天皇杯全日本選手権直前対談【第2回】小玉彩天奈×片岡梨乃×伊藤海

レスリング

  天皇杯全日本選手権直前対談・第2回に登場するのは、伊藤海(社1=京都・網野)、片岡梨乃(社2=千葉・日体大柏)、小玉彩天奈(社4=高知東)の3人。学年をこえた仲の良さが伝わる和気あいあいとした雰囲気で進んだ今回の対談。レスリングとプライベートの両面から選手たちの素顔に迫りました。

※この取材は12月11日に行われたものです。

「高校時代と比べて成長できたと思っている」(伊藤)

ルーキーイヤーで2冠を達成した伊藤

――まずは今年を振り返っていかがでしたか

伊藤 高校のときにインターハイ優勝という成績があったので、大学ではそれを超えたいと思ってやっていました。4月のJOCジュニアクイーンズカップは優勝できて良いスタートを切れましたが、5月の明治杯全日本選抜選手権(明治杯)では去年と同じ相手に負けてしまって悔し思いがあって。いつかは必ずリベンジしようと思っていたのですが、コロナで夏のインカレが延期になって、11月でその人が上の階級になってしまって、結局天皇杯全日本選手権(天皇杯)まで当たれず、っていう。まだリベンジができていないので、今回こそは絶対勝って良い年の締めくくりをしたいと思います。

片岡  自分は2年生になって3大会出ましたが、全部悔しい思いをしました。去年は勝てた相手に大差で負けてしまったりして、良い環境で練習させていただいているのですが、実力より気持ちの面に問題があって。天皇杯では自分のレスリングをして、勝たなきゃと思うより楽しんで良い結果を残せるように頑張りたいと思います。

小玉 コロナの影響もあって2大会しか出場していなくて、試合も5回くらいしかしていないのですが、自分もさっき梨乃ちゃん(片岡)が言った、気持ちの面で負けてしまっているところが一番の敗因だと思っていて。最上級生として、今年はあまり良い結果を残すことができなかったなと悔しい気持ちではあります。

――どんなことをテーマに、1年間取り組まれていましたか

伊藤 全日本という舞台で優勝したことがないので、まずはそこで優勝したいという目標を掲げて4月からやっていました。練習で特に意識していたのは、高校までとは練習の方針が全然違って、自主的にやるっていうのを大事にされていたので、自主的にやるところを重視していて。技術面などコーチ陣や先輩方に学ぶことが多くて、高校時代と比べて自分の中でも4月から成長できたなと思っているので、12月の天皇杯でその成果を出したいです。

片岡  高校生までは、やらされるって言い方悪いですが、ひたすらこなすという感じでしたが、大学生になって楽しまないといけないなと思っています。今まで考えずにやってきたので、最近は考えて。女子だけじゃなくて男子の選手からもいろいろ学びながら、この1、2カ月くらいは特に考えてやっています。

小玉 自分の今年のテーマは、昨年に続いて組手とアンクルを中心に課題としてやってきました。いつも消極的で点を取られることが多いので、それをなくさないといけないと思って。頭崩したり自分主体で動くことを意識していますが、試合ではなかなか思うようにいかなかったなという感じです。

――1年生の伊藤選手にお聞きします。早大を選んだ理由について教えてください

伊藤 まず、もともと両親がスポーツだけじゃなくて勉強もしなさい、という家庭だったので、自分でも勉強もできる大学に進みたいという意思がありました。また、6つ上の兄も早稲田にいて、早稲田良いよと勧められたりというのもあって、文武両道を目指すのに最適な大学は早稲田なのかなと思って進学しました。

――早大に入学して良かったと感じることは

片岡  ただレスリングをやっていればいいのではなく、レスリングを辞めて引退してからの人生のほうが長いので、そういう面でたくさん勉強しながらレスリングも続けられる環境で。部員は少ないけど、個性豊かで一人一人良いところがあるので、たくさん見習うこともあって、良い環境で練習できていると思っています。

小玉 一番はレスリング以外で自分自身が成長できる環境があるというところです。良い後輩、かわいらしい後輩、先輩も本当に良い先輩ばかりで、本当に人に恵まれていたなというのはすごく感じていて。そういう面で早稲田に入って良かったなと思っています。

