代交代からはや半年。ついに『六旗』の季節がやってきた。日曜日の23日、第66回の六大学合同ステージ『六旗の下に』が神奈川県民ホールにて開催された。早慶戦からおよそ3週間、ステージに向けて本格的な練習を重ねてきた早大応援部。1年に1度行われる、六大学の応援がメインのステージを観ようと、会場には関係者や大学応援ファンが詰めかけた。『六旗の下に』では、休憩を挟みながら六大学それぞれのステージが行われる。オープニングと各校のステージ、フィナーレという構成だ。オープニングとフィナーレは六大学が一体となって一つのメドレーを作り上げる。
各校のチアリーダーズやカラーガードが登場する華やかなオープニングが終わると、各校のステージが始まった。各校の持ち時間は30分間。六校とも、3年生リーダーが司会を務める。本年度は早大からのスタートであった。最小限に絞られた照明の中で、池原瞭太旗手(商4=埼玉・川越)による校旗掲揚。『昇り竜』という左右に大きく振りながらの校旗掲揚は迫力満点だ。日々の鍛錬の成果を見せ、「華の旗手」として校旗の存在感を高めた。続いて第一応援歌・『紺碧の空』、『伝統の勝利の拍手(デンパク)』、スペシャルメドレー、最後にリーダー全員で校歌斉唱という流れだ。『伝統の勝利の拍手』は早慶戦で勝利した時のみ披露される拍手であり、ステージでは『六旗の下に』でのみ披露される。本年度披露したのは、加藤雄基・代表委員主務、リーダー練習責任者(政経4=東京・早実)。小野興連盟常任委員(政経4=東京・世田谷学園)が「彼に(『伝統の勝利の拍手』を)やってもらってよかった」と語るように、同期からの信頼は厚い。下級生リーダーを後ろに従え、気合いのこもる拍手を行った。新人も全力で加藤に気合をぶつける。情熱や威厳の感じられるテクに圧倒され、観客席は静寂に包まれた。見事振り終えて、やり切った表情でお辞儀をする加藤に、観客は惜しみない拍手を送った。そしてリーダーがメインのスペシャルメドレーでは、リーダー4年生が人数の多さを活かし、他大学とは一線を画す演舞をした。旗を掲げる池原を除く9名が一直線に並んで突き出されるコンバットマーチ。大人数の迫力に、感嘆の声を漏らす観客の姿も多く見られた。最後に校歌を披露したのは下田隆博代表委員主将(政経4=東京・早大学院)である。半年間早稲田の名を背負ってきた主将として、威風堂々としたテクで締めた。
校旗掲揚をする池原
ステージの魅力もさることながら、司会や学生注目(学注)にも、各校の特徴が表れる。どの大学も、司会の言葉遊びには工夫が見られ、観客を飽きさせない。各大学の春季リーグの戦績や大学のある場所、大学名をもじるなど、ユーモラスな各校の司会は毎回観客を沸かせた。また、紹介されたセンターリーダーの部員、団員の出身校に対して観客が「名門!」と声を張り上げて応えるやりとりや、観客席を全力で走り回る下級生リーダーの姿は、明治神宮球場での野球応援を彷彿とさせる。オープニングと同様に、六大学が共同で作り上げたフィナーレのステージでは、各校の第一応援歌、応援曲が演奏された。四年生リーダーが舞台上でテクを振り、下級生リーダーは一階席を走り回り会場全体を熱烈な雰囲気で包み込んだ。観客も声を出したり立ち上がって拍手をするなど、応援を存分に楽しむ。大盛況のうちに、第66回『六旗の下に』は幕を閉じた。
校歌・『都の西北』のテクを振る下田主将
最後の学注で東京六大学応援団連盟委員長の三竹亮(東大4年)が話したように、時代の変遷の中で、求められる応援部、応援団の在り方は変わり続けてきた。だが、時代を超えて、応援部の活躍を願う人は数多い。『六旗の下に』を振り返り、「応援団ファンの皆様にお見せできてよかった」と下田は語った。感謝を忘れずに日々の練習に取り組んできた早大応援部。夏季合宿を乗り越え、秋季リーグでのさらなる輝きが楽しみである。
(記事 馬塲貴子、写真 安岡菜月)
コメント
下田隆博代表委員主将(政経4=東京・早大学院)
――『六旗の下に』に向けて、早稲田大学応援部としての目標はありましたか
そうですね、六大学で前期の集大成を見せる場であったので、他大学に負けない意気込みで臨もうというのは考えていました。
――リーダーとしての目標はありましたか
やはり全員でまとまって気合を伝えようというのを目標にしていました。
――下田主将の個人的な目標はいかがでしょうか
そうですね、自分がやはり早稲田の代表として校歌を振っていたので、歴代の主将に恥じないように全力で振ろうと決めていました。
――加藤主務の勝利の拍手はどのような印象でしたか
もう他大学を圧倒できる素晴らしいものだったなと思います。
――ステージ全体を通しての感想や印象に残った瞬間があれば押しえてください
まず、感想としては早稲田全体で練習の成果を下級生、上級生共に出すことが出来たと思っています。それを全ての応援ファンの皆様にここで披露できたのが良かったです。印象に残ったのは、やはり四年生一人一人のテクや声ですね。観客の皆さまにも注目していただけていたら嬉しいです。
加藤雄基・代表委員主務、リーダー練習責任者(政経4=東京・早実)
――リーダー練習責任者として『伝統の勝利の拍手』を披露されていましたが、テクへのこだわりなどはありましたか
