伝統の旗の下、六大学の絆を深め合う

応援

 『六旗の下に』というステージをご存じだろうか。東京六大学応援団連盟が主催するパフォーマンスステージで、今年で65回目を迎えている。通常、応援部は試合会場に赴き選手を応援することが活動であるが、この『六旗の下に』は唯一リーダーが主役となるステージである。年に一度の大舞台に、早大応援部も気を引き締め参加していた。

 オープニングステージは、例年のチアリーダーズによる演技ではなく、吹奏楽団の演奏に合わせ各校が順番に旗を掲げて見せるものであった。色とりどりの伝統の旗は、そこに上げられるだけで舞台がとても華やかになる。オープニングステージが終わると、それからは各校の校歌・応援歌・拍手紹介へと移った。早大は東大の次、二番目の出番。まずは校旗紹介だ。オープニングステージでは六大学で並んで旗を掲げたが、こんどは早大だけに注目が集まる。「日本一の校旗手であると、ここで証明することを意識しました」(木村太一旗手、商4=東京・国士館)。木村によって立派で優美な『新大校旗』がすっと上がると、会場からは拍手が沸き起こった。その後の演技のために『新大校旗』はさげられてしまったものの、舞台上手と下手にはそれぞれ『新前川旗』と『稲翔旗』が掲げられ、その2つの旗の下、早大のステージは進行していった。

オープニングステージで『新前川旗』を掲げる木村

『六旗の下に』の大きな特徴として挙げられるのは、各校の拍手紹介があることではないだろうか。早大の『伝統の勝利の拍手』は早慶戦に勝利したときのみ行うもので、三拍子、四拍子、一拍子、二拍子が含まれている。構成はシンプルでありながら、その間間には細かな技がたくさん組み込まれていて、思わず観客までも緊張してしまうような、そんな重みのある拍手だ。これを先頭に立ち指揮したのは、副将を相務める柳澤遼輝連盟常任委員(人4=埼玉・春日部)である。柳澤の『伝統の勝利の拍手』は、体を大きく反らせる体制のときでもピシっと決まっていて、見るものを魅了するものだった。その後は『えんじの唄』から始まり『コンバットマーチ』で終わる応援曲メドレーや、『早稲田大学校歌』を披露。人数の多さを生かした迫力あるパフォーマンスに、今年の早大応援部らしさを見て取れた。

『伝統の勝利の拍手』で観客を魅了する柳澤

 全ての大学のステージを終え、最後に待っていたのはフィナーレだ。このフィナーレでは、ステージの順に応援曲をメドレーとしてテンポよく披露する。リーダーは各大学の者がそれぞれ出てくるのだが、後ろで各校1人が代表して並んで踊るチアリーダーズは、メンバーの入れ替えがない。土屋あかり連盟常任委員(文4=東京・新宿)は、スタンディングオベーションの大勢の観客を前に、普段はなかなか踊る機会のない他五大学の振り付けを完璧に踊りこなした。また東京六大学(六大学)全てのメドレーが終わったのちには、今年の東京六大学応援団連盟の代表が明治大学応援団のリーダーであったことから、全員で肩を組み『紫紺の歌』を歌った。普段は闘志のぶつかり合うこの六大学が、笑顔で『紫紺の歌』を歌っている。通常であれば異様であるこの光景は、『六旗の下に』が六大学応援団としてつくりあげるステージであったことと、六大学の仲の良さ、また絆の深さを十二分に表していた。秋になれば、また野球の東京六大学秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)が始まる。六大学とは、良き好敵手であり、仲間なのだ。平成最後のリーグ戦優勝をかけた戦いに向け、どの応援団もさらに練習を積むだろう。早大応援部だって負けてはいられない。「秋はもっと、春以上にすごい応援とステージを見せられるように」(渡邊友希代表委員主将、政経4=静岡・沼津東)。六大学応援団が次に顔を合わせるのは、球場のフェンス越しだ。

(記事 今山和々子、写真 杉本遼冴、馬場貴子)

※掲載が遅くなり、申し訳ありません

コメント

渡邊友希代表委員主将(政経4=静岡・沼津東)

――きょうのステージにはどのような意気込みで臨まれましたか

そうですね、『六旗の下に』というのは一年に一回、唯一リーダーが主役のステージです。だからこそ、30分という短い時間ではあるんですが、一年で一番、リーダーとしての士気が高まっている時間となることを目指して臨みました。

――通常の活動とは異なり、きょうは応援する選手がいませんでしたが、何か意識されたことはありましたか

普段自分たちはあくまでも応援する側ですが、きょうは自分たちが主役だという意識を持ってステージに臨みました。

――他大学と比較して、早稲田大学らしい応援とはどのようなものだと思われますか

やはり現在の早稲田を他大学と比べると、人数が多いということがあって、その人数の多さを活かして、ダイナミックなステージができます。人数が多いと揃えるのは難しいんですが、全員合った時の迫力というのは他大学には絶対負けないと思います。

