思い飛び交う舞台

応援

 早朝から長蛇の列を成す大勢の人々。年に一度の大舞台『六旗の下に』(六旗)には、こうして毎年多くのファンが各校の応援団を一目見ようと詰め掛ける。普段は声援を送る側の応援部。しかし、この特別な舞台では主役となり、観客から声援が送られる。ことしはワセダが当番校となっており、主催する東京六大学応援団連盟の委員長に木暮美季(法4=埼玉・早大本庄)が就任。パフォーマンス、そして運営の中心となって六大学の応援団をまとめ上げるという大役をこなした。

 五大学それぞれが熱のこもった応援を披露する中、ワセダはトリを飾った。その舞台で観客の目にまず映ったのは、整然と掲げられた7本の校旗。「リーダー部員が多い、いまだからこそできるステージを目指しました」と仁熊佑太代表委員主将(創理4=埼玉・早大本庄)。その美しさに、大きな歓声が沸き起こった。舞台中央に誇り高くそびえ立ち、ひときわ目を引く大きな旗――。ワセダの第二世紀幕開けの象徴として製作され、以後第一校旗として君臨するこの新大校旗の旗手を務めたのは、仁熊であった。広さおよそ10畳近くもある巨大な旗を持ち上げ、力強さの中にも優雅さを含ませた見事な旗礼を披露し観客を魅了。続く『紺碧の空』でも全身を使った激しい動きでパフォーマンスをリードし、会場を大いに沸かせた。

見事な旗礼で会場を沸かせた仁熊

 仁熊に続き、同じくリーダー幹部を務める木暮が披露したのは『伝統の勝利の拍手』。「女性が振るからこんなもの、と思われたくなくて。引けを取らないものを『六旗の下に』で披露したいと考えていました」(木暮)。先代のリーダーたちが受け継いできた高度な技と熱い魂が融合した拍手を全力で表現し、その迫力で見る者を圧倒した。長時間続いたワセダのステージもいよいよ終盤に差し掛かかると、会場には応援曲メドレーの演奏が鳴り響く。リーダーたちはキレのあるテクと力のこもった突きで観客を鼓舞し、日比谷公会堂はこの日一番の盛り上がりを見せた。そして最後は校歌『都の西北』で締めくくり、大歓声のうちに舞台は幕を閉じた。

『伝統の勝利の拍手』を全力で披露した木暮

 幹部二人にとって最後となった今回の六旗。当番校という大きな仕事を任されながらもしっかりと任務を全うし、晴れ舞台で華々しく輝いた。その姿はこれまでの応援部の歴史に立派に刻まれることであろう。この六旗を終えた後も、稲穂祭や東京六大学秋季リーグ戦など多くの大舞台が控えている。これからもワセダの誇りと伝統を受け継いでいくため、そして他を圧倒する魅力的な応援を続けるため、先頭に立って応援部を導いていく。

(記事 松崎はるか、写真 伊能由佳)

※掲載が遅くなり、申し訳ありません。

コメント

仁熊佑太代表委員主将(創理4=埼玉・早大本庄)

――六旗を終えての感想をお願いします

今回のステージでは、校旗を7本掲揚したり、10名でのコンバットマーチなど、リーダー部員が多い、いまだからこそできるステージを目指しました。多くの観客の方々から、ワセダのステージで感動したと言っていただき、自分たちだけでなく観客の方々も満足させられるようなステージができたのではないかと思います。

――リーダー幹部・代表委員主将として臨んだ最後の六旗はいかがでしたか

多くの六大学応援団ファンの前で演技をすることができ、神宮球場で指揮するのとは少し別の感覚で校歌、応援歌を振ることができました。

――大トリを飾るということで意識した点は

やはり、どの大学にも負けない素晴らしいステージにしようと練習中から意識をしていました。

――六大学の春期リーグが終わってから六旗まで時間が少なかったと思いますが、その点についていかがですか

確かに練習の時間はあまりありませんでしたが、3年生に練習を見させる機会を多くつくり、下級生にも、自分たちがステージをつくっているという自覚を持たせることも重視しました。

