【連載】インカレ直前特集『体現』 第6回 渡邉佳子✕田中彩絵✕新宮怜美

特集中面

 今年の早大の柱ともいえる二枚看板の田中彩絵(スポ4=福岡・三瀦)と新宮怜美(スポ3=京都西山)。そんな二人の女房・渡邉佳子(スポ4=東京・学習院女)の3人の信頼関係、全日本大学選手権(インカレ)にかける思いを伺った。

※この取材は9月6日に行われたものです。

――まず、他己紹介をお願いします

田中 新宮怜美です。高校の時にジャパンに入っていた、もう素晴らしい投手です。チームの雰囲気を盛り上げてくれる、チームの元気印みたいな、そんなキャラクターかなと自分は思っています。

渡邉 新宮怜美さんは、もちろん実力はもうばっちりで、みんなも認めるすごい投手です。それ以外にも、練習もすごくストイックに取り組んでいます。ストイックに取り組む姿勢から、みんなからの信頼も厚いかなと思う反面、ちょっと抜けているところがあるのも魅力的なのかなと思います。

――どんなところが抜けていると思いますか

渡邉 抜けているところというか、人の塩分チャージを半分くらい一日で消費する(笑)。

一同 (笑)。

田中 渡邉は、私たちの女房なのですが(笑)、総監督(吉村正総監督、昭44教卒=京都・平安)や監督(長谷川誠監督、平5文卒=長野・松商学園)、コーチからも信頼されていて、「名捕手・渡邉」と最近言われています。本当にその名にふさわしいというか、私たちの投げている球に真摯に向き合ってくれる捕手でもあり、プライベートでも、投手とグラウンド外でもしっかりコミュニケーションを取ってくれる、そういった捕手です。

新宮 まずソフトボールの面では、田中さんも言っておられたように、私は後輩なのですが、本当に頼りになるなと思っています。打撃でも「ここちょっと苦しいな」と思っていたりしたら、そこで一本打ってくれたりとか、強い相手でも、「自分の思っているように投げればいいよ」という風に声をかけてくださったりとか、すごく信頼のできる捕手だなという風に思います。プライベートでは、後輩にも気さくに声をかけてもらったりして、プライベートから仲良くしてくれる、すごく優しい先輩です(笑)。

渡邉 田中さんは随一の身長を誇る投手で、高い位置から投げるドロップ(ボール)と、腕の長さを生かしたライズ(ボール)、変化させるボールが魅力的な投手で、多彩な球を使って相手の打者を揺さぶる投手です。プライベートな面では、結構一緒にいることが多いので、改めて特に言うことはないです(笑)。

一同 (笑)。

渡邉 よく楽しく遊んでもらっています(笑)。

――現在の背番号を選んだ理由を教えてください

渡邉 私は7番なのですが、7番を選んだ理由としては、高校の時も7番をつけていたというのもあります。高校の時も自分で選んでよかったので、7番をつけていました。7番は、ラッキーセブンというように、運をも味方につけたいなと思って7番にしています。もちろん練習で技術を身につけて、発揮できればいいと思うのですが、最後は天までも味方につけていいプレーができたらいいなと思って、7番をつけています。

新宮 私は17番で、中学の時にソフトボールを始めたのですが、その時から結構7に縁があって、中学も高校も、ジャパンの時もずっと7番を背負うことが多かったです。大谷(翔平)さんや上野(由岐子)さんも17番をつけているので、割といい背番号だなと思って(笑)、つけています。

田中 私は本当は18番がよくて、4年生の先輩が18番をつけていたので、3番にしました。3番にしたのは、私が高校の国体の時に3番をつけさせてもらって、3番をつけていると、ラッキーなことがおこるというか。その国体の時もそうですし、中学校1年生の時も3番をつけていて、結構いいことが起きていました。3番っていいことあるのかなという結構軽い気持ちで、18番が無理だったらなんでもいいなくらいで、3番にしました。

