【特集】早慶戦直前特集『進取果敢』 第1回 田中達也吹奏楽団責任者×鷲塚舞衣チアリーダーズ責任者×山本亮平代表委員主務

応援

 応援部はリーダーに注目が集まることが多いが、応援部に華を添えるチアリーダーズ、音で支える吹奏楽団の存在も欠かせない。2つのパートの責任者である、田中達也吹奏楽団責任者(政経4=神奈川・湘南)、鷲塚舞衣チアリーダーズ責任者(商4=東京・実践女学園)と3パートを束ねる代表委員主務山本亮平(商4=和歌山・近大新宮)の3人に4年間の苦労や最後のチアリーディングステージ(チアステ)、定期演奏会、そして早慶戦への意気込みを伺った。

※この取材は10月19日に行われたものです。

「(チアリーダーズに)一瞬で心惹かれてしまいました」(鷲塚)

ことしチアリーダーズをけん引してきた鷲塚

――応援部に入部した理由やきっかけを教えてください

山本 自分は途中入部でした。基本的に応援部に入るのは新勧期の4月が多いのですが、自分は春の早慶戦を一学生として観て、試合を全力で応援している姿に感銘を受けました。次は自分も応援部の一員として神宮で応援したいと思い、6月の頭に入部を決意して、7月に実際に入部しました。

田中 自分は大学に入って、とにかく楽器を続けたいという思いがありました。最初は別のサークルに入っていたのですが、そこは自分には合わないかなと感じていました。その時、新勧期の応援部の活動にも参加していたのですが、応援部の温かさを感じ、この団体であったら自分を良く見てくれそうだし、成長することができそうだと思いました。なので、数ある楽器を続けられる団体の中でも、応援部を選びました。

鷲塚 私は当初、全くチアをやるつもりはありませんでした。留学をしようと思っていて、最初は英語のサークルに所属していました。でも早大生になったからには一度早慶戦を観てみたいと思い、早慶レガッタに行ったときに、応援部のパフォーマンスを観て、そこで一瞬で心惹かれてしまいました。3週間くらいずっと、英語のサークルを続けようか応援部に入ろうか迷っていたのですが、最終的には応援部に入るという決断をしました。

――新人時代、つらかったことなど、なにか印象的なことはありましたか

山本 7月の頭に入部して、その一か月後に夏合宿がありました。応援部にとって大事な行事なのですが、まず10日間という他のサークル等ではなかなか考えられない期間の長さに驚きました。また、礼儀作法や言葉遣いなど、それまで気にしたことがなかったことを、応援部に入ってから急に身につけなければいけない、勉強しなければいけないということになったのも、衝撃を受けたことの一つでした。しかし、礼儀作法や言葉遣い、挨拶などを当たり前にできるようになったというのは、応援部に入ったからこそだと思います。今マネージャーとして、外部の方とお話させていただく機会も多いのですが、そこでも新人時代や下級生のときに上級生に教えていただいて身につけたことが、生きていると感じます。なので、頑張って良かったなと思います。

田中 新人時代は本当に覚えることが多かったです。その中でも、自分も途中入部だったので、球場での動き方や準備の面で遅れていた部分があり、非常に苦労しました。しかし上級生の方から、自分の得意なことを一つ見つけてそこをしっかりと伸ばし、アピールしていけばいいといった言葉を掛けていただきました。自分は楽器の積み方や運び方に関しては、高校時代に結構学んでいたので、それを新人時代にやって少しずつ認められるようになっていきました。いい経験だったと思います。

鷲塚 応援部は部活動なので、当たり前のことですが自分のプライベートに使える時間は限られています。新人は応援に行くときでも準備や片づけを担当するので、特に応援部の活動の時間が長くなります。そういった中で体力面等がよく鍛えられ、その後の活動に活かされていると思います。

「自分じゃなくて周りに還元する」(山本亮)

神宮球場で太鼓を叩く山本

――統括する立場にいるみなさんから見て、ことしの応援部のカラーはどのようなものだと感じていますか

鷲塚 人数が東京六大学のどこの大学よりも多いので、その分迫力も強いのではないかなと思います。

田中達 熱い人が多いと思います。応援部に対して、本当に4年間全力でやってきて、積み重ねてきたものをしっかり出そうという人が、自分たちの代だからこそよく見えているというのもあると思うのですが、多いように感じます。自分たちの代をしっかりやろう、変えよう、責任感をもって今までの経験を生かそうという思いを皆が持っている印象です。

