秋も1部で、このメンバーで――。春季関東大学リーグ戦(春季リーグ戦)を9位で終えた早大は、1部残留を懸け2部2位の国士舘大と対戦した。奇しくも3季連続となった入れ替え戦でのこのカード。昨年は春秋共に早大に軍配が上がっており、リベンジに燃える相手を再び迎え撃つかたちとなった。幸先よくセット先取に成功するが、第2、3セットはいずれもジュースまでもつれる接戦に。1部で培ってきた『粘りと決定力』を出し切り、セットカウント3-0(25-21、27-25、28-26)で快勝。激動の10試合を戦い抜き、ようやく春のフィナーレを迎えた。
試合前、リラックスした雰囲気の国士舘大とは対照的に、緊張からか硬さが目立った早大。しかし試合が始まると、その不安はすぐに消え去った。ブロックで相手のスパイクの勢いを止め、つないだボールをアタッカー陣が確実に決める。好調時の攻撃パターンを序盤から展開し、着実にリードを広げていった。さらに、この日は課題であったセンター線の攻撃が機能する。苦しんだ春季リーグ戦では「悔しい思いがあった」という佐藤夢菜(文4=埼玉・狭山ヶ丘)が要所でスパイクを決めると、森佳央理(スポ2=群馬・高崎女)も中盤で得点を量産。危なげなく最初のセットを奪い、選手たちの表情も徐々に和らいでいった。
ベンチメンバーも、応援で試合を盛り上げた
ところが第2セット、国士舘大が反撃に出る。一時は6点差をつけられ相手の勢いにのまれかけたが、この状況に4年生が黙ってはいられなかった。点差を縮め迎えた13-14の場面。平山璃菜主将(スポ4=東京・文京学院大女)がサーブで流れを引き寄せる。必死に食らいつく相手アタッカーの攻撃を、佐藤がブロックで遮る。そして、上げられたトスを及川香菜(スポ4=宮城・古川学園)がネットの向こうにたたき込む。「4年生はこの試合で負けたらもう1部では戦えない」(平山)。負けて味わう悔しさ、勝って味わう喜び。それを再び1部の舞台で感じたい。思いは一つになった。気づけばスコアは19-14に。その後も苦しい場面で平山が何度もスパイクを決め、手に汗握るこのセットを制した。第3セットも追う展開となるが、今度は森と富澤結花(スポ1=東京・文京学院大女)の下級生コンビが奮起し再びジュースに持ち込む。最後は相手のミスで勝負が決し、試合終了。メンバー全員が駆け寄った早大のコートに、笑顔と涙が入り混じった。
鋭いスパイクを打ち込む森
昨年の全日本大学選手権。当時の4年生がコートを離れ、3年生以下の選手のみで試合に臨む時間帯があった。そんな苦境を乗り越えてきたからこそ、共に戦ってきた時間が長いからこそ、このチームには計り知れない一体感が生まれている。「仲間を信じることで絶対勝てる」(及川)。必死にボールを拾うリベロ、それをつなぐセッター、思いに応えるアタッカー、声で盛り上げるベンチメンバー。一人一人が自分の役割を果たすことで、チームは強くなっていく。1部でつかんだ『2勝』は、その証だ。まだ見ぬ栄光へ、早大女子バレーボール部の挑戦は続く。
1部残留が決定し、喜びを分かち合う
(記事 川浪康太郎、写真 鎌田理沙)
セットカウント | ||||
---|---|---|---|---|
早大 | 3 |
25-21 27-25 28-26 | 0 | 国士館大 |
スタメン | ||||
レフト 及川香菜(スポ4=宮城・古川学園) レフト 富澤結花(スポ1=東京・文京学院大女) センター 佐藤夢菜(文4=埼玉・狭山ヶ丘) センター 森佳央理(スポ2=群馬・高崎女) ライト 平山璃菜(スポ4=東京・文京学院大女) セッター 芹澤友希(スポ3=茨城・土浦日大) リベロ 中川知香(スポ3=神奈川・橘) |
コメント
平山璃菜主将(スポ4=東京・文京学院大女)
――一部残留おめでとうございます!いまの気持ちはいかがでしょうか
率直にうれしいのと、正直安心しました。
――試合前のチームの雰囲気はどう感じていましたか
