1年間の集大成を見せる舞台・全日本大学対校選手権(インカレ)。今季のワセダは4位を目標とし、3日間の熱戦に挑んだ。初日、トップバッターを務めたのは58キロ級・知念勇斗(スポ1=沖縄・豊見城)。スナッチは危なげなく3本成功させたが、確実に記録を狙いにいったクリーンアンドジャーク(C&J)の2本目で、予想外の失敗してしまう。しかし3本目の重量申請で知念は、2本目の記録のみならず自己記録をも上回る131キロをセコンドに告げる。リスクの高い試技となったが、上位を目指し勝負に徹すると、見事に成功。トータル2位という上々の滑り出しでチームに勢いをもたらした。続く生頼永人(スポ2=兵庫・明石北)も成功率の高い試技を披露し、3位で表彰台へ。しかし「(成功率が高いのは)低い重量からスタートしたので、言ってしまえば当たり前」と冷静に振り返っていた。2年生エースのあくなき向上心はまだまだ満たされることはないようだ。
知念は攻めの姿勢を貫いた
2日目は、男子77キロ級に松本浩志(スポ4=兵庫・明石)、85キロ級からは梶田大和(スポ4=兵庫・明石南)が出場した。松本は2本目のスナッチで失敗するも「トータルとしてはしっかりと結果を残せた」と語ったように、全体的に成功率の高い試技となった。続く85キロ級、梶田は「最高の試技ができた」というように完璧なスナッチを披露し、クリーン&ジャークでは2本目に162キロを成功させ自己記録を更新。3本目は落としたものの、ウエイトリフティング人生最大の目標だったというトータル300キロに到達し見事3位でメダルを獲得した。女子では63キロ級に野本なつみ(スポ3=埼玉・草加)、69キロ級に小町史華(スポ4=石川・飯田)が出場。ワセダのユニホームをまとう最後の試合となった小町は、トータル5位で競技を終えた。4年間を振り返り、記録でチームを引っ張ることはできなかったが、支えてくれた先輩・後輩の存在は大きかったという。試合後には「ワセダで本当に良かった」と、すがすがしい笑顔を見せてくれた。
最終日には男子は105キロ級で菅野真央(社4=福島・川俣)、+105キロ級で武田健(スポ3=宮城・石巻)が出場。菅野はスナッチ、C&Jともに3回目では失敗も、「悔いはない」と納得の試技で3位入賞を果たし、有終の美を飾った。武田はスナッチでは結果が出なかったがC&Jでは自己新記録をたたき出し、今年度を良い形で締めくくった。来季からは主将としてチームをまとめあげる。一方女子では75キロ級では柏木麻希(スポ1=京都・鳥羽)、75kg超級で田中季恵(スポ1=香川中央)が出場。柏木は「記録的には余裕があった」と圧巻のノーミスで優勝を果たした。田中はスナッチ、C&Jともに3回目で失敗。記録こそ逃したが「筋力強化につとめ、記録を伸ばしていきたい」と前向きな表情だった。
仲間の声に応える梶田主将
男子は総合4位という目標通りの順位を勝ち取った。昨年度2部での戦いから這い上がってきたワセダのリフターたち。その力は1部でも間違いなく通用するということを証明してみせた。今シーズンの試合はこのインカレで全て終了し、これをもって新体制を迎える。「ことしの4年生は本当に強い選手が多かった」(武田)その4年生が抜けてからも、再び来季から1部で着実に結果を残すべく、チームは歩みを止めない。
(記事 田原遼、冨田千瑛 写真 平野紘揮、杉野利恵)
男子は有終の美を飾った
結果
男子
▽56キロ級
知念勇斗 スナッチ98Kg C&J131Kg トータル229Kg 2位
▽62キロ級
千葉健介(社2=岩手・水沢) スナッチ107Kg C&J135Kg トータル242Kg 6位
森川芳樹(スポ2=兵庫・明石南)スナッチ104Kg C&J129Kg トータル233Kg 10位
▽69キロ級
生頼永人 スナッチ124Kg C&J165Kg トータル289Kg 3位
▽77キロ級
松本浩志 スナッチ119Kg C&J152Kg トータル271Kg 9位
▽85キロ級
