【連載】天皇杯全日本選手権直前対談『覇』 第1回 伊藤海×山口太一

レスリング

 第1回は来年度主将、副将を務める二人が登場。男子フリースタイル61キロ級の山口太一(スポ3=東京・自由ヶ丘学園)と女子50キロ級の伊藤海(社3=京都・網野)だ。天皇杯全日本選手権(天皇杯)に懸ける思いや理想とするチーム像などを伺った。

お互いの印象

対談に臨む二人

――お互いの紹介をお願いします

山口 (伊藤選手は)レスリングをする時はひたむきで、目が真剣で、どんどん攻めてくるようなタイプです。レスリングをやる時とやらない時の切り替えがしっかりしていると思っています。

伊藤 自分自身も切り替えは大事にしていて、練習するところはしっかり集中して、やるところはやって、楽しいときは楽しんで、というのは意識しているので、自己評価と同じことを思ってくれています。

――山口選手の紹介をお願いします

伊藤 一言で表すととにかく真面目です。見て分かると思いますが、本当に真面目。真面目という言葉が一番合う方。それこそストイックという言葉もすごく合うなと思っています。レスリングだけじゃなくて授業とかも教職を取ったりとか、後輩にこういう授業取ったらいいよとか教えたりしていて、レスリング以外でもストイックな一面がある方です。

山口 レスリングに関して言うと好きだからやっているだけで、僕的にはそんなに(ストイックとは)感じていないかなと。ひたむきにやっている感じです。

――山口選手は部の中で一番真面目ですか

伊藤 そうじゃないですかね。真面目さで言ったら。

――逆に一番真面目じゃない人は

山口 せーので言おう。

伊藤 待って待って。分からへん。真面目じゃない人はいないかも。みんな口では言うけどなんやかんや集中してやるタイプが多いので。誰かいる?

山口 真面目じゃないということはないんですけど、みんな頭がいいので何かしらしっかり考えて取り組んでいるのかなと思います。

――部員が少ない中でも勝つ秘訣は

伊藤 私は高校の時から女子が少ない部でした。早稲田でも今は一個上の片岡梨乃(社4=千葉・日体大柏)さんと2人だけで、そういう中で練習してきたので、男子と女子だと体の柔らかさとかパワーとか少し違ったところはあるんですけど、やっぱり男子とやる時も試合を常にイメージした練習することで、どんな相手でも練習になっているなとは思います。

山口 僕に限ってですが、頭のねじを外して攻め切るのが僕のモットーなので、それを考えていれば無限に攻められますし、疲れていても無限に攻められるんだなと思います。それが僕の強みなんだなと思っています。

――最近はまっていることやマイブームはありますか

伊藤 昨年も言ったかもしれませんが、ネットフリックスを暇さえあれば見ています。映画とかドラマが好きなのでめっちゃ見ています。

山口 僕は『進撃の巨人』が好きなので、最近アニメが終わったので、またAmazonプライムで見たり、考察を見たりしています。

伊藤 へー、意外。

山口 あんまり言わないからね。

――プライベートも含めて今年を漢字一文字で表してください

伊藤 なんやろ。漢字一文字…。難しい。

山口 無我夢中の「我」という字で、自分を貫いた年かなと思っています。結果が出なかった時もあったんですけど、この競技が好きだなと一貫して思っていて、それを軸にしてやっていたらモチベーションの上下がなかったので、自分を貫けたかなと。

伊藤 漢字一文字は難しいんですけど、今年はいろんなことに挑戦した年だったなと思っています。エピソードで言うと、メンタルトレーニングや今までやってこなかったトレーニングとかレスリングの面でもいろんなことにチャレンジして挑戦した年だったので。後で話になると思いますが、その結果がどう天皇杯に出るかなという感じです。

結果が出なくてもレスリング人生の中で一番満足できた年だと思う(山口)

笑顔の山口

――今年のレスリングを100点満点で評価すると何点ですか

伊藤 70。

山口 僕は100点あげたいですね。

――理由を教えてください

山口 結果が出なくてもレスリング人生の中で一番満足できた年だと思うので、満足度が高すぎて100点しかあげられないなと思いました。結果関係なく自分が思うようにレスリングができました。練習も含めて、プライベートも含めて。

伊藤 70点は結構厳しめにつけました。オリンピック予選でもある大会で勝ちきれなかった部分が自分の中では一番大きかったのですが、他の面で見たらインカレ(全日本学生選手権)、国体(国民体育大会)、U23(U23世界選手権)の3大会連続で目標としていた優勝ができたことは良かったので、次に向かってスタートしたって意味で70点くらいです。

――一番印象に残っている試合はありますか

伊藤 国体の決勝なんですけど、早稲田大学同士で梨乃さんと決勝したのがすごく印象に残っています。国体の前からどこかで梨乃さんと絶対に当たるというのは分かっていたので、トーナメントが発表されて逆ブロックだったので「絶対に決勝でやろうね」と話していたので、ずっとお世話になっていた先輩と決勝で戦えたことはすごく印象に残っています。

山口 今季1回優勝したのが東日本の大会なんですけど、そこの決勝が一番印象に残っているかなと思います。考えずにできて、結果も自然についてきたので、そこが印象に残っている点かなと思います。

