【連載】天皇杯全日本選手権直前特集 第4回 米澤圭主将×岩澤侃×米澤凌

レスリング

 最終回は秋田商高出身の3人による対談。1年間主将としてチームを引っ張ってきた米澤圭(スポ4=秋田商)、内閣総理大臣杯全日本大学選手権で2位に入賞し初めて天皇杯への切符を手にした岩澤侃(スポ3=秋田商)、1年生ながらチームの主力として活躍した米澤凌(スポ1=秋田商)。それぞれに受け継がれる秋田商高の魂を、そして最初で最後の対談となる米澤兄弟の絆を語っていただいた。

※この取材は12月5日に行われたものです。

「(兄は)成長したなと思いました」(米澤凌)

ルーキーながら主力として活躍を見せた米澤凌

――今回は秋田商高出身の3人による対談ですが、何か感じる部分はありますか

米澤圭 今まで結構先輩から吉川先輩(航平、平29年社卒)だったり早大は結構秋田商高が続いていて、自分からしたら親近感はありますね。嬉しいなみたいな

米澤凌 来年も入ってくる後輩がいるので、繋がりはありますね。

岩澤 高校から知っている人がいると、安心感っていうのはありますね。

――今季1年間の戦いぶりを振り返っていかがですか

米澤圭 自分は去年1年間と比べるとめちゃめちゃケガが多くて。ケガしてなかった時がなかったんじゃないかっていうぐらいずっとケガをしていて、100パーセントで練習できる状態がなかなかなくて。今年は結果もなかなかでなくて、ケガに苦しんだ1年かなと思います。

岩澤 東日本学生リーグ戦が今年の1戦目だったんですけど、1年の頃はケガでずっと出ていなかったので、初めての出場で。しかも計量方法も変わったので、不安があったんですけどそれが大的中といった感じで。減量も調整も失敗した試合になってしまって、甘くないなと感じさせられたスタートでした。でも徐々に減量とかにも慣れて、内閣杯などは自分の動きができて、だんだんと調子を上げられたシーズンだったかなと思います。

米澤凌 自分は今年早大に入って、今までとは違う面が見れて、刺激的な、レスリングの幅が広がった1年でしたね。4月、5月はケガでなかなかうまいこと調整ができなくて。インカレ(全日本学生選手権)で65キロ級で挑戦して、悪くはなかったんですけど、天皇杯は70キロ級でやっていこうかなと思っています。

――米澤圭選手は世界大学選手権で優勝なさいました

米澤圭 自分は海外の選手には苦手意識があったので、参加人数は少なかったんですけど、そこでしっかり優勝できたのは、よかったかなと思いますね。ただもっとレベルの高い国際大会もあるので、自分的には通過点かなと思います。

――岩澤選手はやはり内閣杯での2位入賞が一番大きいですか

岩澤 すごい安心しましたね。3年生が自分以外全員天皇杯の出場権を持っていて、焦りもあったので。

米澤圭 優秀やな〜。3年生はみんな優秀ですね。

――米澤凌選手は「ルーキーイヤーでレスリングの幅も広がった」とおっしゃっていましたが、具体的にはいかがでしょうか

米澤凌 早大特有のもつれだったりとか、粘りだったりとか。自分の柔らかさをしっかり生かせてるんじゃないかと思います。

――今年の東日本学生リーグ戦を振り返っていかがですか

米澤凌 高校の時とかとは違った雰囲気もある中で、1年生ながら出させてもらって、先輩たちのためにも、早大のためにも負けられないなという気持ちの中で試合に挑んだんですけど、日体大戦では兄弟そろって負けてしまって(笑)。

岩澤 秋田商そろって負けましたね(笑)。

米澤圭 確かに(笑)。ここ全員や。戦犯秋田商や。勝負どころの日体大戦で、太朗(梅林、スポ2=東京・帝京)や駿(伊藤、スポ4=京都・網野)がコンディションがあまり良くなくて、自分が74キロ級で出たんですけど。正直自分的には2階級上でも勝てる自信があったんですけど、蓋を開けてみるとやっぱり力の差を感じましたね。主将が最後に負けて勝負が決まってしまったので、申し訳ないっていう部分もありつつ、来年は頑張ってくれって感じですね(笑)。

岩澤 空気に飲まれた感覚が自分の中でもすごくあって、自分が1人目だったので、自分が勝てればチームが勝てると思っていたんですけど、その中でなかなか勝てなくて。勝率で言ったら半分ぐらい負けてしまったので、リーグ戦独特の難しさを痛感しましたね。

