夏の訪れを感じるカンカン照り。神宮球場には青空が広がっていた。この日、東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)は第4週を迎え、ワセダにとっても3カード目と折り返しになる東大戦が行われた。昨秋の秋季リーグ戦最下位の悪夢を優勝という結果で塗り替えたいワセダであったが、立大戦、明大戦を終えて未だ勝ち点を得ていない。今度こそ、と野球部が奮い立つ中、この日も応援席には精悍(せいかん)な顔立ちをした応援部の姿があった。
リーグ戦の行われる「週末」とかけて、小川駿也新人監督(教4=東京・早稲田)は学注で「ウィーク(weak)なワセダをエンドしよう」と呼びかけた。ワセダにとってこの東大戦は、気持ちよく勝って今後に勢いをつけるためにも大事な日である。しかし試合展開は、多くの人の予想を裏切るものになった。「例年だと『コンバットマーチ』が長く流れていたり、『紺碧の空』がずっと流れていたりという優位な状態になるはず」(柳澤遼輝副将、人4=埼玉・春日部)。東大戦なら、『紺碧の空』をたくさん歌える、そう思って応援席に来た人もいたであろう。決して今季の東大がワセダをねじ伏せるほど強いというわけではない。安打は出ていたし、敵失もあった。しかし、好機を何度も迎えていながらあと1本がなかなか出ず、立ち上がって応援していた観客たちは回の終わり、また点が入らなかったと少しばかりがっかりした表情で腰を下ろしていた。
学注をする小川
0-0で迎えた9回裏。この日はプロ野球併用日であったため、大会規定により延長戦は行われない。まさかこのまま引き分けで終わってしまうのか、と頭によぎった人はそう少なくはないだろう。そこで、点が入らず焦っている野球部に向け応援部は、回の最初から全身全霊の『コンバットマーチ』で背中を押した。「何とか大切な1点を取るべく一所懸命応援できた」(若松佑吹奏楽団責任者、教4=埼玉・川越)。リーダーも、チアリーダーズも、吹奏楽団も、観客も、曲に思いを乗せとにかく必死になって応援した。そして、池田賢将(スポ4=富山・高岡南)、田口喜将(商3=東京・早実)らにより初得点、すなわちサヨナラ勝ちが決まる。最終回の応援席は、この日一番の盛り上がりを見せた。
守備中も応援席を盛り上げるチアリーダーズ
「今回のこの1点は、今までの、立教大学戦、明治大学戦で取ったどのイニングの、どの点数よりも、重要で意味のあった点だったのではないか」と、柳澤は話す。この1点がなければ、ワセダは優勝はおろか、また昨季のように最下位に一歩近づいてしまうところであった。優勝争いに関わることが難しくとも、ワセダには、大きな舞台である早慶戦が待っている。慶應に勝つことが、リーグ戦優勝に並ぶもう一つの目標であるといっても過言ではない。この日の翌日に行われた2回戦は5-3で勝利を収め、2連勝の勝ち点を得ることができた。ウィークなワセダはエンドしたのだ。この勢いをそのままに、法大戦、慶大戦(早慶戦)も『紺碧の空』を響かせていきたい。
◆学生注目!早法戦を見に行こう!
ことしから応援部は野球部や六大学ゼミナールなどと協力をし、春季リーグ戦を盛り上げるために様々な取り組みをしている。今月16日には、お昼休みに早稲田大学3号館前で法大との合同デモンストレーション(※1)を行う予定だ。合同デモンストレーション自体は毎年実施しているものだが、今季はこのデモンストレーション中に、野球部員が週末の応援席チケットを100円引きで販売している。春、それは出会いの季節。新しい友人と、出かける約束をしたものの、どこに行くか悩んでいる人もいるだろう。ぜひ、神宮球場へ足を運んでみて欲しい。もしかしたらそこで大学野球の面白さを知り、そのままどっぷりハマることもあるかもしれない。この春、大学野球と出会ってみるのはいかがだろうか。
※1 雨天中止
(記事 今山和々子、写真 遠藤伶)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません
コメント
小谷太郎代表委員主務(社4=神奈川・相模原)
――きょうの意気込みはどのようなものでしたか
いま勝ち点を二つ落としていて、この東大戦を落としたら完全に優勝の可能性がなくなってしまうので、絶対に負けられないという気持ちで臨みました。
――1―0の試合結果を受けてどうですか
なんとか勝ったな、というのが第一印象で、いつも東大戦というのはコンバットマーチが長く流れていて、早稲田が圧倒的に有利な展開で進んでいく中、きょうはコンバットマーチが流れる展開があったにしても、ちょっと東大に押され気味だったかなと。
――工夫した点はありましたか