――東京都大学連盟春季リーグ戦(春季リーグ戦)を振り返っていかがですか

渡邉 なかなか思うようにいかなかったのが春季リーグなのかなと、私個人としては思います。結果としても、春季リーグではインカレ出場権を獲得することができなかったですし、強豪校には、なかなか歯が立たなかったというのもそうです。いつもなら互角に戦えるのかなというチームにも、なかなかあと一つ、最後に勝ちにつなげられなかったというのがすごく多くて、課題が見えた試合だったのかなという風に思っています。

田中 私も渡邉と同じような感じで、私はリーグ戦では、ほぼ投げさせてもらったのですが、自分の力ではチームを勝たせることはできないんだな、一人の力では勝たせることができないんだなというのを感じました。自分自身投手として、もっとちゃんとしないといけないなというのを、すごく感じた大会でした。

新宮 私は結構悔いが残る大会で、春季リーグの前にケガをして、肉離れだったのですが、大会には出られませんでした。田中さんと二人でタッグを組んで頑張ろうという時だったので、自分でも悔いが残る試合だったなと思っています。ベンチで田中さんがめちゃくちゃ頑張っておられる姿を見て、自分は何とかして4年生の力、特に渡邉さんと田中さんの力になれたらいいなと思って、そういう思いで大会が終わったという感じです。

――渡邉さんにお聞きします。春季リーグ戦では課題が見つかったというお話でしたが、どういった課題でしたか

渡邉 そもそもポジションが決まっていなかったというところもあって、連携もそうですし、初歩的なバント処理であったり、1個アウトを取るのも少し遠かったという印象があります。確実にアウトを積み重ねていかないと試合には勝てないので、1個のアウトを取る、本当に基本的な部分がまだまだ足りていないなというのが、課題として感じました。

――優勝した全日本総合選手権(全総)東京都予選会を振り返っていかがですか

渡邉 全総予選は、初日が大雨の中の試合だったのですが、相手校が棄権するというかたちで、二日目から私たちは試合が始まったという感覚でした。二日目の初戦が日女(日女体大)で、日女とはリーグで勝ったり負けたりしていて、絶対に負けたくないという気持ちが高まるような相手で。もちろん絶対に負けたくないという気持ちで臨んで、ぎりぎり勝てたという印象でした。一個勝って決勝に行って、決勝では逆に、相手は東女体(東女体大)という強豪校だったので、背負うものもなく、チャレンジャーな気持ちで向かえたのが、勝利につながったのかなと思っています。延長戦に入っての勝利だったのですが、みんなが純粋にソフトボールを楽しんでプレーできたのかなと、私自身は感じました。私たちは強豪校出身の選手が多いわけでもないですし、チームが一体となって、一体感がめちゃくちゃ出た時に勝てるんだなという、勝ち方を知れた大会だったのかなという風に個人的には思っています。

田中 春季リーグと相手校は変わらないのですが、だからこそ、短期間でチームが成長したというのを感じられた大会だったなと思います。さっき渡邉が言ったように、チームの結束力、組織力で勝っていくという、新しい自分たちの勝ち方、それでも勝てるんだという、これからの自分たちに自信が持てた大会だったと思っています。正直優勝するとは、あまりみんな思っていなかったと思うのですが、だからこそ、早稲田らしく、いろいろ背負うことなく戦えて、早稲田らしさが出せた大会だったなと思います。

新宮 私は先ほども言ったのですが、復帰してから東京都リーグ1部のチームと戦うのが久しぶりだったので、自分的にはめちゃくちゃ気合いが入っていました。そこで田中さんと二人でタッグを組んで、一つずつ一つずつ丁寧にアウトを積み重ねて、それが勝ちにつながったのかなという風に思っています。そこで田中さんと二人で、どういう風に試合を動かしていけばいいのかとか、渡邉さんとどういう配球で試合を動かしていけばいいのかというのを、そこの大会で学びました。なので、すごく私にとっても、チームにとっても学びが多かった試合だったなという風に思います。

