早大のバレーを支えるもの。それは最後まで粘って粘って粘り抜く『粘り』のバレーだ。秋季関東大学リーグ戦では守備からリズムを作り、見事に2部リーグ優勝を果たす。いよいよ直前に迫った全日本大学選手権(全カレ)。トーナメント戦を勝ち抜くにあたり絶対に揺らいではならない牙城を支える河治えみり(社2=北海道・旭川実業)、井上裕利恵(スポ2=岡山・就実)、植松知里(文構2=香川・高松第一)、梨本未央(社2=東京・駒場)の2年生カルテットに今回話を伺った。
※この取材は11月17日に行われたものです。
「一年の進み方が分かったから二年の方が充実してた」
レシーブだけでなく言葉でもハードなアタックを拾っているという河治
――それでは右隣の方の紹介をお願いします
梨本 ちぃ(植松)は基本テキトーですけど、やる時はやります(笑)自分ができないところを自主練でしっかりカバーしてますね。そういうところはすごく真面目です。
植松 えみりは誰を前にしてもブレないですね。物怖じしない感じで、試合前は緊張してるけどそれを見せない。えみりって感じがあって安定感があります。
河治 裕利恵はバレーの頭がマジでいいです。言われてみてそこ気付くんだってことが何回もあってさすが就実だなって思います。(笑)
井上 未央は普段は自分からいじられに行っているいじられキャラなんですけど、誰よりも真面目なんでアップとかトレーニングでみんなが抜いちゃうところを一人全力でやっています。
――この四人のつながりはあったりしますか
梨本 大学入学前にバレー部に入ることを決めてた四人だよね。
河治 なんか気持ち悪いね(笑)
――梨本選手以外は地方出身ですが、東京に来て一年経っていかがですか
井上 方言がなくなったよね。混ざって何言ってるかわからなくなった(笑)
河治 裕利恵とちぃは何言ってるか最初全然わからなかった。
梨本 〜じゃが。とか言ってたもんね(笑)
植松 裕利恵とは出身が香川と岡山で近くて似てる分通じるんですよね。
――東京のオススメのスポットとかできましたか
井上 地元の子が東京案内してとか言ってくるけどわかんない(笑)
河治 よく行くとしても新宿になるよね。
井上 渋谷まで行くと人が多すぎて嫌になっちゃう。
――2年生全体としても仲は良さそうに見えますが、実際にはどうですか
井上 一番いいんじゃない?
梨本 めっちゃ仲良い。
河治 オフをみんなで合わせられるのがすごいよね。
梨本 この前の日曜日の夜にえみりとちぃと唯(吉澤、スポ2=東京・三田)の誕生日会をするために集まったんですよ。去年は裕利恵だけしか祝えなかったんですけど、今年は全員を祝うために一人ずつ担当をつけて毎回祝ってます(笑)
植松 今回のはめちゃめちゃ凝ってったんですよね。
河治 あれは感動したよね。
井上 えみりは泣くんですよ(笑)そういう時一番喜んでくれるのえみりなんですよ(笑)
梨本 ちぃは「わぁ、すげえ」で終わるんですけど(笑)
河治 マジで感動した(笑)
植松 夏休みもオフは絶対どっかで同期会しようとはなりますね。
日を経るごとに仲良くなっているという二年生
――学年を越えての交流はありますか
梨本 バーベキューしたよね。
井上 部員全員でしたやつね。
梨本 個人的には美久(橋本、社1=福島・郡山女大附)と友里(斎藤、社1=千葉・敬愛学園)でコントを観に行って来ました(笑)
河治 私は友里とライブ行って来ました(笑)
植松 まだ一年と二年全員でどっか行くっていうのはできてないですね。
井上 予定合わせるのが難しいもんね。
――二年に学年が上がって意識の変化はありますか
河治 一年の進み方が分かったから二年の方が充実してた気がする。
井上 大きく変化はないですね。後輩が三人しかいない分、一年と二年まとめて下級生として見られるんですよね(笑)
梨本 一年生ができないのは私たちの責任だけど、結局仕事をするのも私たちって場面はよくありますね(笑)
――一年の進み方がわかった分、入れ替え戦といった重要な試合での心境の変化はありましたか
井上 去年は入れ替え戦がどういうものかあまり分からなかったから緊張とかあまりなかったんですけど、今年の春からはそれが分かったんでどうにかして入れ替え戦に行きたくないっていう思いがありましたね。吐きそうになるんですよ(笑)
河治 そわそわしてめっちゃ私喋ってたよね(笑)
――バレーから離れたい時に何かしてることありますか
河治 私バレーから離れたい時は家にいれない…。一人でいたらしんどくない?
