接戦を繰り広げるも、悲願達成ならず

弓道

 この日のために1年間の努力があったといっても過言ではない。悲願の1部昇格を懸けた入れ替え戦を迎えたこの日、選手たちは静かな闘志に燃えていた。運命の対戦相手は慶大。昨季涙をのんだ同じ場所で、早大は再び真剣勝負に挑んだ。

最後の試合で18中と的中に貢献した橋本

 「絶対に勝ちたい」(永山豪朋主将、文構4=東京・早実)、という強い気持ちで臨んだこの試合。両校にとって譲れない戦いであるだけに、試合前から道場は独特な緊張感に包まれていた。張りつめた空気の中、先攻のワセダの初立が入場しいよいよ試合開始。まずは大きく出遅れないためにも丁寧に引いていきたい1立目、早大、慶大それぞれが25中、26中とほぼ互角の戦いを見せる。小さなミスが勝敗を左右する厳しい戦いとなることが早くも予想される中、迎えた2立目。先に抜き出たのは慶大だった。早大が伸び悩む一方で慶大は29中と調子を上げ、差を4本に広げたのだ。気の抜けない局面でリードを許してしまった早大。しかし、昇格のためにもこのまま引き下がるわけにはいかない。意地を見せたい3立目では、ここ一番の集中力を発揮する。8人中6人が皆中を出し32射30中と一気に差を縮め、さらに1本リードする展開に。なんとか流れをつかみ、81―80で試合は前半を終えた。

1年間主将として部の中心となった永山

 リードしているとはいえ、依然として油断はできない4立目。早大にとってさらに差を広げていきたい大事な場面だ。しかし、やはり一筋縄ではいかないのが入れ替え戦。25中と早大が的中を落としたのに対し、慶大は27中とリードを取り返されてしまう。接戦が繰り広げられる中、1本を追いかけるかたちでいよいよ最終立へ。早大の初立がまず14中と健闘すると、慶大も負けじと14中を出し、差を埋めさせようとはしない。拮抗(きっこう)した試合展開となり、昇格は弐ノ立の16射に託されることとなった。先攻の早大が皆中でプレッシャーを与えていきたいところであったが、その思いとは裏腹に4本の矢が的から外れ12中と不安の残る結果に。対する慶大は12中以上で勝利となったが、抜いた矢はわずか1本と1部の底力を見せつけ15中。最後の最後で差は4本に広がり、132―136で1部昇格を逃すこととなってしまった。

 昇格ならずという結果になったとはいえ、慶大相手にここまで迫ることができたという事実は、ワセダの強さは1部に劣ることのないものであるということの証明となった。今後はあとわずかの「1部とのカベ」をどう乗り越えていくかが課題となってくるだろう。この試合で4年生は引退となるが、みな口々に弓道をやっていて良かったと振り返る。下級生もその充実感をかみしめることができるように、部のさらなる進化に向けてまい進していってほしい。覇者復活へ、戦いはまだ終わらない。

(記事 松崎はるか、写真 副島美沙子)

※平成27年度リーグ戦は平成26年度秋に行われます。

結果

●早大132―136慶大

初立

大前 髙間光司(スポ4=奈良・橿原) 20射17中

弐的 橋本和久(先理4=東京・早実) 20射18中

落前 島村達哉(スポ3=獨協埼玉) 16射10中

   梅原丈博(社4=神奈川・川和) 4射2中

大落 河本悠輔(商4=広島・修道) 20射18中

弐ノ立

大前 中村浩太郎(創理2=東京・芝浦工大高) 20射15中

弐的 清水雄貴(人2=東京・早稲田) 20射17中

落前 大久保侑(スポ3=岩手・福岡) 20射18中

大落 永山豪朋(文構4=東京・早実) 20射17中

コメント

永山豪朋主将(文構4=東京・早実)

――あと1歩という結果になってしまいましたがいまの感想を聞かせてください

最後の試合ということで絶対に勝ちたいなというのと全て出し切りたいなということを思っていました。全員が自分のやることをやってくれたと思っています。ただ、その上であと1歩及ばなかったということで。悔しいというだけですね。

――勝敗を分けたのは何だったのでしょう

最後向こうが12中すれば勝利という中でしっかりと気を抜かずに15本詰めてきたというところは、1部の貫禄というかどんな相手でも最後まで気を抜かずに戦ってる姿というのを見て、そういうところがまだ2部のワセダには無かったのかなというところだと思います

――試合に出られない選手たちの応援も気合いが入っていましたが

試合のメンバーを選ぶのが自分なのですけれども、やっぱり出られないのは悔しいと思いますし、ただその分みんな自分のやることを頑張ってくれたので。すごく背中を押されましたし、力になりました。