伝統の拍手なので、歴代続いているものを踏襲する形にはなるんですが、僕らしさとしては、激しさというか、気持ちで伝えるというのを意識しました。テクのキレや声に気持ちを乗せるようにしました。
――『六旗の下に』に向けての練習について教えてください
期間としては早慶戦後からなので、3週間くらいですね、週3回位のコマでやりました。それでどうにかここまで持ってきたという感じですね。内容としては、拍手と連打が出来てからやっと曲に入れるので、まずは拍手と連打を見て基礎体力を付けてから、メドレーを通したりとかデンパクをやったりしました。
――代替わりから半年が経ちましたが、パートとして最も成長した部分はどこですか
まあ、新人に関しては、このステージ練習を通して、気合や気持ちを応援で表現できるようになったかなと思います。ただまあ、拍手や連打の疲れが出ちゃっている様な状態なので、そちらに関しては合宿や秋のリーグ戦の練習を通して体力を付けていかなくてはいけないというのが課題ですね。2、3年生に関しては、新人をどう持って行くかという所ですね。『六旗』が2、3回目になるので、新人の成長させ方が成長したと思います。
――ステージ全体を通しての感想や印象に残っていることなどがあれば教えて下さい
伝統の勝利の拍手に関しては、自分にピンスポットが当たって下級生全員が気合を僕にぶつけてくれたという瞬間は一番気持ちが高揚しました。あれは僕しか味わえないというのが、本当にかけがえの無い体験だったと思います。あとはフィナーレも迫力があったと思うので印象に残っています。
池原瞭太旗手(商4=埼玉・川越)
――きょうのステージの校旗掲揚において、心がけていたことはありますか
そうですね、六大学の中でどの大学よりも一番すごいパフォーマンスをして、一番美しく旗を持とうと考えていました。これは先代の旗手に結構言われていたことなんですが、「早稲田は日本一の応援団なんだから、旗を持つときも一番美しく持て」との言葉をずっと考えてやっていました。
――パフォーマンスを通しての個人的な感想があればお願いいたします
きょうやった「昇り竜」という左右に振るのはかなり難しくて、旗手になったからといって誰でもできるわけではないんですね。自分はそのために練習してきて、その成果を出せたと思うので、割と満足しています。
――「昇り竜」の練習はどのようにされていましたか
『六旗』前の期間で週3回くらいやっていましたね。実際に旗を揚げて振る練習をしていました。
――他大学の校旗掲揚を見ての感想はいかがですか
どの大学でも、旗手というのは誇りある役職ですので、プライドを持ってやっていたなというのは感じました。東大と慶大も『昇り竜』をやっていたので特に印象に残っていますね。でも、どの大学にも(早稲田は)負けていないなという自負はあります。
――リーダーとして半年間で最も成長を感じた部分はどこですか
やっぱり新人だと思います。入ったばかりで最初の方はよくわからずにやっていましたが、(今回のステージでは)自分たちから企画を出していくということを学んで、お客さんにもそれが伝わったと思うので良かったです。
小野興連盟常任委員(政経4=東京・世田谷学園)
――連盟常任委員として『六旗の下に』への意気込みや目標はありましたか
早稲田大学応援部が日本一の応援団体であるということを、日本一の応援団連盟の中で証明したかったといか、全ての応援団ファンの皆さまであったり六大学の構成員全員に見せつけたかったです。
――個人的な目標はいかがですか
生涯で一番の『紺碧の空(紺碧)』を振る、ということですね。連盟常任委員として、4年間応援部でリーダーをやってきて、自分に関わってくださり鍛えてくださった連盟常任委員の方々であったり、早稲田大学のOB、OGの方々であったり、そういった方々に令和元年度の連盟常任委員の『紺碧の空』をお見せしたかったです。今年も、こんなにすごい『紺碧』を振ることができるというのをお伝えしたかった。
――加藤主務の『伝統の勝利の拍手』にはどのような印象をお持ちですか
加藤の拍手は舞台袖から見ていました。加藤がリーダー練習責任者で、彼が『デンパク』を振ってくれてよかったなあという思いだけです。ただ彼には時間の制約を一切かけることなく振らせてあげたかったなあというのが心残りです。
――他大学との連携は取れましたか
自分はかなり協力的に行動していたので連携は取れていたかと思います。
――『六旗の下に』のステージを完成させる上で一番大切だと思われることはなんですか
やはり、そうですね、1校あたり30分という尺が決められていて、その尺を守らないとタイムスケジュールが来年度以降の連盟、『六旗の下に』の運営に関わってしまうのでまずは30分間の制約を守ることですね。また30分の尺の中で、令和元年度の早稲田大学応援部リーダーの「今」を見せる、十分に見せるというのが大切だったと思いますね。
――きょうのステージを通しての感想や印象に残っている瞬間があれば教えてください
全体でですか…。一番最後のフィナーレでの三竹委員長の学生注目ですね。自分が連盟常任委員として、同期と一緒に色々な事をしてきた中で、彼の重責などは少しは理解できたと思っています。そのような状況で彼の学生注目を聞いて、彼の思いが結実したステージになったのではないかと思いました。