立ち込める熱気神宮球場の熱気は、きびしく照り付ける太陽の日差しのためだけではなかった。前日の明大1回戦で明治に勝利を許したワセダは、2回戦ではその敗戦を奪い返そうと息まいていた。「1点も落としちゃいけない」と小宮佑一朗応援企画責任者(法4=東京・早大学院)が話すように、東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)優勝を狙うワセダナインは失点ゼロを目標とする。選手と思いを同じくする応援部も、気合十分で臨んだ。
応援企画責任者としてサイン出しをする小宮
開始早々『Viva Waseda』でワセダナインに勢いを送ると、1回裏では4番・加藤雅樹主将(社4=東京・早実)が適時三塁打で見事に2点先制。2度目、3度めの『紺碧の空』が会場に響き渡り、早大応援席は大いに沸き立つ。4回表では同点に追いつかれてしまったものの、薗田将直(法2=東京・早大)が『サクラ咲け』を披露し「紺碧の花を咲かせましょう」と応援席を力づける。4回裏では小野興連盟常任委員(政経4=東京・世田谷)が『Blue Sky Waseda』から『F4』『大進撃』さらに『BLOOM』というおなじみのメドレーを披露すると、ワセダも負けじと1点のリードを取り戻した。5回表でのスタンツを多用した華やかなチア演技や、5回裏の「ウーバーイーツで奪いつくす」との小宮のウィットに富んだ気合の言葉で、暑さに辟易していた観客は応援への活気を取り戻す。しかし依然として肝心の得点はならず、8回表ではさらに3点を失い、一気に逆転される。その後も渾身の応援を続けたが点を取り戻すことは出来なかった。応援で選手を勝利に導くことは叶わなかったが、観客の表情には、展開の見えない試合を応援しきった、応援部とともに全力を尽くしたという爽やかな笑顔が浮かんでいた。
チアリーダーズの演技は多くの観客を笑顔にした
今回の明大戦は、新入部員が東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)での応援を初めて体験した記念すべき一戦であった。新入部員は、パートごとに分かれて応援する。リーダーの新入部員は主に学ランで客席の間を走り回って、観客と視線を合わせて盛り上げる。チアリーダーズは客席から、吹奏楽団は演奏する上級生に混じって声援を届ける。一年の鍛錬を積んで顔つきのたくましくなった二年生が、一年生のフレッシュな姿を優しく見守っている場面もあった。また泉川創太リーダー主務(政経4=東京・清瀬)作曲の新応援曲『雷轟』も先週の東大戦に続いて演奏され、その重厚感で直後の『コンバットマーチ』にさらなる疾走感を加え、応援席のテンションを高める。「勝負所で演奏され」(春山尚輝副将・吹奏楽団責任者(創理3=茨城・江戸川)るので、今は新鮮なその曲調も、すぐに頼もしい応援として観客の耳に残るようになるだろう。
太鼓を交互に演奏する春山(左から2番目)
優勝狙いの戦線からは大きく外れてしまったものの、応援部は常に前を見据えている。毎試合、選手と感情をシンクロさせて試合に集中するその姿は、応援席でしか体感することができない。応援席に「参戦」して、選手らを後押しするのも、この春の有意義な過ごし方であろう。立教戦での応援にも期待がかかっている。
(記事 馬塲貴子、写真 伊東穂高)
コメント
小宮祐一朗応援企画責任者(法4=東京・早大)
――ピンチの局面が何度か訪れましたが、どのような思いで応援されましたか
昨日の試合を落としていて、リーグ戦は勝ち点が4無いと、ほぼ優勝が厳しいので、これ(早明戦)を落としてしまうと次残っている3回戦全部勝たないといけないんですね。なので、どの場面でも1点も落としちゃいけない。最初はリードしてたんですけど、そのような場面でも1点もあげちゃだめだという思いで守備の応援は組んでいました。
――5回裏での「ウーバーイーツ」に掛けた激励では応援席から笑いが起こりました。どこから着想を得ましたか