――最後の初立は4年生4人でした。横で見ていていかがでしたか

意地は全員あると思っていたので。最後の矢は全員しっかり詰め切ってくれたので。結果はどうあれやり切ったのかなと思います。

――後輩へ何か伝えたいことはありますか

とにかくまた一からやり直すしか無いので。つらいことだとは思うのですけれどしっかり頑張って欲しいと思います。これからはOBとしてしか応援できないのですが、これからも応援していきたいです。まだ4年生としての時間はあるので後輩を面倒見てもっと強くする期間はあると思うので。あと少しの間自分たちも頑張って、らいねん後輩たちが1部昇格できるように応援していきたいと思います。

――大学での弓道生活を振り返って

弓道は高校から始めたので、7年間すごくつらい時期もありましたが、こんなに楽しいこともなかったと思うので。弓道を続けたことは全然後悔していないですし、始めてよかったなと思っています。

――主将として1年間やってきて、どんなチームでしたか

全員が勝つという気持ちはかなり強いチームだったと思いますね。1部への執着心とか中ることへの執着心、試合に出たいという気持ちは1部のどこのチームにも負けてないと思うので。それが実を結べばもっと強くなると思います。またらいねんもう一回り強くなると思いますし、ことしも本当に単純にいいチームだったと思います。

――同期のみなさんへ伝えたいことはありますか

本当に4年間やってきてこの同期でよかったなと思いますし、引退して終わりではなくてこれからも付き合っていきたい仲間だと思います。

橋本和久(先理4=東京・早実)

――昇格にはあと1歩届かずという結果でしたが、お気持ちはいかがですか

単純に悔しいという気持ちでいっぱいです。

――練習での的中が本番で出せないことが課題ということをことでしたが、今回も練習通りにいかなかった部分というのはあったのでしょうか

今週は先週に比べると練習自体の的中も劣るというかあまり伸びなかったので、今回はそこまで練習との落差があったということはなかったです。しかし、最初と最後で的中が落ちてしまったというのは、やはり本番特有の緊張感からくるものだったと思います。

――ご自身は18中という結果で的中に貢献なさっていました

前日の練習と同じ的中ということで自分なりのことはできたと思っているのですが、後半甘い矢が何回も出ていたので、そこは自分の練習が足りなかったのかなと思いました。

――中盤から終盤にかけて接戦が続き緊張感もあったと思いますが、心境はいかがでしたか

僕はそんなに緊張はしていなかったです。接戦になっていても自分のすることをするしかないので、自分のやるべきことをしっかり確認して臨んでいました。

――今回が4年間で最後の試合となりましたが、同期や後輩のみなさんに思うことはありますか

同期にはこれまで一緒にやってきてくれてありがとうという気持ちでいっぱいです。後輩に関して、まずは1つ下の代はこの試合で1部で引くことができないということが決まってしまって。僕自身もきょねんの入れ替え戦で同じく1部で戦えないということが決定してとても悔しい思いをしたので、ぜひ3年生にはらいねん(1部で)引いてもらいたいという思いでやってきたのですが、やはり今回も昇格にはつながらなくて。3年生は本当に魅力的な実力を持っている代なので、もしかしたら僕がこの試合で負けてしまって1部で引かせてあげられないことをこの先ずっと後悔してしまうのではないかと思いました。2年生、1年生の代も僕たちの代で昇格することができていたらまた違っていたのではないかと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいです。

――大学での4年間の弓道生活を振り返っていかがですか

とても充実した、楽しい4年間だったと思います。

河本悠輔(商4=広島・修道)

――あと1歩という結果になってしまいましたがいまの感想を聞かせてください

最後の試合とは思わずに臨んで、この一週間、4年間やってきた力というのは発揮できたと思うのですが、やっぱり1部のカベは厚かったということを実感するばかりです。

――勝敗を分けたのは何だったと思いますか

チームとしての地力の差というのを接戦の中で感じたので。ワセダがこの4年間2部であるということが慶大とのそこの差に現れているという感じを受けました。

――試合に出られない選手たちの応援も気合いが入っていましたが

メンバーに4年生が多いことで、後輩たちにらいねん1部で戦わせてやるために勝ちたいという気持ちがすごく強くて。その後輩たちの声というのはすごく力になりました。

――最後の初立は4年生4人でした

4年生全員で絶対に昇格しようという強い気持ちを持っていたので。4人で16中出して勝とうというふうに思っていたのですが、全員が全員うまくできるわけじゃないので。力及ばずという感じです。

――後輩へ何か伝えたいことはありますか

僕らみたいな悔しい思いはして欲しく無いので、卒業まであと3、4カ月の時間で後輩たちに自分たちがこの4年間培ってきたものを伝えて。その力でらいねん1部に昇格して欲しいと思います。