植松 わかる。だから夜中に集合するんだよね(笑)
河治 住んでるところ近いからね(笑)
――好きなアイドルとかいますか
植松 全然いなくない?
河治 私ワンオク(ONE OK ROCK)が好きです。
井上 でも友里ほど好きな人いないよね(笑)
河治 たまたま好きなバンドのライブの三日前にそのバンドめっちゃいいって言ってたら、友里が「ライブありますよ!」って言ってきて、それで行ったんですよね(笑)
――他にハマっていることはありますか
梨本 私は芸人さんが好きです。吉本が好きで、ルミネとかも行くし、バラエティ番組も撮り溜めてみたりしてます(笑)特に流れ星が好きなんですよね。
河治 突然ネタやるもんね(笑)
梨本 言いたくなっちゃうんですよね(笑)みんなは無視してくる中、えみりはフォローしてくれるんですよ(笑)
河治 確かに比較的反応してるね(笑)
井上 なんかやばすぎて声帯が一個奥に引っ込んじゃう(笑)
河治 裕利恵は鳥肌たってるもんね(笑)
梨本 ちぃはすごい顔してみてくるよね。
植松 冷静に「は?」って感じで(笑)それでもやってるメンタルすごいよね(笑)
梨本 今までの人生メンタルだったから(笑)
――チーム内に推しの選手とかいますか
梨本 唯ちゃんでしょ(笑)あの人クセしかないんですよ(笑)
植松 素でみんなが笑える人だよね。
梨本 唯ちゃんいると楽しくなるんですよ。
植松 未央と果葉(村山、教2=東京・国際)がイジりすぎて開花させちゃったんですよね(笑)
井上 何も言わなかったら可愛い女の子なんですけどね(笑)
河治 ご飯食べ終わるのもめちゃめちゃ早いよね。あれは飲んでるよ(笑)
植松 心の中でいつも自分と戦ってますよね(笑)
――理想の選手はいますか
梨本 結花さん(富澤、スポ3=東京・文京学院大女)カッコよくない?
植松 それはカッコいい。
梨本 試合でモードに入った時の結花さんは本当にカッコいいし、絶対にレシーブ落とさないからね。本当に好き。
――自分のプレーができたであったり、調子が良かったなって思う試合はありますか
河治 スパイカーの方があるんじゃない?
井上 よくなかった試合の方が印象に残っちゃう。
河治 未央は春の日大戦じゃない?
植松 そうじゃん!ピンチサーバーで出て決めたし、レシーブも上げたじゃん。
梨本 えー、そうかな。
井上 もし、第1セットのピンチサーバーで外して次のセットも使われたらめっちゃ緊張しない?
梨本 そっちの方が大丈夫。逆に第1セットの方が嫌だもん。
一同 すごーい(拍手)
植松 1本目のサーブ外すと次からのサーブ怖くない?
梨本 外したとしてもまだ使ってもらえるんだから頑張んなきゃなって思うんですよね。
井上 じゃあ、2本目も外したらどう?
梨本 それはもう死亡だよね(笑)
一同 (笑)
「『粘り』で勝負しないといけない」
ほがらかでかつ鋭い指摘をする井上
――春リーグ(春季関東大学リーグ戦)を振り返ってどうですか
井上 2ヶ月間負け続けてバレーが嫌になったね。
植松 嫌いになりすぎて裕利恵と二人で用もないのに実家に帰りました(笑)
河治 試合内容も良くなかったもんね。
――そこからの秋リーグ(秋季関東大学リーグ戦)は2部リーグ優勝を果たしました。振り返ってみてどうですか
河治 負けちゃダメ感が強かった。
植松 毎週しっかり緊張してたからなぁ。
――1部と2部の違いはどのあたりですか
井上 全てじゃない?