梶田大和 スナッチ138Kg C&J162Kg トータル300Kg 3位
▽105キロ級
菅野真央 スナッチ146Kg C&J172Kg トータル318Kg 3位
▽+105キロ級
武田健 スナッチ125Kg C&J171Kg トータル296Kg 8位
女子
▽53キロ級
中山桃花(スポ2=兵庫・須磨友が丘)スナッチ40Kg C&J56Kg トータル96Kg 10位
▽63キロ級
野本なつみ スナッチ69Kg C&J84Kg トータル153Kg 5位
▽69キロ級
小町史華 スナッチ66Kg C&J83Kg トータル149Kg 4位
▽75キロ級
柏木麻希 スナッチ90Kg C&J109Kg トータル199Kg 1位
▽+75キロ級
田中李恵 スナッチ68Kg C&J86Kg トータル153Kg 5位
コメント
梶田大和主将(スポ4=兵庫・明石南)
――試技を振り返っていかがですか
9月くらいまでケガをしていて、その復帰をしている中で調子が上がってきて。スナッチは完璧でした、最高の試技ができたと思います。C&Jは少し失敗してしまったのですが、自己ベストが161キロだったので、2本目の162キロで自己新記録が出せたので。最後の3本目に順位を狙って166キロに挑戦して、取りたかったのですが失敗してしまい、それは悔しかったですね。
――トータル300キロで3位でしたが
300という数字はウエイトリフティング人生の最大の目標だったので、それが最後の試合で取れたというのは嬉しく思いますし、それがメダルにつながったというのも良かったと思います。
――表彰の際には涙を流す場面も見受けられました
3週間前からC&Jの3本目は勝負になると思っていて、実際にそのような場面に今回の試合で直面していた中で、3本目を取ることができなかったという悔しさで最初は涙が出てしまったのですが、結果それがなんとか3位になれた。本当になんとかなのですよね。他の選手の失敗待ちというかたちで。ですが、表彰台に立った時には嬉しさがやはりあって、涙を流してしまったという感じです。
――主将を務めた今季を振り返っていかがですか
ことしはケガ続きで、なかなか試合にも出れず、出たとしても記録が出ないという状況で。個人的には苦しい一年でした。ですが、この2、3ヶ月、自分がケガから復帰してからチームの雰囲気もすごく良くなってきて、いい流れできていると思うので、このまま目標の4位につながれば良いかなと思います。
――4年間を振り返っていかがですか
ケガとの戦いという面が大きかったので、最後の試合でベストの状態で挑むことができて、自己ベストも取れて、(目標だった)300キロも取れて、メダルも取れたというのは良いことだったなと思います。1年間主将をやってきて、いまのところ(2日目)良い試合になっていると思うので、頑張って良かったなと思います。
菅野真央(社4=福島・川俣)
――今回の結果を振り返っていかがですか
スナッチもクリーンアンドジャークも3本目で上の順位を狙うところだったので、そこを取れなかったのは悔しいです。3位という結果も本当なら2位までいけたのでそこはダメだったとは思いますが、3本目に狙ったのは両方とも自己新記録だったので悔いはないです。
――副将として心がけてきたことはありますか
特にないです(笑)ただ、主将が言いづらいことを言ったり、主将がいない時に厳しい先輩でいたりしたのかなとは思います。運営というよりはどちらかというと練習のほうに目を配ってきました。
――ワセダでの4年間を振り返っていかがですか
いろいろなことがありました。ただ、僕は高校時にはあまり強い選手ではなかったので、大学に入学して大きな舞台で入賞でき、また目標であった国際大会にも出場できて順風満帆なウエイトリフティング生活を送れたのかなと思います。
松本浩志(スポ4=兵庫・明石北)
――今回の目標は
最初で最後の試合だったので、言われた重量をしっかりと悔いのないように取ろうと思いました。
――今回の試合を振り返っていかがですか