――きょうの応援ステージに点数を付けるとしたら何点ですか

なるほど、難しい質問ですね。個人的には、90点くらいはつけていいと思います。下級生たちも練習の成果を出してくれて、4年生である自分たちも練習してきた成果を出した、いいステージが出来たと思います。ただ、まだ満点ではないと思うので、来年は3年生が今年を上回るステージを作ってほしいなという願いを込めて90点を付けます。

――秋に向けての意気込みを教えてください

春季リーグ戦が終わり、応援部としても『六旗の下に』が終わったことで、大きいステージは終わりです。しかし、また9月に向けて、自分たちでの部内での強化練習期間に入ります。この強化練習期間と夏の合宿を乗り越えて、秋はもっと、春以上にすごい応援とステージを見せられるように頑張っていきます。

柳澤遼輝副将・連盟常任委員(人4=埼玉・春日部)

――きょうはどのような思いで臨まれましたか

 自分は高校時代から応援をやっていて、高校のOBが慶應義塾大学の応援指導部にいたので、『六旗の下に』を見せてもらう機会があったんですけど、その頃から憧れていたステージを、こんど4年生になって自分が作る立場として、どうやったらよりお客さんを感動させられるのかということを考えて、一つ一つの動きに気持ちを入れて全力でやっていこうと思っていました。

――連盟常任委員の立場として、大変だったことはありましたか

各大学たくさん演技があるので、その中でどうしたら早稲田大学らしいステージができるのかを考えるのが、ある意味難しかったかなと思います。

――きょうのステージは普段と異なり応援対象の選手がいませんでしたが、何か意識されたことはありましたか

 応援ではとにかくつらいとき、苦しいときに気合いを出してがむしゃらにというのがあると思うんですけど、やっぱりステージということで、お客さんに魅せるので、どんなにつらくてもそういう素振りを見せないで、最後まで誰が見てもかっこいいと思ってもらえるような演技を心がけました。

――きょうの演技の出来栄えはいかがでしたか

 自分としては4年間の集大成として臨んだわけなんですけど、まだまだ思い返せば反省点はあったので、点数としては70点くらいかなと思います。そこを100点にできるように、秋のリーグ戦や稲穂祭もあるので、そこで一生懸命最後の最後まで上を目指して頑張っていきたいと思います。

――少し早いですが、秋に向けての意気込みをお願いします

 秋は絶対に優勝して優勝パレードをしたいと思っているので、一戦必勝の心持ちで頑張っていきたいと思います。

木村太一旗手(商4=東京・国士館)

――旗手という重要な役割でしたがどのような思いで臨みましたか

 早稲田の旗手というのは六大学の中で一番きれいに校旗を持ち、旗を下げる際に他の大学は腰を曲げて持つ中で、早稲田は背筋をしっかりと伸ばしてきれいに下げるという伝統があるのでそれをしっかりと守り、かつ日頃の練習の成果が出せるように長い時間持って名実共に日本一の校旗手であると、ここで証明することを意識しました。

――『六旗の下に』は普段と比べてより旗手が注目されるステージでしたが、心掛けたことはありますか

僕は結構緊張しいで、スポットライトなどがありステージ上に立つと頭が真っ白になってしまうのですが、 やはり日頃の練習が大事だなと感じていて、毎日の練習を体に沁みこませて、あとはそれを出すだけだなというところです。

――この春のリーグ戦を振り返っていかがでしたか

最初立教大学と明治大学に立て続けに敗北し不安な部分があったのですが、野球部の小島主将(小島和哉主将、スポ4=埼玉・浦和学院)などとプライベートで仲が良く一緒にご飯を食べに行って話をし、野球部が必死にもがいて苦しんで闘っていることを知っている中で、応援部が頑張らないわけにはいかないというところで、自分たちも応援の中で何か変えていかなければならないところはあるかを模索していきました。基本毎年リーグ戦期間中に変わることはない応援に新しいものを導入していくなど、とにかく野球部を応援したいという一心で頑張りました。この間行われた春の早慶戦で大量得点を取って勝ったことであったり、僅差の延長戦で勝ったことだったり、しかも4年生の活躍で勝てたことは彼ら(野球部)の苦労が報われた瞬間なのかなと思います。ですがまだ彼らは全部報われきれてないと思うので、秋、皆さんも期待していると思いますが頑張りたいです。

――秋のリーグ戦に向けての意気込みをお願いします

もう秋に向けて自分も準備していっているので、お客さんにたくさん来ていただけることと、野球部の勝利に繋がるために自分が灰になるまで頑張り続けることです。