黒澤が両スタイルで活躍見せる

レスリング

 日本レスリング界の頂点を決める明治杯全日本選抜選手権を今週末に控えるなか、次世代を担う大学1、2年生のための新人戦が開催された。早大からはフリースタイル(フリー)Aグループへ10選手、グレコローマンスタイル(グレコローマン)へも9選手が出場。黒澤翔(スポ2=茨城・鹿島学園)がフリー60キロ級で優勝、グレコローマン60キロ級で2位と活躍したが、その他には優勝者が出なかった。なお今大会はレスリングの五輪競技復帰への取り組みとして採用された新ルールに基づいて試合が行われた。

 以前のルールでは2分3ピリオド(P)だったのが、新ルールでは3分2Pとなって「(体力面が)きつい」と語った黒澤。結果的にフリーでは優勝したが、試合は6分間接戦が続く展開が多く、盤石な内容では無かった。決勝も2Pの2分30秒経過の時点で4-4の同点。さらに相手の有利な体勢から投げを打たれたが、うまく抜け出すと後ろを取って試合を決めた。黒澤はこの優勝でフリーの敢闘賞を獲得した。苦しみながらも栄冠をつかみ取った黒澤に対し、「あと2人優勝させたかった」(山方監督)と評されたのが66キロ級の多胡島伸佳(スポ1=秋田・明桜)と84キロ級の洞口幸雄(スポ2=岐阜・岐南工)。特に4月に行われた同年代対象のJOC杯ジュニアオリンピックを制している多胡島には、今大会も優勝の期待がかかったが、準決勝で際どい判定の末に敗れて3位。洞口も「練習ではだいぶ良い感じ」(山方監督)だったが、多胡島と同じく準決勝で敗退して3位となった。

敢闘賞を受賞した黒澤

 グレコローマンは大会2日目の午後と3日目に行われた。2日目午前にフリーの優勝を決めた黒澤は初戦をフォール勝ちでスタート。相手が技をかけてきたところを切り返して得点に結びつける場面が多く見られ、準決勝も返し技でフォールを奪った。決勝は「苦手な相手」(黒澤)に大差で敗れたが、フリーを専門とする選手ながらも2位に輝く快進撃を見せた。しかし、その他の選手は苦戦が目立ち、3回戦を突破したのが黒澤のみとなった。

JOC杯に続く優勝はならなかった多胡島

 専門とする選手がいなかったグレコローマンを除いても、フリーで優勝1人という結果はやや不満の残るものとなった。しかし、3位までを見れば5選手が入賞と実力の片りんを見せたと言える。それでも、早大レスリング部が求められるのは優勝という結果。今回の課題を生かして、夏以降の大会では勝ちきる姿を見せてほしい。

(記事、写真 三尾和寛)

結果

▽フリーAグループ

55キロ級 青木祐聡(スポ1=岐阜・岐南工) 4回戦敗退

      藤川聖士(スポ1=埼玉栄)    3回戦敗退

60キロ級 黒澤               優勝

      吉川航平(社1=秋田商)     3位

      丸山大三郎(教1=埼玉・早大本庄)1回戦敗退

66キロ級 多胡島              3位

74キロ級 今村聖(スポ2=群馬・太田商)  4回戦敗退

84キロ級 洞口               3位

      堀江一馬(社1=富山・高岡商   3回戦敗退

96キロ級 土赤耕陽(スポ1=山形・山形商) 3位

※黒澤はフリーの敢闘賞受賞

▽グレコローマン

55キロ級 青木               2回戦敗退

60キロ級 黒澤               2位

      丸山               2回戦敗退

      吉川               2回戦敗退

66キロ級 多胡島              1回戦敗退

74キロ級 今村               3回戦敗退

84キロ級 洞口               3回戦敗退

      堀江               1回戦敗退

96キロ級 土赤               2回戦敗退

コメント

山方隆之監督(平4人卒=福岡・築上西)

――今大会の結果はどう受け止めていらっしゃいますか

フリーはもう2人は優勝させたかったですね。

――もう2人とは

まずは66キロ級の多胡島(伸佳、スポ1=秋田・明桜)です。JOC(JOC杯ジュニアオリンピック)で勝ったので優勝してほしいなと思っていたのですが、大学2戦目ということで多胡島にはタックルがあるということで他大学の選手も対策をきていたので。それに対する逆の対策というのがちょっと足りなかったかなと思います。結果はついてこなかったですが、課題が見つかったかなと。もう1人は洞口(幸雄、スポ2=岐阜・岐南工)です。練習の中でだいぶいい感じになってきていて、それが試合に結びつくかというのを楽しみにしていたというのがあったのであと2つかなと。あと残りの選手、特に1年生は体力がまだまだだなと。技術よりも体力がついてきていないです。今の1、2年生の中で自分がどの位置にいるかというのがJOCもそうですけど、JOCが終わって新人戦までやってきたことがどれだけ身についたか。それを試せた部分があったのと、まだまだ足りない部分があったので、また今後にそれぞれの課題としてやってくれればと思います。

――グレコローマンについては

グレコについては、基本的にグレコ専門でやっている者がいない中での出場ですが、グレコをやっていないというより体力が足りないというのがあったので、それを改めて実感できた内容だったと思います。黒澤(翔、スポ2=茨城・鹿島学園)についてはよく決勝まで残ったのですが、決勝では悪い所が出て、力の差がある相手には自分の弱い所を突かれて負けたというのでまだまだ改善しなければいけないところを翔自体もわかったと思うので、3日間良い試合をしてくれたなと感じています。

――黒澤選手、フリーの方はいかがでしょうか

2年生最初の新人戦で勝ったのですが、(この年代の)全員が出ているわけじゃないので。新人戦出ないで選抜(明治杯全日本選抜選手権)出る選手がいたり、怪我で途中棄権した選手もいます。優勝は優勝として喜んでいいと思いますが、これで満足せずもっと上を目指すためには何をしなければいけないのかわかった大会だと思うので、また明日から上を目指してほしいなと。

――今大会から新ルールが導入されました。新ルールにはどういう印象を持っていらっしゃいますか

私が現役でやっていたのと近いかなと。前までのルールだと消極的になったりだとか、ボールピックアップだったりとかでちょっと違った作戦というのがあったし、実力通りの結果が出ないというのがありました。しかし、新ルールは攻める選手というのが勝つので、攻めるためには体力が必要だし、攻めるためにはポイントを取れる自分の得意な技を持っていないと結果というのはついてこないと思います。良いルール、前のルールよりは良いルールだと思います。ただ、これまでと練習内容というのを変えていかないといけない部分もあるので、早く適応させていかせたいなと思います。

黒澤翔(スポ2=茨城・鹿島学園)

――フリースタイルは優勝でした。内容はどう評価されてますか

内容はあまり良くなかったですね。

――良くなかった点というのは

結果的には勝ったのですが、最後の詰めが甘いというか。決勝も最後で相手に取られたら負けというところで、もう少しで取られそうだったので、守りの詰めが甘いなと。

――グレコローマンの方はいかがでしょうか

グレコローマンは決勝いけただけで奇跡ですね。

――決勝については

そうですね。苦手な相手で、まあ仕方ないです。

――今大会から新ルールの導入となりましたが、新ルールの感想は

体力が無いときついです。

――3分間というのはつらいですか

はい。2分3ラウンド、早くて2ラウンドより、3分2ラウンドの方がきついですね。

――最後に、今後に向けて一言お願いします

自分は体力が無いので、決勝とか上に上がるにつれてどんどん試合間隔が短くなっていくし、もっと体力をつけないといけないと感じています。