山本亮 下級生時代に4年生になったらこういうことをやりたいと思った気持ちを大切に、それを応援や部の運営にあたってかたちにしている代だと思います。

――具体的にどのようなことをしたのですか

山本 会計に携わる同期と密に連携を取り、部の財政を見直し、下級生の力を全面に借りて、応援グッズやTシャツの販売に力を入れました。

――ことしの全体スローガンは『前へ』であると伺いました。それは達成できていると感じますか

鷲塚 これはチアに限ったことかもしれませんが、4年生が13人で下級生が70人以上いて、人数が多い分一人一人の練習時間が短くなり、技術面が低くなっている部分も見受けられます。私たちがどれだけ下級生をレベルアップさせられるか、成長させて前へ進めさせられるかということは常に考えています。12月にチアの大会があるのですが、ことしのその大会には例年出ている4年生は出ず、それ以外の部員に出場させて、4年生はチームに入れなかった下級生の指導に回っています。それによって底上げが出来たらとも考えていますので、達成したというより、今も達成に向けて取り組んでいる途中です。

山本 自分はことし主務という立場で部を運営してきました。その中で代交替してからずっと意識してきたのは、ことしの代を良くすることはもちろん、並行して来年の代に円滑にバトンを渡せるようにすることです。具体的には、サブマネージャーという副務がいるのですが、どのように仕事を下ろしたら来年に生かしてくれるかというのを考えました。例年だったら主務一人で行く打ち合わせにも一緒に連れていって、どのようにやっているかといったことを現場で勉強させました。なので、『前へ』という言葉、こじつけになってしまうのですが、今を良くするだけではなくて、先につながるようにやるというのを意識して一年間やってきたのが、自分の中では大きいです。

田中 『前へ』という言葉の中には、自分の殻に閉じこもらずに一歩踏み出して、今までの自分を超えることをやってほしいという意味が込められています。初めは、部に入ったばかりであったり学年が変わったばかりであったりして、うまく動けていない下級生も多かったです。しかし後半になってくると、例えばデモンストレーションでこういうことをやりたいという希望も聞いていますし、下級生が自分で考えて行動することが多くなって、成長したなと感じます。自分の殻を一つ破っての行動というのが見られるようになってきたので、下級生だけで来年も部をまわしていけるようになるまで、あと少しかなという風に思います。

――ことし新しい試みとして、チアは新衣装、吹奏楽団は新曲を取り入れたと伺いました。導入までの経緯や苦労などを教えてください

鷲塚 チアは、新しい衣装を買うことによって初めて全員で同じ衣装を着るということを達成できました。それまでは、部のお金で衣装をそろえていたのですが、史上最高の人数ということもあり、一種類の衣装で全員そろえることができませんでした。なので、一つの演技の中でいくつかの同じ色の衣装を混ぜて、着用していました。全員で同じものを着て演技できるようになったことで、一体感がより生まれたのではないかと思っています。

――デザインはどなたが考えたのですか

鷲塚 元々あるパターンのようなものを上下組み合わせて、一つの衣装にしました。上下とも非常に多くある種類ある中からそれぞれ一つずつ選ぶのですが、その意見を合わせていくのは大変だったと思います。

――新曲『Bloom』について教えてください

田中 早大応援部では、応援歌は多かったのですが、応援曲、チャンスパターンの攻撃中に流す曲は少ない方だなと感じていました。それをことし増やそうということで、募りました。苦労したことは、今までにある曲と全く別のカラーを出そうということを、3年生がやったのですが、苦労していたのではないかなと思います。一度決まって試奏をしたのですが、これはちょっと違うなとなり、調を変えるなど試行錯誤して、結果的にはいいものになったと思います。

――この曲は学生が一からつくったということでしょうか

田中 はい、そうです。

――ことしの夏合宿は、どのようなものになったのですか

山本 ことしの夏合宿は今までと違う施設を使い、非常に快適な環境でした。自分たちが下級生のときは狭い部屋で雑魚寝をすることもあったのですが、ことしは快適すぎたのではないかと少し心配しています。特に新人にとっては初めての合宿だったのですが、これが応援部の合宿だと快適さを当たり前に思われていたら困るなとも思っています。例年、10日間厳しいタイムスケジュールでの合宿になるので、体調不良者が多く出てしまうのですが、ことしは宿舎が快適で、料理も宿舎の方が工夫して作ってくださったおかげで体調不良者が少なかったので、その点ではいい合宿になったと思います。