着想は、新歓期間ウーバーイーツが大量のビラを配っていたのを見て、思いつきました。ウーバーイーツで、もう1単語くらい(かける言葉が)ないかと考えていたんですが、思いつかず結局1個だけでした。だからネタとしては結構微妙だったんです。4年生が「そんな良かったか」って言ってたくらいです(笑)。今日は運良くウケました。
――逆転のかかる9回裏では、どのような応援をされましたか
気持ちとしてはずっと『紺碧の空』をやりたかったんですけど、その前の回で同じ状況で逆転狙っていた時に紺碧の空をずっとやったので。お客さんが疲れちゃってってのもあってあまり反応が良くありませんでした。だから紺碧の空は1番ですぐ切って、普通のメドレーをやりながら、チャンスがあったらそこは『コンバットマーチ』でいこうという組み方をしました。
――今年度は4年生のリーダーが10名と多いですが、昨年度との違いはどのようなものだと思われますか
リーダーは応援席にいたときには、やはり大きな声ほどいいんです。4年生が多いことのメリットとして、やはり4年間やってきた経験を持っている人がいっぱいいることが大きいですね。太鼓を打つにしろ、場内に出て歩き回るにしろ、経験豊富なリーダーが揃っています。かつ10人いてみんな違う個性を持ってるんですよ。それぞれすごい面白い人たちばかりなので、それが10人束になって応援の力に還元できるのが今年の良いところですね。
――新入部員の活躍にはどのような期待をされていましたか
新人リーダーは、僕らよりも学年の人数が多いです。新入生は応援のことも、野球のこともわからない人もいっぱいいるのですが、その中でとにかく頑張って声を出す。目の前のお客さんをいかに喜ばせるためにやれるかっていうところだけを考えてやってくれることが一番彼らに期待することです。がむしゃらさですね。
――新2年生にはどのような期待をされていますか
2年生は1年生の頃から結構がむしゃらにやるってことができていた人たちなので、まずそこのステージはクリアしていますね。彼らはすごい仲良い代なんですよ。なのでそれをどうやって(下級生に)伝えられるか。「俺たちこんな楽しくやってるからお前らも頑張ろうな」みたいな、良い引っ張り方ができればと思います。怒って引っ張るのではなく。それを彼らに期待しています。
春山尚輝副将・吹奏楽団責任者(創理4=茨城・江戸川)
――点を取って取られての試合内容でしたが、吹奏楽団の応援の仕上がりはいかがでしたか
吹奏楽団としては、きょうから新人が入ってきて、慣れない部分とかもあったとは思うんですが、緊迫した状況でも集中力を切らさずに守備も攻撃も応援できたのかという風には感じています。ただ細かい部分はもっと詰められる部分があると思うので、そういう部分のゆるみが伝わってこのような結果になってしまったかと思います。本当に、一音一音に思いを込めて演奏できたらなと感じています。
――新入部員のみなさんはもう演奏に参加されていますか
パートは決まっていますが、本日は楽器なしでコールやアクションをやってもらっていました。次回から演奏にも参加します。
――新応援曲として東大戦から使用されている『雷轟』にはどのような思いを込めて演奏されましたか
リーダーの泉川が作曲はしたんですが、ところどころ吹奏楽団の四年生も意見を出しあってつくった曲なので、四年生としては思い入れがある曲です。吹奏楽団としては、「ワセダらしい」というよりは結構「かっこいい」曲調だと思うんですね。だから雰囲気をがらっと変えることが出来るし、「ここぞ」というときに使えるので、テンションが上がる曲になっているのかなと思いますね
――『雷轟』は勝負所で使用されるということですか
そうですね。『雷轟』は『コンバットマーチ』につながります。コンバットマーチの序盤をゆっくりして緩急をつけています。9回裏でも使用していました。雰囲気が変わるところが伝われば嬉しいです。