『人の心を動かしたい』 思いを音にのせ集大成を飾る

応援

 12月9日。4年生の引退も間近となった月曜日の夜、吹奏楽団による定期演奏会が新宿区立新宿文化センター大ホールにて開催された。3部構成のコンサートである。各部でレパートリーの異なる演奏や演出のほか、休憩時間でのミニコンサートや3パート総出の応援曲メドレーなど、特別感のある演出も多く、存分に観客を楽しませた。

 開演とともに、吹奏楽団が着席し、校歌を演奏した。一気に観客を引きつける。そして『チェスター序曲』『「あんたがたどこさ」の主題による幻想曲』『シンフォニア・ノビリッシマ』の3曲を演奏した。最初の2曲は、今年のコンクール課題曲として夏から幾度となく披露してきた。春山尚輝副将、吹奏楽団責任者(基理4=茨城・江戸川学園取手)は「やっぱり夏の時点のみんなの楽器の実力と、12月の実力はやっぱり変わっています」と話す。3曲目の『シンフォニア・ノビリッシマ』では華やかで荘厳な調べで観客を魅了した。

校歌から始まった第1部

 第2部は中川友萌子指揮(政経4=神奈川・日大藤沢)らによる学生指揮であった。吹奏楽の楽曲として広く知られる3楽曲と、アンコール曲を披露。1曲目『ディズニー・ファンティイリュージョン』では、生き生きとした表情で観客を夢の世界へといざなった。2曲目『ブラジル』では、「ブラジル!」や手拍子など、工夫が要所に見られる。春山は曲中のサックスソロを担当。「正直すごく緊張して、あまり覚えていない」と微笑みながら振り返った。3曲目の『ミュージカル「レ・ミゼラブル」より』に関しては、演奏会直前に1週間行った、秋合宿の思い出がある。合宿からの帰りのバスで、映画を鑑賞したのだという。「全員号泣してしまって(笑)。演奏していても感情移入できたというか、お客さんにも同じくらい感動してほしいという思い入れがある曲です」(大垣汐里演奏会運営責任者(文4=神奈川・県立厚木))。感動を伝えるため、真摯に音楽に向き合う姿勢が演奏にもあらわれた。うねりのあるダイナミックな演奏のあと、アンコールに答えて演奏されたのは『星条旗よ永遠なれ』。中川友萌子指揮(政経4=神奈川・日大藤沢)の思い入れのある曲で、「今年だけ特別に」(中川)組み込まれたのだという。

第2部の最終楽曲『ミュージカル「レ・ミゼラブル」より』では、ステージがフランス国旗の色に染まった

  残る第3部はドリルステージである。ドリルの4楽曲と『早稲田の栄光』、応援曲メドレーを披露した。2曲目『Summon the Heros』からはチアリ―ダーズも出演した。メンツは、どの楽曲でも一糸乱れぬ正確さで隊形移動をする。3曲目『We’re all in this together』では、パーカッションの3人を中心にハの字に並び、前進しながら音の迫力で圧倒。次曲の『Wicked』では、演奏でミュージカルのストーリーをなぞった。隊形移動の中に走り込む演出や複数回にわたる衣装替えなど、カラーガードの動きで目まぐるしく展開する。曲が終わると、涙を見せる観客の姿もちらほらとあった。閉幕後、鳴りやまない拍手に再び幕が開き、手をつないだ部員は清々しい表情で『早稲田の栄光』を歌った。そして3パート総出の応援曲メドレー。普段はステージの後方から音を届ける吹奏楽団が、中心で輝く。『紺碧の空』でステージを終え、最後は全員の笑顔で閉幕した。

チアリ―ダーズとのパフォーマンス

  これまで一年間「応援部の吹奏楽団」として、早稲田らしい音色を模索しながら応援、演奏、ドリルという各種の活動にぶつかってきた。集大成である定期演奏会を終え、4年生は安堵するとともに少し寂しそうな表情をのぞかる。4年生は技術だけではなく、自分たちらしさの見せ方も教えたかった。「今回下級生が自分たちらしさを出してくれたので任せられるな、大丈夫だなと安心しています」(GC三村舞(文構4=神奈川・鎌倉女学院))。人の心を動かす音色を求めて、応援部吹奏楽団はこれからもひたむきに邁進(まいしん)していくことだろう。