――大学での4年間はいかがでしたか

弓を続けて10年目になったのですが、高校でも大学でも最後の試合はやっぱり悔いが残る結果になってしまって。自分の努力が足りなかったとは思わないのですが、やっぱり1部校を相手にするにはそのレベルが値して無かったのかなというふうには思います。この弓道部で4年間培ってきたものというのは本当にかけがえの無いものだと思いますし、大学に入って4年間練習してきて、きょう負けましたけれど後悔がないと言えば嘘になりますが、自分がやってきたことには後悔してないです。

――同期のみなさんへ何か伝えたいことはありますか

10人も同期がいるというのは本当に珍しいと思うのですが、みんなが、全員が一つの目標に向かっていたので。すごくいい同期だったと思います。

髙間光司(スポ4=奈良・橿原)

――きょうの試合の感想をお願いします

チームとしては苦しい場面とかもあったりしたのですが、最初にリードされている中でもしっかりと粘って最後まで諦めずに全員が1部に昇格するということを目指して頑張っていたなという印象があります。途中とか最後に的中を落としてしまったりもして結果としては負けてしまいましたが、来季につなげていけるような試合だったのかなと思っております。

――入れ替え戦にはどのような意気込みで臨まれましたか

入れ替え戦といえど普通の試合と同じなので、入れ替え戦だからと意気込むのではなく、自分からプレッシャーをかけてしまうと駄目なので、いつもの練習、試合通りに引けたら自ずと結果はついてくると思って少し楽な気持ちで引きました。そして、最後だったので弓道をいままで7年間やってきて、本当に最後楽しんで終わろうと思っていました。

――リーグ戦の調子はいかがでしたか

リーグ戦を通して自分の中では調子はすごく良かったです。4年生というところもありましたし、おそらく僕が大前でいくだろうなというのと、引っ張っていかなければいけないだろうなと思っていました。途中で2的などもありましたが、こんなところで僕自身が調子を崩してはいけないと思ったので、とにかくまず僕は中るんだから何も気にすることはないというぐらいまで自分の技術を高めていくというところを大切にしてきました。

――個人としてきょうの射を振り返っていかがですか

僕自身、最初は少し緊張したりして自分の射ができないなと思う射が出たことは確かなのですが、あまり抜いたことに対してくよくよするのではなくて、次へと切り替えていこうということは考えていました。弓道を楽しんで終わらせるということもあって、最後に泣いて終わるようなことは本当に嫌だなと思ったので、しっかりと笑って悔いのないように、それこそ最後は4本全部詰めて笑って終わらせようという気持ちで、途中抜いてしまった場面でもそこまで気にすることなくいつも通りを貫きました。

――4本差という点に関してはいかがですか

実際のところ、それがいまの1部と2部の差だなというのは感じました。現在確かにワセダも技術はついてきているところはあると思うのですが、きょう相手の附け矢を見たりしていても、やはり向こうの方が安定感があるというか、1部の強豪の中でもまれながら技術がついてきているという人が多かったので、そういう部分がいまの1部と2部の差なのかなと思いました。4本差ということで微量な差なのですが、そこが僅差の勝負のところで出てきた結果なのだと思います。

――最後の試合ということで、4年間を振り返っていかがですか

僕自身としては、すごく悔しい4年間だったなと思います。高校時代の僕は自慢するわけではありませんが、実際全国で3冠もしているぐらいの自信がありましたので、そのような中で大学に入って全国や優勝や1部昇格も何でもしてやるぞ、という意気込みで入りました。それにも関わらず、案の定結果としては何もできなかった自分がいるということで、それはまだまだ自分自身の精神面や技術面においても足りていなかった部分があるのかなという後悔がありますし、逆に本当にある意味弓道をちゃんとやっていて良かったなというのがすごくあります。こういう経験って本当になかなかないと思っていて。ほかの部活もそうだと思うのですが、サークルとなどでは味わえない経験なので、高校も含めてこんなにも多く体験できたということは、これからすごく将来にいろいろな面で役立っていくと思っています。

――後輩にどのようなことを伝えていきたいですか

後輩にはまずはしっかりと頑張っていってほしいというのがあって、これも高校のときの経験なのですが、強くなってどんどんいろいろな大きな大会で勝っていくためにはやはり自分を追い詰めていかなければいけないですよね。どれだけ自分の心を鬼にして練習に取り組んでいくか。この1本を外してしまうと何も勝てないというほど追い詰めて練習をしていくことで、何においても結果が出てくると思いますので、とにかく一生懸命練習してほしいなと思います。あと、一生懸命練習したからこそ試合のときに落ち着きが出るといいますか、何も考えることなく、心配することもなくいつも通りやればいい的中が出ているんだから、という気持ちで引けると思うので、それも含めてしっかりと技術面と精神面の両方を強くしていってほしいなと思います。いまの3年生は次が最後になると思うのですが、全体に向けて、しっかりと最後は弓道を楽しんでやっていってくださいと伝えたいです。