――今年度主将を務めた安楽龍馬選手(スポ4=山梨・韮崎工)はどんな主将でしたか

小玉 龍馬(安楽)には2年間主将をやってもらって、普段はザ・真面目っていう感じではなくてちょっとだらしないところがあったり、抜けてるところがあったりしながらも、龍馬なりに部員のことを考えて主将をやってくれたんじゃないかなと思っています。自分も今になって何もしてあげられなかったんじゃないかなとか、思ったりはします。特に3年生のときは4年生がいる中でもまとめないといけなくて、すごく大変だっただろうなと感じますし、コーチ陣と選手の間に立って指示したりしないといけなくて、忙しかったんじゃないかなと思います。でも、やるときはちゃんとやって、言うことはちゃんと言って、メリハリ付けてやってくれたと思っていて、そういう面ですごく尊敬しています。

伊藤  龍馬さんはまだ1年も関わってないですが、関わりやすいというか。1年生と4年生で学年も離れていますが、話しやすいし、レスリングの面でも尊敬する部分があって、技術を教えていただいたりして、そういうところでレスリングに真剣に取り組んでいる印象です。話しやすくて良い先輩です。

小玉 お兄ちゃんに似てるんだよね。

伊藤 6つ上のお兄ちゃんがいるんですけど、いつもふとした時に「似てる!」って思うときがあって、それだからかめっちゃ話しやすいというか(笑)。

片岡 自分は2年間お世話になりました。普段は何気なく言うこととかがすごく面白かったりするんですが、練習中は厳しく言ってくれたり、たまに褒めてくださったりして。減量とかできつい思いをしながらも、チームをまとめてくれて、尊敬するところがたくさんあります。

――先程、部員さんが個性豊かだというお話がありました。部内で、この部員のここが面白い!というエピソードがあれば教えてください

伊藤 優衣さん(須﨑優衣、スポ4=東京・安部学院)の人に例えるのすごくないですか。

一同 たしかに!(笑)。

伊藤 よく、「誰かに似てるな」っていうの、あるじゃないですか。誰かはっきりわからないけどっていうときに、優衣さんは的確な人を言えるんですよ。すごいです。芸能人とかキャラクターとか。

小玉 あとは凌(米澤凌、スポ4=秋田商)のモノマネもすごいです。

片岡 本当にその人がいるんじゃないかってくらい似ていて。この前、電話越しに騙されました(笑)。

「個性豊か」な早大レスリング部。今回集まった3人の、お互いの印象は

「元気いっぱい」と紹介された片岡

――ここで毎年恒例の他己紹介を行います。まずは小玉選手に対する、レスリング面とプライベート面の紹介をお願いいたします

片岡 彩天奈さん(小玉)はレスリング面では常にどうやったら上手くできるかを考えています。試合前は弱音な発言をするくせに、ラストギリギリで強い選手に勝ったり、謙虚なのにマットに立つと強くて、勝負強さがあります。階級は違いますが、いつもたくさん練習してくださります。

伊藤 レスリング面では、早稲田の方針の技術を重視していると思いますが、その技術をたくさん持っています。自分もスパークリングをやっているときに、タックルに上手く入られて「やられた~」と思うくらいレスリングが上手くて。まだ自分ではできないような技術を持っていて、自分も吸収したいと思うことが多い選手です。

片岡 最初は、こんなに仲良くさせていただけると思わなくて。彩天奈さんは、普段は主務でしっかりしていて、自分にはないものを持っている先輩です。でも、ふざけるときは面白くて、くだらないことで一緒にツボったりします(笑)。男女とか年齢関係とかなく誰とでも話せて、親しみやすいです。

小玉 うれしい!

伊藤 梨乃さん(片岡)が言ったことにプラスして、入学する前、一緒にミスドに行ったのですが、そのときもすごく話しやすくて。その当時はまだ入学を決めていなかったのですが、こんな先輩がいたらいいなって思うくらい話しやすかったです。あと、とにかく、彩天奈さんの私服が大好きで(笑)。今日も見てわかる通り、靴下まで可愛くて。パジャマもワンピース着たり、っていうジブリに出てきそうな恰好で、可愛くておしゃれです。大人な女性だなと思います。

――続いて片岡選手に対する、レスリング面とプライベート面の紹介をお願いいたします

小玉 レスリング面では真面目なのは当然、っていうくらい真面目で、自分にストイックで。すごいなと思うのは、練習後に誰よりも先にロープをやっているところで、梨乃ちゃんが率先してトレーニングをしているところを見て、自分もやらきゃいけないなと思って、一緒にやらせてもらったりしています。私生活は、常に元気いっぱいです。一緒にカラオケ行くとずっと叫んでいて、自分は耳塞いでちょうど良いみたいな(笑)。