――東日本大学選手権(東日本インカレ)では優勝を果たしました。東日本インカレはどのように評価されますか

田中 東日本インカレは、「日本で一番いいチームでソフトボールができているな」というのを感じた大会で、みんなが一試合ずつ成長していって、優勝したと感じています。個人的には4試合を新宮とうまく分けて、しっかりお互い任されたところを抑えて、というかたちで、守りのところを新宮と二人で守った分、みんながそこで点を取ってくれて勝ちました。それが優勝というかたちで出て、最高にうれしかった大会です。

渡邉 東日本大会は、田中も言っていたのですが、チームの一体感、結束力がすごく良くて、本当に胸を張って日本で一番いいチームだったと言えるような、5試合を通して、すごく感じました。対戦相手も決勝に行くにつれて、強いチームと戦っていくので、うまく私たちもステップを踏んでいけました。その時にちょうど、攻撃を長くして守備をなるべく短く、という風にやっていたのですが、それもうまくハマって、守備の時間はなるべく短くして、攻撃では、一人一人が粘ったりとか、3人で終わることを少なく、長く攻撃ができたので、ベンチでうまく休む時間ができたりとか。そういう意味で、お互いにみんなが助け合って戦えたのかなと思っています。投手もうまく球数を分担して、二人で5試合を投げ切れたというのも、すごく大きな収穫だったのかなと思います。野手もピンチの場面とか、「ここで点欲しいな」という場面で、みんな打って点を取ってくれました。投手も点があると、投げやすくなると思うので、野手がたくさん点を取ってくれて、バッテリーとしてもすごくやりやすかった試合だったのかなと思います。

新宮 東日本を振り返って、私がいままで何試合もやってきた試合の中で、一番楽しかった試合だなと思っています。早稲田は全員が楽しんで、全員が東日本での勝ちにこだわった結果が、優勝につながったのかなと思います。やっぱり楽しめばいいというわけではなくて、勝ちにもこだわらないと、優勝という結果につながらなかったと思うので、相手の対策であったり、前日の過ごし方であったり、早稲田が一番そういうところにこだわったてきたのかなと思っていました。渡邉さんや田中さんも言っておられたように、野手がピンチでも、しっかりアウトを取ってくれた、チャンスで一本が出て、点を入れてくれたというのと、渡邉さんと田中さんと私で、ピンチも3人で切り抜けたというので、その積み重ねが優勝につながったのかなと思います。

――東日本インカレが終わってからここまで、テーマや目標としてきたことはありますか

渡邉 私の中では4番を任せていただいているので、チームの勝利に貢献できる打者になりたいというのが大きな目標としてあります。やはり短打というよりかは、長打でチームに勢いをつけられたらいいのかなと思ったので、個人の目標としては長打力をもっとレベルの高いものにしていけたらという風に考えていました。私自身3週間前くらいに骨折をしてしまったのですが、逆に余計な力が抜けて、今はいい期間でできているのかなと思います。捕手としては、ある程度こういう風にすれば、アウトを取れるというのが、投手と話しながら大分わかってきたところではあるので、それをさらに磨いて、セオリー通りにするところはするし、逆にその裏をかくところは、という。もっと細かいところを詰めていくことで、さらに高いレベルが目指せるのかなと思います。コミュニケーションをとることで、お互いが「今ここ投げたい」「ここ欲しい」という意思疎通ができていると、その球がさらにいい球になると感じているので、コミュニケーションをとって、さらに詰めていくところは私の中で、目標としてありました。

――ケガをされたというお話でしたが、ケガの影響は大丈夫でしょうか

渡邉 はい、もうばっちりです(笑)。

田中 自分は東日本までは、得意な球ばかりを使って、なんとか抑えるというのをやっていたのですが、いままで苦手だった球にも挑戦して、打ち取る幅を広げるというテーマを持っています。監督 とも話して、「インカレまで2週間しかないと考えるのではなくて、まだ2週間ある」と冷静に捉えて、焦らずに毎日毎日ステップアップしていくというテーマを持って、今は取り組んでいます。チームとしては、東日本を終えて、インカレに向けて一回ミーティングをしたのですが、その時にも、「インカレは特別なものがある」というので、技術を高めて向かうのももちろんですが、もう一度組織力を高めて、という考えが一致したので、そういった点と、とにかくポジティブな声かけを徹底して、みんなで調子を上げていこうというテーマがあります。