――米澤圭選手は今年度一年主将として振り返っていかがですか

米澤圭 そうですね、やっぱり全体的に雰囲気を盛り上げていかないと、という意識でやっていたんですけど、やっぱり自分そんなに器用じゃないなと思いましたね。普段自分本位の人間で、あまり周りを見ないで練習するタイプなので、主将を務めていて、あまり自分のことにも集中できずに、うまくできているのかな」という不安はあったんですけど。でもそれなりにできたんじゃないかなと思いますね(笑)。

――岩澤選手と米澤凌選手から見て主将はいかがでしたか

米澤圭 正直に!正直に言っていいよ。耳塞いでおくから(笑)。

岩澤 高校から見ていたので、高校でもめちゃくちゃ強かったので、この人がやってることを真似していたら間違いないんだろうなぐらいの感覚で。言葉じゃないけど、行動で示す、背中で語る系の主将だったと思います。かっこいいですね。

米澤凌 ちっちゃい頃から見ていたので、成長したなと思いましたね。

一同 (笑)。

米澤圭 それ兄が言うセリフ(笑)。

米澤凌 やっぱり成長を感じましたね。高校の3年間入れ違いで、6年間ぐらいほとんど一緒にいなかったので。周りからも尊敬されていると思いますし、上から目線ですけど(笑)。

米澤圭 かゆいな、なんか(笑)。

――来年は山﨑選手が主将を務めますが、現主将として期待することはありますか

米澤圭 彼は実力もありますし、自分なりに考えててる部分があるっていうのも練習を見ててもわかるので、しっかりやってくれるだろうなとは思うんですけど。ちょっと弥十朗も五輪を目指している人間なので、自分のこともやりつつ、周りを見てっていうのを上手いバランスでやるのは難しくなると思うので、失敗もあると思うんですけど、そういったことも乗り越えて頑張ってほしいなと思います。

「秋田商高の意志が引き継がれている」(岩澤)

秋田商高出身の3人による対談となった。岩澤(中央)は天皇杯初挑戦。

――今年の1年生の印象はいかがですか

米澤圭 やっぱり強いですね。自分は特に安楽(龍馬、スポ1=山梨・韮崎工)と凌と階級が近いので、すごい刺激にもなりますし、自分が1年生の時はこんなに4年生相手にバンバン点数取れたかなって思うこともあって。いい意味で刺激を与えてくれるので、そういう意味ではありがたいと思いますね。

岩澤 やるときはめちゃくちゃやります。やらないときは・・・。

米澤圭 ちょっと波があるかな、と思います。

米澤凌 波が、あるかな〜(笑)。

岩澤 マットの上だとすごいしっかりしています。

米澤圭 マットを出ると・・・。マット以外の朝練とかは・・・。ちょっと朝に勝てないんですよね、彼(米澤凌)と安楽くんはね。

米澤凌 ちょっとそれはあまり言わないでください(笑)。

岩澤 彩天奈もたまに寝坊する印象がある。

米澤圭 ぼーっとしてるときがあるよね(笑)。

米澤凌 彩天奈はぼーっとしているときもありますし、不思議ちゃんですね。最初はお互い人見知りでなかなか交れなくて。今はもう大丈夫ですけど。

――お互いのプレーの印象としてはいかがですか

米澤圭 全体的に正攻法型ですよね。秋田商の基礎が植え付けられてると思います。見てて「あ、ちゃんと秋田商の動きしているな」っていうのがわかるんですよ。そこから派生している部分はそれぞれあるんですけど基本は共通しているなと思います。

米澤凌 似たものは感じられますね、スパーリング見てて。

岩澤 秋田商高で徹底されてきたんだなっていうのがありますね。その中でも一人一人違うんですけど、秋田商高の意志は引き継がれているなと思います。

――米澤圭選手と米澤凌選手は出身は東京ですが、秋田商高に進学しようと思った理由はなんですか

米澤圭 色々と高校を探していて、いくつか候補はあったんですけど。どこも自分っぽくないなと思っていたときにちょうどクラブチームの先輩で早大の先輩でもある大坂さん(昂、平26スポ卒)が秋田商高に誘ってくれて、練習に行ってみて、「あ、ここでいいや」って。直感で決めました。

米澤凌 自分寮生活をしいっていうあこがれがあって。秋田商高で兄も強くなっていたので、決めました。

――早大に進学した理由はなんでしょうか

米澤圭 秋田商高から早大に行った人もいましたし、クラブチームの先輩でも早大の人がいたので、秋田商高は早大の合宿に行くんですけど、その時の練習の雰囲気もいいなと思って。色々なことを含めて早大に決めましたね。

岩澤 大きいのはやっぱり夏のインターハイ前の合宿で。そこで3日間ぐらい早大で練習して早大の雰囲気を肌で感じ取ることができて、秋田商高の先輩もいて気にかけてくれる部分もあったので、そういうところも含めてレスリングがやりやすいなと思って

