感謝の気持ちを曲に乗せて

応援

 2000人を超える人々が心待ちにする中、合同演奏会は幕を開けた。普段は良きライバルである六大学応援団が、一致団結して作り上げる。演奏会は3部構成で、それぞれのステージの個性が光っていた。第1部、楽しげで飛び跳ねるような曲調の『メリーゴーランド』から、アンコールまで走り抜けた2時間。最後に出演者らが舞台に集まると、割れんばかりの拍手が会場に溢れた。

色とりどりのカラーガードで演奏会を彩った

 まずは第1部のシンフォニックステージを経て、第2部はドリルステージ。躍動感のあるものから、心に染みわたるものまでバラエティに富んだ選曲だ。中でも観客を引きつけたのはチアリーダーズのダイナミックな演技、ドリル隊のきびきびとした動き、そしてカラーガード(※1)の美しさ。色とりどりの旗を持ち、しなやかな踊りで見る者をくぎ付けにしたカラーガード。そのパフォーマンスを考案したGC(ガードチーフ※2)吉野優花(文構4=埼玉・淑徳与野)は、違う色の旗に「一人一人の個性」(吉野)という意味を込めた。第2部唯一のクラシックで、ミステリアスな雰囲気を醸し出した組曲『仮面舞踏会』。ステージ構成と指揮をしたDM(ドラムメジャー※3)小出夏子(国教4=東京・鷗友学園女子)は海外のマーチングを参考に新しい動きの研究をしたことを明かした。

 第3部のポップスステージでは、第1部同様3曲を演奏。1曲目は『ジャパニーズ・グラフィティⅧ~ウルトラ大行進!~』。宇宙をほうふつとさせるグロッケンの静かな導入から、金管中心の力強いメロディーまで、鮮やかな演奏だった。今回指揮を務めたのは馴松千聡(政経4=宮崎西)。舞台上の部員が観客をあおる前に自然と起こった手拍子。演奏、パフォーマンス、そして観客――全てが一体となって演奏会は大成功を収めた。

最後は出演者全員が舞台上に集まった

 今回の合同演奏会のテーマは、39回目にちなんで『thank“YOU”』。チアリーダーズの掛け声や、プログラムにはなかった校歌のメドレーなど、六大学応援団の観客に対する感謝の気持ちが随所に表れていた。馴松は「一番の感謝を、一緒に演奏したメンバーに伝えたい」と語った。また、普段と違うメンバーだったことについて「発見があった。(他大学の練習方法などを)ワセダでもやってみようと思った」と続けた。演奏会を通して、様々な経験を得た応援部。これから、そして来年はどのような演奏になるのか。さらなる活躍に期待がかかる。

※1 マーチングにおいて旗などを使用して視覚的表現を行うパートのこと。

※2 カラーガードの振り付けや旗の動きを考える者。

※3 ドリルステージやパレードで指揮をする者。

(記事 高瀬早紀、写真 川口真由、三尾和寛)

コメント

馴松千聡(政経4=宮崎西)

――どのような気持ちで指揮台に立ったのですか

とにかく楽しかったです。落ち着いてできました。

――緊張などはありましたか

(緊張がないというよりは)開き直ったという感じです。指揮台に立ってみんなと向かい合うことで落ち着きました。それに私がびくびくしていたらいけないと思っていました。

――普段と違うメンバーで演奏することについて困難や、やりがいなどはありますか

困難は普段と違う人たちなので、お互いよく知らないところから作り上げていくということです。しかし演奏していく中で、違うメンバーだからこそ私も発見があったりして良かったです。この大学はこうやるのだと知ることができたり、これはワセダでも使ってみようと考えたりしていました。

――練習はいつごろから始めたのですか

4月からです。

――メドレーでしたが、どのような意識で指揮をしたのですか

今回のメドレーでは曲の間のテンポ自体はすんなりつながるものでしたが、ウルトラマンセブンのサビは原曲がゆっくりなのでアレンジしました。

――この曲を演奏する上で、どのようなことを考えていましたか

ウルトラマンは国民的ヒーローで多くの人が知っていて、自分も大好きなので原曲のイメージを崩さないように意識しました。また、これだけの曲を演奏させていただくからには立派なものにしようと思いました。