新宮 東日本優勝という結果を終えて、いろいろ振り返っていたのですが、「ここがゴールではないな」と思ったので、東日本はすごくいい経験と捉えて、東日本で優勝したからといって、過信するのではなくて、まずはもう一度初心に返って、一戦一戦勝てるように、インカレまで調整しようとなりました。個人としては、最終調整の時期に入っていると思うので、コントロールや変化球の質、速球のスピード感もそうですし、一つ一つを毎日丁寧に磨いていくことが、インカレでの一戦目の勝ちにつながると思います。なので、東日本を終えてからインカレまで、一日一日丁寧に積み重ねていこうという風に、個人としてはやっています。先ほど話にもあったのですが、個人が、一人一人が輝くというのも大事だと思うのですが、それ以上に、チームで一体感というのが大事になってくると思います。(インカレまで)あと2週間だと思うのですが、そこでチームがいい一体感が出るように、練習でしっかり盛り上げながら、活気のある練習の雰囲気で、インカレに向かえればなという風に思っています。

――渡邉さんから見た投手二人の特長を教えてください

渡邉 田中は、変化球を交えて打ち取っていくスタイルの投手です。いろんな球種を持っていて、一つ一つの(球の)動きが大きいというのが魅力的なのかなと思っています。やはりいろんな球種の球を投げる人は他の大学にもいるのですが、変化の幅、(球が)大きく動くというところは、なかなか他の投手にはない魅力なのかなという風に思っていて、変化の幅をうまく使って、相手の打者を揺さぶるというのが魅力的な投手です。

渡邉 新宮はいろんな球種を投げるのもそうですし、コントロールの良さ、ここぞという時に速球も持ちあわせていて、総合的にも大学ナンバーワンの投手と言っても過言ではありません。ピンチになればなるほど、球に力だけではない、「打ち取るぞ」という気迫のこもった投球をするというのも魅力的です。球はどの球種も素晴らしいものを持っていて、さらに気持ちも乗せて投げることができるので、敵なしというような投手です。

――渡邉さんのお話を聞いて、お二人はどうですか

新宮 恥ずかしい(笑)。率直にうれしいです(笑)。そういう思いで受けていただいているというのは、本当にありがたいし、うれしいことだなと思います。

田中 ちゃんと(球を)動かそうと思います。

一同 (笑)。

――投手のお二人から見て、渡邉さんはどんな女房でしょうか

田中 普通の夫婦で例えたら、心のケアまでしてくれるいい奥さんというか(笑)。捕手なので、技術的なところで「ボールをああして欲しい」とか、「こうして欲しい」というのは普通だと思うのですが、そうするために、どうすればいいかというのを一緒に向き合って考えてくれるというか、一球一球投げながら、「今のこうなってるからじゃない?」とか、「今日いつもと違うのは前に突っ込んでるからだよ」とか、すごく細かいアドバイスをくれます。それは総監督から投球の指導を受けている時に、必死で聞いているからです。総監督がいないときに、総監督から指導を受けているような的確なアドバイスをくれて、投手一人でボールを磨くのではなくて、バッテリーで一緒にボールを磨いてくれるような、すごくいい女房です(笑)。

新宮 まず、4番打者というだけでもしんどいというか、ここぞというときに4番を背負っているだけでもしんどいことだと思います。ですが、打撃をしたいはずなのに、そのやりたいという気持ちを抑えて、投手のことを一番に考えてくださって、すごく投手思いの捕手だなと思います。投手はプレーが始まったら孤独なのですが、私は渡邉さんがいるから頑張れるというか、一人じゃないなとマウンドに立っていて思うくらい、本当に信頼もありますし、練習で積み上げてきた信頼関係と暖かさというのが、マウンドに立っていて、心地いいなと思います。試合だけ良ければという捕手もいるのですが、練習から投手に寄り添ってくださります。田中さんも言っておられたのですが、的確なアドバイスと、うまくいかなかったときに、しっかり指導してくださるので、「ここが駄目だから、こういう風に修正すればいいんだ」という風に、自分の中でも納得がいって、毎日投球練習ができるので、それが試合でも結びつくのかなと思います。