――今年は4年生が多いチームでしたが、どんな雰囲気のチームでしたが

山口 深田主将(深田雄智、スポ4=千葉・日体大柏)が学生主体となってやっていくことを目標に掲げていたと思うので、学生のまとまりはすごくあったと思います。なので、雄智先輩自身の結果が出なかったとしても他の部員に尽くしていたり、他の部員が結果を上げて雄智先輩のためになっていたと思うので、本当に絆はあったと思っています。

伊藤 自分が1年生の時から4年生のみんなにはすごくお世話になっていました。レスリング以外のところでも仲良くしていただきました。4年生がいたから成り立っていたくらいです。人数が多かったんですけど、4年生同士の絆はすごく深いと感じていました。もうほとんどの方が引退して練習にはあまり来られていないんですけど、いまだに実感がないというか、いないのが変な感じです。それくらい4年生の存在は大きかったかなと思っています。

――来年は一気にチームが若返ると思いますが、来年のチームとしての目標は

山口 少数なので、まずは団体とか置いといて個人個人の目標を大切にしてほしいなと思います。そうすれば自然に団体で結果がついてくるのかなと思うので。まずは自分の目標を大切にして、その次に団体を持ってこれればいいのかなと思います。

伊藤 私は女子なので団体とかはないのですが、結果もそうですが、新しいチームになって昨年ほどまとまりがあるかって言われたら、まだはっきり「はい」とは言えない状況なので、まずはキャプテンからまとまっていいチームにしていって、その結果みんながいい結果を残せたらいいかなと思います。

優勝して結果で感謝の気持ちを表したい(伊藤)

話をする伊藤

――天皇杯への話題に移ります。まずは天皇杯での目標を教えてください

山口 僕はトップを狙えるかなと思っているので、結果を重視するというのもそうなのですが、結果ばかりを重視すると自分の動きができないこともあるので、まずは自分のコンディションを整えて自分のレスリングをしたいです。

伊藤 一人絶対倒さなければいけない相手がいて、今まで4回やって一回も勝てていない相手がいるので、その方に絶対勝って初めて全日本で1位を取ることが目標です。

――ライバル視している選手や警戒している選手を教えてください

山口 何度か言っていると思うのですが、日体大の田南部魁星選手が強いので、そこを倒せるようになると自然とトップも見えてくると思います。

伊藤 さっき挙げた吉元選手(吉元玲美那、Kee Per技研)が4回とも負けているので、もうそろそろ勝たないとというところには来ていて、今回は必ず勝ち切りたいです。

――今重点的に取り組んでいることはありますか

山口 昨年57キロ級でやってきたので、61キロ級で戦っていけるスタミナや力を付けることが中心です。そこができてくると自然と戦えるようになるので、そこを意識したトレーニングをしています。

伊藤 メンタルトレーニングに今年から取り組んでいます。緊張して練習でできていたことが試合でできないということが何回もあって、それを克服するために7月くらいから始めたのですが、自分に合っていてトレーニングを重ねる内に成長してきたことを実感しているので、それが試合でも効果があると信じています。

――試合後に楽しみにしているご褒美はありますか

山口 年末は母の実家がある静岡に行くのですが、そこでゆっくりしたいなと思います。予定は決まっていないです。

伊藤 もう予定全部入れているのですが…。

山口 すごっ。

伊藤 地元が大阪なので大阪の友達と金沢旅行に行くのと、家族で福井に旅行に行くことはもう予定に入れてあるので、それがとても楽しみです。

――注目してほしいポイントを教えてください

山口 僕は6分間攻め続ける姿勢に注目してほしいです。

伊藤 とにかく練習してきたことを試合でできれば勝てると思うので、勝つ姿をお見せできたらなと思います。

――最後に意気込みを教えてください

山口 結果にこだわらず、まずは楽しむ。そして自分の動きをしっかりする。僕の持ち味はタックルなのでそこにつなげられるようにします!

伊藤 梨乃さんと一緒に出る最後の全日本なので、最後の全日本こそは二人で優勝したいという思いがあります。梨乃さんは明治杯で優勝されて、その時一緒に優勝したかったのですが、自分が優勝できませんでした。あとはこの試合に向けていろいろな方にお世話になったので、恩返しをしたいです。特に雄智さんには一番お世話になっていて、毎回セコンドに付いていただいていたのですが、全日本では毎回負けていているので、最後こそは優勝して結果で感謝の気持ちを表したいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 齋藤汰朗、横松さくら)

色紙に思いを書いていただきました

◆山口太一(やまぐち・たいち)(※写真左)

2002(平14)年10月13日生まれ。男子フリースタイル61キロ級。東京・自由ヶ丘学園高出身。スポーツ科学部3年。色紙に「無我夢中」と書いた山口選手。無我夢中で攻めるレスリングで全日本の頂点を目指します!

◆伊藤海(いとう・うみ)

2002(平14)年5月31日生まれ。女子50キロ級。京都・網野高出身。社会科学部3年。色紙に「感謝」と書いた伊藤選手。ライバルを撃破し、お世話になった方々への恩返しを果たしてくれることでしょう!