――今回のテーマは感謝ということですが、どなたに感謝の気持ちを伝えたいですか

まずは一緒に演奏してくれたメンバーです。大変なことも多かったですが、本当に一生懸命練習してくれました。そして私たち応援の活動は支えてくださる方がいて初めて成り立つものなので、応援してくださった方々にも感謝しています。

小出夏子(DM)(国教4=東京・鷗友学園女子)

──合同演奏会を終えてみていかがでしたか

2年生のとき私自身がプレイヤーとして出た思い出のある演奏会だったのを、今回はスタッフ側という下級生を成長させる側として出演できたことに対し、すごく感無量といった気持ちです。

──他大学との合同での演奏会ということで、大変だったことはありますか

やはり大学ごとによって同じマーチングでも指導の仕方であったりコマの書き方であったりが本当に異なっていたので、まずその指導方法を同じにするところと目指す先を同じにするというのが難しかったですね。

──動きの作成やステージの構成を考える上で参考にしたことはありますか

私はとにかく海外、特にアメリカを中心としたマーチングをたくさん見て、その中でどれを使ったらいままでにない動きやステップアップになるようなコマを付けられるかを考えて作りました。

──今回クラシック(仮面舞踏会)の選択をしたのは

ガードフィーチャーという枠組みだったのですが、そこはカラーガードをフューチャリングしている曲で、毎年その曲はどこかファンタジックと言いますか世界観がガラっと変わるような曲を選んでいるのですが、私もやはりどこか異国の地や仮面舞踏会の全く異なるような世界観をお客様に楽しんでいただきたいなと思ったのでこのような選曲になりました。

――その選んだ曲のイメージを大切にするために工夫したことはありますか

戯曲が原作で作られた曲なのですが、そのネタを元に作った側とチーフと一緒に共通認識を持ちストーリーを作りました。そして舞踏会とはどのようなものかを映画などの舞踏会のシーンを見て参考にしました。

――最後に、今回の演奏会のテーマは「thank YOU」でしたが、どなたへの

感謝の気持ちを込めて演奏会を迎えましたか

まずは演奏会に出演するにあたって同期や家族の支えがあったのでその人たちにサンキューを伝えたいなと思っていたのですが、終わったいまはやはり三か月間、四か月間私の指導についてきてくれた下級生のみんなにサンキューを伝えたいです。

吉野優花(文構4=埼玉・淑徳与野)(GC)

――きょうの感想をお願いします

きょう最後の舞台ということでみんなとても緊張していましたが、全て出しきったこととクローザーとしてフィルムでも撮りきれないほどの思い出、感無量という感じで最後まで集中力を保って、エクスチェンジも成功したので何もいうことはありません(笑)!

――構成をより美しくするため工夫したところは

通しでは曲数が多く、あまり動きを入れずに「フォルト操作」という同じポイントに立ったままの操作を取り入れるよりも表現力を付け、吹奏部員として音を飛ばすことを肝に命じながら考えました。

――舞台を作り上げる上で苦労したところは

誰かが賞をくれたり評価したりするものではないので、コンクールとは違う意味でモチベーションを保つこと、どのような姿勢で取り組んでいくかを手探りで考えながら進んできました。

――旗の動きは、どのようなイメージを抱きながら考えたのですか

曲が『ミリオネア』で、旗にもそれぞれ名前があるのですがそのうちの『ミリオネア』という旗の名前と曲名を掛けてみようと思って使い、みんなの同じ思いを曲線や大きな動きを使って表現しました。

――最後カラーガードの方たちが色とりどりの旗を持って終わりましたが、その構成にした理由は

『一人一人の個性』という意味で、みんなで違う色の旗ということになりました。一体感が生まれるような終わり方にもしたかったので、虹色を意識しました。

――今回「thank “YOU”」が演奏会のテーマですが、舞台ではどなたへの感謝の気持ちを込めましたか

ここまで育ててくれた上級生、そして辛いときこそ、できないときこそ笑顔でそばにいてくれた下級生、自分のまわりにいつもいてくれる人々に感謝の気持ちを込めました。