「チャンスで点に結びつける打撃」(渡邉)

「4番・捕手」として、攻守にわたる活躍が期待される渡邉

――渡邉さんは4番を任されていますが、4番打者のプレッシャーはありますか

渡邉 プレッシャーはあまりないです。基本的にポジティブで、あまりマイナスに考えないところもそうなのですが、打撃がすごく好きなので。昔からチャンスで回ってくることが多かったので、少し慣れたのかなというのはもちろんなのですが、二人の投手がすごくいい投球をいつもしているので、私が打つことで、少しでも楽に投げられたらいいなという風に思っています。二人が頑張っている姿をいつも見ているので、打撃で、ここぞというチャンスで回ってきたときに、「私が返してやるぞ」という気持ちでやっているので、あまりプレッシャーはないです。

――渡邉さんの「理想の打撃」を教えてください

渡邉 チャンスで絶対走者を返せるのが、理想の打撃なのかなと思っています。先頭で回ってきたら、出塁することも大切なのですが、4番という位置にいる以上、基本的に走者がいる場面とか、2死で回ってくることが多くて、走者を返すことが、私に与えられた一番の役割だと思います。遠くに飛ばすとか、いい打球を打つとかも、もちろんそうなのですが、点に結びつかなかったら何の意味もないので、少ないチャンスでしっかり点に結びつける打撃ができるのが、理想の打撃なのかなと思います。

――田中選手に伺います。投手と野手の両立というのは大変ですか

田中 最近はほとんど投手しかしていなくて、野手は多分ないと思うのですが、これまでのインカレはずっとファーストで出て、初めてピッチャーとしてインカレを迎えるのですが、両立をしていた時期があったからこそ今投げられていると思うので、両立が難しかったというよりかは、両方に挑戦させてくれたこのチームのその当時のキャプテンや監督に感謝しています。

――今は投手の練習のみをしているという感じですか

田中 今はピッチャーとバッティングで、野手はほとんどしていないです。

――野手の経験が、投手として役に立っていることはありますか

田中 エラーは別に気にならなくて、自分はリズム良く投げるというのも課題なのですが、リズム良く投げることで野手も守りやすくなるということは、これまで増田さんだったり、新宮だったりが、リズムの良い投球をしてくれていたから自分もアウトを取れていたというのがあったので、そういったところを心掛けて投げるようにしたいなと思います。

「バットに触れさせたくない」(新宮)

気持ちをこめた投球が魅力の新宮

――新宮選手に伺います。速球が魅力だと思うのですが、速球を生む秘訣はありますか

新宮 ジャンプ力かなと思います(笑)。中学の時から高跳びや幅跳びが得意で、自分はジャンプ力あるのかなと思っていて(笑)。初めてウインドミルをやってみてと言われた時に、いきなりだったんですけど、ジャンピングだったので、スピードを出すためには割とジャンピングが秘訣かなと思います。でも今は変化球にこだわっていて、大学に入ってスピードだけでは生きていけないと思って、実業団でもすごいいいピッチャーは速い中でもボールが変化しているので、ただ速いだけでは絶対打たれるというので、今はスピードを抑えて変化球重視で投げています。

――投げる中で三振というのは意識しているのでしょうか

新宮 やっぱりバットに触れさせたくないというのはあるので、三振というか、見逃し三振だったらすごくうれしいです。ゴロも打たせたくないというのは自分の中であります(笑)。

――投手の2人に伺います。長いイニングを投げる体力には自信はありますか

田中 自分はないので、いかに任された短いイニングをしっかり抑えたらいいというか、弱気で申し訳ないのですが、本当に7イニング投げる体力というのは自信がないです。

新宮 結構自分は野性的というか、体力はあるほうなので。でもケガが多くて、それで総監督に2時間走るといいよというアドバイスをもらって、自分も納得して走るようになったら割と大きいケガというのもなくなったので、ロングイニングも投げられるようになりました。

