感謝の思いを胸に、響かせるメロディー

応援

 応援部吹奏楽団が、4学年で作り上げる最初で最後のステージ―――。それが定期演奏会である。第53回を迎えたことしのテーマは、『Re:present』。早大応援部吹奏楽団ならではのものを「表現する」という意味と、日ごろ学生を代表して体育会各部の応援に行っていることから「代表する」という意味を併せ持つ「represent」、そして支えてくれた人々への恩返しを意味する「re:present」が、このテーマに込められた思いだ。「大切なことは、気持ちを伝えること」とステージ中の挨拶で話した野澤征嵩吹奏楽団責任者(商4=千葉・成田)。普段は体育会各部の選手たちを力強い音色で鼓舞し支える吹奏楽団だが、この日は支えてくれる多くの人々への感謝の気持ちを伝えるために、音色を響かせた。

 オープニングにふさわしい明るい調子が印象的な『Second Century』で幕を開けた演奏会。第1部、シンフォニックステージのテーマは、成長と挑戦だ。大学から吹奏楽を始めた新人中の新人による『ロマネスク』、今年度の東京都大学吹奏楽コンクールで演奏した『トゥーランドット』に続き、最高難度の演奏技術を要する『フェスティバル・ヴァエーション』を披露。吹奏楽団にとってことし一番の挑戦であったこの曲を、野澤は「できるだけの練習はして挑んだので、悔いはない」と振り返る。それぞれの挑戦と、その挑戦を通して成長した姿を、観客に見せることができた。

一体感のある音色で観客を引き込む

 続く第2部のポップスステージでは、『ストームライダー組曲』、ミュージカル『アニー』から4曲のハイライトメドレー、クリスマスソングの定番『ウィンターワンダーランド in Swing』が演奏された。聴きなじみのあるメロディーに照明の演出も加わり、観客たちは、同じ座奏でも第Ⅰ部とはまた違った雰囲気を楽しんだ。どきどき感やわくわく感に軸を置いて組み立てられた第3部。楽器を演奏しながら様々な隊形を作るステージマーチングで客席を魅了した。披露されたのは、2000年を迎えるにあたり世界中のディズニーリゾートで行われたMillenniun Celebrationのショー曲の他、カラーガードが特徴的な『It‘s A Small World』、大ヒット映画『ズートピア』より、チアリーダーズと共に作り上げた『Try Everything』など全8曲。耳だけでなく目でも楽しませる色とりどりのステージで、観客を非日常世界へといざなった。

早大のステージマーチングに欠かせない「W」の隊形

 第3部を終え、幕が下りても拍手は鳴りやまなかった。再び幕が上がり会場に響いたのは、『早稲田の栄光』。続く『Viva Waseda』で行われた学年ごとのメンバー紹介では、客席からより一層大きな拍手がステージに向けて送られた。4年生にとっては、応援部生活そのものを締めくくる、集大成となるステージだ。「定期演奏会ではありますが、応援もしっかりしたいという4年生の意向もありました」と興梠奏美演奏会運営責任者(教4=東京・頌栄女学院)が言うように、その舞台に「応援」を欠かすことはできない。『チャンスパターンメドレー』では、リーダー・チアリーダーズ・吹奏楽団が共演。最後は『紺碧の空』で演奏会を締めくくった。これで4年生は引退となるが、「下級生が成長できるようなステージに」(上原仁実演奏会企画責任者、人4=東京・白百合学園)との言葉通り、下級生にとってはまだ通過点。先輩から受け継いだ思いを胸に、早大応援部吹奏楽団はこれからも前に進み続ける。

※1 マーチングにおいて旗などを使用して舞い、視覚的表現を行うパートのこと

(記事、写真 中川歩美)

コメント

野澤征嵩吹奏楽団責任者(商4=千葉・成田)

――本日はどのような思いで臨まれましたか

4学年最後のステージなので、みなさんに楽しんでいただくことと、自分たちも悔いが残らないように。それから来年にできるだけ多くのことを残そうと思って臨みました。

――振り返っていかがですか

出せるものは出せたと思います。

――テーマに込められた思いについて、改めてお聞かせください

「represent」は「代表する」などという意味があると思うのですが、私たちはいつも代表して体育各部の応援に行っているので、そういった意味でも「代表する」というのと、感謝の気持ちを「表す」ということでこのテーマにしました。

――『フェスティバル・ヴァエーション』という難しい曲に挑戦することを決めた経緯をお聞かせください

指揮がまず、これを吹こうということでみんなに話を出して、挑戦してみるかということでみんなで決めました。できるだけの練習はして挑んだので、悔いはないです。

――11月には静岡で秋合宿をされていましたね。

例年より短い期間で合宿を行ったのですが、その中で詰めることができました。合宿から帰ってきて一週間で、どれだけ課題を見つけて対処できるかというのも個人で確認することができ、いい合宿だったと思います。

――成果の程は

初めは全然だめだったのですが段々と合ってきて、それぞれ成長して合宿を終えられたと思います。

――集大成となるステージでした

来年はこれを超えるステージを作ってほしいです。お客さんの数もですが、質の面でも、感動を与えられるように下級生に頑張ってもらいたいと思います。

――ご自身の4年間を振り返っていかがでしたか

新人の頃のことはだいぶ忘れてしまっているのですが、その頃に送ったメールを見返してみると、結構人として変わったのかなと思います。学年が違うと自分の役割も変わってくるのですが、がむしゃらにやった下級生時代があったから、いまの下級生たちが頑張っている姿に感謝の気持ちを示せるのだと思います。

――吹奏楽団責任者として一年間、大変なことも多かったと思いますが、いかがでしたか

すごく寒かった箱根駅伝から始まったのですが、平和な一年間でした。4年生として、自分の中でも下級生の成長を考えてやっていたのですが…。楽しかったです!

