六大学の仲間とつくり上げた特別な夜

応援

 年に一度、織姫と彦星が会うといわれている七夕。丁度この日府中の森芸術劇場・どりーむホールでは、今年で44回目となる合同演奏会が行われた。この合同演奏会には、通常前に立って指揮をとっているリーダーは出演しない。また上級生が目立つ普段の活動とは異なり、2年生がメインで活躍する数少ない舞台だ。4月から東京六大学応援団連盟の一員として合同練習を重ねてきた吹奏楽団・チアリーダーズの面々は、その成果を十分に発揮し、年に一度の豪華ステージを大成功に収めた。

 第1部のシンフォニックステージは『ザ・バンドワゴン』で始まる。コロコロと響くピッコロやグロッケン、ミュート(※1)を用いたトランペットなど、明るくて少しお茶目なメロディーは聞く者をわくわくさせ、この大舞台の幕開けにぴったりであった。2曲目の『第六の幸福をもたらす宿』は壮大な始まり、しっとりとしたソロパート、軽快で楽しいエンディングと様々な要素が盛り込まれており、こちらも観客の心を引き付ける。小山夏乃連盟常任委員(政経4=東京・早実)はこの曲に対して、「本当に今までで一番良かった」と語った。過密なスケジュールの中でもそれを感じさせないクオリティの音楽を届けるところは、やはりさすがの一言に尽きる。3曲目の『エル・カミーノ・レアル』も迫力満点の仕上がりであった。さて、今年の合同演奏会のテーマは『Try It Now!』である。昨年までは3部構成だったが、今年からは4部構成となり、第2部にチアリーディングステージが追加された。テーマ通り、新たな挑戦が行われたということだ。『明日はきっといい日になる』、『Anniversary!!』、『ダンシングヒーロー』などの流行りのJ-POPに合わせて、それぞれ2年スタンツ隊、2年カレッジ隊、3年スタンツ隊がはじける笑顔と共に演技を披露する。ワセダは六大学の中でもこの合同演奏会に出演するチアリーダーズの人数が多く、2年生の中にはカレッジにあまり慣れていない部員もいたわけだが、舞台上では乱れることのないそろった演技が見られた。

おそろいの衣装を着て踊る2年カレッジ隊

 第3部は華やかなドリルステージ。『Main Crops The Lion King』では、DM(ドラムメジャー※2)を和田瑛里花(基理4=東京・渋谷教育渋谷)が、GC(ガードチーフ※3)を加藤愛子(国教4=東京・小石川)が務め、全体を引っ張り最上級生としての姿を見せた。インストゥルメンツ(※4)やカラーガード(※5)は通常の部活応援では見ることができないので、これもまた特別感を与えてくれる。特にインストゥルメンツの交錯する行進は見事で、六つの大学が合同でやっていることを忘れてしまうほどに一切の乱れがなかった。またドリルステージのアンコールでは、チアリーダーズと一緒に各大学の応援歌や校歌をメドレー形式で披露。ワセダの番には『W』、ケイオーの番には『K』というように、上から見ると六大学のローマ字の頭文字の形になるよう整列してから始まる動きになっていて、2階席の観客も十分に楽しめる工夫が見られた。最後となる第4部はポップスステージだ。ドリル隊とは別の演奏隊のメンバーがジャズらしい黒い上下とカラーネクタイの格好に着替え、第1部とはまた異なる雰囲気で行われた。2曲目の『ハウルの動く城』では、佐藤夏海(法4=新潟)が指揮を担当。会場を曲の持つ独特なファンタジーの世界観で包み込んだ。第4部最後の曲は『ベニー・グッドマン・メドレー』。ノリノリのジャズソングは会場の手拍子を誘い、合同演奏会の締めくくりにふさわしい一体感のあるステージに仕上がった。

視覚と聴覚の両方で楽しめるドリルステージ

 春はどの部活もリーグ戦真っ最中だ。ワセダの応援部は様々な部活に顔を出し、その場その場で全力の応援を遂げてきた。そんな通常の活動もある中で時間を作り、この合同演奏会をつくり上げたと考えると、並々ならぬ努力が背景にあったことは容易に想像できる。しかし、その大変な時を共にした六大学の仲間とはより絆が深まったようだ。「いつもはライバルだけど、こうして一つの最高のステージをつくることができて本当に幸せです」と土屋あかりCS(チアスタッフ※6)(文4=東京・新宿)は話す。年に一度の合同演奏会は、天の川で輝く星のようにきらきらした部員たちのやり切った笑顔で幕を閉じた。

※1 弱音器。音を変化させることができる。

※2 ドリルステージやパレードでの指揮者。ステージ全体の動き(コマ)を作成し、構成を考える役でもある。

※3 カラーガードの振り付けを考える役。

※4 楽器を演奏しながら動き、様々な隊形を形作るパート。

※5 マーチングにおいて旗などを使用して舞い、視覚的表現を行うパート。

※6 チアカレッジやチアスタンツの振り付けやステージ構成を考える役。

(記事、写真 今山和々子)

コメント

小山夏乃連盟常任委員(政経4=東京・早実)

――ステージを終えた感想をお願いします

 私は元々裏方の役職で、表方に出る人ではないんですけど、今回出させてもらって。やっぱり六大学で一緒にやることでお互い良い刺激を受けられるし、4年間に1度しか普通は出ることがない演奏会なので、2年生にとってもすごく良いものになったかなと思います。

――出来栄えはいかがでしたか

 私が出ていたのは演奏隊なのですが、演奏隊もドリル隊も含めて、練習ではなかなか上手くいってなかったところもきょうは上手くいったというところが沢山あって…実際に上手くいったことに対して涙を流すような人も沢山いたので、良い出来だったのではないかと思います。

――4月からやってきた中で、大変だったことはありますか

 早稲田大学では他の五大学と違って、早稲田大学応援部としてコンクールに向けての練習(週2回)と、この六大学の合同演奏会のための練習(週3回)に両方出ながら進めていかなければいけなかったので、私もですし、2年生にとってスケジュールが忙しかったかなと…。体力的に大変だったと思います。

――特に思い入れのある曲はありますか

 思い入れというか…私としては、第I部の2曲目の『第六の幸福をもたらす宿』という曲が、本当に今までで一番良かったなと思いました。

――共に頑張ってきた六大学の仲間に向けてコメントをお願いします

  ここで一緒に練習をして、ステージに乗ることによって、いつも自校でやっているときとは全然違う刺激が得られて、音楽っていいなと改めてみんなが感じられたかなと思うので、これからも応援ではライバルだけど、こういう面では仲間としてやっていきたいなと思います。

土屋あかりCS・連盟常任委員(文4=東京・新宿)

――ステージを終えた今の気持ちをお願いします

 私は裏方から支える役だったんですけど、六大学の下級生の楽しそうな表情と、やり切った涙を見れてそれだけで今までやってきて良かったなと思います。

――2、3生の演技の出来栄えを見ていかがでしたか

 本番というのもあって一番良い表情をしていて、少し失敗もあったんですけど全力が出せたんじゃないかと思います。

――大変だった点や苦労した点はありましたか

 私のやっていたカレッジ隊というのは初心者というか、カレッジを初めてやる人も多くて。初めてやる子たちが慣れないところが多いので、どうフォローするかが大変でした。

――ワセダは他大学に比べて人数が多かったように思います

 人数は多かったんですけど、その中でもみんな積極的に他大学の同期と関わってくれたので良かったなと思います。

――最後に六大学の仲間に向けてコメントをお願いします

 いつもはライバルだけど、こうして一つの最高のステージをつくることができて本当に幸せです。ありがとうございました。