――投手のおふたりは、どちらかが先発で、どちらかが中継ぎというふうになると思いますが、どちらの方がやりやすいという好みはありますか

新宮 早稲田に来るまではほとんど1人で投げてきたので、割と先発で1試合丸々投げることは慣れているのですが、大学に来てから中継ぎなどもするようになって、今年の代では田中さんと2人で投げるようになって、今はクオリティースタートといって、田中さんと私の系統が全然違うので、先に田中さんがボールを動かして、その後に私が速球系で押すというのがハマっているので、相手チームとしては嫌な順番で来ているのかなと思います。別に自分はどちらでも投げれるっちゃ投げられるのですが、今この2人でやっている中ではそれがハマっているかなと思います。

田中 自分は任されたところはどこでも行きますという感じなのですが、自分と新宮って考えた時に、新宮の球を見た後に自分の球を見ると、球速もそうですし、新宮のボールも動くので、その分自分が先に行けるところまで耐えしのいでから新宮の方が、チーム的にも楽になることはこれまでの東日本でも感じているので、自分がしっかり抑えてつなぐということができれば理想的かなと思います。

――先発と中継ぎで準備や調整に違いや難しさはありますか

田中 やっぱり人が少ないので、アップでそもそも受けてくれる人がいないだったり、そういった面での難しさはあるのですが、特に先発だから、中継ぎだから変えるということはあまりないです。

新宮 私は結構こだわりが強くて、ちょっとでもボールがぼこぼこだったら嫌やみたいな(笑)。先発だったら事前に聞いてしっかり準備したい、完璧にして入りたいというのがあるので、割と先発なら先発、中継ぎなら中継ぎというのは事前に知っておいた方が、自分はイメージを大切にしているので、イメージが作りやすくて、いいピッチングができると思います。

――継投のタイミングは最初から決まっているのでしょうか

田中 基本的に大まかには決まっているのですが、状況を見ながら監督が決めるという感じです。

――気になっていたことなのですが、ソフトボールの投手は下から投げると思うのですが、キャッチボールの1球目からいきなり下から投げるのですか

渡邉 野手も最初はみんな下からやります(笑)。

田中 それから上投げのキャッチボールをして、それから下投げをしています。

新宮 どうでもいい話なのですが、チンパンジーは昔下から放ってたみたいな(笑)。下から投げるほうが本能というか(笑)。

――鈴木茉菜(スポ4=東京・鷗友学園女)選手が、「投手陣は突き詰めて練習しているイメージ」とおっしゃっていたのですが、具体的にはどんな点を突き詰めて練習しているのでしょうか

新宮 私はこだわりが強くて完璧主義者というのもあって、球種は結構あるのですが、今はライズとドロップとチェンジアップを練習で多めに投げていて、全部に対して回転数が多ければ多いほどいいボールがいくので、その回転数というのにすごいこだわりを持っています。だから今の全然回転しなかったなとなると、納得するまで終わらないというのは、私も田中さんも共通してあるのかなと思います。

田中 投げながら渡邉が「もっと伸びがほしい」だとか、自分的にはいいボール行ったかなと思っても、「ちょっと早い」とか、「もっと手前で伸びてほしい」だとか、「もっと奥で動かしてほしい」だとか、「もう1個曲がり幅があったらいい」だとか、客観的に他の野手が見たらいいボールだと思うのですが、バッテリー間ではいいボールのレベルが1個違うのかなと思います。

渡邉 今2人が言っていたように、ブルペンでは1球を突き詰めていて、ライズボールだったらしっかり回転させて上げていくといった、ただ上がっていればOKではなくて、ちゃんとプロセスを踏んで投げるというのを大事にしています。実戦練習では打ち取った時には「こうできたから打ち取ったね」だとか、逆に打たれた時は「あそこはもう1個コースをこうやったほうが良かったね」だとか、「あの球じゃなくて他の球種を投げたほうが良かったね」というのを毎イニングごとに話し合えているので、そこを詰めていくことでインカレでは安易に打たれることを減らしていけるのではないかなと思います。

