赤と白。時に紅白、めでたい色と言われるこの二色だが、ウエイトリフティングにおいては時に残酷な判定を告げる非情な二色となる。14日ーに16日行われる全日本大学対抗選手権(インカレ)、男子56kg級~69kg級・女子48kg級~63kg級。一年を締めくくる最後の大会で笑顔を咲かす選手もいれば、結果に悔しさをにじませる選手も見られた。この日、知念勇斗(スポ4=沖縄・豊見城)と安嶋千晶(スポ4=茨城・大子清流)が大学最後の舞台を迎えたが、結果は悔しさの残るものとなった。
56kg級の知念勇斗が先陣を切った。得意と語るスナッチでは、階級内でも高い重量設定で好位置につける。ただ、気の緩みか二本目を落としてしまい、3本目で取り返す展開。スナッチ順位は二位ながらも、大商大の選手に6キロ差をつけられC&Jへ折り返した。C&Jでは2本目で逆転のチャンスを迎えるも失敗。3本目での挽回もかなわず、東京国際大の選手に逆転ジャークを許しトータル2位となった。続いての出場は48kg級鈴木梨羅(スポ2=千葉・松戸国際)と53kg級安嶋千晶。スナッチでは不本意な重量に甘んじた鈴木だが、C&Jでは相手を突き放す重量設定で悠々と試技。1本目で優勝を確定させると、そのまま重量差を広げていった。一方、安嶋は強敵・高橋いぶき(金沢学院大4年)を相手に競る展開となってしまう。スナッチを同じ重量で折り返した安嶋。しかし、C&Jを得意とする高橋に、追う展開となってしまう。ただ、安嶋は強気のの姿勢で挑んでいった。1本目から90㎏台の重量設定で実力を見せると、最後の試技では高橋を1㎏上回る99㎏に挑戦。声援に包まれながら、まさに意地で差して見せた。ただ、点いたランプは赤、白、赤ー『失敗』。プレスアウトと一番悔しい形での締めくくりとなってしまった。
127㎏を挙げ、確かな1点をつかんだ吉田
知念勇人と安嶋が最後のインカレでの試技を終え、この日残るは62㎏級吉田旭(社3=岐阜・中津)、69㎏級木村勇喜(スポ2=兵庫・明石南)と知念勇樹(スポ2=大阪・関西一)。実力者たちを前に高順位を阻まれる吉田であったが、C&Jで怒とうの挽回をしてみせた。これまでの大会を上回る120㎏からのスタートとなったが、気迫の試技で重量を伸ばしていくと、3本目で127㎏に挑戦。顔をゆがめつつもジャークに成功し、8位入賞。知念勇人が惜しくも失った1点を取り返し、この日のバトンは良い流れで69㎏級に引き継がれた。驚異的な成長で62㎏級から舞台を移した木村と、長らくこの階級での経験がある知念勇樹。スナッチでは木村が知念勇樹を上回る重量でリードしたが、C&Jでは知念勇樹に軍配が挙がった。上位へ入賞濃厚な151㎏で1本目を成功させ、このまま重量を増していきたい知念勇樹。ただ、立ちくらみで2本目を落とし、2㎏の増加にとどまり試技を終えた。結果は知念勇樹がトータル2位、木村がトータル5位。もっとも、木村は上位に肉薄する重量を挙げ、スナッチでは2位入賞。2日目へ向け2人の”ゆうき”が点を稼いだ。
成長を見せ、121kgをスナッチする木村
まだ初日ながらも、やはり最後の大会。会場は、これまでと違うとはっきり感じさせる熱気に包まれていた。安嶋が涙をのんだように、笑っても最後、泣いてもこの試合が最後だ。自身のすべてをぶつけんと、背負う様々な思いがバーベルに込められていた。2日目からは中~重量級の試合が行われ、初日に負けず劣らずの激戦が予想される。最後に笑顔を咲かせられるよう、彼らは全力で試技に挑む。
(記事・写真 伊東穂高)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません
コメント
知念勇斗(スポ4=沖縄・豊見城)
――きょうの試合を振り返っていかがでしたか
今回のインカレは四年生で最後の大会で、しかも自分は一年生から四回出場できて。締めくくりとしてやったんですけど。うまく行かなかったところもあるしうまく行ったところもあるしで。卒業後もウエイトリフティングを続けるので、総合的にみると後に繋がる試合だったなと。ただインカレって一本一本大切なので、何本か落としてしまって申し訳なさがあるんですけど、終わったあとなので。二日目三日目の選手に託すという感じで、サポートしていこうと思ってます。
―団体戦の先鋒ともいえる階級でしたが、プレッシャーはありましたか
四年間ずっと56kg級で四年間やってきたので、緊張というよりやらなきゃという使命感でやってたので。緊張は試合であまり感じないタイプなので、いつも通り楽しくやろうかなって思ってました。
――やや失敗が目立ちましたが、振り返ってみていかがですか
スナッチの二本目の失敗は、一本目とったあとの気の緩みが失敗につながったんじゃないかと思います。インカレで一本目とったからって二本目で気を抜くんじゃなくて、更に気を入れてやっていくべきだったと三本目終わったときに思いましたね。ジャークの二本目三本目は優勝がかかった逆転ジャークのようなものだったので、挑戦して成功できなかったのは自分の練習不足、実力不足かと思います。
――クリーンでの立ち上がりが重そうに見えましたが、感触としてはどうでしたか
131から間が空いちゃったので、気持ちが作れてなかったのかなと。でも重かったですね、減量も考えると。でも立てなかったのはシンプルに自分の練習不足なので、そこは練習で直していけたらと思います。
――二日目、三日目の選手、そして次の世代の選手へ向けてコメントをお願いします。
二日目三日目の選手には、自分がとれなかった分の点数を背負わせちゃうかもしれないんですけど、インカレは一年の集大成なので、自分に自信をもって一本一本自分の試技をやっていって、楽しかったと言えるような試技をやってほしいですね。次の世代に対しては、四年生はインカレで終了なので、ウエイトリフティングって自分の頑張ったのが記録でわかるので、どれだけ頑張ったかというのを常に求めて、常に上を求めていって失敗しても次へ向けて何か掴めればいいかなと。自分の中では一番楽しい試合をして、楽しい部活になってほしいと思います。