一同 (笑)。

小玉 本当に元気をもらっていて、梨乃ちゃんとか後輩といるから若くいれるんだなと思っています。

伊藤 彩天奈さんも言っていたように真面目で。高校の環境が似ていて、高校が厳しいと大学ではじけちゃう人がいるじゃないですか。梨乃さんはそんなことなく、自分に厳しくやっていて、見習うところがたくさんあります。レスリング以外のことでは、4月から一緒にいることが多いのですが、梨乃さんはよく食べるな、と思います(笑)。一緒にご飯に行くと、こっちが楽しくなるくらい食べてます。私がお腹いっぱいになったらいつも食べてくれて、嫌々じゃなくて嬉しそうに食べてくれるので、こっちまで幸せになります。

――最後に伊藤選手に対する、レスリング面とプライベート面の紹介をお願いいたします

小玉 海ちゃん(伊藤)は、こんなに小さいのにめちゃめちゃ力が強くて。びっくりしちゃいます。50キロ級でこんなに力が強い人がいるんだっていう。練習以外の、朝練とかウエイトでも一生懸命で、こうやって練習しているから強くなれるんだなと思っています。あとは、すごく負けず嫌いで、誰よりも強くなりたいと思って練習しているのが動きとか姿勢で伝わってきます。私生活は本当に真逆でおっとりしてる。「あてなさん~」みたいな(笑)。

一同 (笑)。

小玉 レスリングやってるんですか、って思うくらい可愛らしいし、私生活を見てると、本当に強いの?って思います。でもそのギャップが好きですね。

片岡 とにかく、本当に力が強い(笑)。気持ちの強さとかも、やっていて感じます。常に強くなることを考えて、でも楽しみながらレスリングを好きでやっているんだろうなって思います。彩天奈さん、優衣さんとか先輩もいますが、海ちゃんが来てくれたことで、さらに自分も頑張らなきゃなというふうに思える、自分にとって欠かせない存在です。私生活の面では、マットで戦うところを見ていたこともあって、すごい気が強い子なんだろうなと思っていましたが、こんなに面白くてフワフワしていると思っていなかったです(笑)。常に笑顔で可愛いです。

――私生活でも一緒に過ごされることが多いですか

小玉 たまにご飯行ったりもしますし、寮のキッチンで遅くまで語ったりします。あと、ホットプレートでペッパーライス作ったり、たこ焼き作ったりしました。

伊藤 カラオケ楽しかったです。

小玉 楽しかったね。優衣(須﨑)と4人でご飯に行って、カラオケ行って、寮に帰るかと思ったらまたカラオケ行って(笑)。朝10時から練習があるのに、(深夜)1時くらいまで。ずっと歌ってましたね。

――よく歌われる曲は

小玉  (伊藤、片岡の)2人で「年下の男の子」とか。

伊藤・片岡  年しーたの男の子(歌唱)

一同 (笑)。

「やってきたことを出そうという気持ちで臨みたい」(小玉)

学生最後の天皇杯に臨む小玉

――レスリングのお話に戻ります。16日に天皇杯全日本選手権開幕を迎えますが、各階級、エントリー選手を見ていかがですか

伊藤 去年の天皇杯で負けた吉元玲美那さん(至学館大)がやっぱり重視している選手です。他にもインカレで対戦した櫻井はなの(育英大)っていう同級生の選手がタイプ的にやりづらい相手なので、苦手意識みたいなものがあります。他にも強い選手がいるので、吉元玲美那さんとは決勝でしか当たらないのですが、それまでも気が抜けない試合になると思います。

小玉  (女子62キロ級に)下の階級からも上の階級からも強い選手が集まってきて、けっこう激戦になると思います。

片岡 明治杯のメンバーに新しく加わった選手が多いのですが、強い選手がいっぱいいるので、自分のレスリングができるようにしたいです。

――小玉選手は昨年の対談時に試合ではとても緊張するほうだと仰っていましたが、みなさんいかがですか

小玉 あれやろう、これやろうと考えすぎるほど没案が溜まってしまって結局何をしていいのかわからなくなってしまうので、楽しくできればいいかなと思っていて。あとは、緊張してしまって前しか見れなくなってしまうので視野を広げて戦おうかなと思っています。戦略的なことを考えて自信を付けたいです。でも、たぶんすぐ弱音を吐いちゃうと思います(笑)。マイナスな言葉で士気を下げちゃうのが本当に申し訳ないんですけど、本当にいつも不安で。結果よりも戦略的なところ重視してやりたいです。

