無念の最終章 目指すべきバレーはすぐそこに

女子バレーボール

 気づけばすでに5月半ば。野外に目を移せば、新緑の葉を実らせる木々たちが我先にと競うようにその枝を伸ばしている。早大も悲願の初勝利へ向け必死にその手を伸ばし続けてきた。4月初旬に開幕し、日々成長をし続けてきた春季関東大学リーグ戦(春季リーグ戦)もこの日大戦で最終章を迎える。早大はこれまでの試合で得た成長を見せるかのごとく、自分たちの目指す粘りのバレーが真価を発揮し、1セット目を奪う。その流れに乗っていきたい早大。しかし、この春季リーグ戦を通しての課題だったサーブミスが要所で目立ち、接戦をものにできない。乗ってきた時に出たミスは痛く、その後のセットを落としセットカウント1−3(25−18、22−25、23−25、21−25)で最終戦を終えた。

 立ち上がりに不安を抱える早大。しかし、この日は違った。富澤結花(スポ3=東京・文京学院大女)のフェイントで先制点を奪うと早大ペースで試合は進む。飯田友美(商3=長野・諏訪清陵)を中心とした守りからリズムを作り、森佳央理(スポ4=群馬・高崎女)、富澤のダブルエースで決める理想の展開。特に目を見張ったのが、先週対策をしてきたオープン攻撃への対応だ。前日の順大との試合では、ボールが上がる時、上がらない時とがはっきりしていたが、この試合では選手それぞれが高い集中力を見せる。ブロックでボールが弾かれる。会場の誰もが日大の得点を想定し、そのボールの行方を追う。その時、ボールの落下点には早大の選手の手が伸び、ボールがつながる。その懸命な粘りが日大のミスを誘発し、流れを一気に引き寄せる。早大バレーの真骨頂がそこにはあった。中盤、日大の破壊力溢れるスパイクに連続得点を奪われるも、この春季リーグ戦でピンチサーバーとして大車輪の活躍を見せる梨本未央(社2=東京・駒場)が連続でサービスエースを奪うなど、流れを渡さない。そして、終盤には斎藤友里(社1=千葉・敬愛学園)が一枚ブロックを決めるなど、勢いはさらに加速し、25−18で約1ヶ月ぶりとなるセット奪取に成功した。

梨本のサーブが流れを変えた

 2セット目に入っても、この流れが切れることはない。このセットも飯田、井上裕利恵(スポ2=岡山・就実)を中心に安定したレセプションから攻撃へと移る。攻撃のバリエーションが増えたことも春季リーグ戦で得た収穫の一つだろう。植松知里(文構2=香川・高松第一)の速さも加わったトスをあらゆる位置から森が叩き込む。一方の日大も新人賞を獲得したブイサンランドゥジェシカ(1年)が徐々に調子を上げ、一進一退の攻防が続く。しかし終盤、着実にスパイクを決められてしまいこのセットを奪われる。試合が進むごとにベンチ、そして応援団の大きくなる声援を受け、なんとか奪い返したい第3セット。このセットも早大は粘りのバレーを展開する。しかし、チームを牽引(けんいん)してきた植松がプレー中に眼を負傷。「絶対勝ちたかった」(植松)その言葉通り、早期のコート復帰を遂げるも、なかなかこれまでと同じ流れで試合を進められれない。日大の連続得点が目立つようになる。日大に先にセットポイントを奪われた後、早大も森が連続で得点を決めるなど健闘するもあと一歩及ばず。追い詰められた第4セット。なんとかしなければならない。その気持ちが選手たちを空回りさせてしまう。森のブロード、さらには吉内文(スポ2=山口)のスパイクも決まり始めるなど勝利の必要条件はそろってはいたが、連続得点を奪えない。なかなか点差が縮まらず、選手たちの表情に焦りが見え始める。それが要所でのサーブミスやちょっとした連携ミスにつながる。結果的にミスで自らの首を締めることとなり、コート跳ね上がるボールとともに春季リーグ戦終了を告げるホイッスルが鳴り響いた。

このリーグ戦を通して目覚ましい成長を遂げた斎藤

 0勝11敗。春季リーグ戦の結果表には昨秋のリーグ戦と同じ数字が並ぶ。だが、間違いなくこの強豪ひしめく天下の1部リーグでどの大学にも負けないものが早大にはある。それはどんな展開であろうと必ず得点を奪えばコートに広がる笑顔だ。「応援していただけるようなチームになっていきたい」と馬場監督(平8人卒=京都・洛南)が述べるように、コートにはいつもあの笑顔があり、あの笑顔が見たいからこそ人は会場へと足を運ぶ。チームとして進むべき道は絶対に間違っていない。春季リーグ戦で早大が経験した困難は、紛れもなく早大をより強いチームへと成長させている。「きょうできたバレーが一つこのチームが目指す姿」(馬場監督)であることがわかり、それがプレーに表れてきている以上、もう勝利の光は差し込んでいる。次週に行われる入れ替え戦では、果たして選手の笑顔がその光に照らされるのだろうか。光差す方向だけを見つめ、選手は歩みを止めない。

(記事 遠藤伶 写真 斉藤俊幸、村上萌々子  )

セットカウント
早大 25-18
22-25
23-25
21-25

日大
スタメン
レフト 森佳央理(スポ4=群馬・高崎女)
レフト 富澤結花(スポ3=東京・文京学院大女)
センター 吉内文(スポ2=山口)
センター 斎藤友里(スポ1=千葉・敬愛学園)
ライト 井上裕利恵(スポ2=岡山・就実)
セッター 植松知里(文構2=香川・高松第一)
リベロ 河治えみり(社2=北海道・旭川実業)
コメント

