8月6日から28日にかけてワンダーフォーゲル部における前期の集大成となる夏合宿が行われた。ワンダーフォーゲル部の今年のテーマである「NIGATA AROUND」に沿って新潟県境の魅力を探求し、自然と真剣に向き合うことを目的とする。最高学年である中嶋恒太(国教4=長崎・青雲)と小林麻衣子(教4=神奈川・湘南)を中心として去年の9月から夏合宿についての考案を始め、緻密な計画制作を経てこの夏に至った。部員は県境なき沢隊、上信薮川隊、ロングトレイル隊の3つの班のうち自分の得意とする班に属し、それぞれの活動を行った。
県境なき沢隊と上信薮川隊は班行動の日程を2ラウンドに分けて活動を行う。県境なき沢隊は1ラウンド目に丸山岳を目指した。丸山岳はマイナー12名山と言われるだけあり山頂からの景色が良く感動を覚えたという。2ラウンド目は奥只見湖から奥利根湖を沢登りと藪漕ぎを通して繋ぐ活動に挑んだが、30分で終わるはずの行程に3時間かかってしまい焦りを覚える。そんな場面もあった中、自分の背丈を超す草をかき分けて辺り一面何もないスズヶ峰湿原に着いた際は「この景色を見たかった」(中嶋)とかねてからの願いが叶い、感動はひとしおだった。上信藪川隊は藪漕ぎという笹藪や灌木の中を歩き通す活動を経たのちに魚野川の源流に出て川下りを始める予定だった。しかし行きづらい道を行くため予定どおりにいかないことが多く、持っていた水が行程中に足りなくなることが判明し、5泊のところを2泊で引き上げることを余儀なくさせられてしまう。「行程を全うしたかった」(小林)と悔しさを表したが気持ちを切りかえて2ラウンド目に臨んだ。2ラウンド目は信濃川を通って日本海までの110キロメートルの長さを漕ぎ切り、山と川と海を繋ぐことに成功した。ロングトレイル隊は13日間もの間ひたすら歩き通す。視界が悪い山の中を歩き続け、山頂部が広く視界の良い苗場山の頂上に到着したときは達成感にあふれた。
真剣な表情で行程を説明する中嶋主将
最終行程は部員全員で妙高山に登った。これは小林が発案したもので毎年計画しているものではない。隊に分かれたメンバーをワンダーフォーゲル部員として一体にさせたいとの思いから生まれた行程だった。「他の隊のメンバーに会えたときは嬉しかった」(小林)山頂で校歌を歌ったこの瞬間、部員が一つになり、全員で夏合宿を終えた達成感を噛みしめた。
笑顔を交えて合宿を振り返る小林
「この部に入っていなかったら絶対行けなかったところに(先輩に)連れてきてもらって、それと同じことを(後輩に)経験させてやりたい」(中嶋)という思いで臨んだ夏合宿。4年生は見てきた景色を振り返るとともに後輩の成長を感じながら引退を迎えた。先輩に連れてきてもらい、見せてもらった景色を今度は自分が後輩に見せる。こうしてワセダのワンダーフォーゲル部の歴史は紡がれていく。新たな世代へ思いは引き継がれた。
まだ見ぬ景色を求めて道なき道を行く県境なき沢隊
(記事 茂呂紗英香、写真 三田侑実)
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コメント
中嶋恒太主将(国教4=長崎・青雲)
――準備の段階で一番大変だったことは
夏合宿の計画に向けてのステップアップがパーティワンダリングなのですが、自分たちでこのパーティワンダリングが確実にステップアップになっているかというのが結構判断的に難しかったです。僕らも何回かやってるんですけどそこまでプロじゃないからレベル感がいまいち分からないところがあって。実際に計画(通りに)行ってみてあんまりこれじゃためにならなかったとかもあって(笑)。それでこれだったらもう少しレベル高いところにするかとかも話して…パーティワンダリングのレベル設定が難しかったですね。
――夏合宿に向けて意識していたことは何ですか
夏合宿の計画ってそれぞれのリーダーの思い入れが強いものだからできれば縮小とかさせたくないんですよ。最初にこれをやると言って実現するためには、パーティワンダリング一個ができなくなったとかでも縮小してしまう可能性があるので、縮小しないといけなくなるようなシチュエーションを避けるためにできることはやろうというのはどのリーダーも意識してやっていると思います。
――NIGATA AROUNDというテーマはどのようにして決まったのですか。またなぜ新潟なのでしょうか
最初は僕と小林がどういう一年にしたいかというところから始まり、まずは一年間通して全員が全力を出して一人ひとりがやるべき役割を果たして、みんな協力して突破した先にある団結感とか達成感を得たいというのが根本にありました。それをやるためにはそこそこレベル高いことをやらないと団結感とかって生まれないだろうと考え、環境的に新潟というのはすごい自然が厳しいところが多くて、雪があるときは豪雪地帯かなり雪の量が多くてそれだけでもレベル高い場所になるし、夏になると登山道がほとんどない道(バリエーションルート)もとらないと活動できないというエリアばかりなので、そういう意味でかなりチャレンジのし甲斐があるエリアだ、ということで新潟県を一年かけて探求しようということになりました。
――4年生にとって最後の合宿でしたがどのような気持ちで臨みましたか
個人的にはずっとこの部に入っていなかったら絶対行けなかったところに(先輩に)連れてきてもらって、それと同じことを(後輩に)経験させてやりたいという思いはあったので最後の方考えていたのはこのルートを行きさえすれば何かしら思うところはあるはずだというのは計画を作っている段階からあったので実際それを絶対に最後まで行く気持ちくらいしかなかった気がします。
