若い戦力が魅了した、ワセダ大躍進

レスリング

 寒さの厳しい山形で開催された全日本大学グレゴローマン選手権、選手たちの戦いはその寒さに反して熱いものとなった。吉川航平主将(社4=秋田商)がケガで欠場したため、1年生と2年生の若い戦力の実力が試される試合となったが、選手たちの活躍は目覚ましかった。伊藤駿(スポ2=京都・網野)が3位、吉村拓海(スポ1=埼玉栄)、松本直毅(スポ1=神奈川・横浜清陵総合)が5位、山﨑弥十朗(スポ1=埼玉栄)が8位入賞を果たす。2日間に及ぶ熱戦を通してワセダは全体で4位となり、入賞圏外だった昨年から大幅に飛躍した。

 71キロ級で登場した伊藤駿。足のケガからの復帰戦となったが、1回戦を危なげなく突破する。2回戦の対戦相手は学生チャンピオンの高橋昭五(日体大)。「結構技が決まったので自分でも驚きました」と伊藤駿が語ったように、相手を2回投げ、最後は押さえつけてフォール勝ち。高橋優勢という大方の予想を覆して大金星を挙げた。3回戦も勝利を収め臨んだ準決勝。相手は階級が2つ下の階級の選手で伊藤駿自身もよく知る選手。「スピードとテクニックが自分より何枚も上手だった」と試合を振り返るように、相手のペースに飲まれ無得点のままテクニカルフォール負けを喫した。悔しさの残るなか臨んだ3位決定戦、6点先取される苦しい立ち上がりであったが、後半怒涛(どとう)の巻き返しを見せる。投げ技、さらに伊藤駿が得意とするローリングがテンポよく決まり18-8でテクニカルフォール勝ち、3位と躍進した。

学生チャンピオン相手にフォールを決める伊藤駿

 59キロ級に出場した吉村は初戦敗退、98キロ級に出場した松本は初戦で勝利するも2回戦で敗れ、両者敗者復活戦に望みをかけることとなった。共に敗者復活戦の1回戦を突破して臨んだ2回戦。松本は相手に次々と技を決められテクニカルフォール負け、吉村も反撃の隙を与えてもらえず敗戦した。結果、松本と吉村は5位入賞。80キロ級に出場した山﨑は2回戦で敗退、敗者復活戦には回れず、8位入賞と悔しい結果に終わった。

松本は全日本学生選手権から大きな成長を見せた

 2日間を振り返って「専門外のスタイルで試合に臨む選手が多かったなかで、期待以上の結果を残してくれた。らいねん以降の成績が楽しみだ」と語ったのは太田拓弥コーチだ。昨年から大躍進を遂げたワセダ、日々の努力が結果に結びついた。団体戦でのさらなる飛躍のためには重量級がいかに粘れるかということが重要になってくる。次戦の内閣総理大臣杯全日本大学選手権(内閣杯)に向けて早くも選手たちは照準を切り替えている模様。内閣杯では東日本学生リーグ戦での借りを返しに行く。

(記事 上野真望、写真 杉野利恵、寺脇知佳)

2日間を戦い終えた選手たち

結果

男子グレコローマンスタイル

59キロ級 吉村 5位

71キロ級 伊藤駿 3位

80キロ級 山﨑 8位

98キロ級 松本 5位

総合順位 早大 4位

コメント

山方隆之監督(平4人卒=福岡・築上西)

――2日間振り返っていかがでしたか

全般的にはきのうの大和(宇井、スポ1=和歌山・新宮)の優勝ときょうも伊藤駿(スポ2=京都・網野)が3位に入ったこと、拓海(吉村、スポ1=埼玉栄)と直毅(松本、スポ1=神奈川・横浜清陵総合)が3位決定戦までいけて、みんなよく頑張ったと思います。

――きょう出場された4選手の試合はいかがでしたか

みんなグレコローマンスタイルを専門にしている選手ではないなかでできることを試合のなかではやってくれたのかなと思います。伊藤駿にしても決め所でしっかり投げてフォールしてよく勝ってくれたというところがあります。あと、弥十朗(山﨑、スポ1=埼玉栄)にしてもグレコローマンスタイルをやっていないなかでやれることをやったと思います。きのうの選手も含めて足りない部分が見えた試合なので、今回の全日本大学グレコローマン選手権は勝ち負けも含めてなのですが、中身的に有意義な試合になったなと感じています。