植松 プロみたいだよね。
井上 2部だとなんとかブロックに当たるんですけど、1部だとブロック関係なく上から打ってくるんで。
河治 どこ守るとか関係なくなっちゃうよね。
梨本 試合前の雰囲気も全然違いますね。応援の人数も違うし、覇気みたいなものが試合前から違いますね。
――試合中の雰囲気でも違いはありますか
井上 1部は安定してるんですけど、2部はいけると思ったら一気にくる感じですね。逆につぶれっちゃったらもうダメみたいな感じはありましたね。
植松 応援も2部は点を決めたらキャーって感じだけど、1部は決めて当たり前って感じだしね。
――ワセダには応援部の応援もついていますがどうですか
井上 元気でます!
植松 私も好き!いつも試合前のスパイクの時くらいに校歌が始まって元気がでます。
梨本 いない時寂しいよね。
井上 1部だとずっと負けてて「紺碧の空」が歌えなかったんですけど、2部で勝った時にようやく歌えて嬉しかったです。
――チームとして秋に守備面が成長したように見えましたが、春からの心境の変化などはあったのでしょうか
河治 何だろうな。2部だとなんとかなるんですよね。2部だとスパイカーと戦ってる感覚があるんですけど、1部だったらブロックの上からスパイクがきたりするからどこ守っていいか分からなくなるんですよね。2部だったらある程度コースが絞れるし、ブロックもついていけるしってところで違いがあるのかな。
井上 2部の方がスパイクが長いよね。
植松 終盤は下がるの早くとか意識しましたね。
井上 ポジショニングも変えたりして対策していきました。
――ワセダ持ち味の『粘り』バレーについてどういう意識を持っていますか
植松 落とさないって感じ?
井上 背がない分『粘り』で勝負しないといけないなって思ってます。
植松 でも、1部で試合をすると背が高くて拾うんで、もっと拾わないと『粘り』のバレーって言えないなって思いました。
河治 2部だと通用はするんですけどね。
――守備の際意識していることはありますか
植松 私たちはレシーブに重きを置いているアタッカーだからやらなきゃいけないっていう意識はあります。
井上 スパイクが決まらないより、その試合のレセプションの調子が悪いと乗っていけないっていうかダメージがありますね。その分レシーブを頑張ろうと思ってプレーしています。
――今シーズンのご自身のプレーを振り返っていかがですか
井上 春リーグよりはスパイクが決まったんでそこは素直に嬉しいんですけど、レシーブとかつなぎの精度はもっと上げていかないといけないなって思います。
河治 チームが勝ったからっていう部分はあるかもしれないんですけど、キャッチからこういうコンビ組みたいからこういうボール欲しいみたいにボールを上げるだけじゃなくて、精度にこだわるっていう点では春より良かったです。でも、相手の攻撃に対応できずに第1セット落とすみたいな試合があったので、もっと対応を早くしないといけないなって思いました。
井上 えみりは二段トスが春はアンダーが多かったんですけど、オーバーの精度の高いトスがくるようになりました。
河治 そういうこともあったね(笑)
梨本 レセプションめっちゃ良くなったくない?
河治 本当?ありがとう(笑)
梨本 私は三人みたいに最初からずっと試合に出ているわけじゃないので、練習中のAB戦でレシーブをする人がいないって時にB側のレシーブを引っ張らないといけないなって思ってから、春よりはレシーブが上がるようになったなって思います。
井上 瞬発力がすごいよね。
植松 それ取るんだみたいな。
――植松選手はポジションがセッターからレフトに変わっての秋でしたがいかがですか
植松 秋リーグ開幕一週間前に突然アタッカーになったこともあって、最初の方は気負わずできました。でも勝ってるセットは自分も3点くらい決めてるけど、負けてる時は自分が1点しか取れてなかったりするっていうデータが出てたから、コンスタントに3点は決められるようにならないとなって考えるようになりました。
――アタッカーとして試合を通して成長したなって感じるところはありますか
植松 昌美さん(森、文構4=神奈川・大和)が打てる範囲が広がったっていうデータで出してくださっていて、インナーだったりブロックアウトだったりができるようになってきているよっていうことを言ってくださったのは嬉しかったです。
「ワセダバレーを体現できるように頑張ります!」(梨本)
この日も笑顔が炸裂したムードメイカー梨本
――4年生についてどうですか
