【特集】男子ラクロス関東学生リーグ戦前特集『NO LIMIT!』 【第1回】FO高橋一史×FO今井誠梧

男子ラクロス

 フェイスオフとは、試合開始のタイミングや得点が決まった後の、試合が再開する際に行われるラクロス特有のルール。コートの中央で、1対1でボールを奪い合い、これに勝ったチームが最初に攻撃の権利を得ることができる。そんな重要なポジションを今年担っているのが、FO高橋一史(法4=東京・早大学院)とFO今井誠梧(文構3=東京・国分寺)の2人だ。第1回の対談では、FOというポジションの特性上、出場時間も少なくなかなか日の目を浴びることが少ないこの2人にフェイスオフの魅力から日本一にかける思いまでを伺った。

※この取材は7月1日に行われたものです。

「大学1年生のときからFOをやりたいなと思っていた」(高橋)

クランプの強さを見せるFO高橋

 

――お互いの紹介をお願いします

今井 カズさん(FO高橋一史選手、以下カズさん)はFO界隈(かいわい)では世代ナンバーワンと言われていて、すごい手元が強い先輩で、そういう部分をすごく尊敬しています。カズさんのFOの特徴としては手元が強くてパワーがあって、クランプで勝ち切るスタイルです。あとはメンタルが強い先輩で、どんな大舞台でも動じず、いつも通りのプレーができるところがいいところだなと思います。

高橋 今井誠梧君です。まず彼は今、FOという専任のポジションに就いているのですが、2年生まではMFとFOを兼任していました。ですが、僕の代でFOが一枚しかいなかったので、彼を説得してFOに専念してもらっているというのが今までの流れになります。彼の強みは僕にないものがあるというところだと思います。彼はすごく運動神経が高いです。僕は手元などパワー系のFOなのですが、彼はフィールド系で、FOが終わった後のパスやシュートが得意でチームの得点源であるところが彼の強みだと思います。

――高橋選手がFOの専任になった経緯を教えてください

高橋 大学1年生のときからFOをやりたいなと思っていました。元々ラクロス部に入った理由がボディコンタクトの激しい競技に憧れていたからです。フェイスオフは1対1で力と力のぶつかり合いなので、そういったところに惹(ひ)かれてFOになろうと思いました。当時Bリーグというのがあったのですが、そこでFOとして専任になったら(チームに)貢献できると思ったので、大学2年の夏くらいからFOとして毎日練習していました。

――順番が前後してしまうのですが、ラクロスを始めたきっかけを教えてください

高橋 高校は野球をしていて、その野球部の先輩がいる(ラクロス部の)体験会に誘ってくださりました。そこで激しいボディコンタクトに魅力を感じたことと、日本一を目指せるというところに惹(ひ)かれたので、プレーヤーとして活躍したいと思い入部しました。

今井 僕は高校まで野球をしてきて、何かしら大学でスポーツをしたいと思っていました。いとこが大阪大学でラクロスをしていて、「ラクロスは楽しいよ」と紹介してもらっていて、早稲田大学ラクロス部は日本一を目指せると思ったので入りました。

「フェイスオフの魅力はワンプレーで流れを持ってこられること」(今井)

持ち前のスピードを活かしグラウンドを駆けるFO今井

 

――フェイスオフの魅力は何ですか

今井 チームスポーツでありながらフェイスオフは個人のぶつかり合いなので、個々の力のぶつかり合いに迫力があって魅力だと思います。あとは、フェイスオフはワンプレーで流れを持ってこられるポジションだと思っていて、(フェイスオフに)勝てば局面によっては一気にチームに流れをもってこられるので、そこはすごく魅力だなと思います。

高橋 自分の手で流れを変えることができることにやりがいがあるなと思っています。僕は、FOはロマンがあるポジションだと思っています。サッカーなら失点した側からプレーが始まりますが、ラクロスはフェイスオフに勝たないと一回も味方にボールを渡すことができないので、それが一番、最悪なケースです。そういうリスクを背負っているからこそ、燃えるというか逆境だからこそ男気を感じます。そういうところがFOの好きなところです。

――理想のFO像はありますか

高橋 チームの心の支えというか「高橋がフェイスオフを取ってくれるから絶対に勝てる」というようにチームに安心させられるような選手としての理想です。もしかしたら試合に負けるかもしれないという不安がある中で、フェイスオフを取れると確実に有利に試合を進めることができるので、チームに安心感を与えられるようになりたいです。

今井 僕もそういった部分はありますが、僕はフィールドを得意としているので、もし点差が離れたとしても「今井がフェイスオフを取ればまだまだあるぞ」と得点源になるようなFOが僕の理想です。攻撃型というか得点をあげられる選手になりたいですね。

――普段の練習ではFOはどのようなことをされているのですか

高橋 基本的には全体の練習が3時間くらいあって、最初の1時間くらいは基礎練習なのでそこに参加します。残りの2時間くらいはひたすら地道に手元の練習をして、数を繰り返す感じです。

