新人早明戦 6月1日 早大・上井草グラウンド
早大と明大に入部した新入生。彼らは春の早明戦の前哨戦として、そして現在のライバルとの差を確かめるために、毎年この時期に新人早明戦に臨む。夏を思わせる日差しが照り付けた上井草グラウンドには早明の新人たちの熱いプレーを見届けにやってきた多くのラグビーファンが集まった。試合開始直後から早大にトライが生まれると、続く12分、33分にも追加点。前半終了間際にスクラム一次から失点を許すものの、19ー7とリードを保ち、前半を折り返す。後半は立ち上がりに明大から連続2トライを奪われ、同点に追いつかれる。しかし、早大は集中を切らさず走り続け、最後まで明大にリードを許さない。早明戦らしい僅差の展開となった今試合は33ー24で早大に軍配が上がった。
早大のキックオフから始まった新人早明戦。1分、FL牧錬太郎(スポ1=神奈川・桐蔭学園) がラインアウトからの攻撃で力強いゲインを見せると、両チームのコンタクトは熱を帯びる。前掛かりになった明大ディフェンスを見逃さなかったSO島田隼成(スポ1=福岡・修猷館) が長めのキックを蹴り、明大の後逸を誘う。その瞬間、落下地点の目前にまで走りこんでいたWTB山下恵士朗(スポ1=早稲田佐賀) がボールを拾い、そのままグラウンディング。前半2分に鮮烈なトライを見せた。6分に迎えたファーストスクラムは明大のペナルティー。セットプレーでも優勢に立ち、早くも再び明大ゴール前まで侵入することに成功したが、ここで形成したラインアウトモールで痛恨の反則を犯してしまう。一気に陣地を引き戻されてしまったが12分、ハーフライン付近で獲得したラインアウトからテンポの良いアタックを繰り広げた早大。二次攻撃で島田が目線で仕掛けたことでわずかに生まれた明大ディフェンスの綻びを見逃さなかったのはFB植木太一(人1=神奈川・関東学院六浦)。スピードをつけながらボールを受け取り、インゴールまで走り切った。スコアを12ー0とし、幸先よくリードを広げる。16分、早大のオーバーザトップの反則から明大に大きく前進を許す。さらにここで2つのペナルティーを重ねてしまい、早大はゴール前での攻防を余儀なくされる。しかし10フェーズを超える明大の猛攻を規律あるディフェンスでしのぎ切ると、観客席からは歓声が上がった。続く23分にも早大ゴール前での攻防となったが、出足の良いディフェンスで再び明大のミスを誘った。「試合の最初から声が出ていて、ディフェンスのコミュニケーションもしっかりできていた」と牧が語るように、早大は組織ディフェンスで明大のゲインを許さず、トライラインを割らせない。33分には明大のアタックミスからこぼれたボールを山下が拾うと、早いテンポで逆サイドまで展開。WTB西浦岳優(社1=東福岡) がステップでディフェンスをかわしてゲインすると明大陣地の22メートルラインを突破。続くフェーズでNO・8城央祐(スポ1=神奈川・桐蔭学園) がダブルタックルをものともしない前進を見せ、インゴール目前まで来ると、SH渡邊晃樹(スポ1=神奈川・桐蔭学園) が早いテンポで牧にパスを出し、トライ。19ー0とさらにリードを広げたが、40分の前半ラストプレーの明大のスクラム一次攻撃でブレイクを許し、ついに失点してしまう。19ー7と12点のリードを維持し、前半を折り返す。
後半の立ち上がりは明大が優勢。早大は果敢に攻撃を仕掛けたが跳ね返されてしまう。10分、自陣10メートルライン上で明大にラインアウトを献上すると、一次攻撃のサインプレーで突破されそのまま失点。さらに再開のキックオフをキャッチした明大は狭いサイドを効果的に使い、スピードに乗ったBKがブレイク。60メートル余りを走り切られ、ついに同点に追いつかれてしまう。このまま明大に主導権を握られてしまうかに思われたが16分、PR杉村利朗(社1=東福岡)が9シェイプのアタックで華麗なバックフリップパスを見せると、それを受け取ったHO田中健心(スポ1=神奈川・桐蔭学園)が中央にグラウンディング。26ー19と再びリードを得た。20分から中盤での激しいボールの奪い合いが続き、一つのミスが失点につながるような緊張感のある試合展開に。24分、明大は着実にフェーズを重ねて前進を繰り返すと、早大ディフェンスの崩れを的確に突き、追加点を挙げた。26ー24と2点差にまで詰め寄られ、試合はいよいよ最終局面へ。30分、明大はセンタースクラムを左に展開。CTBの位置でアタックミスを犯すと、植木が一気にギアチェンジ。ボールを奪い取り、そのまま70メートルを走り切った。33-24と再び明大を突き放す。37分には両FLの久我真之介(文構1=東京・早実) 、龍康之助(文構1=東京・早大学院) のナイスタックルで明大のオフフィートを誘うと、早大の選手たちはガッツポーズで感情をあらわにする。早大と明大、両チームの新人選手たちの誇りがぶつかり合った最後のプレーは田中健のジャッカル。「ここしかない」(田中健)と抜群の嗅覚を見せ、ノーサイドの笛が鳴った。33ー24と、新人早明戦は早大が9点差で白星を挙げた。
「相手には高校日本代表も多くいたが、それでも勝ち切ることができた。自分たちの自力、底力を見せることができた」とゲームキャプテンの城は試合後に笑顔を見せた。強力な明大のフレッシュマンにも勝利し、赤黒の意地を見せた早大の新人たち。次戦はついに関東大学春季大会(春季大会)、最大の壁となる春の早明戦。佐藤健次主将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)が掲げた『春シーズン全勝』、そして『BEAT UP』のバトンは繋がれた。
(記事 村上結太、写真 西川龍佑)
コメント
NO・8城央祐ゲームキャプテン(スポ1=神奈川・桐蔭学園)
――今試合のチームとしてのコンセプトは何ですか
