技術と思いをつなぐ
新型コロナウイルスが猛威を振るった2020年。ワンダーフォーゲル部も予定していた活動の中止、変更を余儀なくされた。他の体育各部と異なりほとんど試合がないワンダーフォーゲル部にとって、2年間かけて計画した夏合宿の中止は大きな打撃である。その中でも主将として部を引っ張り続けた熊倉海良(教=北海道・札幌光星)に話を伺った。
「大学では新しいことをしてみたい」という思いからワンダーフォーゲル部に興味を持った。アウトドアがもともと好きだったことと、部の雰囲気も気に入ってすぐに入部を決めた。1年次の夏合宿では大きな自然に圧倒され、今まで味わったことのないような充実感を得る。熊倉はこれをきっかけにワンダーフォーゲルにのめり込んでいく。登山、ボート、自転車と幅広くアウトドアの魅力が味わえることが大好きだった。
1年次の夏合宿(左)
ワンダーフォーゲルにおいて相手は自然であり、事故が起こる可能性もある。活動のリスクを考えながらも、自分たちで目標を見つけていかなければならない。なぜその目標がいいかを深掘りし、具体的に何をしていくかを考え、全員でその目標に向かっていく。やりたい活動もモチベーションも違う部員をまとめる苦悩もあった。その中で熊倉の代は2020年夏の北欧合宿を最終目標としていた。部員全員で北欧へ行き、登山隊と自転車隊に分かれて北欧の最北端を目指すというものである。
北欧合宿の計画をしている部員たち
2年間かけて計画してきた北欧合宿は、新型コロナウイルスの影響で無下にも中止となった。目の前が真っ暗になったように感じたと振り返る。しかしすぐに切り替えて、後輩へ技術や経験をつなげることにフォーカスすることを決める。合宿は中止でも、今できることはないか模索した。活動が制限される中、zoomをつないで全員でトレーニングやミーティングを行った。ワンダーフォーゲル部は他の体育各部と異なり、ほとんどの部員が大学から競技を始める。そのため技術や経験をしっかり後輩につなげないと、今後の活動が成り立たなくなってしまうという。加えて、後輩には自分たちが計画していた北欧合宿という目標に全員でついてきてくれた恩もある。今まで何度も後輩の頑張っている姿に励まされてきた。それを思うと自分たちのやりたいことを犠牲にしてでも、「次の世代につなげる」ことにフォーカスしたいと思った。4年間のワンダーフォーゲルライフで得た技術や経験を後輩に教えることに尽力した。
ワンダーフォーゲルを通して得たものを尋ねると、「仲間」だと答えてくれた。自然がつないでくれた個性豊かな仲間。お互いに尊敬しあえる、家族のような存在だという。部員を大切に思う熊倉の気持ちは、今後のワンダーフォーゲル部にも継がれていくだろう。
(記事 佐藤桃子、写真 ワンダーフォーゲル部提供)