――合宿中に大変だったことは何ですか
体力的にはそんなになかったのですが、情報が少なかったところに行ったのでその場でいろいろ判断することがあり、それに結構時間を取られて予定通り進めなかったというのはありました。
――主将として意識したことはありますか
できたと言い切れる自信はないのですが、夏合宿は三つの隊に分かれていくので部として一体感を出すのは難しくて別々の場所で活動していると自分たちのことしか分からないから他の隊のこととか気にしなくなるんですよ。そうなると隊ごとに仲良くなっちゃって三つの隊でやった感じになってしまうので、それをみんなで頑張ったねみたいな雰囲気を出すのがどうしても難しくて。それはもう本当にどうしたらいいのか悩み続けた一年間でしたね。具体的に何をやったかというと他の隊の話を聞くくらいしかできなかったのですが、部として一体感を出すことは主将として意識はしていました。
――妙高山からの景色はどう感じましたか
景色ではないのですが今回の夏合宿ではそれぞれの隊に所属して参加できなかったメンバーもいたんですよ。一人うつ病で参加できていなかったメンバーがいて、その人はこの一年間ほとんど活動出来ていなかったのですが、最後の山行は短かったのでその人も参加できて。山の上でほかの隊のメンバーに会えるのもそうですし、個人的にはその人が山に登れたときにみんなで立ち会えたのが嬉しかったですね。ずっと来ると言ってて来られなかった人なので半ば諦めていたのですが本当に来たんだ、と思ってすごく感動しました。
――合宿を終えた感想を教えて下さい
ずっと行きたかったところに行けたので純粋に楽しかったし、結構一緒にいたメンバーが成長を感じられて次の代への期待というのが結構大きいです。これだけスムーズに動いてくれると思ってなかったし、思った以上のことをやってくれたので次は絶対良い代になるだろうなという気はしています。楽しみだなというのも感想の一つです。
小林麻衣子(教4=神奈川・湘南)
――準備の段階で一番大変だったことは
日程調整(笑)。6月から7月にかけてパーティワンダリングをするのですが7月末にテストがあり、テストに向けて勉強したいという人もいてワンダリングができないのでワンダリングをするためにメンバーの日程調整が結構大変でした。そこでちゃんと成果を出さないと合宿の計画自体も変わってくるので、人を集めてワンダリングの中で成果を出すところが難しかったです。
――夏合宿に向けて意識していたことは何ですか
夏合宿を評価する仕方は他の人の尺度で見れないので自分たちでその合宿をいかに満足できるものに作り上げられたかところなのかなと思って、その状態に持っていくためにまずは安全に行って帰ってこられることなのかなと私は思っています。計画を作って実力に見合ってないと場合によっては事故に直結することがあり、自分たちの実力に対して本当に見合っているかを常に確認し続けて、安全性を担保していかないと部員の命の責任を取っていることにならないので私個人としては安全性ですかね。
――NIGATA AROUNDというテーマはどのようにして決まったのですか。またなぜ新潟なのでしょうか
NIGATA AROUNDってAROUNDがついているのは新潟県の真ん中には山とかがないので新潟の県境にある山域を1年間、7個ある合宿で訪れていこうというのが趣旨です。その県境に集まっている山域が今の私たちにとって適切なレベルで目指すべき目標なのでNIGATA AROUNDとしました。
――4年生にとって最後の合宿でしたがどのような気持ちで臨みましたか
最後の活動というのもありますし、私自身行けてない合宿もあったのでその中でどうしても最後まで自分の企画した計画を通したいという思いと、結局夏合宿を企画してそれを行くのも自分たちなので、自分たちがいかにその計画に対して満足するかという部分が重要だと思っていまして、そこで後輩、特に新人には行って良かったと思えるような合宿づくりをしたいなと思っていました。
――合宿中大変だったことは何ですか
私たちの隊は合宿初日がとても暑く、30度を超える中で一日の行動で1200メートル上がらなきゃいけなかったんですね。結構1200メートルアップって大変なんですけどその日が一番荷物も多く、水も多かったので熱中症気味のメンバーが出てしまったので暑さと重さと1200メートルの急登とで体力的にという面ではそこが一番きつかったと思います。
――妙高山からの景色はどのように感じましたか
最後にみんなで同じ山に登ろうという企画は私から言ったもので、毎年それをやっているわけではなくて三隊バラバラで行動している中で一体感を出すためにはどうしたらいいかという話になったときに私がやりたいと言い出して他の隊のメンバーに会ったときはすごく嬉しかったですし、合宿の最後の山では校歌とかを歌うんですけど全員でやれたのは良かったですね。
――合宿を終えた感想を教えてください
自分が引退するとなると寂しいというのが一つと、私の隊は予定していたルートを行けなかったので後輩に良い経験をさせてあげたいというのもそうですし、自分も行きたかったというこの二つの気持ち的に悔しいなと思うのですが、自分たちが出来ることをして結果こうなったんだなと思うとその中でできる範囲のことをできたとおもうので今回の反省を生かして良い合宿にしていって欲しいなというのが心残りではあります。