山田が初優勝!早大勢3人がシーズン本格化を見据えて調整

フィギュアスケート

東京夏季フィギュアスケート競技大会 8月31日、9月1日 三井不動産アイスパーク船橋

 毎年有力な選手が数多く参加する、東京夏季フィギュアスケート競技大会。早大フィギュア部門からは、山田琉伸(人通2=埼玉栄)、穂積乃愛(人通1=駒場学園高等学校)、西俣仁衣奈(文構1=福岡雙葉高等学校)の3名が出場。シニア男子の部門では、今シーズン好調の山田が初優勝を果たした。

★シニア男子SP

演技をする山田

 早大勢最初に登場した山田は、さらなる進化を見据え、一か月前新横浜プリンスFSCへ移籍し、佐藤紀子氏を新たにコーチとして迎えたばかりだ。披露したのは、今シーズンの新プログラム、『戦場のメリークリスマス』。坂本龍一氏作曲の、切なく美しい名曲だ。前半は、両腕をしなやかに使って、柔らかさを表現。一方勢いが増す後半は、力強くステップを踏んでいき、曲調の違いに合わせた滑りを見せた。1本目の2回転アクセルは、0.33点の加点がつく出来栄えで滑らかに成功させ、その後も回転不足こそ取られたものの、大きなミスなく予定構成通りに滑りきった。結果は49.45点で3位。翌日のフリー進出を決めた。

★シニア女子SP

演技をする穂積

 次に出番を迎えたのは、今年新たに早大フィギュア部門に加わった、1年生の穂積。鮮やかなパッションピンクの衣装で氷に上がった。新しいショートプログラムは、『You’re a Mean One, Mr. Grinch』。明るくアップテンポな曲調通り、リズムに乗って笑顔で滑り出した。しかし1本目のジャンプは、2回転アクセルの予定が1回転アクセルに。3本目も抜けてしまい、3つのジャンプのうち2つが無得点という大きなミスが出てしまう。演技直後には肩を落とし、「自分でもまだ整理ができていない」と悲しげな表情も見せた。それでもスピン、ステップで確実に得点を積み重ねながら、曲にぴったりな明るい笑顔で演じきり、全体13位でフリー進出を決めた。

★6級女子

演技をする西俣

 9月1日には、6級女子の試合が行われ、早大フィギュア部門からは、1年生の西俣が登場した。曲は、昨シーズンからの継続となる『ドン・キホーテ』。片手を腰にあて、もう片方の手をすっと伸ばしたバレエのポジションで演技スタート。優雅な音楽に合わせ、ひとつひとつの姿勢が美しい丁寧な滑りを見せるが、2本目の2回転ルッツで大きく着氷が乱れてしまった。曲調が一転、男女2人の踊り手によって展開されるグラン・パド・ドゥの部分を使った後半は、「明るく、幸せな場面を表現したい」と語った通り、華やかな演技が求められる。立て続けのジャンプもリズミカルに決めていったが、回転不足やエッジ不明瞭との判定を受け、51.51点と得点は伸び悩んだ。今大会に向けては、大学のカリキュラム上1ヶ月以上練習ができていなかったといい、万全の体制とは言えない中、全体6位で試合を終えた。

★シニア男子FS

演技をする山田

 SP3位という好位置でFSに臨む山田は、新たにコーチに迎えた佐藤氏と拳を合わせてからリンク中央へと向かった。今季のフリープログラムは『ニューシネマパラダイス』。4年前にもSPで使用した曲だが、「上手くなってからまたFSで使ったら、もっと上手く滑れるのかな」と思い温めていたという。冒頭挑戦した3回転アクセルは、回転が半分足りず着氷が乱れたが、その後は、3回転フリップ+(1回転)オイラー+3回転サルコウなど高難度のコンビネーションも含め、ジャンプを次々と成功。得点は、108.93点で1位。SPとFSの合計でも、158.38点で1位となり、見事初優勝を果たした。今季はすでに、関東サマートロフィーやサマーカップでも150点を超えており、好調が伺える山田。目標として掲げる、全日本選手権進出に向け、期待が高まる。

★シニア女子FS

演技をする穂積

 第1グループ最後に登場した穂積は、岡島功治コーチの言葉に力強く何度も頷いてから、リンク中央へ向かった。曲は『The Sky and the Dawn and the Sun』。緊張した面持ちだったが、曲がかかると演技に入り込み、自信に満ちた様子で滑り出した。冒頭の3回転ルッツ+2回転トーループのコンビネーションジャンプも美しく決め、落ち着いてリンクを広く使い、氷上を自分の色に染めていく。しかし中盤、立て続けに2度、3回転の予定が1回転に抜けるミスをしてしまうと、その後は、「ジャンプが抜けていくにつれて、焦りが出てきてしまった」と精彩を欠いた。後半は「今まで滑ったことのないような曲調」と語る民族系の音楽。転調と同時に軽快な様子で滑っていき、途中やや失速したものの、最後はリンクの真ん中で堂々とポーズを決めた。得点は83.98点。固い表情でリンクを降りた。

(記事 荘司紗奈、林玲亜 写真 荘司紗奈)

※掲載が遅くなり、申し訳ありません
結果

▽シニア男子


山田琉伸

 

SP 3位 49・45点

FS 1位 108・93点

総合 1位 158・38点


▽シニア女子


穂積乃愛

 

SP 13位 42・82点

FS 11位 83.98点

総合 14位 126.80点


▽6級女子


西俣仁衣奈

 

6位 51・51点


コメント

山田琉伸(人通2=埼玉栄)

