳥取・米子東)の大活躍で4回までに同点に追い付く。その後は投手陣が奮闘を見せ、延長12回が終わって3ー3と強敵相手に一歩も引かない素晴らしい戦いを披露。最後はタイブレークでの攻防に敗れたが、「やり切ったという思いが一番」(吉田龍平主将、スポ4=東京・小山台)。八王子の空に広がる透き通った秋晴れの下、清々しい引退を迎えた。

 初回、清水が先頭打者に中前打を許すと、これを中堅手・鷲田拓未(スポ1=神奈川・日大高)が後逸。いきなり三塁に走者を背負うこととなり、3番打者の左前打で先制を許す。さらに続く4番・足立裕紀(2年)には高めに浮いた球を捉えられ、右翼スタンドに飛び込む2ランを浴びた。しかしその裏、打線がすぐさま反撃を開始。関大輝(基理2=茨城・江戸川学園取手)の左前打に須能浩太郎(商2=東京・早実)の犠打、そして中村康祐(教3=早稲田佐賀)の中前打とわずか5球で1死一、三塁の好機を演出。2死後、打席には今大会初スタメンの5番・竹本。カウント0-2と追い込まれてからファウルで粘り、迎えた6球目。投手が投球モーションに入る直前に打席の前へと立ち位置を変更すると、高めに浮いた変化球を強振。強烈な打球は左翼線へ抜け、2点適時三塁打となった。

2点適時三塁打を放つ竹本

 さらに4回、先頭の竹本が左前打で出塁すると、続く吉田龍主将が犠打を試みる。この打球は一旦ファウルゾーンに転がったが、不規則なバウンドでフェアゾーンへ。相手守備が処理に手間取る中、竹本は一気に三塁を狙う。すると補殺を狙った相手二塁手が悪送球し、竹本は一気に本塁をも陥れて同点に追い付いた。勝ち越しを狙う早大は6回にも竹本の安打から好機をつくる。直前の守備で好プレーを見せた渡部椋雅(商2=神奈川・桐光学園)と鷲田に代わって途中出場していた加藤大(人4=大分上野丘)が単打でつないで2死満塁に。しかしここは代打・竹下直輝(スポ4=東京・小山台)が内角低めの直球に手が出ず、見逃し三振に倒れて得点を挙げることはできなかった。

ピンチを抑え、ガッツポーズを見せる前田副将

 直後の7回、2回以降好投を続けていた清水が1死一、二塁とピンチを背負う。ここで早大は2番手・前田直輝副将(スポ4=熊本)をマウンドへ。これまで幾度となくチームのピンチを救ってきた右腕はここでもその真価を発揮し、この回を無失点で切り抜けた。8回以降はエース杉山周平(教4=神奈川・山手学院)が登板。走者を背負いながらも要所を抑え、中大を延長12回まで無得点に抑えた。しかし打線は後半に入ってすごみを増す相手先発・近野佑樹(1年)に苦戦。「横から見ていても(序盤に比べて)すごく制球力が高まっているのを感じた」(池田訓久監督、昭60教卒=静岡・浜松商)。170球を越える熱投の前に7回以降一人の走者も出すことができず、決着は延長13回からのタイブレークに持ち越された。

エースにふさわしい好投を見せた杉山

 無死一、二塁からのタイブレーク、杉山は先頭打者に死球を与える。次打者は見逃し三振に仕留めたが、続く7番打者に3球目を捉えられた。高々と上がった打球はセンター後方へ。加藤はこ素晴らしい背走を見せて一直線に落下地点に向かったが、ボールをグラブに収めることはできず。走者一掃の二塁打となり、重い3点を失った。その裏早大は1番から始まる好打順だったが、相手2番手の前に関、須能が倒れて2死に。追い込まれた状況の中、中村は粘りを見せて四球で出塁。本塁打が出れば逆転サヨナラという状況で今大会2本塁打の4番・鈴木涼馬(商4=東京・早実)につないだ。鈴木は集大成のフルスイングを見せたが、最後は低めの変化球に空振り三振に倒れた。この瞬間4時間10分に及んだ死闘が終幕。両軍のスタンドから惜しみない拍手が送られる中、吉田龍主将は相手主将と抱擁を交わして健闘を称え合った。

相手主将と健闘を称え合う吉田龍主将

 東京六大学リーグ戦の春秋連覇、そして全日本大学選手権(全日)優勝と輝かしい戦績を残した今年の早大ナイン。池田監督はその要因として4年生のまとまりを挙げた。「最上級学年がしっかりまとまっていると、下級生もそれをしっかり継いでいこうということでチームが一体感を持つことができる」。そしてそのまとまりを生んだのは、関東地区大学選手権(関東大会)でのコールド負けがあってのことだろう。「全ては関東大会が変えてくれた」(吉田龍主将)。4年生全体での話し合いを重ねることで、次第にチームが一つの方向へ。ラグビー日本代表のように、本当の意味で『ONE TEAM』になることができたのだ。しかしそんなチームでも達成できなかったことがある。関東大会、春季リーグ戦、全日、秋季リーグ戦、関東王座を全て制覇する『五冠』だ。「このままでは先輩たちの成績を超えることができないので、新チーム始動から気合を入れていきたい」(中村)。長い冬を超えたその先で、新たな早大準硬式野球部はどのような物語を紡いでいくのか。今から楽しみで仕方がない。

(記事 池田有輝、写真 鬼頭遥南、小山亜美、新井万里奈、西山綾乃)

集合写真

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コメント

※4年生の引退コメントは上のリンクから!