鷲塚 ことしは岩手県宮古市に行ったのですが、監督の提案がきっかけで、9泊10日の中で一人一時間程度、防災見学というものを行いました。東日本大震災で被災された地域に足を運んで防波堤に上ったり、一階がすべて流されてしまった建物を見学したりしました。私たちは普段東京で部活動をしていて、支援に行ったことがある部員はいないのではないかなと思うので、そういった経験ができたということは、個人の財産になったと思います。今までの合宿とは違った経験ができたと感じています。

田中 例年との違いは、やはり施設が良くてご飯も豪華でといった点が大きかったです。環境がいい分、練習にしっかりと集中でき、食事の準備などもしっかりできました。全体的に施設のおかげで、例年よりもクオリティの高い合宿になったのではないかと思います。

――ことしの新人の印象はいかがですか

鷲塚 チア中心になってしまうのですが、非常に元気で熱意がある新人だと思います。近々早慶戦がありますが、それに向けて自分たちでダンスの朝練をするなどしていて、きれいに踊るぞという意欲が見えています。一つ一つ行動するときの表情も目が一生懸命になっていて、ガツガツしている新人だなと思います。

田中 吹奏楽団が中心になってしまうのですが、元気のある新人が多く入ってきたなと思います。まずは、例年よりも声が大きい子が多くて、部活動をしっかりと盛り上げようという姿勢を新人が見せてくれるのは、本当にうれしいことです。新人が入ることによって、部活全体の雰囲気が明るくなり、そこに新人の力を感じています。

山本 前の2人と似てしまいますが、一緒に活動していて心強いと感じます。学年は3つ下なのですが、彼らから勇気や力をもらいますし、今の新人が3年後4年生になったときの姿を早く見たいなと、期待しています。

――統括するにあたってどのようなことを意識していますか

鷲塚 チアリーダーズの練習面に関してなのですが、ケガ人をゼロにするということを一番高く掲げています。86人という大人数なので、4年生だけでは見きれなくなってしまうのではないかという不安も最初はありました。年度初めからずっと、絶対に大きなケガ人を出さないようにということで、例えばスタンツという組体操のようなものを練習していて落下があったときには、どうしてその落下があったのかという理由をスタンツに関わった全員から聞くようにしています。1つの落下に対して、例えば上に乗っている人が尻もちをついただけであっても、どうしてそういうことがあったかというのを徹底的に追及することで、次回絶対に同じことを繰り返さない対策を立てるということを繰り返しています。そういった取り組みを重ねることによって、尻もちをついただけだから大丈夫でしょう、ではなくて、今は尻もちだけで済んだけれどもっと重大なケガにつながりかねない、という意識を全員に持たせることにつながったと思います。

田中 吹奏楽団としては、年間目標が『心技体』ということで、私が応援部に入るきっかけにもなった優しい心、技術の向上、応援部ならではの規則や礼儀といったことをバランスよく育てることを目指しています。4年生中心に活動を決めていくのですが、今までの規則をなくすかどうかなど中立的に見て、私が声をかけることもあります。下級生に対しては、一年中活動があるので、いつの間にかリーグ戦、いつの間にか大きなイベントという風ではなく、次のイベントに向けて意識を向けられるように言葉で誘導していくことをやって意識しています。

山本 応援部全体の主務として、3パートを俯瞰して周りに還元したいという思いでやってきました。常に3パートを平等に見て、責任者同士が話し合っているときには自分が架け橋になれるようにということを意識しました。過去のやり方や規則にとらわれすぎず、自分のやり方を考えようとしてきました。例えば春の早慶戦のときには、例年暑くて体調不良者が多く出てしまいます。そこでことしは神宮球場に冷蔵庫を持っていき、ドリンクを凍らせるなどして体調不良者を少なく抑えることに成功しました。ことしいろいろやってみて、来年につながるようにということを意識しています。