欲を言えば、スナッチで1本失敗してしまったというところがちょっと悔しいんですけど、トータルとしてはしっかりと結果も残せたので満足しています。
――成功率が高い試合になったと思うのですが、そのあたりを振り返って
気持ちでそこは持って行ったかなと思います。
――今回は引退試合となりましたが、どのような心境でしたか
そういうこともしっかり考えながら、悔いだけは残さないように。仲間がしっかり応援もしてくれているので、その応援の力に応えてやろうと思いました。
――4年間を振り返ってみていかかでしたか
早稲田で4年間しっかりと今日までやってこれたことは自分の力だけじゃなくて環境も良かったおかげかなと。感謝の気持ちがたくさんありまして、その感謝の気持ちを今日の試合でしっかりと結果に残せたので良かったと思います。
小町史華(スポ4=石川・飯田)
――今回の目標は
肩も腰も調子が悪かったので、6本しっかいり取れるということを意識してやりました。最後落としてしまったのですが…。
――最後の失敗を除けば、全体的に充実した試技でしたが
そうですね、緊張しました。最後の大会というということで。無事に最後まで6本できて良かったなと思います。
――ワセダでの最後の試合となりましたが
まず、本当にワセダにきて良かったなと思います。あっという間でしたが、長かったような気もして。後輩にも助けられて、本当に良かったです。
――4年間を振り返って
ワセダに来ることのできるような実力ではなかったのですが、縁があって入って、本当に術らしい先輩方と後輩たちに巡り合えて良かったです。なかなか記録を出すことはできなかったのですが、充実した4年間を過ごせたので、いろいろな方に感謝をしたいです。
武田健(スポ3=宮城・石巻)
――今回の目標は
インカレなので、やれと言われた重量を上げるということだったのですが、スナッチで点が取れないことは分かっていたので130キロを狙ってやったのですが、最後失敗してしまって。そこは反省しなくてはいけないかなと思いました。記録としては、納得できるかと言われれば微妙なのですが、本当に最低限はやれたのかなと思います。
――試技を振り返っていかがですか
失敗したイメージの方が自分の中では大きくて、そこは勝負しきれなかったなと思います。
――C&Jで3本目はクリーンまでは成功していました
ベストよりも5キロ上の記録だったので、クリーンできたことは良かったかなと思うのですが、最後まで決め切りたかったかなというのは思いました。
――来季からは最上級生として引っ張る立場になると思いますが、意気込みなどがあればお願いします
先週、来年度の主将を任せていただけることが決まったので、そこも考えつつ、今回自分にプレッシャーをかけていきました。記録的に僕たちはそこまで強くない代なので、記録面では後輩たちに引っ張っていってもらうこともあるかと思うのですが、チーム全体を盛り上げていければなと思います。あとは、ことし抜ける強い4年生たちは本当に強い選手が多かった。ですが、一人一人がしっかり点を取っていけばその穴も埋めていけると思うので、そこは徹底していきたいと思います。
野本なつみ(スポ3=埼玉・草加)
――目標はありましたか
順位的に0点の予想だったので、とりあえずは点数を取れるように頑張りました。
――調子はいかがでしたか
うまく調整できたので、調子は良かった方だと思います。
――成功率は高かったですが
スナッチは自分の中でも良くて、点数も取れたのですが、C&Jは2本目の、取らなくてはならないところで取れなかったので、そこは良くなかったかなと思います。
――来季からの目標があればお願いします
記録を上げたいと思います。
生頼永人(スポ2=兵庫・明石北)
――今回の目標は
特に決めていなかったです。
――試技を振り返っていかがですか
40点から30点くらいですかね。
――その点数はどのあたりを考えてのことなのでしょうか
スナッチの大事な3本目を落としてしまったのと、あとはトータルの順位が3位になってしまったことを踏まえてですね。