――仁熊代表委員主将にとっての六旗とは

六大学の応援団が参加するからこそ、ワセダの素晴らしさが見えますし、逆に学ぶことも多いです。東京六大学応援団連盟の各校が切磋琢磨(せっさたくま)してお互いに成長することのできる素晴らしいステージだと思っております。

――最後に、ファンの方へ一言お願いします

ステージ中はスポットライトで客席が全く見えない中、客席からものすごい熱気が伝わってきて、本当にうれしかったです。今後も応援よろしくお願い致します。

木暮美季(法4=埼玉・早大本庄)

――六旗の感想をお願いします

自分が1年生の時から夢見ていたステージでしたが、それまでその自分が4年生になって実際にステージに立つという想像が全くできなかったため、文字通り夢のような時間でした。本当に自分が4年生としてあのステージに立つ日が来るなんて思ってもみませんでした。自分がやりたいと思ったことはやれたと感じていますし、出し切れたと思っています。

――連盟長として今回の舞台の完成具合は

どの大学の4年生も自分の見せたいものを見せられたのではないかと思います。運営側として反省が残る部分はありましたが、お客様にフィナーレまで盛り上がっていただけてとてもうれしく思っています。

――連盟長を務められたということで、やりがいを感じた点や逆に苦労なさった点は

委員長として関わる連盟の行事は、自校のことだけでなく、六大学との連携が必要になります。各大学伝統や決まりが異なります。考え方と、目指す先も違ってきますがそれをお互い受け入れて、協力し合う必要があります。その中での活動はやりがいでもあり、苦労する点でもあります。私自身まだまだ力量不足で、統率し切れていない部分がたくさんありました。しかし至らないところがある中でも協力し合い、六大学の仲間たちとステージをつくり上げられたのは一生の宝だと思います。

――今回はワセダが大トリということで意識した点はありますか

最後の大学の演技は開演から既に3時間以上経過しているということもあり、最後にどれだけ盛り上げられるかというプレッシャーはありました。下級生の時、当番校の大学は毎年どの大学よりも張り切ってステージを構築しているように思えましたし、今回は当番校がワセダということで「やはり当番校は違うな」と思っていただきたいと思いました。校旗を7本立てたり、応援曲メドレー中に3機のスタンツをチアリーダーズが行ったりなど、大人数を生かしてどの大学にもできないことを盛り込んだつもりです。

――伝統の勝利の拍手を披露したときのお気持ちは

もともと、女性が振るからこんなもの、と思われたくなくて。引けを取らないものを『六旗の下に』で披露したいと考えていました。早慶戦で勝ったときのみ行うことができるのですが、春は慶應に2連敗してしまったので残念ながら神宮球場で振れませんでした。『六旗の下に』で披露してみて、改めて秋は必ず、と強く思いました。

――リーダー幹部として迎えた最後の六旗はいかがでしたか

高校生の時から憧れていたステージであり、自分が4年生の時に当番校が回ってくると認識していてずっと楽しみにしていました。大学に入り、下級生時代は楽しいことばかりではなかったですが、辛いとき、苦しいときは『六旗の下に』を思い浮かべては何としてでも頑張りたいと思えました。終えてみて、4年間続けてきて良かったと思っています。

――木暮さんにとって六旗とは

夢の舞台です。下級生たち、そして、ワセダの応援部を志し、六旗に対して憧れを抱いていたりする高校生たちにも同じようにこの気持ちを味わってほしいと思います。

――最後に、ファンの方へ一言お願いします

最後の委員長あいさつで、「自分たちはいつも思いの飛び交う場所にいる」ということを言いました。応援は自分たちだけでは成り立ちません。選手にはもちろんですが、いつも神宮球場に足をお運びいただいている皆さまに対して常に思い伝え続け、そして全力で受け止める集団でいられるよう、日々努力して参ります。これからも六大学協力し合い、野球のみならず、関わる全ての皆さまを応援し、盛り上げていきます。東京六大学応援団連盟を今後ともよろしくお願い致します。