馬場泰光監督(平8人卒=京都・洛南)

――きょうの試合の振り返っていただけますか

流れ的には勝てる試合だったんですけど、私の方でうまい采配ができなかったなと思っています。勝たせてやりたかったなと思います。

――先週練習してきたオープンへの対応が光り、ディグでいいプレーも見られたと思います

そこは練習してきたことを選手たちが出してくれたと思います。

――一方、終盤のサーブミスが痛い展開でした

そうですね、これはきょうだけじゃなくてリーグ戦を通しての課題でそこは克服することができなかったですね。

――特にディフェンス面で個々の選手の成長も見られたリーグ戦だったと思います。リーグ戦を振り返っていただけますか

春は新チームになってフレッシュになりますし、ましてや去年のチームから三人主力が抜けている中で、そういうスタートを振り返りますと、よく日々成長してくれたなと思います。一方でさっきのサーブミスの話もありましたけど、試合の流れの中で、今何をしなければいけないのか、何を犯しちゃいけないのかを判断するところがちょっと甘かったかなと思いますので、そこは夏に向けてのチーム力を上げていく一つのポイントになると思います。

――来週の入れ替え戦へ向けての意気込みをお願いします

毎度言ってますけど、やることは変わりませんし、きょうのようなバレーができれば、いい雰囲気で結果は後から付いてくると思います。きょうできたバレーが一つこのチームが目指す姿だったのかなと思いますので、それを楽しみながら発揮して、引き続き皆さんに応援していただけるようなチームになっていきたいと思います。

森佳央理(スポ4=群馬・高崎女)

――リーグの最終戦でしたが試合前のチームの雰囲気はいかかでしたか

ずっと負けていて雰囲気が悪くなってしまっているのは確かで、周りの人からも雰囲気が良くないというふうに言われていて私たち自身もどうにかしないといけないと思っていて、今までは相手の対策に特化して練習していたんですけど、今回は自分たちのプレーを振り返ろうということで自分たちの反省に時間を費やしてあとはブロックフォローとサーブの強化を引き続きやっていました。

――それを踏まえてきょうの試合を振り返ってみていかかですか

1セット目は取れたんですけどどれも惜しいセットで、途中セッターが眼を怪我をしてしまってそこで一瞬流れが止まってしまって一度は立ち直せたんですけどそこから自分たちのペースにできないまま2.3.4と取られてしまいました。やはり点を取り合う中で(早大が)1点、(日大が)2点、そしてまた1点、2点というふうになっていったので向こうが多くとってこっちが受け身になってしまったこととサーブミスが多かったことが悔しいですね。

――接戦で緊迫した展開となりました

もうみんなすごく集中していて、今までは「声出そう」と言って声を出すという感じだったんですけどきょうはもう自分たちから「ここはこうしていこう」という声が出ていたしブロックフォローも、本当に全員が1つのボールに執着してできていたからこそ最後は切れてしまったところもあったんですけど集中を続けて出来たという面は良かったんでそういう面は自信になったしそれを持って入れ替え戦に臨みたいと思います。

――練習されてきたオープンへの対応についてはいかがですか

そうですね、出来ていたと思います。セットに対しての練習ばかりしてきて、でも全部が出来ていたかと言えばそうではないんですが、練習でしてきたことが少しは出せたかなと思います。

――このリーグ戦を通じて成長したと思う面はどこですか

フォローですかね。私は全然出来ていないですけど、みんなフォローの意識がすごく高くなったなと思うのと、あとは1年生の斎藤友里(スポ1=千葉・敬愛学園)がリーグ戦、試合を重ねるにつれてどんどんプレーに磨きがかかってきて本来のプレーがたくさん出るようになってそれは本当に良かったかなと思います。この調子のままいってほしいと思います。

――入れ替え戦に向けて意気込みをお願いします

絶対勝ちます。

植松知里(文構2=香川・高松第一)

――きょうの試合を振り返っていただけますか

出だしはすごくよくて、1セット目は取れたんですけど、でもこの1セット目は相手のミスに助けられて取れてた部分があって、2セット目、3セット目、4セット目では、せっかく追いついてもそこから連続失点をしてしまったりして、うまく自分たちが乗っていけなかったので、悔しさが残りますし、きょうは勝ちたかったです。

――緊迫した展開の中でのプレーが続きました。ご自身のプレーを振り返っていただけますか

乗ってる時は思いっきりプレーできていたし、良かったと思うんですけど、やっぱり連続失点だったり流れが悪い時にもっと思い切ってトスをしっかり回して、エースで決めれるようにできたらよかったと思います。

――試合中に怪我をされてからコートへ戻る時の気持ちを教えていただけますか

そんなに痛くはなかったので、いい流れだったこともあるし、絶対勝ちたかったためもう一回出てやりきろうという気持ちでした。

――各選手との連携の精度が上がっていったリーグ戦でした。リーグ戦を振り返っていただけますか

一試合の中でどうしても調子の波があるので、その波の幅をもっと狭くして、できるだけ一定にトスが上げられたらなと思います。

――来週の入れ替え戦への意気込みをお願いします

初めての入れ替え戦なんですけど、とにかく勝つっていう気持ちを持って、あと一週間全力で頑張って勝ちます