――成功率は高かったと思います
成功率が高いというより、低い重量からスタートしたので、言ってしまえば当たり前だったのですが、自分としては6本取って一つでも上の順位に食い込みたかったです。
――今シーズンを振り返っていかがですか
春先は調子が悪かったのですが、7月の東日本インカレくらいから調子を上げることができて、国体でも結果を残すことができたので良かったと思います、最後のこのインカレでつまずいてしまったのがもったいなかったかなと。
――来季からは上級生となりますが
来季からはジュニアという枠を外れてシニアになるかと思うのですが、社会人の中に入っても活躍できるように頑張りたいと思います。
千葉健介(社2=岩手・水沢)
――今大会の目標を教えてください
6本取って、勝負できるというところまではいきたかったのですが、結果的に3本(が成功)だったので、練習が足りなかったのだなと思います。
――調子はいかがでしたか
悪くもなく、むしろ良かったです。練習している段階で、つめが甘かったのかなと思いました。
――C&Jの3本目で、ギリギリのところで失敗してしまいましたが
そこ(3本目でのクリーンしきれなかったところ)が練習でも言われていた弱点だったので、練習でできないことは本番でもできないなと。もっと練習しなくてはいけないなと思いました。
――来季からは上級生になりますが
今回の失敗も次につなげられるような、上を目指せるようになりたいと思います。
中山桃花(スポ2=兵庫・須磨友が丘)
――今日は1本目以外棄権されていましたが
もともと怪我を負っていて、ことしは特に腰痛がひどくて。肋骨の疲労骨折の前兆もあり、ちょっと難しかったです。
――今回はどのようなスタンスで臨んだのでしょうか
補欠もいない状況だったので、最低重量で(スナッチとC&Jをそれぞれ)一本ずつ取ろうというかたちでした。本当に最低限の目標はこなせたと思います。
――今回は悔しい結果に終わってしまいましたが、来季からはどのように競技と向き合っていきますか
ケガ自体は治るものではないので、痛みをまず引かせるようにして、それから、という感じです。
森川芳樹(スポ2=兵庫・明石南)
――今大会の目標はありましたか
4番くらいだったのですが、結果としてはふがいないものになってしまったな、という感じです。
――実際に振り返ってみていかがですか
記録自体は伸びてきている中で、自分のベストに近い記録で勝負ができれば順位も狙えた試合だったので、悔しい感じで終わってしまいました。
――来季からは上級生になりますが
記録の面や練習の取り組み方などでも先輩としての姿を見せていけたらと考えています。
知念勇斗(スポ1=沖縄・豊見城)
――今回はどのような意気込みで臨みましたか
今回の大会は(ワセダの選手としては)一番初めに出場するということで、得点を取ろうと思い、本当は3位狙いで試合を進めていました。運良く2位に入れて、チームにも貢献できたので良かったと思います。
――今季最後の試合となりましたが
大きな大会でしたし、4年生が最後ということもあったので、トップバッターとして勢いをもたらすという意味でも1本ずつ大切にやっていました。
――C&Jの3本目ではかなり攻めました
2本目の失敗はアクシデントで失敗してしまったのですが、セコンドで先輩方が「行ってこい」と言ってくださって、自信を持って131キロに挑戦しました。成功しましたし、自己新記録でもあるので、とても嬉しいです。
――C&Jの3本目では、プレッシャーはありましたか
C&Jのベストよりも3キロも上なので、失敗したらどうしようというプレッシャーはありました。ですが、仲間の応援が力になって、クリーンの時に踏ん張って立つことができたのでよかったです。
――来季からの目標を教えてください
スナッチはベストより下の重量で挑んだのですが、今回の調子だとまだまだいけそうなので、次の大会では今回の記録より上を取れるように頑張りたいです。