米澤凌 自分も夏の合宿を含めて、先輩たちからも早大のいい話をいっぱい聞いて。練習も自由度が高いので、縛られたプレーよりも早大の自由なスタイルがおもしろいなと思って、自分流っていうのも築けるんじゃないかなと思って決めました。

――至学館大の岩澤希羽選手は岩澤選手の妹さんですか

岩澤 そうですね、1個下の妹です。もう一人下に秋田商高の妹がいるんですけど。ほとんどレスリングやってなかったので、反対したんですけど、ちょっと真似して入っちゃったのかな。

――みなさん兄弟でレスリングをなさっていますが。兄弟でやっていて良かったと思うことはありますか

米澤圭 弟とか、下の人は兄と比較されるみたいな。そういうのはむしろデメリットなんじゃないかなと思いますね。

米澤凌 自分は一番嫌ですね。今はそんなにないですけど、高校の時は比較されましたね。心の中では「そんなの知らないよ・・・」って思いながら、自分は自分なので。

岩澤 妹は、例えば圭先輩とかにかわいがってもらえてるんじゃないかなと思いますね。そういうのを見ると自分がやっていたからこそ妹に色んなつながりができていたりもするので、そこは良かったんじゃないかなと思います。

米澤圭 確かに兄弟でやってるとつながりは増えるよね。

――米澤凌選手は今年大学に入って日常の面で変わった部分はありますか

米澤凌 授業を自分で入れたりして、レスリング部で共有したり、太朗さんに教えてもらったりしながら。自由な時間も増えて、授業が終わった後も練習前に昼寝とかしていますね(笑)。

米澤圭 1年生のときは比較的に忙しかったと思うんだけど(笑)。でも高校の時の1時間目から6時間目が毎日あるとか、絶対今じゃできないですね(笑)。

米澤凌 あれもう無理ですね。1回全休とか味わってしまうと。

――それぞれの学年は仲がいいのでしょうか

岩澤 いいと思っています。拓海がケンカ早かったり、弥十郎がたまにピリつきますけど(笑)。飲みは比較的に多いですね。

米澤圭 4年生も多いですね。しょっちゅうですね。1、2年生の頃なんて練習終わったら毎日のように飯に行ってました。比較的に仲がいいと思います。みんな面白いですね、個性豊かで。星良(橋本、人4=茨城・土浦日大)とか結構面白いところあるんですよ、自分で爪楊枝を頭に刺したり(笑)。いい意味でうまくやっていけているんだろうなと思います。

米澤凌 1年生も男同士とかだったら3人で、龍馬のノリとかで。龍馬は小学校から中学校まで同じところでやっていたので、その頃から仲が良かったですね。女子のレスリングの意識は本当に見習わないといけないと思います。でも普段は結構自由にやっていますね。

――それぞれ他の学年の印象はいかがですか

米澤圭 3年生はみんなレスリングに対して真面目だなっていう印象ですね。自分たちの代から比べると全然意識が高いなと思います。それが結果に出てるからね。2年生はまだ自分をもっと出していいと思いますね、まだ控えめなのかなと。1年生は若いなと思います。エネルギッシュで、1年生を見て「自分老けたな」と思います(笑)。

岩澤 4年生は個性が強いですね、おもしろいです。うまく混じり合っているなと思います。3年生は確かに真面目だなと思います。練習の出席率は一番高いですね。

――米澤圭選手と米澤凌選手はそれぞれどんなお子さんでしたか

米澤圭 何してたんだろうな。まあ普通だよね。

米澤凌 普通ですね。

米澤圭 まあケンカはあったな。兄弟特有の、俺が凌を泣かせて、俺が親に怒られて泣くっていう(笑)。

米澤凌 俺はよく泣かされれてましたね。

米澤圭 よくある普通の兄弟でしたね、お互いレスリングはやっていましたけど。

――レスリングを始めたのはいつ頃ですか

米澤圭 自分は5歳っすね。体操教室行くみたいな感じで気づいたらレスリングやってたみたいな。

米澤凌 自分は物心がついた頃にはやってたので、それが普通になってましたね。兄がやっていたのでその流れで自然とやっていました。

岩澤 自分は小学1年生ですね。新聞広告にちびっ子レスリング教室っていうのがあって、母が見つけてそれに自分と1個下の妹で連れていかれたのがきっかけですね。ちょうどアテネ五輪の頃で、伊調姉妹と同じレスリング教室で少し有名になっていたんだと思います。