――今シーズンのショートプログラムである『戦場のメリークリスマス』、フリープログラムである『ニューシネマパラダイス』、それぞれについて見どころや意識している点を教えてください。

 本当は、ショートは静か系で、フリーは賑やかな曲でいくつもりだったんですけど、作ってみてしっくりこなかったので、両方静かできれいめな曲にしました。自分自身、速い動きよりはきれいな動きが得意なので、きれいな優雅なスケートが見せられるようにしたいです。

――『ニューシネマパラダイス』は4年前にもショートプログラムに使用されていました。今回またあえてフリープログラムに持ってきたのはなぜですか

 昔SPで滑っていたときに、上手くなってからまたFSで使ったら、もっと上手く滑れるのかなと思っていて、それを今回やろうと思って使いました。一か月前に新横浜プリンスFSCに移籍したのですが、新しく佐藤紀子先生がコーチになって、柔らかくてきれいな動きを教えるのが上手な先生なので、活かせるかなと思ってやりました。

――今回のSPとFSの演技、振り返っていかがですか

 今回は立て続けの合宿で疲労感がある状態のまま試合に来てしまったのですが、ジャンプもまとめられましたし、疲れの割には良い演技ができたかなと思います。ただスピンがひどかったので、ブロック大会までにスピン・ステップを改善していきたいです。

――改めて、東京選手権に向けて意気込みをお願いします

  今回できなかったスピンとステップのレベルを取りたいです。あとは、加点が取れるジャンプも今回少なかったので、プログラム通して加点が取れるようにしたいですし、体力もつけていきたいです。

 

穂積乃愛(人通1=駒場学園高等学校)

▽SPについて

――今大会に向けてのコンディションはどうでしたか

 コンディションはわりと良くて、自信がある方だったのですが、本番については、なぜミスをしたのかとか、なぜふわふわした演技になってしまったのかとか、正直まだ自分でも整理しきれていなくて。もし明日があるなら、明日までにどうにかしたいです。

――演技に入る直前の緊張感などはどうでしたか

 私は緊張すると、ふわふわ地に足がつかない感じになってしまうことが多くて、今後もう少し対策を考えないといけないかなと思います。

――演技中は、明るい笑顔も印象的でした。そうした表現の面についてはいかがでしたか

 今日は、ジャンプ以外のところは、サマーカップよりも良いものができたのではないかと思っています。これから、東京選手権、東日本選手権、全日本選手権と、どんどん良いプログラムにしていきたいです。

――明日のFSに向けて、意気込みをお願いします

 SPが滑り終わって、南船橋(のスケートリンク)の氷の感覚だったり照明だったり、色々と学ぶことがあったので、FSは自分が出し切ったと思える演技がしたいです。

 

▽FSについて

――今シーズンのフリープログラム『The Sky and the Dawn and the Sun』について教えてください

 今シーズンからの新プログラムです。中盤までは割と私らしい感じの曲調だと思うのですが、後半は今まで滑ったことのないような曲調なので、これから試合を重ねていくにつれて、もっと強弱の効いた表現ができるようにしていきたいなと思っています。

――今日の演技をふり返っていかがですか

 最初は割と集中力をしっかり保てていたなという印象だったのですが、後半ジャンプが抜けていくにつれて、焦りが出てきてしまって、少しバタついた演技になってしまったかなと思います。最初のルッツは、昨日のうちにしっかり分析しきれたので、反省を活かしていいものが飛べたと思いますし、サマーカップのときは、後半スタミナ切れで滑りきることに精一杯な演技になってしまったのですが、今回は割と最後まで力のこもった演技になっていたのではないかなと思います。

――ルッツなどのジャンプについて、SPでの反省を活かした、とのことですが、どう修正されたのですか

 昨日失敗したのがアクセルとルッツだと思うのですが、どちらもリンクからふわついた感じが強かったので、しっかりと足の真上に乗ることを意識するのと、あとは自分のジャンプを信じて、まっすぐ飛ぶことを心がけて跳びました。

――曲の後半は強弱の効いた表現が必要、とのことでしたが、そのあたりの表現面についてはいかがでしたか

 もう少し強く踊れたかなとは思っていて、特にコレオの前にスタミナが切れがちだと今回も感じたので、自分の体と付き合いながら、しっかりと追い込んだ練習ができるようにしていきたいなと思います。

――最後に、ブロック大会に向けての意気込みをお願いします

 全体としては、全日本選手権に進むことを第一の目標として今シーズン戦っていきたいと思っています。今まだそれがしっかりと声に出して言える状態ではないので、まずは、全日本に出ることが目標だと、堂々と言えるようになりたいです。自分の怪我と少し付き合いながらにはなるんですけど、しっかり一個一個進歩していけたらいいなと思っています。

 

西俣仁衣奈(文構1=福岡雙葉高等学校)

――昨シーズンからの継続となる『ドン・キホーテ』ですが、どのようなプログラムか、どのようなことを意識して滑っているか、など教えてください

 『ドン・キホーテ』はセルバンテスによる同名小説を翻案したバレエ作品です。曲の後半では、その中のグラン・パド・ドゥの部分を使っています。明るく、幸せな場面を表現できるように頑張っています。

――今日の演技を振り返っていかがですか

 最近の試合の中では、1番出来が悪かったと思います。学校のカリキュラムの都合上、一か月以上海外に行っており、練習ができていなかったため、ジャンプの締めが甘くなってしまっていました。

――今シーズンの意気込みを教えてください

 1つ1つ丁寧に、取りこぼしのないように滑れるように練習していきたいです。