井上 すごいバランスが取れてるよね。
河治 立場が全員違うのに言いたいこと言えてるもんね。
井上 チーム全体を見てくれているイメージがあります。
植松 ちゃんと声かけてくれるし、落ち込んでる時なんかには試合中でもタイムの度に宮さん(宮田綾乃、政経4=東京・早実)とかめっちゃ声かけてくれるんですよ。
梨本 四人ともすごく真面目ですね。
井上 監督に怒られてみんながシュンってなっちゃってる時も佳央理さん(森、スポ4=群馬・高崎女)だけはポジティブで変わらないんで、プレーの波がなくてやりやすいです。
梨本 怒られても「分かんねえや」って言って、笑い飛ばしてくれるんでやりやすい環境を作ってくれてるなって思います。
――全日本大学選手権(全カレ)のチームの目標と個人の目標をお願いします
井上 チームとしての目標は目の前の試合を一つずつ勝っていって、まずは大きな山が日体大なんでそこを乗り越えて日本一になれたらなって思います。そこを乗り越えないとどうにもならないので。
梨本 日体大が1部の二位なんで勝ったら、その先も見えてくるって感じですよね。
井上 スパイクは思い切り打って、秋リーグの良かった試合みたいに1セットで3本くらいは決めて、レシーブは頑張らないといけないなって思います。崩れたらその時点で負けてしまうので。プラスで精度にこだわっていらないミスをしないように頑張りたいなって思います。
河治 スパイカーはレシーブがどうしても負担になってくる分、私はレシーブしかないので取れるのは私が取れるように範囲を広げたいなって思います。
植松 秋リーグでは二段トスをつなぎのスパイクでしか打てなかったところをリレーと同様に思いっきり打つところとレシーブも2部とは違うボールが来ると思うので精度にこだわってやっていきたいです。
梨本 みんなが試合にいい雰囲気で入れるような声出しを私が率先してやっていきたいなって思います。
――全カレに向けて意気込みをお願いします
河治 このチームの集大成なんで目の前の試合を目の前の1点を全員で取れるように頑張りたいと思います。
井上 自分にできることを精一杯して最後は佳央理さんに打ってもらえるようにレシーブをしっかりつなげたいと思います。
植松 あんまり考えすぎずに思い切ってプレーをして、このメンバーでできるのは最後なので楽しむっていう気持ちを忘れずに頑張りたいです。
梨本 一年間の集大成としてワセダバレーを体現できるように頑張ります!
――ありがとうございました!
(取材・編集 遠藤伶 斉藤俊幸)
自分たちの役割を一文字で表現してくれた四人
◆井上裕利恵(いのうえ・ゆりえ)(※写真左)
1998年(平10)4月13日生まれ。身長160センチ。岡山・就実高出身。スポーツ科学部2年。ライト。バレー脳の発達が顕著だと言われる井上選手。しかし、食べ物のペース分配はあまりできず、回転寿司に行くと一番の勢いで皿をかっさらうものの、颯爽とギブアップするそうです。また、枕が違うとよく寝違えてしまうほど首が弱いらしいです。全カレ前日に安眠枕で寝ることさえできれば、決定率急上昇中のスパイクがコートで炸裂(さくれつ)するでしょう!
◆河治えみり(かわじ・えみり)(※写真中央左)
1998年(平10)10月22日生まれ。身長159センチ。北海道・旭川実業出身。社会科学部2年。リベロ。秋季関東大学リーグ戦ではベストリベロ賞に輝いた河治選手。他の選手が拾えないという梨本選手のギャグを日々Aパスで返していくことが、レシーブの上達にもつながっているようです。最近は髪の成長がすさまじいそうなので、このまま髪と共にバレー技術もすさまじい成長を遂げるに違いありません!
◆梨本未央(なしもと・みお)(※写真中央右)
1998年(平10)12月1日生まれ。身長157センチ。東京・駒場高出身。社会科学部2年。レシーバー。チーム内では自らいじられにいくといる稀なポジションを確立している梨本選手。遊びに出費を惜しまない積極果敢な精神でB’zのモノマネを習得。しかし、練習後によく体育館で歌う曲は大塚愛の「さくらんぼ」だそうです。全カレでも『笑顔咲ク』梨本選手のプレーに期待です!
◆植松知里(うえまつ・ちさと)(※写真右)
1998年(平10)10月4日生まれ。身長164センチ。香川・高松第一高出身。文化構想学部2年。レフト。秋からはポジションが変わったものの見事な対応力を見せた植松選手。こだわりが強い一面もあり、いつも同じものしか食べないそうです。食べるものとは反比例し打てる幅が広がっているというスパイクからは目が離せません!