早稲田で、早慶で応援合戦! 3年ぶりの稲穂祭対面開催

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 東京六大学野球秋季リーグ戦の早慶戦を直前に毎年催される稲穂祭。早稲田大学の『打倒慶應』を祈願する大切な儀式である。そんな稲穂祭は3年ぶりに観客を大隈記念講堂(大隈講堂)に迎え入れた。平日の夕方に実施され、授業を終えた学生も多数来場。サークルコラボステージ、早慶応援合戦、野球部壮行会の3部構成で観客を魅了した。特に、応援合戦と壮行会は3年ぶりの開催。稲穂祭が従来の形を取り戻し、両校部員にとっても感慨深いステージとなった。

 辺りが暗くなった18時30分。司会の井原遥斗(教3=埼玉・熊谷)がマイクを手に取り、3年ぶりの対面での稲穂祭が幕を開けた。最初に披露されたのは、早慶戦決起曲『勝利の讃歌』。昨年の稲穂祭で半世紀ぶりに復活を遂げたこの曲を小林昭雄リーダー会計責任者(社4=東京・早実)が振る。小林が引き締まった表情でテクを振ると、後列のリーダー下級生は必死の屛風で盛り上げた。『勝利の讃歌』を終えると、第1部のサークルコラボステージがスタート。冒頭では、サークル応援団企画として野球部への応援メッセージ動画を放映。10を数えるサークルがおのおのの手段で野球部を激励した。続いては、サークルとのコラボパフォーマンス。吹奏楽団と「チャモロ・フルーメント」の演奏による、コロナ禍の思いを乗せた応援ソング『そして紺碧の空へ』で幕を開けると、チアリーダーズ、吹奏楽団、「下駄っぱーず」、「SARAHBelly」、「SHOCKERS」が次々に登場し、応援曲メドレーを披露。おのおのがパフォーマンスを全うし、応援曲を独自のカラーで表現した。西田健太朗新人監督(教4=愛媛・愛光)が学注(学生注目)で前に立ち「応援部だけじゃなくみんなで応援している!」と叫ぶと、最後は出演者全員で『Viva Waseda』を披露。「頑張れ野球部!」と声を合わせて激励した。第1部が終了すると、木部昌平応援企画責任者兼稲穂祭実行委員長(教4=埼玉・昌平)が挨拶を行う。対面実施への感謝を口にすると、「復活の年」となった今年の応援活動を振り返る。最後には応援部を「神宮に咲く花」と例え、早大の勝利と共に母校のために散っていくことを誓った。

『勝利の讃歌』を振る小林

サークルコラボステージに出演したサークル一同、応援部(中央は西田)

 第2部は早慶応援合戦。早大応援部と慶大應援指導部が大隈講堂に顔をそろえ、互いに応援で魅せた。冒頭、校旗、塾旗が入場し、壇上で旗を連ねる。並んで旗礼する姿はまさに荘厳の一言。力強い太鼓の音と共に旗が上を向くと、客席からは万雷の拍手が送られた。続いては『早慶讃歌』。早慶戦の試合前に斉唱されるこの学生歌。江渕太朗代表委員主務(文4=東京・海城)と乃坂龍誠応援企画責任者(慶應・4年)の口上で歌が始まると、早慶の部員が肩を組んで斉唱した。『早慶讃歌』の次は両校の応援歌。早慶が『紺碧の空』『若き血』『Blue Sky WASEDA/KEIO』『我ぞ覇者』『ひかる青雲』の計5曲を交互に披露した。稲穂祭という晴れ舞台で、テクにも声にもより一層力がこもった。第2部も終盤に差し掛かると、「慶應義塾大学チャンスパターンメドレー」がスタート。観客の手拍子のもとメドレーが進行し、「早稲田を倒せ慶應」の文字切りを叫んで慶大は颯爽とステージを後にした。すると、これに「早稲田必勝応援曲メドレー」で対抗する。冒頭では『新人哀歌』と共にリーダー4年生の4年間が映像で回顧され、江渕が学注へと向かう。野球部・中川卓也主将(スポ4=大阪桐蔭)、原功征副将(スポ4=滋賀・彦根東)、蛭間拓哉副将(スポ4=埼玉・浦和学院)の名前を絡め「御託や(ご『たくや』)前置きはいらない、色んな波乱(『はら』ん)を乗り越えた早稲田はもう『ひるま』ない!」と叫び、会場全体のボルテージは最高潮となった。すると、この秋にデビューを飾った『暁』を皮切りに『大進撃』『タイムリーマーチ』『ダイナマイトマーチ』『スパークリングマーチ』、そして『早稲田健児』を挟んで『コンバットマーチ』へ。リーダー4年生とチアリーダーズ4年生が先頭に立ち、全力の演技を見せた。ひとたび『コンバットマーチ』が終了すると今度は木部が学注を叫ぶ。「早慶戦、稲穂祭を盛り上げて死ぬしかない」。木部の稲穂祭と早慶戦に懸ける思いと覚悟に客席のボルテージは一段と高まった。木部が学注を終えると、横からはリーダー4年生9人が登場。リーダー4年生総勢10人で『コンバットマーチ』の突きを見せつける。「慶應倒せ早稲田」の文字切りを大隈講堂にとどろかせ、応援合戦を締めくくった。