池田訓久監督(昭60教卒=静岡・浜松商)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

いや、もう本当にナイスゲーム。よくやってくれましたね。このチームとして最後の試合、出し切ったと思います。

――投手陣は初回に清水佑樹投手(スポ2=早稲田佐賀)が3点取られましたが、その後は各投手無失点でした。振り返っていかがですか

清水はここのところ序盤が良くないことが何試合かありましたし、向こうの打線が思っていた以上かなというのも感じたりしました。ですが回を重なるごとに徐々に徐々に良くなってきて、清水らしさというのは十分に出たと私は思っています。その後前田(直輝副将、スポ4=熊本)なんかはピンチの場面でしっかり抑えてくれましたし、杉山(周平、教4=神奈川・山手学院)も本当によく投げてくれて。タイブレーク制というのはルールで決まっていることなのでどうしようもないですが、あのままタイブレークではなく延長戦をし続けたらどうなったかな、もしかしたらうちが勝てたかな、とも思ったりしたりしたゲームでしたね。

――打撃面では終盤以降相手先発の好投の前に苦戦を強いられました

近野君(佑樹、1年)はすごいですね。最初よりもまとまりがすごくなってきたというか。最初はうちもぽんぽんと打てて2点取れたのですが、あれ以降は横から見ていてもすごく制球力が高まってきているなというのを感じました。あとはスタミナですよね。あそこまで投げ切るスタミナというのはうちのピッチャー陣も学ばなければならないところだと思いましたね。

――これで4年生は引退となりますが、今年の4年生はいかがでしたか

私なんかは最高の思いをさせてもらったこの一年だったので、4年生は本当に素晴らしいと思います。やはりまとまりがあったからこその結果だと思っています。チームというのは最上級学年がしっかりまとまっていると下の学年はそれを見ていますから、そのまとまりを受けて下の学年もそれをしっかり継いでいこうということでチームが一体感を持ってできたと。今ラグビーで『ONE TEAM』という言葉がよく出ていますが、まさに『ONE TEAM』になれていたのではないかと思います。その結果としてこの一年の春、秋のリーグ戦優勝、全日優勝ということにつながったのだと思っています。

――これから3年生以下が新チームとして練習をしていきますが、期待することなどをお願いします

ピッチャーはほとんどが残ります。もちろん杉山だとか前田とか全日から秋リーグにかけて活躍してくれた4年生は抜けてしまいますが、これから楽しみなピッチャーが2年生、1年生にもいますので、その投手陣がしっかり練習をしてゲームをつくるようになれば今年のようなチームができてくるのではないかと思います。あとはやはりキャッチャーですよね。そこが一番問題かと思うので、いい選手が今後でてくることを期待しています。

中村康祐(教3=早稲田佐賀)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

力負けなのかなと感じました。勝っても負けても4年生との最後の試合だったので、楽しめればいいかなと臨みました。負けはしましたが、後悔はないです。

――ご自身の打撃を振り返っていかがですか

1、2打席目は良かったのですが、それ以降は三振してしまって、それが少し悔しかったです。最後の打席は得点を取らないといけない場面で、四球で涼馬さん(鈴木、商4=東京・早実)につなげられたことは良かったかなと思います。

――4年生への気持ちを聞かせてください

寂しいのが一番強いです。一緒にもっと野球を、練習を、試合をしたかったです。涼馬さんが最後に三振した時、最初に泣いてしまって、それくらい寂しかったです。来年は自分達が引っ張るんだという気持ちで新チームを始動できたらと思います。

――今後どのようなチームにしたいですか

今年は4年生のおかげで日本一という素晴らしい結果を残すことができました。リーグ戦を4連覇、5連覇しないといけないようなチームになったので、チーム全体でまとまる必要があると思います。龍平さん(吉田主将、スポ4=東京・小山台)がさっき言っていたのですが、引退した時にみんながやり切ったなと思えるようなチームにできたらいいなと思います。

――来年は重要な役割を担いますが、いかがですか

不安が一番大きいです。大変な一年になるというのは重々承知しているつもりなので、責任感をしっかり持ってチームをまとめることができたらと思います。

――来年への抱負をお願いします

日本一2連覇が一番大きな目標ですが、まずはチームの底上げが必要になると思います。このままでは先輩たちの成績を越えることができないので、新チーム始動から気合いを入れていこうと思います。

篠原大成(教2=大阪・早稲田摂陵)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

1点を争う緊迫した展開だったので、一球一球しびれました。結果負けてしまったのですが、いい試合ができて良かったと思います。

――これから新チームとなりますが、どのような活躍をしたいですか

最高で最強な4年生が抜けて、あしたから練習場に4年生の姿がないというのは本当にさみしいのですが、4年生がこの一年間で見せてくれた背中を見習って、チームの一員としてしっかり活躍できるように頑張っていきたいと思います。