――印象に残った試合はありますか

1番は大和が学生チャンピオンに勝って優勝してくれたことですね。あと、直毅がなかなか勝てていなかったなかで、練習してきたことが少しずつですけど試合に出せるようになってきたのかなというところはうれしく思いますね。

――次の内閣総理大臣杯全日本大学選手権(内閣杯)に向けて、一言お願いします

東日本学生リーグ戦では優勝した山梨学院大に勝ちながらも1位にはなれなかった。またこの試合もどこまでできるのかなというところを楽しみにしながらも期待以上の頑張りを見せてくれたので、今回の全日本大学グレコローマン選手権は内閣杯につながる試合になったのかなと思います。今度は得意のフリースタイルで試合ができるので、きょう以上に大暴れしてくれることを期待してますし、期待してください。

太田拓弥コーチ

――2日目を振り返っていかがでしたか

伊藤駿(スポ2=京都・網野)はきのうの宇井大和(スポ1=和歌山・新宮)と同様に学生チャンピオンをぶん投げてフォールしたところまでは良かったんですけど、次の試合からその投げを読まれちゃって。あれが大和だったらコーション狙いで前に出るというのができるんですけど、伊藤駿は片手間でグレコローマンをやっているので、それでも足のけがからの復帰戦としては良しというのが感じですね。弥十朗(山﨑、スポ1=埼玉栄)も拓海も(吉村、スポ1=埼玉栄)もグレコローマンスタイルを専門にやっている相手に対してはやっぱりまだ差があるのかなと思いました。拓海は吉川(航平主将、社4=秋田商)の代理が決まったのが1週間前だったので、そのなかでよく3位決定戦まで進んでくれましたし、松本直毅(スポ1=神奈川・横浜清陵総合)も2つ勝って3位決定戦にまで進んでくれましたし、らいねん以降は全日本大学グレコローマン選手権で優勝できるメンバーがそろいつつあるな、と思う2日間でしたね。

――松本選手は全日本学生選手権と比べて積極的に試合を進めていた印象があります。

前へよく出て、こっちが意図することを体で表現して相手にプレッシャーをかけていたので、結果2つ勝てたことはすごく収穫だったと思います。

――山﨑選手はグレコローマンスタイルの試合に出る機会が少ないですよね

体重が1階級上でも勝てる実力は持っていると思って出しました。ただ彼はグレコローマンスタイルを知らないですね。フリースタイルの良さもあまり出せなかったですし、グレコローマンスタイルの形もまだまだできてないので、らいねん以降もこういった形で出て、コンタクトしたレスリングを学ばせたいと思います。

――この2日間印象に残った試合は

宇井と伊藤駿ですね。学生チャンピオンをぶん投げて、フォールかテクニカルフォールっていうのはなかなかないですしね。技をかけるときは、前にプレッシャーをかけてとにかく技を思いっきりかけて、行くときはしっかりと決めていけと試合前に話していたので、はまったかなと思います。あと、松本の2試合勝ったのが良かったかなという点ですね。

――総合4位という結果についてはいかがでしたか

きょうは3人が3位決定戦に進んで、きのうの4年生が3位決定戦にまで行ける実力がありながら負けちゃったので、もしもの話ですけどきちんと進めていたら3位だったと思いますけど、まだまだ足らない部分かなと思いますね。1、2年生中心のメンバーであることを考えれば上出来かなと思います。

――次の内閣総理大臣杯全日本大学選手権に向けて意気込みをお願いします

間の65キロ級、70キロ級、74キロ級、86キロ級の4階級は優勝しないといけないメンバーなのでここでしっかりと48点を取って、あと57キロ級、61キロ級と上2つでベスト4入賞するぐらいになれば、間違いなく総合優勝できると思います。そのためにあと3週間を4年生中心に最後までまとまらせて、優勝できるようにしたいと思います。