(記事 馬塲貴子、写真 飯塚茜、市原健、吉田美結)

※掲載が遅くなり、申し訳ありません

春山尚輝副将、吹奏楽団責任者(基理4=茨城・江戸川学園取手)

――ステージを終えての感想をお願いいたします

そうですね。今まで演奏会で「成功したな」とか「悔いなくできたな」と思ったことがなかったんですよ。でも今年は納得できるものにはなっていたので、それと4年間頑張ってきて良かったな、楽しかったなってこころから思えるので、続けてよかったです。それが残ってますね。

――第1部ではコンクール課題曲を演奏されていましたが、普段の演奏となにか違いはありましたか

メンバーは変わっていませんけど、やっぱり夏の時点のみんなの楽器の実力と、12月の実力はやっぱり変わっていますね。それと秋のリーグ戦や夏からここまでの期間一緒に活動してきた期間だったり、経験だったりがあるので、より良い演奏になったのではないかなと思います。

――第2部2曲目の『ブラジル』では春山さんのソロパートがありました

正直すごく緊張して、あまり覚えていないんですけど…。でも、自分一年間責任者やってきてますし絶対失敗できないなというのはあったので、良かったと思います。

――第3部ではメンツとカラーガードの連携は取れていましたか

4年生のドラムメジャー(DM)とガードチーフ(GC)が書いた曲もありますし、3年生の補佐の子たちが書いた曲もあって、それは3年生が振ってみんなが歩くという形になっていました。いろんな人が指揮を振って、その人を見て、今までの秋合宿とかで何度も通し練習などはしていたんですけど、なかなか指揮に合わせることが難しい部分もあって苦戦していました。今回はそれがきちっとはまったんじゃないかな、と…。まだきちんと見られていないので(笑)、これから動画を観て楽しみたいかなと思います(笑)。実感としては大きな事故もなくできたのでそれが良かったですね。

――第3部開幕前の挨拶で「気概」を見せるとおっしゃっていましたが、実感としては見せられましたか

自分は見せられたと思います。下級生も特に、最後の応援曲ドリルのところですごい声を出してくれるしいい顔してたので嬉しいなと思います。

――3パートでの応援曲メドレーは最後になりますが、いかがでしたか

自分は本当に早稲田の応援曲が好きで、この曲を誰かの前でこの人数で演奏できるのは最後だったので。最後は口も全身も疲れていたんですけれども、「ここは(音を)出すしかないな」と音を出し切れたので、本当にみんなよくやってくれて。いい応援曲メドレーだったなと思います。

――後輩にひとことお願いいたします

後輩には期待しているのですが、まあ人数が減っているというのもあって、来年一年間は特に難しい部分が大きいかなと思っています。下級生は自分の気持ちを出すのがうまいなと思っていて、そういう風に気持ちを出して周りとつながっていけば、おのずとまとまっていい一年になるのではないかと思うので、自分のやりたいことを出して、思い切り楽しんでくれたらいいなと思います。

――同期にひとことお願いいたします

もちろんリーダーもチアもきょうは参加してくれたのですが、吹奏楽団の同期で指揮とかDMとかGCの人たちが頑張ってくれてこの演奏会が成り立っているので、まずはその人たちに「ありがとうござました」というのと、あとは4年間一緒にやってくれたので(同期には)そのことにとても感謝しています。

中川友萌子指揮(政経4=神奈川・日大藤沢)