――高美優(スポ3=福岡中央)選手が、「あの投手陣で打たれたら文句ない」とおっしゃっていて、野手から全幅の信頼を置かれていることについてはどう思いますか

田中、渡邉、新宮 うれしい。泣きそう。

新宮 結構そうやって言ってもらえるのはすごくうれしくて、野手に認められるっていうのが1番バッテリーとしては大事なのかなと考えていて。自分たちバッテリー間だけで上手くいったからOKではチームとして成り立たないと思うので、それをどう野手と連携を取って上手くやれるかというのをずっとやっているので、野手から評価されているというのは、毎日の練習でバッテリーでコツコツ積み上げてきてよかったなと思います。

渡邉 そういうふうに言ってもらえるのはすごくうれしくて、やはり今言ったようにバッテリーだけでは成り立たない部分があって、それを野手に助けてもらっているからこそ、今までの試合でもいい結果が残せていると思うので、私たちがブルペンで地道に突き詰めてやっていることが野手にも伝わっていてすごくうれしいなと思います。

田中 私も純粋に高ちゃんがそう言ってくれているというのがうれしいのですが、そう言ってくれているにしてもやはり負けたくないし、「この2人で負けたから仕方ない」と思わせないように優勝したいなと思います。

――インカレに向けての質問に移ります。初戦の相手が中京大に決まりましたが、印象や感想を教えてください

田中 中京大は2年前の代替大会の初戦で当たって、1点差で負けてすごく悔しいという思いがあったので、純粋に初戦中京大と聞いたときはリベンジができるのでうれしく、燃える相手が来てくれたなと思いました。

渡邉 ちょうど2年前の代替大会では2アウトランナー二、三塁の場面で回ってきて、三振をしてしまったので、私がラストバッターで負けてしまってその試合がめちゃくちゃ悔しかったというので、初戦に中京大とまたできるので、あの時のリベンジができるというのは率直に思いました。2年前の自分からは少しは成長できているのかなと思うので、2年前の悔しさを絶対に晴らしたいので、絶対に勝ちたいなと思います。

新宮 練習中に対戦表が分かって、全員練習が一旦中断するというぐらいまで「よっしゃー」という感じで1回そこで気合いが入ったというか。自分が1年生の時だったので、1、2年生はあまり分からないと思うのですが、3年生までは特に2年前のリベンジということですごく気合いが入っていて。私はその時ちょうどレフトで出ていて、途中で6、7回の2回をピッチャーとして登板させてもらったのですが、初めてですごく緊張してノーアウト満塁を2回作って、それを0で抑えられたという。今回は先発とか分からないですけど、投げられる機会があるなら絶対に全部三振くらいの勢いで戦いたいなと思います。

――インカレに向けて自分のアピールポイントを教えてください

新宮 自分はピッチングというよりも、気迫ある雰囲気というか、相手に向かっていく姿勢というか、絶対負けへんでという勢いが1番の持ち味で、対バッターで相手が本気で打ちにくるのに対してそれを通過するボールを投げる必要があるので、それほどの気力あるボールというのが大事だと思っています。そこを大事に全力で楽しんで盛り上げて、自分から雰囲気を作るというのを、後輩なのですが関係なく、めちゃくちゃ盛り上げていけたらなと思います。

「打てそうで打てないボール」(田中)

田中は、かわす投球で打者を翻弄する

田中 小学2年生からソフトボールをしているのですが、もうこのインカレで引退で最後なので、最後にピッチャーとしてインカレを迎えるので、打てそうで打てないボールというのを見てほしいです。きっとボールも速くないので、なんで打てないんだろうと周りが思うような姿を見せたいなと思います。