いつも以上に気合いを入れて臨まないと勝てないんじゃないかという思いがあったので、技術的な面では答えづらいのですが、気持ち的な面でいつもより強い気持ちを持って、指揮台に上がってしっかり観客をリードしていこうとしました。
――明大戦で勝ち点を落とし、優勝への望みは薄くなってしまいましたが、これからのリーグ戦どのように応援していきたいですか
春は確かに優勝への望みは薄くなりましたが、ただ、秋もありますし。応援部と野球部にとって六大学野球のルーツである早慶戦という戦いで絶対に負けるわけにはいかないので、早慶戦に向けてしっかり弾みをつけていきたいと思っています。優勝の可能性がなくなっても、野球部も一生懸命プレーすると思うので、我々も一切気を抜かずやっていこうと思います。
――あすへの意気込みをお願いします。
あすはきょうみたいに1-0ではなく…実は大量得点をしたら普段とは違う試みをしたいと思っているので、そういうところをあすはお見せできたらなと思います。
柳澤遼輝副将(人4=埼玉・春日部)
――きょうの意気込みはどのようなものでしたか
通常でしたら東京大学戦となると勝って当たり前と言われるような試合なんですけれども、いまリーグ戦始まって立教大学、明治大学と負けている状態で、ここで試合1つでも落としてしまうと、今後に繋がらないということで、やっぱり絶対に気を抜けない戦いだったと思います。また、近頃、東京大学もすごく力をつけてきていて、昨年も他の大学から勝ち点を取っているという中で、やっぱり絶対に油断できないということで、試合が始まる前にも、リーダーの下級生全体に絶対に油断してかかったら足元をすくわれるぞと言う風に話しました。ここはリーグ戦の五大学の中の真ん中ということもあって、ある意味すごく気合いを入れた試合だったのではないかなと思います。
――試合結果についてはいかがですか
東京大学相手に、例年だとコンバットマーチがすごく長く流れていたり、紺碧の空がずっと流れていたりという優位な状態になるはずの中で、なかなか最初の方もヒットは出るものの打点にはつながらず最後の最後までずっと0-0でどう転んでもおかしくありませんでした。本当に、最後まで絶対に諦めてはいけないなという気持ちで…最後の最後は野球部も背水の陣ということで、プロ野球併用日だったので引き分けなら引き分けで終わってしまうので、そうなるとまたきつい状況に陥るという中で、最後の9回でコンバットマーチから入るという通常ではあまりやらないようなことをやって、リーダー、チアリーダーズ、吹奏楽団全体が、しっかりと応援席をまとめた結果、最後1点が取れたのではないかなと思います。今回のこの1点は、今までの、立教大学戦、明治大学戦で取ったどのイニングの、どの点数よりも、重要で意味のあった点だったのではないかと思います。
――9回裏のコンバットマーチはどのような気持ちで振っていましたか
もう本当に後がないということで、とにかく自分の気合いを応援席に伝える思いでやりました。特に自分は4年生なので、応援部の下級生、他のパートの同期、応援席のお客さん、野球部、全ての皆さんに自分の気合いを伝えることで少しでも応援席全体として、気合いの入った大きな応援を送ってもらえるのではないかなと思って、全力で、それこそ本当に死ぬ気でやることができたと思います。
――あすへの意気込みをお願いします
きょうの試合結果を見てわかる通り、油断できる相手ではありませんし、逆に今回は第一試合が早稲田が後攻だったということで、9回裏が存在したのですが、あしたはもしかしたらもっと厳しい試合になる可能性もありますし、きょうより難しい試合になる可能性もあるので、その中でしっかりと我々応援部一同まとまって、きょうの9回に行ったような応援席全体をまとめる応援ができたら、あしたもきょうみたいな結果をもたらすことができるのではないかなと思うので、1回から全力でやって、圧倒的な差をつけて東京大学に勝とうと思います。
若松佑副将・吹奏楽団責任者(教4=埼玉・川越)
――きょうの意気込みはどのようなものでしたか
今までずっと負け続きで。明大には一度は勝っているんですけど、勝ち点を取れていない中で、東大が相手ということで、絶対に勝ち点を取るという意気込みでやってまいりました。
――今日の緊迫した試合展開の中で、最も力の入った演奏シーンはどこですか
やはり、最終回でコンバットマーチを流していたんですけれども、あそこで点を取らなければ引き分けになってしまうところだったので、そこで何とか大切な1点を取るべく一生懸命演奏が出来たと思います。
――昨季は最下位という結果でしたが、今季意識していることはありますか
