【連載】『平成27年度卒業記念特集』 第33回 洞口幸雄/レスリング

レスリング

新たな道へ

 「レスリングをいつ始めたか覚えていない」と語るほど、人生の大半をレスリングに費やしてきた洞口幸雄(スポ=岐阜・岐南工)。早大ではレスリング部主将を務め、チームスローガンである『底上げ』を実現させてみせた。天皇杯全日本選手権(天皇杯)をもって現役を引退したが、レスリング人生に終止符を打ったわけではない。今春から柔道整復師の資格を取るために専門学校へと進学し、トレーナーとして第2のレスリング人生をスタートさせる予定だ。

 大学に入って洞口が立てた目標は、大学の全国大会でメダルを取ること。その目標を達成するには丸4年かかることになる。高校での実績を買われ、スポーツ推薦で入学したものの、ケガとの戦いが洞口を待っていた。下級生の時にはケガの影響もあり、なかなか思うような結果が残せない。しかし4年生になると、「自分がなるとは思わなかった」と振り返る驚きのキャプテン就任。そのあとも入院し、精神的にも辛い日々が続いた。そんな中、レスリングに対するモチベーションを支えたのは早大レスリング部の仲間たちであった。チームメイトがお見舞いに出向き、洞口に励ましの言葉を送る。練習では、洞口を補うように同期が引っ張った。「本当にみんなに支えられました」(洞口)。そのおかげもあって、モチベーションをそのままに洞口はマットへと復帰した。

内閣杯ではキャプテンとしてチームを4位へ導いた

  洞口にとって転機となったのは早大で挑む最後の試合、内閣総理大臣杯全日本大学選手権(内閣杯)であった。その前にあった全日本大学グレコローマン選手権ではケガからの復帰を果たし、専門種目ではないグレコローマンスタイルで5位に入賞する。その後わずか1か月で課題点を修正。内閣杯では97キロ級で2位に輝き、目標であったメダルを獲得して国内最高峰の舞台である天皇杯への出場権を得た。この洞口の活躍もあって、早大は4位入賞。「キャプテンとしてもほっとしました」と振り返る。集大成となる試合でキャプテンとしての役目を果たせた瞬間でもあった。

 天皇杯では惜しくも1回戦敗退となった。それでも、「最後に自分らしい動きができて良かった。オリンピック選考会という重要な機会に出られてうれしい」と晴れ晴れとした表情で振り返った。洞口にとってレスリングとは「なくてはならないもの」。生活習慣に自然とレスリングが組み込まれているようだ。「引退しても、試合を見に行ったり、一番近くで後輩たちを応援してあげたい」(洞口)。これからはマットの側で愛するレスリングを見守り続ける。

(記事、写真 杉野利恵)