――漢字一文字で表すなら

「伸」ですね。成長するという意味ですごく伸びたな、と。個人個人の人としての成長が見れました。

――同期の仲間や後輩へのメッセージをお願いします

同期がいなければこういったステージもできなかったので、まず本当に同期に感謝しているのと、それから下級生の支えがなくてもできなかったので、来年は自分たちがバックアップする側として、第54回定期演奏会が成功するように力を尽くしたいなと思っています。

興梠奏美演奏会運営責任者(教4=東京・頌栄女学院)

ーーステージが終わって率直な気持ちをお聞かせ下さい

4年間を思い出すステージだったので込み上げてくるものがたくさんありました。

――運営責任者として迎えるステージはいかがでしたか

部員もそうですが、支えてくれる人たちのありがたさを実感しました。本当に貴重な経験をさせていただきました。その分この演奏会に対して思い入れもあります。今は多くの人に感謝の気持ちを伝えたいです。

――合宿の成果は表れましたか

とても表れたと思います。最後の練習ということで張り詰めた空気の中行われていましたが、人間的にも精神的にも成長できました。

――ドリルステージは息のあった動きで迫力がありましたが、練習も大変だったと思います

1年生から4年生までやってきたので、その慣れというものはありました。コツもつかめたと思います。いろんな人と近くになれたりするのでとても楽しいです。

――『早稲田の栄光』を演奏しているときは、どのような心境でしたか

4年間の思いだったり、込み上げてくるものがありました。

――後半は「応援」に力が入った演奏会だったと思います

私たちは応援も演奏もドリルも全てをしっかりこなしていく団体ですので、定期演奏会ではありますが、応援もしっかりしたいという4年生の意向もありました。

――4年間の集大成でしたが、下級生に伝えたいことは

とにかく、そのときそのときを楽しんで欲しいということです。つらいときでも楽しんでやり抜いてほしいと思います。

上原仁実演奏会企画責任者(人4=東京・白百合学園)

――この演奏会にはどのような思いで臨まれましたか

4年間の最後なので、同期全員の思いを尊重したものにしたいという思いがありました。あと、下級生が成長できるようなステージにしたいとも思っていました。

――合宿ではどのような練習をされたのですか

いつもの応援部の合宿とは違って吹奏楽団だけなので、毎日朝から晩まで演奏とドリルを交互に練習していました。

――『Re:present』というテーマでしたが、何か意識してされたことはありますか

全員が合奏の合間やマーチングの練習の合間に、誰に届けるステージにしたいか思い浮かべられるように注意喚起しました。

――上原さん自身はどなたに届けようと思いながら演奏されたのですか

私は来てくださった方、支えてくださった方はもちろんなのですが、一番は下級生に届けたいという思いで演奏しました。

――集大成を見せることはできましたか

少し失敗してしまった部分もあったのですが、みんな笑顔で終えられて良かったなと思います。

――4年間を振り返っていかがですか

本当は大学で吹奏楽を続けるつもりはなくて、マーチングもやったことがなかったので、まさかこんな4年間を過ごすことになるとは思っていませんでした。チアやリーダーも含めてたくさんの仲間に出会うことができて、本当にいい4年間だったなと思います。

――仲間や後輩に向けて一言お願いします

4年間、本当にありがとうございました。私は結構気分屋なところがあるのですが、後輩や仲間がいつも優しい言葉を掛けてくれてうれしかったです。

原田優之演奏会広報責任者(基理4=東京・渋谷教育渋谷)

――今の率直な気持ちは

無事に演奏会が終わってほっとした気持ちと、引退になりますので寂しい気持ちが半々ですね。

――きょうの演奏に点数をつけるとすると

うーん…(笑)。自分の演奏に関しては中途半端ですが78点くらいですね。

――全体ではいかがでしたか

細かいところのミスはありますので92、3点といったところでしょうか(笑)。

――広報責任者としての活動はいかがでしたか

一人でも多くの方がこの新宿文化センターにいらっしゃることを考えて、いろいろ工夫をしてきました。こうやって実際に数ではなく、舞台から客席を見渡したときに様々な方にお越しいただいたこと自体が私の仕事冥利につきます。来てくださった方には感謝しかないです。

――応援部の活動を振り返っていかがですか

私の大学生活そのものと言って過言ではないほど充実していました。3年前の4月から3年8ヶ月間、大学生活イコール応援部という生活を私は送れましたし、応援部に送らせていただいたと思います。感謝の気持ちしかないです。

――後輩へメッセージをお願いします

来年以降もこの定期演奏会のみならず、稲穂祭やチアリーディングステージを3パートでやっていくと思います。ことしを超えていくことが今後部が発展していくことになりますし、そうやって発展していくことが多くの方々がいらっしゃることにつながります。私たちも全力でサポートしますので、頑張ってください。