今季は守備応援をもっと充実させようという方針でいて、やはり守らなければ勝てないので、まあ色々守備の応援法を。今までダイナマイトマーチを流していたのを、『早稲田健児』であったり『紺碧の空』を流したりというようなことをしています。
――最後に、今後のリーグ戦にどう臨んでいくかをお願いします
もう負けられない状態、本当に追い詰められているので、早慶戦まで全勝で駆け抜けていきたいと思います。
鈴木凜チアリーダーズ責任者(文構4=東京・頌栄)
――きょうの意気込みについて教えてください
今まで負け試合が続いていて、やはり東大戦ということで、気は抜けないんですけど大量得点していっぱい紺碧を歌うぞ、という意気込みでいきました。
――5回でのがむしゃら行進曲ですが、どのような経緯でこの曲に決まりましたか
野球部の方の希望を聞いた上で応援部でも投票して。4年生を中心に決めたんですけれど、両方の希望を合わせてお客さんが盛り上がれる曲ということで(この曲に)決めました。
――0―0で迎えた5回のがむしゃら行進曲ですが、その時の気持ちを教えてください
やっぱり5回のバンド演奏というのは、一個、気持ちを切り替える場所みたいな感じで。結構チャンスはあったと思うんですけどそこでなかなか打てないということが多かったので、一回全部切り替えてどんどん打ってほしい気持ちではありました。
――最後に、きょういらっしゃった応援席のお客さんに対してコメントをお願いします
結構負け試合が続いてしまっていて。その中できょう来てくださった方々は本当にワセダを応援してくださっている方々だと思うので。今後も…あすの東大戦もまた勝つつもりではいるんですけれども、今後の試合も、どんな状況でも応援席に足を運んでいただいて一緒に応援していけたらいいなと思っていますので、よろしくお願いいたします。
木村太一旗手(商4=東京・国士館)
――きょうの試合の意気込みをお願いします
ここ数試合負けが続いていたので、ここでしっかりと勢いを取り戻して、このあとの試合や秋季リーグにつなげられるように心がけました
――きょうの試合について振り返っていただけますか
早稲田も東大もチャンスでなかなか一本が出ないという展開が続いていたのですが、そこを粘って早稲田がチャンスをものにすることができた試合でした。それを1回から応援でサポートすることができた試合だったと思います。
――きょう来てくださったお客さんへ一言お願いします
本当にいつもスタンドへ来て、応援してくださる皆さんには感謝しています。ですが、もっともっと声が欲しいかなと思います。まだまだこんなもんじゃないですし、私自身もパフォーマンスであったり、面白さであったりとかを高めて、お客さんに盛り上がっていただけるように取り組んでいきたいです。
――あすへの意気込みをお願いします
きょう得点したらしようと思っていた新しい応援を、あすは初回から点を入れてできるように、全力で応援していきたいと思います。
小川駿也新人監督(教4=東京・早稲田)
――きょうの試合の意気込みを教えていただけますか
1年生を主に指導、監督する立場を担っていて、応援部の応援というのは、4年生が前で声を出したり、身振り手振りなどしたりして試合を盛り上げて、1年生がお客さんの周りを走り回って盛り上げるというつなぎ役を担ってくれているんですけど、まだ遠慮がちというか体力的にも精神的にも思うようにできていないので、それをサポートして、1年生からスタンド全体を盛り上げるというのを意気込みとして掲げました。
――きょうの試合結果をどう振り返りますか
チャンスもピンチも多くありましたが、チャンスをもっと早い回で活かすことができたら、あんなに苦しい展開じゃなかったかなと思います。そこがスタンド全体を通しても盛り上がりというものに少し欠けてしまっていたかなと思いました。そういうことを踏まえて、特に応援という点で全てにおいて勝っていたとは言えないかなと思います。
――新人のリーダーに対して一言お願いします
リーダーに対して常々言っているのが、まず来ているお客さん全員と目を合わせて、全員と喋ること。そして、絶対に辛い顔をするなということをいつも言っています。リーダーが辛い顔をしてしまうと、いくら苦しい展開とはいえ、お客さんも頑張ろうとは思えないと思います。むしろ、辛い時こそ応援部が頑張り、明るい表情でお客さんに話しかけることで、お客さんもじゃあ自分も頑張ってみようと思えると思うので、それをことし入った13人の一年生のリーダーが起爆剤となり暴れ回ってくれることを願っています。
――あすの試合に向けて意気込みをお願いします
今日の9回の攻撃はスタンドも盛り上がって一体感もあったと思うので、その9回の盛り上がりを1回から出して明日も絶対に勝ち、月曜日は授業に出たいと思います。