米澤圭 あんまり自分からやりたいっていうのはないですね。基本みんな親が体づくりでやらせたのをこじらせてこじらせてここまで来ているんだと思います(笑)。

――岩澤選手はお二人を見て似ているなと思うところはありますか

岩澤 似てるなって思うのは、大きい声出す(笑)。ちょっと変なところがありますね。顔とか全然似てないなと思いますけど、体つきは似ていますね。

米澤圭 自分たちの家系くびれがすごいんですよ。くびれて逆三角形みたいな。それは多分みんな似ているって言うと思います。

米澤凌 自分も間違えられましたもん。シャワー浴びてたら後ろから弥十朗さんに「圭さん!」って呼ばれて(笑)。なんてこともありましたね。顔は似てるって言われたことないですね。

――クリスマスのご予定はありますか

岩澤 一応遊ぶかな、と思います。関東で。

米澤圭 自分は伊豆に旅行に行きます、彼女さんと。運動部のマネジャーさんで、それで少し関わって、俺がLINEを聞いて。いわゆるナンパっすね(笑)

米澤凌 僕ですか、僕は普通に4人で遊びに行きます。

「全員で勝っていければ」(米澤圭)

今年1年主将としてチームをけん引してきた米澤圭

――天皇杯へ向けて、今取り組んでいることはありますか

米澤圭 自分は色々やってみたんですけど。ケガとかまだ少しあるんですけど、リハビリしながら練習をやっています。今は技術を増やすよりも自分のレスリングの精度を上げるしかないなと思って、いかに自分の技のキレをよく出せるかと行ったところを集中して練習をやっていますね。

岩澤 レスリング自体はあまり今までと変えていませんね。減量がちょっときついかなと思うので、食生活とか日常生活に気をつけています。

米澤凌 今まで幅が広がって、その中でもパターンを増やしたりだとか、足技などを意識して取り組んでいますね。

――今年は歴代最多の14選手が天皇杯の出場権を獲得してたそうですが、チームの強さの秘けつはどこにあると思いますか

米澤圭 めちゃめちゃすごくね?やっぱり主将ですかね(笑)。

岩澤 そうですね!

米澤凌 そう思いますね(笑)。

米澤圭 でもやっぱり、1年生ってなかなか全日本って出られないんですよ。その中で1年生が全体的に強くて。3年生も全員出場するという底力があって。あとは秋の新人戦で州汰(野本、スポ2=群馬・館林)が優勝したのが個人的には大きいかなと思いますね。そういうチャンスをつかむ能力っていうのがそれぞれあるんじゃないかなと思います。

――チームとして目指す部分はありますか

米澤圭 やっぱり初出場の人もいれば、何回も出場してメダルを取っている人もいるので。まずは全員が1勝してそこから積み重ねていけるように。少しでも全員で勝っていければいいかなと思いますね。

――米澤圭選手は去年、一昨年と2位ですが、今大会への意気込みは

米澤圭 そうですね、2位がずっと続いているんで。今年は五輪階級で一層レベルが上がって来ていて、自分の中でもなかなか調子が上がらなかったりしたシーズンだったんですけど、「今日の米澤圭は違うな」っていうところを見せたいなと思います。

――岩澤選手は初出場となりますが、目標はありますか

岩澤 表彰台に登れればと思います!

――米澤凌選手は天皇杯へ向けて意気込みはありますか

米澤凌 自分は五輪非階級なので、層はそこまで厚くはないので、一つ見せてやろうと思っています!

――ありがとうございました!

(取材・編集 林大貴)

笑顔で撮影に応じていただきました!

◆米澤圭(よねざわ・けい)(※写真右)

1996(平8)年11月15日生まれ。170センチ。男子フリースタイル65キロ級。秋田商高出身。スポーツ科学部4年。クリスマスは彼女と伊豆で過ごすと言う米澤選手。「大学生だからね、プライベートも充実していないとね」と笑顔でした。早大生として挑む最後の天皇杯。激戦が予想される男子フリースタイル65キロ級ですが、昨年、一昨年と2位に終わった雪辱を果たし、有終の美を飾ることがでk利いるか。期待が高まります!

◆岩澤侃(いわさわ・すなお)(※写真中央)

1997(平9)年5月18日生まれ。164センチ。男子フリースタイル57キロ級。秋田商高出身。スポーツ科学部3年。幼い頃は習字を習っていたという岩澤選手。色紙は達筆な文字で書き上げていただきました。『今この瞬間を全力で』。初出場となる天皇杯での躍進を期待しています!

◆米澤凌(よねざわ・りょう)(※写真左)

1999(平11)年5月20日生まれ。173センチ。男子フリースタイル70キロ級。秋田商高出身。スポーツ科学部1年。東京出身ながら秋田商高へ進学した米澤兄弟は6年間離れて過ごしていた期間がありました。今季主将としてチームを引っ張る兄の姿を久々に見て「成長を感じますね」と一言。兄の意志を継ぎ未来の早大をけん引してほしいですね!