春リーグを終えてみて反省点も多かったのですが、一週間という間の中でいまは前だけを見ようということでモチベーション高く練習できたし、きょうもいい入りができたかなと思います。
――第1セットを取れたことは気持ちの面でも大きかったのではないでしょうか
そうですね。自分たちは1点取ってしっかり喜んで声を出して、そういった勢いのまま出だしの5点で相手を圧倒しようという話をしていました。出だしの5点は意識していましたし、そういった意味では1セット目を取れたことは大きかったと思います。
――第2セットは苦しい展開の中、積極的に打ちにいく姿が印象的でした
苦しい場面でどうしても2セット目が欲しいという中で、信頼してココ(芹澤友希、スポ3=茨城・土浦日大)もトスを上げてくれましたし、仲間の思いに応えるためにしっかり打とうと思いました。
――及川香菜選手(スポ4=宮城・古川学園)ら、4年生の活躍についてはどのように感じましたか
もちろん下級生も強い思いで頑張ってくれているのですが、自分たち4年生はこの試合で負けたらもう1部では戦えないし、勝てばもう一度1部でリベンジできるという中で、それなりに及川であったり佐藤(夢菜、文4=埼玉・狭山ヶ丘)であったり4年生の思いは大きかったのかなと思います。
――第3セットでは下級生の活躍も目立ちましたが、後輩たちは頼もしいですか
本当に頼もしい存在で、自分たちも一緒にやっていて尊敬する部分であったりいい刺激をもらう部分もあります。負けてはいられないという思いもあるので、もっと負けないくらい背中で引っ張っていきたいと思います。
――改めて春リーグを振り返っていかがですか
もちろん2勝できたことは大きな収穫なのですが、自分たちの目指すところはもっと上だと思うので、この結果に満足せず練習していきたいです。きょうの内容も1部で戦う上ではまだまだなので、夏にしっかり自分たちを追い込んで練習して秋でリベンジしたいと思います。
――今後も早慶定期戦や東日本大学選手権が続きますが、意気込みを聞かせてください
新体制が始まって春リーグが終わり、このチームでできる試合も限られてくると思うので、早慶戦も東日本も1試合1試合、より最終目標に向けて成長できるような試合にしていきたいと思います。
及川香菜(スポ4=宮城・古川学園)
――入れ替え戦で勝利という事で、今の率直な気持ちをお聞かせください
正直、ほっとしています(笑)。
――アップや公式練習の時は、緊張されましたか
緊張していたかと言われると、していました。でもみんながいつも通り練習に入って、「きょうは大丈夫だ」という風には思っていました。
――第2、3セットがデュースでしたが
入れ替え戦は厳しい戦いになるというのは分かっていました。第1セットのような試合はしたかったのですが、相手の第2セットの出だしが、本当に勝つ気持ちで来ていて、自分たちもそれに押されてしまいました。自分たちの気持ちが負けていたというか、相手が上回っていて、そのせいで力を出し切れなかったというのは、やっていてとても思いました。
――では、デュースで勝ち切れたというのは大きいですか
デュースの連続で自分たちは苦しかったのですが、でもやはり、仲間を信じることで絶対勝てるという事があったので、最後まで諦めないで戦ったからデュースで勝てたのではないかと思います。
――及川選手は第2セットの後半で、連続で得点しています
ここ1週間自分自身(調子に)乗れていなくて、練習でも決めきれないことが多かったです。でも(きょうは)周りが信じてトスを上げてくれている、と本当に感じたので、第2セットからは「自分を信じて仲間を信じて決めに行こう」という風に思いました。
――今季主将としてチームを引っ張ってきた平山璃菜主将(スポ4=東京・文京学院大女)に対して、同期としてどう思われますか
平山には同期として本当に感謝してるし、頼れる存在です。学部も同じで常に一緒にいる感じなのですが、そこでも信頼感が生まれました。苦しいときはお互い助け合うという感じの存在です。