今井 FOの練習でひたすら戦うと身体にも疲労が出てきてしまうので、フェイスオフの後の処理も練習をすることもあります。

高橋 付け加えると、これはFO独特なものだと思うのですが、他大とのつながりが結構強くて。地道に毎日FOの練習をしているからこそ倦怠期が来ますし、お互いのことをわかりすぎてしまうので実践向きではないです。そうなったときに他大の選手を東伏見のグラウンドに呼んだり、社会人チームの練習場に行ったりしてスキルを磨くのはFOならではだと思います。また、1対1の戦いだからこそ、相手選手の情報収集にもなります。

――自分で声をかけて練習をお願いするのですか

高橋 そうですね。僕が良く使うのはインスタグラムのダイレクトメッセージですね。下級生にもやらしていることなのですが、ラクロスのFO用のアカウントを作ってコンタクトを取ったり、自分のフェイスオフの動画をあげたりしてやり取りをしています。

――ラクロス部に入って楽しかったことや思い出はありますか

今井 僕の中では昨年のBリーグの優勝です。優勝した時の達成感や喜びは他のところでは味わえない楽しさがあるなと思います。

高橋 僕はU20の選抜選手に2年前くらいに選ばれて、その時の親善試合で相手のチームに僕のずっと憧れていた慶大の石井ヴィクトール慶治選手とお互い日本代表として戦えた瞬間は楽しかったです。今まで野球で代表に選ばれた経験がなかったからこそ早稲田を背負ってプレーできたのは新しい競技に挑戦して良かったなと思えた瞬間でした。

――逆にラクロス部に入って辛かったことは何ですか

高橋 朝がやっぱり辛いですね(笑)。慣れないね(笑)。

今井 冬に朝起きて外が真っ暗だった時に絶望感というか(笑)。

高橋 「俺って何をしてるんだろう」って思うよね(笑)。

「高橋一史という名を轟かせたい」(高橋)

談笑する二人

 

――今シーズンを振り返っていかがですか

高橋 良かった点で言うと、チームの中で絶対にフェイスオフは高橋がとってくれると印象付けられたことです。六大学ラクロス戦(東京六大学交流戦)でデータ班のデータによると、70から80パーセントくらいフェイスオフを取っていたのでそれは良かったことです。今年のチームはFOが強いとみんなからも言ってもらえているので、いいことだなと思います。悪かったことで言うと、早慶戦(早慶定期戦)は(全体を通して)反省点が多かったなと。僕の特徴として試合の中でだんだんと調子が上がっていく尻上がりの選手なのですが、早慶戦では前半の時点で押されてしまったので、うまくチームに流れを引き込めなかったことは反省点だと思います。今度のリーグ戦(関東学生ラクロスリーグ戦)ではしっかり試合前半から気合を入れてやっていきたいです。

今井 僕はFOとして5点くらい得点を決めているのですが、チームとして得点を決めるFOという印象を与えられたのは良かったなと思います。ただ、僕はまだまだ課題があって、手元の強さはカズさんには勝てないので、カズさんに競って、追い越せるくらいになって残りのシーズンやっていきたいなと思います。

――お二人の試合の出方に何か工夫はあるのですか

高橋 素直に言うと、僕が主に試合に出るのですが、あまり体力が持たないので、来年は一枚目で活躍してほしいので、彼(今井選手)には試合の流れを見つつ試合に出てもらい、僕は体力を温存しつつ大事なところでは僕が出る感じです。彼(今井選手)はフィールドが強いので、フィールドを駆け回って相手の選手をつかれさせて、疲れたところに僕がとどめを刺す感じです。なので、2人はニコイチです(笑)。

――最後にリーグ戦の意気込みを教えてください

高橋 高橋一史という名を轟かせたいですね。世代ナンバーワンとは言われていましたが、早慶戦を境にその立場が危うくなってきて、「高橋意外とそうでもないんじゃないか」という他大の声が上がってきているので、ここを何とか挽回して初戦の武蔵大戦から80から90パーセントくらいフェイスオフを取っていけるように、筋トレと地道な練習を繰り返して、早稲田のFOは強いと言われるように頑張っていきたいです。

今井 僕の意気込みは毎試合得点を取るくらいの気持ちで、どんどん前を狙っていって積極的に前を恐れず突っ込んでいきたいなと思います。カズさんがいるので、安心して突っ込んでいきたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 飯田諒、近藤翔太 写真 廣野一眞、近藤翔太)

リーグ戦に向けて意気込みを書いていただきました!

 

◆FO高橋一史(※写真左)

2002(平14)年3月8日生まれ。177センチ。東京・早大学院出身。法学部4年。バイトリーダ―を任されているカフェでは、オーナーであるというあの村上春樹さんにコーヒーを淹れるほどの腕前。就活の面接でも特技として何度も語ったのだとか…!

◆FO今井誠梧(※写真右)

2002(平14)年12月3日生まれ。169センチ。東京・国分寺高校出身。文化構想学部3年。趣味は足トレ。アメリカンフットボール選手の栗原隆さんのYouTubeを見て学んでいる今井選手は50m走で0.5秒もタイムを縮めたのだとか。フェイスオフからの俊足に期待です!