――演奏会を終えての感想をお願いいたします

演奏会というよりかは4年間の活動が全部終わったので、それがすごいしみじみするなぁっていう感じですね。

――こみ上げてくるものはありましたか

そうですね

――本日の出来栄えはいかがでしたか

自分自身は指揮を振る立場なので、一音も音は出せないのですが、部員がすごい頑張ってくれたかなって思います。

――演奏会の中で思い入れのある曲はありますか

アンコールでやった『星条旗よ永遠なれ』が、中学生の頃から吹奏楽をやってるんですが、その時から自分が演奏したことある曲で、個人的にも好きだし、また指揮レッスンという先生から指揮を習っていたこともあったのですが、その際に先生が教えてくれた曲でもあって、すごく思い入れがある曲だったので、例年はアンコールで星条旗など、やらないのですが、今年だけ特別にいれて、結構部員も上手に吹いてくれてよかったかなって思います。

――こだわった点はありますか

やっぱり応援部の吹奏楽団なので、音色とかクオリティーを上げること、演奏技術を上げることは限界があるかなと個人的には思っていて、でもその中でどうやってお客さんを楽しませるかって考えた時にアクションであったり、背景の色使いであったり、自分の指揮の振り方であったりとかそういったところにこだわることで、お客さんに楽しんでもらえるステージになったのかなと思っています。

――練習での雰囲気は例年と比べていかがでしたか

特に違うなと思ったのは新人という大学一年生の子たちがすごい元気良くて、その子たちがいなかったらこのステージはできなかったかなと思っているので、下級生に感謝だなって思っています。

――直前に合宿を行われたそうですが、雰囲気や演奏に変化はありましたか

演奏練習では特にあまり日頃だと授業などで、全員集まれなかったりするので、全員で何かやるとか、あとは部分的に同じ動きをしている人で集まってやるということで、普段は一緒に練習できない人たちとみんなでやったことで、団結力とかが上がったのかなと思います。

――(合宿の)練習内容は普段とは異なるものでしたか

練習内容はさほど変わらないのですが、時間が長いので、ずっと練習していると同じ様な内容だと飽きてしまうので、例えば、ずっと吹いているだけではなくて、歌ったり、手を叩いたりとか部員も楽しみつつ、人を楽しませるステージができると思うので、楽しめる練習メニューというのを心がけました。

――応援生活4年間を振り返っていかがでしたか

定期演奏会が最後だったのですが、応援があってこその応援部吹奏楽団だなというふうに思っていて、吹奏楽団の音で勝てたわけではないけど、その様に感じさせてもらえたような試合が数々あったなと思うので、こういった思い出を今後も忘れずにまたOGとして球場に行きたいなと思います。

――同期に一言お願いします

今まで、拙い練習メニューなどを組み立ててしまったのだけれど、そんな私に協力してくれて、ついてきてくれてありがとう。

――後輩に一言お願いします

来年以降人数が少なくなって大変なパートもあると思うのですが、やっぱりやる気とかは私たちの学年にないくらいある子たちだと思うので、そういった団結力とかやる気とかを今後もっと伸ばして頑張っていってほしいなって思います。

大垣汐里・連盟常任委員、演奏会運営責任者(文4=神奈川・県立厚木)

――ステージを終えての感想をお願いいたします

このメンバーでできる最初で最後のステージだったのですが、普段以上の力が出せてとてもいいステージになったと思います。

――集客面で工夫した点はありますか

部員一人一人が個人でお客さんを呼ぶということを意識しました。SNSもそうですし、個人個人が呼ぶことで集客につなげようとしました。

――運営責任者の具体的な仕事内容は

ステージの構成などは指揮スタッフやドリルスタッフ考えているのですが、私は業者の方とのやりとりだったり、演奏会全体における責任を担っているという立場でした。

――特に大変だった点はありますか

自分たちのやりたいことが実際に全てかなうわけではないので、どれくらいくらい希望をかなえてステージのつくれるかというところが、スタッフと協力できたのですが難しかったです。

――1、2曲目はコンクールの課題曲でしたが、コンクールで演奏する時との違いは

長い間練習したからこそ安心感がありましたし、点数を付けられるわけではなくお客さんを楽しませるものという点が違います。どうしたらお客さんに楽しんでもらえるかということをすごく考えました。

――心に残っている曲とその理由を教えてください

『ミュージカル「レ・ミゼラブル」より』です。秋季合宿のバスの中で映画を観たのですが、全員号泣してしまって(笑)。演奏していても感情移入できたというか、お客さんにも同じくらい感動してほしいという思い入れがある曲です。