――では最後に、今後に向けて意気込みを
春季関東大学リーグ戦では2勝して、でも入れ替え戦に回るという事だったのですが、2勝したことに満足した部分が絶対どこかしらあると思います。全日本インカレでセンターコ―トに行くには、秋季関東大学リーグ戦(秋季リーグ戦)で4勝以上しないと、自分たちに力はついてこないと思います。なのでしっかり鍛えて秋季リーグ戦に臨みたいと思います。後は、東日本大学選手権があるので、それに向けて良い勝利ができたと思うので、それに向けても頑張ります。
佐藤夢菜(文4=埼玉・狭山ヶ丘)
――一部残留を決めたいまの率直な感想をお聞かせください
ホッとしたというのが一番です。
――またしても入れ替え戦は国士舘大との対戦となりましたが、どのような対策をしてきましたか
前回対戦した時にブロックがよかったと感じました。1部では自分のブロックができなくてうしろもかたちを作れないという場面が多かったので、きょうは相手が嫌がるようなブロックをしたいなと思っていました。
――そのブロックがよく機能しているように見えました
一枚でセンターを止める時などはよかったと思うのですが、レフトに対してのブロックであったり移動してからのブロックというのがまだまだでうしろに迷惑をかけていたので、そこが修正すべき点だと思いました。
――先週に比べてセンター線の攻撃に関してはいかがでしたか
ずっとセンター線が課題だと言われていてどうしても悔しい思いがあったのですが、セッターに信頼してもらえるような練習を少しでもできたからトスを上げてもらって自分も決めることができたのかなと思います。
――第2セットを中心に4年生の活躍が目立ちましたが、どのように感じましたか
入れ替え戦になってしまったということは4年生の責任ですし、4年生が1部の舞台で戦えるのもきょう勝たなければなかったことでした。絶対に勝たなければいけないという気持ちできょうはみんなで団結してできたのでよかったと思います。
――春リーグを振り返ってみていかがでしたか
自分としては課題しかないなと感じました。4年生としてプレーでも引っ張ることができなかったし、自分がミスしたあとに下を向いてしまったりだとか4年生としてあるまじき行為もありました。次の大会からはもっと練習して、プレーでも精神的にもチームを引っ張っていけるように4年生として恥じないプレーをしていきたいと思います。
――今後へ向けて具体的に取り組みたいことはなんですか
自分の役割はコンビとブロックだと思うので、そこを磨いていきたいと思います。
森香央理(スポ2=群馬・高崎女)
――入れ替え戦に勝利ということで、いまの率直なお気持ちは
本当に嬉しくて、ほっとしています。
――きょう試合が始まる前は緊張していましたか
試合前日にとても緊張したのですが、きょう朝起きたらその緊張は解けていたので、「もう楽しんだもの勝ちだな」と思って、楽しんでプレーすることができました。
――森選手はスパイク・ブロックともに活躍されていました
ブロックは全然上手くできなかったのですが、スパイクは気持ちで打てて、決まって良かったです。
――スパイクについては、セット後半の大事な場面で決めて、チームが盛り上がった印象があります
1部での試合の時は、セット終盤でトスが回ってきても決まらず、それでセットを落とすことが何回もあったのですが、きょうは絶対に決めてやるという気持ちで、終盤も上がってきたトスを全力で打つことができました。そこは良かったと思います。
――いまのチームの雰囲気はいかがですか
入れ替え戦に向けてとても良い雰囲気で練習で来ていたと思います。
――それでは今後に向けて意気込みを
とりあえず春季関東大学リーグ戦が終わって、ひと段落できるので、ちゃんと切り替えたいです。早慶戦も6月12日に控えていますし、そこでまず自分たちのかたちを作って、東日本大学選手権でちゃんと目標達成ができるようにチーム一丸となって頑張りたいと思います。