【連載】『平成29年度卒業記念特集』第12回 内門沙綾/ウエイトリフティング

ウエイトリフティング

不屈の女王

 2017年12月に開催された第63回全日本大学対抗選手権。早大ウエイトリフティング部の四年生にとって、引退前最後となる重要な大会だ。この大会でワセダは男子団体4位・女子団体1位という輝かしい成績を収めた。その女子選手陣の中心に立ち、部をけん引してきた選手がいる。その名は内門沙綾(スポ=宮崎・小林秀峰)。早大ウエイトリフティング部女子主将だ。

 中学生のころは陸上競技に取り組んでいた内門だが、高校では競技を続けないということを決めていた。とはいうものの、次に何をするかは決めていなかった彼女。何をしようか迷っていたその時、転機が訪れる。中学でウエイトリフティングについて話を聞く機会があり、競技に興味を持った。「新しい世界に挑戦してみようと思った」と、彼女はウエイトリフティングの世界に足を踏み入れることを決意する。

大学最後となる全日本大学対抗選手権で、クリーン&ジャークを決める内門

 はじめは高校の3年間でウエイトリフティングを止めるという考えだったが、今まで高校からワセダに進学した卒業生がいないということ、そしてウエイトリフティングの強豪校であるという理由からワセダへの進学を決意。こうして部の一員となった内門だが、不運に見舞われることもあった。試合で肩を脱臼。思うようにトレーニングが出来ない日々が続いた。しかし、その中でも折れない心を持つ選手が内門である。下半身のトレーニングを積み重ね、他の部員との差が開かないよう努力した。また、怪我をしてから様々な人と話す機会が出来たという。周りからの支えを力に厳しいトレーニングも乗り越えることが出来、「早く復帰しなければ」「部に貢献しなければ」という思いも強まっていった。時にはスランプに悩まされることもあった。度々、ウエイトが思うように挙がらないことがあったという。それでも、いずれ出来るかとポジティブな思いを持ち、それを乗り越えていった。

 そして迎えた4年目、内門は女子主将に抜擢される。だが、自分で良いのかと思うこともあった。自分自身が頼られる人間であるかを考えたときの答えは「そうでもない」。不安も混じりながら、ラストイヤーが幕を開けた。「選手の話を聞いてくれて、周りを見ることのできる先輩」が理想だという内門。思い返せば、自身が一年生であった頃の4年生が何よりも憧れであったという。存在感があり、その人物がいるだけで空気がまとまる――。かつての憧れを追いながら、主将としての在り方を探り続けた。

 女子団体1位を成し遂げた全日本大学対抗選手権だが、ひそかに「無事に終われば良い」という思いもあった。部内での怪我・体調不良が立て続けに発生。だからこそ、「自分が出来ることは最大限やろう」「それ以外では全力でサポートする」と、主将としての責務を全うすることを意識していた。

 自分自身を振り返って、何よりも「運が良かった」と語る内門。怪我に悩まされることも多かったが、それをも乗り越えて輝かしい実績を残してきた。彼女はこれからも競技を続けるという。実力・運共に最高峰の選手である彼女なら、どのような壁でも乗り越えられるだろう。その活躍に期待したい。

(記事・写真 伊東穂高)