――部活動を通して、後輩にどのようなことを伝えてきましたか

田中 自分は、後輩に失敗を恐れないでほしいということを伝えてきました。応援部では上級生がしっかり見てくれて叱ってくれて、失敗をしても次のチャンスを与えてもらえるので、人として成長できる場が多いシステムだと思っています。失敗を恐れずに自分から行動して、その結果がどうなろうと自分の成長につながるように次の行動に移すということを常に言っています。

鷲塚 人数が多い分、誰かがやってくれるから大丈夫だという人がたくさんいて、そういう人たちにも前に出てきてもらう機会になるのが夏合宿だという風に考えています。自分は応援部にとって不可欠な存在だということを、自分に与えられたことを全うする中で感じてほしいと思っています。なので、人の陰に隠れないでほしいということは、口を酸っぱくして伝えてきたつもりです。

山本 自分じゃなくて周りに還元する、ということをずっと伝えてきました。自分が途中入部というのもあって、周りに支えてもらったので、常に周りを見て、自己犠牲もして周りに還元することが大事だということを言っています。

リーダーは熱意と汗、チアリーダーズは元気印、吹奏楽団は繊細

これまでの応援部生活を振り返る田中(写真右)、山本(写真中央)、鷲塚

――最近あった面白いエピソードを教えてください

山本 吹奏楽団の男子と、チアの女子ですごく顔が似ている二人がいて、先日アプリで顔の入れ替えをやってみたら、すごくしっくりきて、盛り上がりました(笑)。

――忙しい日々を過ごしていると思いますが、リフレッシュにしていることやオフの日の過ごし方を教えてください

鷲塚 漫画を読みます。少年漫画が好きで、ワンピースとかナルトとか、アニメを観ることもあります。

田中 自分は音楽を聴きます。12月4日に定期演奏会があるのですが、そこでやる曲を聴いています。さらに、これから社会人になったら音楽を聴く機会も減るかなと思いまして、興味を持った曲はとにかくたくさん聴いて、新規開拓しています。

山本 最近特にOB、OGの方にプライベートでご飯に連れていっていただく機会が多いです。そこで社会人になってからの話を聞くなどして、勉強させてもらっています。

――同期で遊びにいくことはありますか

鷲塚 3パート全て合わせてというのはなかなか難しいのですが、チアは毎年同期で遊びます。ことしは、無人島に行きました。横須賀の方の島に行って、砂浜でバーベキューをしたり、海水浴をしたりしました。

田中 吹奏楽団の男子は、最近レンタカーを借りてドライブに行きました。

――応援するときのルーティーンやゲン担ぎなどありますか

鷲塚 いつも食べるコンビニのパンがあります。2年生くらいのときからの勝負めしで、気合を入れたいときにはいつも食べています。あとは、チアがいつも履いている白い靴下があるのですが、それの見えないところに刺しゅうがしてあるものを私がチアの大会に出たときに、以前大好きだった上級生の方にいただきました。その靴下は、絶対にここは負けられないというときに履いています。

田中 対戦する相手の色のものを前日か、当日の朝に食べるようにしています。例えば立大ならぶどうジュース、法大ならオレンジジュースを飲みます。

山本亮 自分は本当に意識してないです、無心です(笑)。

――他の2パートに対する印象を教えてください

鷲塚 リーダーは熱意と汗、というイメージです。どんなときにも全力で、自分の身体がボロボロになっても応援することをやめない人たちという印象です。吹奏楽団は繊細。やはり楽器を扱っているパートということもあり、繊細な人が多いのですが、応援部ということで熱意は全員持っていて、どんなことにも一生懸命取り組んでいるパートだと思います。

田中 リーダーは本当に熱くて、応援部のためならなんでもするという感じだと思います。重厚感があって、応援部を支えてくれています。チアリーダーズは応援部の元気印といった感じで、自分たちの代は特に元気な人が多いと思うのですが、笑顔で応援部を盛り上げてくれていると思います。

山本 リーダーはその名の通り、リーダーシップをいつも発揮していて、3パートの中でもリーダーは特に引っ張っていってくれる心強い存在だと思います。チアリーダーズはいい意味で男っぽいと思います。力強くてたくましい一面があるので、先ほど吹奏楽団のことを繊細だと言ってくれたのですが、力強さを見習ってもう少しガツガツやっていきたいです(笑)。

「完全燃焼」(田中達)