『早慶讃歌』を指揮する江渕(右)、乃坂と後列の両校部員

『Blue Sky WASEDA/KEIO』で突き合う梶野優介連盟常任委員(創理4=東京・早大学院)(右)とY.T連盟常任委員(慶應・4年)(後方はチアリーダーズ)

野球部・中川卓主将、原副将、蛭間副将を絡めた学注を披露する江渕

応援企画責任者、稲穂祭実行委員長としての覚悟を学注で叫ぶ木部

 応援合戦を終えると、第3部は野球部壮行会。玉城大基学生誘導対策責任者(基理4=沖縄・昭和薬科大付)が司会進行を務めた。野球部・中川卓主将が早慶戦での躍動を約束すると、齋藤巽代表委員主将(教4=青森)からペナントが贈呈された。稲穂祭を締めくくるのは校歌斉唱である。齋藤を中心に野球部員、応援部員一同で3番まで腕を振り続けた。斉唱を終えると、最後は玉城が「必ずや打倒慶應を果たしましょう!」と呼びかけ、稲穂祭は幕を閉じた。

野球部・中川卓主将にペナントを贈呈する齋藤(右)(後列は野球部員)

 3年ぶりの「対面」開催となった稲穂祭。「オール早稲田」で士気を高めると、慶大との前哨戦を繰り広げた。また、終了後には大隈講堂前で観客と談笑する姿も見られ、応援部と観客の一体感はより一層強まったことであろう。そして迎えた早慶戦。大隈講堂で一度顔を合わせた早慶は、戦いの舞台・明治神宮野球場でついに「対面」を果たす。

(記事 横山勝興、写真 安齋健、荒井結月、横松さくら、梶谷里桜、濵嶋彩加、本田里音、渡辺詩乃)

コメント

木部昌平応援企画責任者兼稲穂祭実行委員長(教4=埼玉・昌平)

――3年ぶりの対面での稲穂祭を終えて率直な感想をお願いします

 無事に終われて良かったなと思います。出演者や照明の調整もあったのですが、いろいろな方の支えのおかげで無事に成功させることができて良かったと思っています。吹奏楽団やチア(チアリーダーズ)、リーダー下級生や同期、放送研究会の方、照明・音響業者の方、コーチングスタッフの方、広告に協賛していただいた方などいろいろな方に感謝の気持ちしかないです。

――稲穂祭実行委員長として、どのような気持ちで臨まれましたか

 会場(大隈記念講堂)が当日しか確保できなかったこともあってリハーサルも大変でした。学注や挨拶は言うことを考えていたのですが、あらかじめ考えていたことを言う余裕はなくて、「自分の気持ちをぶつけてやろう」となりました。

――学注に込めた思いを教えてください

 応援部に入って4年間恵まれていたと思っていたので、優勝はなくなりましたが、最後の早慶戦で慶應を倒せればうれしい気持ちでした。同期にも恵まれて、稲穂祭の前後にも声をかけてもらったりして幸せだったので、そこに対する感謝の気持ちを表現しました。あとは早慶戦に勝って応援部人生を終わらせてやろうという思いを込めました。

――『紺碧の空』(『紺碧』)と『早稲田健児』のテクを振り返っていかがですか

 2012年の東大応援部主将の岡崎(幸治)さんのような気合系のテクが僕は好きで、僕が新人だった時に4年生だった小宮さん(佑一朗氏、令2法卒=東京・早大学院)もその人が好きで、「力強いテクを振りたい」と言っていたので、僕も力強いテクを振りたいと思うようになって今回の『紺碧』も振りました。文字切りは旧テクで振りました。『早稲田健児』も力強くテクを振りたいと思っていました。僕が今回出ていた曲の中で唯一リーダー下級生とチアがいて、チアのロールがある曲だったので、後ろの人の思いも背負って全力でテクを振りました。

齋藤巽代表委員主将(教4=青森)

――稲穂祭を終えて率直な感想はいかがですか

 大隈講堂で対面の稲穂祭に出演するのは初めてだったのでそういう意味でも、3年ぶりに対面開催がかなったという意味でも本当に今日という日は大きな意味を持つと思います。こんなに観客の方に来ていただけるとは思っていなくて、木部(昌平応援企画責任者兼稲穂祭実行委員長、教4=埼玉・昌平)が集客含めてよくやってくれたなと思います。

――3年ぶりの早慶応援合戦はいかがでしたか

 リーダーがメインの最後のステージだったので、悔いを残すことがないように全力で全部出し切って終わろうという思いでテクを振りました。

――校歌のセンター指揮を振り返っていかがですか

 少し感極まっていたというのもあるのですが、本当に今までで一番気持ちが入って校歌を振ることができたと思います。全部2拍で振りましたが、4拍は勝った時のために温存したので、今度は神宮で勝って4拍で校歌を振りたいです。必ずやります。

――稲穂祭の最後の出演というところではいかがでしたか

 稲穂祭は4回目ですが、4回とも全部テイストが違った稲穂祭だったと振り返って思います。経験した稲穂祭の中でも大隈講堂でこうして観客を入れて行う本来の形に立ち帰れた、それで皆さまに喜んでいただくことができたという意味で今日という日は今後にとって大きな意味を持つと思います。