伊藤駿(スポ2=京都・網野)

――試合にどのような意気込みで臨まれたか教えてください。

自分はフリースタイル(フリー)の選手なので、楽しんでやろうとリラックスしていました。しかし、今回はけがで出場を逃してしまった主将を手ぶらで帰らせるわけにはいかないということ、昨日66キロ級で宇井大和(スポ1=和歌山・新宮)が優勝したこともあり、絶対に負けられないという気持ちで臨みました。

――二回戦では強敵である高橋昭五選手(日体大)を破り見事大番狂わせを演じられたわけですが、戦ってみていかがでしたか。

自分でも結構技が決まって驚いています。

――4回戦で対戦されたのは2階級下の選手でしたが、戦いづらさは感じましたか。

昔から知っている選手で、相手は10キロくらい体重を落としてきていて、今回は動きも良くて期待せずに臨んだ結果、やはり相手の方が何枚も上手で負けてしまいました。

――同じ階級の選手と比べてどのようなところが違っていましたか。

軽量級だったので、スピード早くてテクニックも全然相手の方が上手でした。

――3位決定戦では相手に6点先取されてから巻き返しましたね。戦ってみていかがでしたか。

最初6点取られてかなり焦ったんですけど、そのあとうまい具合に点が取れました。自分はグラウンドのローリングが得意で、それがうまくはまりました。

――グレコローマンスタイル(グレコローマン)っていうよりもフリーのような動きが多かった印象を受けたんですけれども、フリーは今回にも役に立ちましたか。

グレコローマンが全くできないので、フリーの動きが出たっていうかんじです。

――今回見つかった課題はなんでしょうか。

グレコローマンでは組み手がかなり必要になってくるので、負けた試合とかでも、全部崩されて相手のペースになって負けてしまっていたので、そこが課題だと思います。

――次戦への意気込みをお願いします。

つぎは11月の初めに内閣総理大臣杯全日本大学選手権があるのですが、去年は準優勝で終わってしまったので今年は優勝したいです。

松本直毅(スポ1=神奈川・横浜清陵総合)

――今大会はどのような意気込みで臨みましたか

僕は公式戦で全然勝ててなかったので、とにかく1回でも多く勝つことを目標に、何位以上かとかいうよりも、1つ1つ収集して、まず1回戦勝つようにして頑張りました。

――その手応えはいかがでしたか

結構実力は着いてきたんじゃないかなと。実力はついてないんですけど、そこまで相手との差が離れすぎではなかったので。

――インカレ(全日本学生選手権)のときよりも攻めていた印象を受けました

インカレは攻めあぐんでしまって、何もせずに終わってしまって、今回はそんなことがないように、最初から飛ばしていけましたね。

――今回の中で1番上手くいった、あるいは印象に残っている試合は

初戦ですかね。前まで実力のあった選手で、いけるかなと思ったんですけど、残念でした。けどうまく持っていけたし自分のスタイルに持ち込めたかなとは思いますね。

――自分のスタイルというのは

とにかく前に出て、体力勝負って感じですね。技というよりも、体力比べみたいな。それが自分のできることかなと思います。

――ご自身で感じるフリースタイル(フリー)とグレコローマンスタイル(グレコローマン)の違いは

僕は結構ガツガツいくのが得意なので、グレコローマンだとそれを発揮できるんですけど、フリーだと点数が取りにくいですね。グレコローマンはこのままの技でやっていければいいと思うんですけど、フリーはもうちょっと改善できるかなと思います。

――試合後に太田拓弥コーチや吉川航平主将(社4=秋田商)からかけられた言葉などありましたか

今まで負けてばっかりだったので、今回は褒めてくださいました。積極的に詰めることができたので、褒められたというか、良かったと言われましたね。

――今回の収穫点を踏まえて次戦にどう生かしたいかとともに次戦への意気込みをお願いします

やっぱり、今回3位以内に入ると天皇杯全日本選手権への出場権を得られるので、3位以内に入りたかったんですけど、同期ほとんどその出場権を持っているので、僕も資格を得られるように上位目指して頑張ります。