すっかり冬めいて冷たい風が吹く中、さいたま市記念総合体育館は熱気に満ち溢れていた。1年の集大成となる全日本大学対抗選手権(インカレ)が行われた。本大会は各階級でスナッチ、クリーンアンドジャーク(ジャーク)、トータルの順位が決定する。4年生はこの大会でウエイトリフティング部から引退となるので、現体制で挑む最後の大会でもある。選手はそれぞれの思いを込めて試技を行った。その結果、男子は4位と目標の3位には届かなかったものの、昨年の5位から1つ順位を上げた。そして女子は悲願の優勝を果たすことができ、2017年を締めくくるのにふさわしい結果となった。
男子では3人の4年生が出場したが、結果は明暗が分かれるものとなった。「悔いのない試合ができた」と振り返るのは、1年間早大ウエイトリフティング部をまとめてきた森川芳樹主将(スポ4=兵庫・明石南)。スナッチを4位で折り返すと、ジャークでは勝負が決まる3回目を見事成功。歓声が会場に響き渡るとともに森川は大きくがガッツポーズを見せた。結果は2位。大学生としての最後の試合を笑顔で締めくくることができた。また怪我からの復帰戦となった生頼永人(スポ4=兵庫・明石北)もジャーク3回目は棄権したものの、ほか5回の試技をすべて成功させ優勝。「記録は良くなかった」と自分を厳しく評価をした生頼だが、有終の美をかざることができた。一方千葉健介(社4=岩手・水沢)は調子が良くなった。優勝を目指していた千葉だったが、ジャーク1回目、2回目を失敗。後がなくなった千葉だが何とか3回目を決め、トータル5位。チームに対して「申し訳ない」と語ったが、4年間チームをリードしてきた千葉は心の支えとして十分チームに貢献しただろう。そして来年最高学年になる3年生は課題が見えた。昨年優勝した知念勇斗(スポ3=沖縄・豊見城)は56キロ級で出場するも6位という悔しい結果に。また課題とされている重量級では85キロ級の永迫竜矢(スポ3=宮崎・小林)が9位、105キロ級の池田祐介(社3=滋賀・安曇川)は7位に終わった。しかし池田は昨年より順位を2つ上げ、トータルの重量も10kg増加。1年間の成長が感じられた。ことし期待の新人として入部した1年生は、知念勇樹(スポ1=大阪・関西第一)が3位、木村勇喜(スポ1=兵庫・明石南)が6位という結果に。ワセダの一員としての役割を果たした。
納得のいく結果を残した森川主将
女子は全員が活躍する形となった。その中でも48キロ級の鈴木梨羅(スポ1=千葉・松戸国際)は注目を集めた。1年生にもかかわらず堂々とした試技を見せ、ジャークでは大会新記録を樹立。思わず顔をほころばせながら、小さく両手でガッツポーズをした。そして最後の大会となる4年生の内門沙綾(スポ4=宮崎・小林秀峰)も終始落ち着いた表情。軸も動くことなく、抜群の安定感を見せた。すべての試技を成功させ、58キロ級で優勝。「自分ができる仕事をする」という誓いを果たした。53キロ級の安嶋千晶(スポ3=茨城・大子清流)も健闘するも4位。3位との差はわずか2kgとあと一歩のところで表彰台を逃した。続いて69キロ級では1年生の戸田妃乃子(スポ1=福岡・九州国際大付)が登場。スナッチ1回目を余裕の表情で決めたが2回目、3回目を失敗。ジャークでも果敢に109kgに挑むがうまく持ち上がらず、トータルで2位。今後の成長に期待がかかる。そして3年生女子は来年の早大ウエイトリフティング部の要としてふさわしい成績と人柄を見せた。75キロ級で出場した柏木麻希(スポ3=京都・鳥羽)はジャーク1回目、2回目を確実に決め、3回目で90kgに挑戦。会場の声援もより一層大きくなる中、見事成功させた。「ありがとうございます。」と言いながら何度もお辞儀をした柏木。最後にワセダの選手がいる客席の方に最も深いお辞儀をした。結果は3位。仲間への感謝を持ち続けながら、さらなる進化を遂げてほしい。また90キロに出場した田中季恵(スポ3=香川中央)はスナッチを3位で折り返すとジャーク1回目、2回目と成功させ、3回目では103kgに挑戦。一度大きく体が傾いたが立て直して成功させた。結果は3位だったが、これからの期待が持てるような試技だった。
試技を成功させ、ガッツポーズする鈴木
今年最後の団体戦。プラットホームに一人で立つウエイトリフティングだが、部員の試技の前はチーム全員が全力で声援を送る。その大きな声の力に後押しされ、一人一人が結果を出すことで男子は4位、女子は優勝という結果を残すことができた。大切なのはチームが一丸となって同じ方向を見ること。今年のウエイトリフティング部はそれができていた。来年はさらなる高みを目指して。ウエイトリフティング部の挑戦はもう始まっている。
(記事 大久保美佳 写真 大久保美佳、伊東穂高)
最後は笑顔で終わることができた
結果
★男子
▽56キロ級
森川芳樹 スナッチ99Kg C&J132Kg トータル231Kg 2位
知念勇斗 スナッチ95Kg C&J129Kg トータル224Kg 5位
▽62キロ級
千葉健介 スナッチ111Kg C&J130Kg トータル241Kg 5位
木村勇喜 スナッチ110Kg C&J130Kg トータル240Kg 6位
▽69キロ級
生頼永人 スナッチ127Kg C&J152Kg トータル279Kg 1位
知念勇樹 スナッチ119Kg C&J150Kg トータル269Kg 3位
▽85キロ級
永迫竜矢 スナッチ121Kg C&J146Kg トータル267Kg 9位
▽105キロ級