渡邉 私も小学1年生から始めたソフトボールがもうインカレで最後になるので、今までの10何年間の思いを乗せた気迫あふれるプレーに注目してもらいたいなと思います。もちろん、初戦で終わってしまったら7イニングしかないわけですし、1試合1試合が大事な試合になってくるので、残り何球かという1球1球に込めたプレーの気迫に注目してほしいです。

――インカレでのチーム内でのキープレーヤーは誰になると思いますか

新宮 自分で言うのもなんですけど、やっぱりバッテリーかなと思っていて、試合でもし仮に点が取れなくても絶対に抑えて点を取られなければ負けはないので、バッテリーが中心になって0点で抑えて、バッターにつなぐというのが理想の試合だと思います。

田中、渡邉 そうだね、自分たちだね。

――最後に、インカレに向けて意気込みをお願いします

新宮 まず私は大学に入ってすごくいい先輩方といい同期といい後輩に恵まれてソフトボールができているなと感じていて、その良くしておただいたり、仲良くしていただいたりした4年生の最後の試合がインカレで、インカレが終わってしまうと私たちの代が来るということで、考えただけでも恐ろしいなと思って。4年生がいなくなるのが本当に悲しいし、もっと一緒にやりたいなと思うので、どこの大学よりも長く4年生といい思い出が残せればと思います。私はピッチャーというポジションでグラウンドの中の中心に立つポジションだと思うので、私が4年生に気持ちが伝えられるようにプレーでもベンチにいても、気持ちをグラウンド内外でも届けたいなと思っています。いくら楽しくても負けたらそこで終わるので、1番長く4年生とソフトボールをしたいと心から思っているので、楽しくかつ勝ちにこだわって必ずインカレで優勝したいなと思います。

田中 3回インカレを見てきて、マウンドに立っている伊藤さん(貴世美、令2スポ卒)だったり、増田さん(侑希、令3スポ卒=現戸田中央メディックス埼玉)だったり、新宮だったり、その3人が投げていた憧れのインカレのマウンドで投げられるのが、投げられると思っていなかった時期もあるので、純粋に楽しみな気持ちもあります。今までソフトボールをしてきた中で1番チームメイトに恵まれているのが今の代だなと思うので、それを楽しみながら新宮と今まで通りお互いに支え合いながら、高め合いながら、インカレ優勝を目指して頑張りたいと思います。

渡邉 今年はソフトボールがどの試合も純粋に楽しくて、僅差の試合でも、終盤で負けていても、全然負ける気がしないぐらいどの試合もすごく楽しくて、インカレも最終日まで残って、その楽しさをチームメイトみんなで楽しみたいなと思います。やはり楽しいだけで負けてしまったら意味がないので、もちろん楽しむということも大事にしていきたいのですが、1試合1試合しっかり勝ちを積み重ねて、いい仲間に巡り合えたこのチームでどこの大学にも勝って優勝したいなと思っています。

――ありがとうございました!

信頼関係抜群のバッテリー陣です!

◆◆新宮怜美(しんぐう・れみ)(※写真左)

2001(平13)年7月25日生まれ。京都西山高出身。スポーツ科学部3年。投手。インカレへの意気込みを語る場面では、4年生への思いから感情がこみあげる場面も。熱い気持ちを乗せた投球で、早大を勝利へ導きます!

◆渡邉佳子(わたなべ・かこ)(※写真中央)

1999(平11)年6月27日生まれ。東京・学習院女高出身。スポーツ科学部4年。捕手。韓ドラが好きという渡邉選手。高美優選手(スポ3=福岡中央)、小林千晃選手(スポ2=千葉経大付)の3人で、U-NEXTの無料体験をシェアしているそうです!

◆田中彩絵(たなか・さえ)

2000(平12)年10月7日生まれ。福岡・三瀦高出身。スポーツ科学部4年。投手。女子部の主務を務める田中選手。私たち早スポと連絡を取ってくださったり、遠征を計画したりと仕事は多岐にわたります。裏からもチームを支える田中選手に注目です!

(記事 齋藤汰朗、矢彦沢壮真 写真 齋藤汰朗)