伊藤  よく緊張してないように見えるって言われるのですが、1週間前くらいから、寝る前に考えちゃって寝れなかったりします。高校時代のほうが緊張していましたが、大学に入ってからは楽しむほうが大きくなりました。緊張がないわけではありませんが、これでポイントを取ろうみたいに考えることによって、程よい緊張感で臨めています。

片岡 高校のときから、そのまで緊張はしないのですが、最近は先に点を取られたり、自分が思っていた点の取り方ができなかったときにテンパってしまって。緊張より焦りがあります。頭空っぽにして、体が勝手に動いてくれることを信じています。

小玉 競るときって勝手に動いてるよね。

片岡 入ろうと思うと、タックル入れないです。

――試合前に必ず行うことはありますか

伊藤 季節関係なく、温かい紅茶オレを飲みます。高校のときに先生に冬とか体が温まりにくいときは内臓から温めろって言われたのがきっかけで、紅茶が好きなので飲むようにしています。あと、試合前だけじゃないんですけど、シューズ右から履くとか、右足からマットに上がるとか。右構えなので右を意識しています。試合前は腰割って屈伸して入るようにしています。

一同 そうなんだ。

片岡  試合中、ハーフタイムに髪の毛を結び直すのが嫌なので、しっかり結んでます。

小玉 たしかに。髪の毛は試合前日に1回練習してますね。

――天皇杯に向けて強化した点は

伊藤 インカレの反省点が、組手を重視しすぎて高校に養った基礎を忘れていたということで。今はもちろん組手もやりながら、前圧を意識してやっています。あとはタックルの処理を重点的に練習しています。

小玉  やっぱり先に消極的で点数を取られることが多いので前圧と、先にタックルに入ることです。点に繋がらなくても、それだけで積極的に見てくれると思うので、前圧と先にタックルに入ることを意識して練習しています。

片岡 大学入ってから相手に合わせるレスリングをしてしまっているので、いろんなタイプの相手がいる中で自分のレスリングができていないと感じていたので、周りを気にせず、自分のレスリングをすることを意識しています。あとは走ってスタミナを強化したりもしています。

――最後に自分の強みとする部分と、天皇杯に向けた意気込みをお願いします

伊藤 強みは、50キロ級の中でも減量がなくて小さいほうなので、スピードと、2人にも言っていただいた、パワーを生かしたレスリングを自分の中では強みと思ってやってます。全日本での1位はまだ取ったことがありませんが、優勝だけを意識せず目の前の1試合1試合を確実に勝っていきたいです。最終日で皆さん応援に来てくださるという話も聞いているので、早稲田としても優勝というかたちで結果を残せたらと思います。頑張ります!

片岡  今年を締めくくる大会なので、最近試合で良い思いができていないので、細かいことは考えすぎず、1年間練習してきたことをマットで出せるように。自分を信じてやろうと思います。

小玉 自分は、組手をやってきて相手にタックルに入らせないところが強みだと思っています。その中でも自分が取り切らないといけないところを取り切れなかったりとか、最近良い結果が残せていないので、学生最後でもありますし、優勝したい気持ちもすごくありますが、それ以上に今まで練習してきたことを出すことを1番に。結果を出すことを考えるより、やってきたことを出そうという気持ちで臨みたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 秋田豪、鬼頭遥南)

色紙には思い思いの言葉を選んでくださいました!

◆小玉彩天奈(こだま・あてな)(※写真中央)

1999(平11)年6月17日生まれ。女子フリースタイル62キロ級。高知東高出身。社会科学部4年。対談中も後輩思いで優しい姿が印象的だった小玉選手。大人っぽくおしゃれだと評判の私服は、ネットで狙いを定め、必ずお店で購入していると教えてくださいました。学生最後の天皇杯では、強化してきた積極的なレスリングに注目です!

◆片岡梨乃(かたおか・りの)(※写真左)

2001(平13)年9月9日生まれ。女子フリースタイル53キロ級。千葉・日体大柏高出身。社会科学部2年。練習中は常にストイックだと紹介された片岡選手ですが、私生活では部員さん同士のカラオケでも場を盛り上げる「元気っ子」。今回の対談中も、持ち前の明るさで場を和ませてくれました!

◆伊藤海(いとう・うみ)(※写真右)

2002(平14)年5月31日生まれ。女子フリースタイル50キロ級。京都・網野高出身。社会科学部1年。今年は2大会で優勝を飾った早大期待の星。そんな伊藤選手、普段は友達と大学周辺のカフェを巡るなど、充実した大学生活を送っているそうです。色紙には、勉強中のハングルでメッセージを書いてくださいました!