チームとして合わせる時間が少なかったので、各個人、ポジションごとで確認した細かいことにこだわるということを意識していました。
――新人早明戦という特別な試合に対して、どのような思いで臨みましたか
早稲田の今年のスローガンは『BEAT UP』であり、『全戦全勝』ということを目標に掲げていて、更にここまでの試合を全て勝ってきたので、自分たちがこの流れを絶やさないように、絶対勝とうという思いで臨みました。
――今試合、9点差での勝利という結果を振り返って率直な感想をお願いします
相手には高校日本代表もたくさんいて、厳しい試合になることは分かっていたんですが、それでもしっかり勝ちきることができて、自分たちの地力、底力を見せることができたのではないかなと思います。
――今後の意気込みをお願いします
今日、この試合に出場した1年生が来年、再来年にAチームに上がって『荒ぶる』を掴み取るために、それぞれが課題を見つけて成長していきたいと思います。
HO田中健心(スポ1=神奈川・桐蔭学園)
――今試合の個人のコンセプトを教えてください
『繋ぐ』です。様々な練習をいかに試合に繋げるかをフォーカスしました。また、翌日に控えるトップチームの早明戦に向けて、勝ちという形で先輩方に繋ぎたいという思いでプレーしました。
――明大とスクラムを組んで、手応えや課題点などありましたか
まず、自分自身のフィジカルの弱さを実感しました。これから4年間かけて強くしていきます。また、フロントとロックとの5人のコミュニケーションが上手く取れず押された場面があったので、そこは改善点でした。
――ノータイムでジャッカルに成功した瞬間はどのような思いでしたか
ここしかないと思っていきました。
――今後の意気込みをお願いします
『赤黒』を着るという目標をもって早稲田に入ってきているので、一日でも早く赤黒を着れるように日々努力していきたいです。
FL牧錬太郎(スポ1=神奈川・桐蔭学園)
――今試合の個人のコンセプトは何ですか
個人としての目標はタックルに15回いくことでした。ハードコンタクトを意識して、自分が真っ先にタックルできるように動いていました。
――ボールキャリー、タックルなどコンタクトの場面で前に出ているシーンが多くありましたが、今試合の自身のパフォーマンスを評価していかがですか
高校の時よりも、大学に入った今の方が良いプレーができていると感じていて、桐蔭学園で学んできたことを活かすことができていたので今試合はかなり良かったかなと思います。
――今試合のチームとしてのディフェンスを振り返ってどうでしたか
チームのみんなで『BEAT UP』を意識していて、最初から声が出ていたことからディフェンスのコミュニケーションもしっかりできていましたし、外でブレイクされた時でも最後まで全員で追うということを遂行できていたので良かったと思います。
――今後の意気込みをお願いします
もっとタックルの回数を増やして、ディフェンスの場面でチームに貢献できる選手になりたいと思います。
SO島田隼成(スポ1=福岡・修猷館)
――今試合の個人のコンセプトを教えてください
シーズン通してのことなのですが、ゲームコントロールです。FWとBKをうまく使いながら、自分の強みであるキックもうまく使ってゲームを80分間通してコントロールすることをシーズン通してコンセプトとして持っています。
――その達成度としてはいかがでしたか
結果として勝てたので合格点ではあると思います。
――スペースを狙ったキックも多く見られましたが、試合をコントロールする上でなにか意識していたことはありますか
周りにコンタクトが強い選手だったりランが強い選手だったり、良い選手たちが多くいるので、そこをうまく使いつつ、裏のスペースが見えたらそこにキック落としてエリアを取っていこうと意識していました。
――チームとしてのアタックを振り返っていかがですか
FWが良いキャリーをしてその後しっかり外のランナーにボールをつないでそれぞれがしっかりトライを取りきるという部分は、前半特に見られたのでそこは良かったと思います。一方で、BKが縦に切っていくプレーなどはまだまだ足りてない部分もあったのでそこは次回の課題かなと。自分がボールをうまく渡すことが課題だと思います。
――今試合の自身のパフォーマンスを評価すると何点ですか
キック使ってゲームコントロールができたのでアタックの面では良かったと思いますが、まだ後ろで相手が抜けてきたところで何回か行かれた場面があったのでそこのディフェンスが課題だと思います。なので60、70点くらいかなと。
――今後の意気込みをお願いします
個人としては大学の高いレベルの中、パスのスピード、キックの精度をあげていきつつゲームコントロールを80分間通してやることです。あとは後ろでのディフェンスはまだまだ課題が多いと思うので修正して今後頑張っていきます。
FB植木太一(人1=神奈川・関東学院六浦)
――個人でのコンセプトをお聞かせください
しっかり前に出て、自分のスピードを生かしていこうと思っていました。
――それを踏まえて今日の出来はいかがですか
スピードに乗れてゲインもできましたが、まだひっくり返されるところもあったので、フィジカルを鍛えていきたいと思いました。
――BKのディフェンスを振り返っていかがですか
しっかり外側が上げられて、相手を内に詰めることができたのでよかったかなと思います。バックスリーでも良いコミュニケーションをとって、裏のディフェンスができたのでよかったと思います。
――明大との対戦でしたが、意気込みや戦ってみての感触などはいかがですか
(明大は)強いと聞いていたので緊張していましたが、戦ってみたらそこまでレベルの差は感じることはなく戦えたのでよかったです。
――今後の意気込みをお願いします
赤黒を着るために毎日練習して、トレーニングを重ねてがんばります。