池田祐介 スナッチ131Kg C&J159Kg トータル290Kg 7位
★女子
▽48キロ級
鈴木梨羅 スナッチ68Kg C&J94Kg トータル162Kg 1位
▽53キロ級
安嶋千晶 スナッチ67Kg C&J85Kg トータル152Kg 4位
▽58キロ級
内門沙綾 スナッチ76Kg C&J103Kg トータル179Kg 1位
▽69キロ級
戸田妃乃子 スナッチ82Kg C&J103Kg トータル185Kg 2位
▽75キロ級
柏木麻希 スナッチ90Kg C&J110Kg トータル200Kg 3位
▽90キロ級
田中季恵 スナッチ84Kg C&J103Kg トータル187Kg 3位
コメント
森川芳樹主将(スポ4=兵庫・明石南)
――今回の部の目標を教えてください
男子は団体3番、女子は優勝を目指して1年間取り組んできました。
――今日の結果に対してどのようにお考えですか
この大会で、この会場で出るのは初めてで、去年も疲労骨折していて出られなくて、2年生の時は会場が違って、1年生の時も2部で、初めてこの試合でこの会場で試合をさせてもらって、本当に減量したかいがあったなと。最後に減量して試合に出られて、2番になれて、悔いのない試合ができたなって思います。
――最後にガッツポーズをされていましたね
そうですね。足がつっていて、6kgぐらい減量しているので、足がつってしまって、どうしようと思いながら、時間がなくてゼロのタイミングで上げるってなったときに、やばいと思ったんですけど、最後に取れて。みんなには「とれへん」って言われていたのを取れたので、「よし」って思いましたね。そこでとれば2番になれることも分かっていたので、これでよかった、減量してよかったってすごく思いました。
――後輩へメッセージをお願いします
そうですね。減量したんですけど、いい結果が残ったというのは今まで頑張ってきたからこそだと思います。毎日毎日の積み重ねなので、この1年だけ頑張ろうじゃなくて、継続していくのがウエイトリフティング大事なので一日一日を大切にして、パッとここで花を咲かせられればいいと思います。
千葉健介(社4=岩手・水沢)
――きょうはどのような思いで臨まれましたか
優勝したいと思ったんですけど、ちょっとうまくいかなかったですね。
――4年間を振り返っていかがですか
忙しかったですけど楽しかったですね。趣味やりながらできたので。楽しかったです。
――1年間主務と選手を兼任していかがでしたか
そうですね。去年も似たような感じでやって慣れていたので、トータル的にはうまく練習とかもできたんじゃないかなと思うのですが、最後はちょっと悲しい感じになっちゃいましたね。
――今日の結果を振り返っていかがですか
いや、もう最悪ですね。団体の結果には全然絡めてないので申し訳ないです。
――後輩へメッセージをお願いします
人数も増えているし、4年生になる今の3年生は人数もいるし、競技面だけじゃなくていろいろ頼りになるところがあるので、全然心配しなくて大丈夫だと思います。
生頼永人(スポ4=兵庫・明石北)
――きょうの結果を振り返っていかがですか
記録は良くなかったんですけど、しっかり団体戦として点を取ることができたので、そこは良かったですね。
――4年間を振り返ってみていかがですか
そうですね。入学してから3年過ぎるぐらいまではもうちょっとやっとけばよかったかなと思ったんですが、4年に入って1つめの試合でしっかり記録残して、この調子で全日本も頑張ろうって思ったら怪我してしまったので、そこだけ心残りですかね。ちょっと初めての大怪我で、このインカレも結構ぎりぎりの復帰戦になってしまったのですが、いろいろ幸運が重なって、強い選手が出てこなかったりとかしたので、結構ラッキーでした。
――後輩へのメッセージをお願いします
難しいですね。記事に載せられないこと言いそうなんで(笑)あんまりポジティブなこと言えないんですよ。自分の特性上じゃなくていろいろあってね。「しっかりバランスよくインカレに出られるようにみんな頑張れ」ですかね。うちは本当にアンバランスなんで。どんなチームもこんなに軽量級に固めるチームなんていないんで。やっぱり点数を後出しできる重量級に固めたほうが団体的にも有利なので。うちはこういう風にするしか点が取れないから仕方がないんですけど。まあ来年はしっかりバランスの取れたチームになってほしいですね。
内門沙綾(スポ4=宮崎・小林秀峰)
――きょうはどのような思いで臨まれましたか
最後の団体戦というのがあって、結構緊張とかいろいろ不安とかもあったんですけど、女子の目標が団体優勝ということで、しっかり自分ができる仕事をするという気持ちで臨みました。
――今回の結果についてはいかがですか
そうですね。6本しっかりと取ったら結果はついてくるかなとは思っていてでもやっぱり不安もあったりしてっていう感じだったのですが、しっかり1本1本自分で気持ちを入れて取って、周りもたくさん応援してくれたのでいい結果につながったのかなと思います。
――4年間を振り返っていかがですか
大きな怪我が何度かあって、脱臼とかも何回かしたのですが、今年最後の年で何もなくて、「終わりよければすべてよし」じゃないですけど、優勝で終われたのでよかったです。
――後輩へのメッセージをお願いします
これから後輩はどんどん強くなっていくと思いますし、新しいメンバーも増えていろいろよくなっていうと思います。ずっとこれからも応援し続けたいと思います。