――休憩時間にトロンボーン六重奏に出演されていました

想像以上にお客さんが来てくださっていてすごく緊張したのですが、温かい目で見てくださって普段通りの演奏ができたので良かったです。

――第3部で『早稲田の栄光』を演奏されていましたが、ステージからの景色はいかがでしたか

『早稲田の栄光』や応援曲はこのメンバーで吹く最後の曲だったので、指揮の中川も感動している表情で全員が感極まっていたかなと思います。

――楽団の後輩へ一言お願いいたします

定期演奏会を行うにあたって下級生に助けられたり気付かされたりすることがたくさんありました。

――楽団の同期へ一言お願いいたします

4年生は一人一人別の役割を持っていて、それぞれが頑張っていたので定期演奏会を成功させることができたので感謝しています。

DM丹野梢(文4=千葉・市川)

――演奏会を終えての感想はいかがですか

普段、毎週末の応援とか人前で演奏する機会はすごい多いんですけど、でもこうやってホールで演奏する機会っていうのはコンクールも含めて年に二回しかないので本当にみんなのキラキラした姿が見れて、みんなと一緒にホールで演奏できてすごく楽しかったです。

――出来栄えはいかがでしょう

120点、です。

――DMとして活動してきてよかった点はどこでしょうか

私はあまり下級生とかに目を配れるタイプの人間ではもともとなくて、でもDMとしてマーチングの練習を仕切ったりとかっていう役割があるんですが、それを通して一人一人を前から見る機会がすごく増えて。それで一人ひとりに対してすごく思い入れを持つようになったり、一人ひとりの、こんな表情するんだみたいなものをみれる機会をたくさんもらえたっていうのは、DMとして一番よかったなって思うところです。

――今回こだわった点はどこでしょうか

まずは、一体感のある演奏を心がけようと思っていて人に感謝の気持ちをを届けるっていう点、を特に意識するようにしていました。

――同期に一言お願いします

4年間一番部活をやっていて最も長い時間を過ごしているのが同期なので。本当に喧嘩もよくしたし、ぶつかることもあったんですけど、やっぱりみんながいたからこそ頑張ろう、と思える瞬間がすごくあったので一番の財産だな、って思います。

――引退後残される後輩に一言お願いします

応援部っていうのは応援する団体ではありますが、誰かに応援されるような団体にまず自分たちがならなければいけないので、みんなから愛されるような団体であってほしいなと思います

――今込み上げてくるものはありますか

やっぱりこの団体の人たちのことが大好きだな、っていうのはステージをやってて思っていてこの仲間と、今まで当たり前のように練習していたり学生会館で集まって雑談したりっていうような日常が当たり前じゃなくなってしまうんだなって思うとすごく寂しいしこれからも仲良くしてほしいな、って思います。

GC三村舞(文構4=神奈川・鎌倉女学院)

――演奏会を終えての感想はいかがですか

みんなが努力してきたことがすごく形になって、自分がGCとして練習を仕切っていく中でみんなの成長が見れて、演奏会でみんな思い思いの形で実ったっていうのがとてもよかったかなと思います。

――GCとして活動してきてよかった点はありますか

やっぱり、みんなの成長を自分が練習を仕切る側としてみることができることです。

――一緒に練習してきた同期に一言お願いします

辛いこととか、悲しいこととか、楽しいことばかりではなかったと思うんですけれども、GCで長みたいな形であれたのも、プレイヤーの支えがあって、同期の支えがあってのことだと思うのでとても感謝しています。

――後輩にも一言お願いします

これから応援部は過渡期に入ると考えていて、その中でも今回下級生が自分たちらしさを出してくれたので任せられるな、大丈夫だなと安心しています

――これで引退ですが、込み上げてくるものはありますか

4年間色々な活動があって応援とかドリルとか演奏とか、色々なことが終わる中で正直もう終わってしまうのかっていう実感がないです。込み上げてくる実感もまだないです(笑)。