神宮球場で校歌『都の西北』を吹く田中

――春季リーグの早慶戦では勝ち点を奪えませんでしたが、今季の早慶戦で期待すること、そのために自分たちがしていることがあればお願いします

田中 自分が野球部に期待していることは2連勝です。今季は東大戦でしか勝ち点は得られていませんが、自分たちは早慶戦で絶対に負けられないとは思っています。これまでの結果は関係ないと思いますし、早慶戦は1回戦、2回戦ともに全力で応援します。

鷲塚 これまでの慶大以外のリーグ戦とは私たちは別物だと思っていて、きっと野球部もそう思っているのではないかと思うので、これまでの成績は慶大の方が上かもしれないんですけど、早慶戦は心を入れ替えて慶大の優勝を阻止するという気持ちで是非2連勝してほしいです。

山本 自分たち応援部にとっても最後の早慶戦であり、集大成です。オール早慶戦でボコボコにされたのでその悔しさを神宮球場で晴らして、いいかたちでリーグ戦を終えられればと思います。

――東大戦でしか勝ち点を取れていないという厳しい戦いですが、応援席から応援部としてはどのような気持ちで見ていますか

田中 自分は一戦必勝かなと思っています。「今までの結果とかではなくて目の前の瞬間に全力で」と吹奏楽団の方には言っています。応援部としての使命と言いますか、つらい状況だからこそ応援部が頑張らなければいけないと思います。お客さんのテンションはもちろん落ちていると思いますが、その中でも応援部はテンションを上げてお客さんの声を引き出してとは思っています。

鷲塚 特に攻撃回で『コンバットマーチ』が流れているのはチャンスのときで、リーダーが突く動作をしていますが、ことしはチアも同じ動作を取り入れています。グラウンド側を向いて突くときには、本当に気合や願いを込めて突いています。

山本 ことしは特にどこの大学が勝ってもおかしくないほど拮抗していて、東大戦でも常に危機感をもって応援をしていました。点数が入ったときほど油断しやすいのでそういったときほど「気を引き締めてしっかりと9回裏まで応援するということは意識して」とは下級生にも言っています。

――リーグ戦と早慶戦とは準備や心構えが違うと聞きましたが、具体的にはどのようなことがあるのでしょうか

鷲塚 まず、神宮球場に来る時間が違います。通常だと第一試合でも9時30分とかなんですけど、早慶戦だと6時40分とかに神宮球場に入ります。その日やる企画の練習だったり、内野と外野に分かれて応援するので機材が2倍になるのでその準備だったり、士気を高めたりとか、それまでの時間もそうですが当日の準備のかけ方が全く違っています。

田中 そもそもリーダーが立つ台が違っていて、すごく広いものになっています。外野には通常はないですし、自分たちが持っている指揮台を設置するということで、吹奏楽団はそれがメインで違います。バンド合戦と言って、吹奏楽団の演奏に乗せてチアリーダーズが踊る曲が増えるのでその編曲もやっているので通常とは違いますね。

――内野と外野で指揮台が分かれますが、その真ん中の上で指揮を振っている姿も見たことがあります。そちらも練習されるんですか

田中 前日に最終準備を行っているんですけどそこで最終確認はしますね。1週間前から練習は重ねています。

――個人的に思い入れのある曲はありますか

田中 個人的に楽器の関係上、『大進撃』です。ホルンがグリッサンド(※1)で吠える部分があります。『大進撃』は大体一塁に選手がいるときの曲で、これからワセダの攻撃だというときに自分が音を出していつもより気合を入れて吹いています。

山本 『紺碧の空』ですかね。自分が入部したっきっかけとなった春の早慶戦で歌っていて、隣の早大生と肩を組み合って歌ったのが思い出にあるので、入部してからも思い入れはあります。

鷲塚 今季あまり出ていないのですが、『精悍若き』というマイナーな曲です。チアの4年生全員でいろんな応援曲を1人ずつ持ち、新人の振りを見て合格をあげるということをやっているんですけど、私の持ち歌が『精悍若き』で。新人の振りを厳しく見ている分、曲に対する思い入れも強くなっていて、自分が前で踊るときは絶対にミスはできませんし、誰よりも一番きれいに踊ってやるというつもりで踊っています。

――チア曲について、決めた経緯などを教えてください

鷲塚 曲は『心絵』『今すぐKiss Me』『セーラー服を脱がさないで』の3曲になります。『心絵』は高校野球でも使われていて、良いねとは言っていたんですが、六大学の他の大学が5回守備のバンド演奏で使っている関係上、ワセダではできないと言っていました。しかし、早慶戦の企画でやる曲は自由なのでここで『心絵』をやろうという風になりました。やっとできたという感じですね。今は練習途中でして、難しい技も入れていたり、指揮台は結構狭いのですがそこで大人数で演技をすることになるので、ケガにも気をつけて練習している状態です。やっと高校野球の有名な曲ができるということで嬉しいです。

――抽象的な質問ですが、慶大という存在はどんなものですか

山本 良きライバルだから高め合える存在ですね。

田中 良きライバルでもあり良き仲間でという感じです。野球に限らず早慶戦で会う機会が多くて、仲良く連絡を取ったりという関係ですし、高め合える仲間だと思います。

鷲塚 絶対に負けたくない相手であり尊敬し合う仲だと思っていて、私たちはスタンツを武器にしているんですけど、慶大はダンスがきれいです。違う分野ではありますがダンスの面では勝てないんだろうなと思う反面、スタンツでは慶大を越えられるというように高め合えると思っています。

――チアステが控えていますが、そちらのテーマやアピールポイントをお願いします

鷲塚 テーマは『Anniversary』というものです。ことしチアが創立して40周年を迎える年であり、部員にとっても忘れない一日になって欲しいし、来てくださった方一人一人にとっても忘れられない一日になって欲しいということで『Anniversary』というテーマにしました。ネタバレになりますが見どころとしては、ステージ全体がテーマパークのような1つ1つの演技がアトラクションとして1つの物語になっているような構成になっているので、その世界観にも注目していただければと思います。

――定期演奏会についてもテーマやアピールポイントを教えていただけますか

田中 1つの見どころとしては、指揮者の先生が尚美音楽大学の河合尚市先生という方に変わりまして、その影響もあって演奏の曲目が変わりました。ポップスが基本的には無くなり、しっかりしたクラシックに変わっています。練習もその分大変ですがその分聞きごたえのある曲です。第一部と第二部で用意しているので聞いていただきたいです。第三部は本格的なマーチングの曲を何曲か扱うので、マーチングが好きな方にも楽しんでいただけるかと思います。

――最後の早慶戦の意気込みをお願いします

鷲塚 まずチアでは体調不良者を出さない、ということです。個人としては、踊りの面でもやり切りたいです。自分ができる最大限のパフォーマンスをお見せしたいですし、選手に対する声援も喉が切れるくらいの声量を出して届けたいと思います。

田中 自分は完全燃焼ですね。もちろん部員もしっかりとできるように、あの場面でああしとけばよかった、失敗してしまったという後悔を残さないように一瞬一瞬を全力で行って、得るものがあればと思います。

山本 自分も最後なので悔いの残らない早慶戦にしたいというのはあります。早慶戦はいろんな関係者の方がいらっしゃっいます。例えば、三重大学から50人くらい早慶戦に来てくれるんですけど、いろんな人にとっての早慶戦なのでその人たちが来て良かったと思えるように、これから慶大の主務と打ち合わせして頑張りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 橋本望、平松史帆)

※1 グリッサンド 音階的なパッセージを滑るように速く奏すること

終始丁寧に応じてくださいました!

◆田中達也(たなか・たつや)(※写真右)

1995(平7)年7月30日生まれ。神奈川・湘南出身。政治経済学部4年。担当楽器はホルン。普段から音楽をよく聞く田中さん。少しでもいい音をというストイックさが伺えます。応援でもステキな音を響かせてくれることでしょう!

◆鷲塚舞衣(わしづか・まい)(※写真左)

1995(平7)年3月14日生まれ。東京・実践女学園出身。商学部4年。チアリーダーズをまとめる鷲塚さん。対談中にはたくさんの笑顔を見せていただきました。早慶戦でもその笑顔で選手を後押しします!

◆山本亮平(やまもと・りょうへい)

1995(平7)年2月19日生まれ。和歌山・近大新宮出身。商学部4年。担当楽器はフルート。代表委員主務としてたくさんの方とお話をされてきたという山本さん。最近はOBの方と食事に行くことも多いとか。その交渉術で応援部を大きくしてくれることでしょう!