笑顔の集大成! 日本一への挑戦は次の世代に託された

男子バレーボール

全日本大学選手権/3位決定戦 12月1日 船橋アリーナ

 前日の準決勝で日体大に敗れ、惜しくも決勝進出は叶わなかった早大。しかし、まだ彼らの全日本大学選手権(全カレ)は終わらない。近大とメダルをかけた3位決定戦が行われ、前日の悔しさを晴らすために、そして笑顔で大会を終えるために戦った。盤石な試合運びでセットを先取するが、近大もメダルにかける思いは強く、2セット目を取り返される。それでも積極的な攻撃を仕掛け、相手のミスも引き出しセットを連取。セットカウント3-1(25-16、23-25、25-17、25-20)で勝利をおさめ、早大の全カレは3位で幕を引いた。

 第1セット序盤から、前日の敗戦から吹っ切れたかのような姿を見せる。OP畑虎太郎(スポ3=福井工大福井)がライトからストレートを打ち込み試合が幕開け。MB菅原啓(教2=山形南)がパイプ攻撃をブロックし、いきなりブレイクに成功する。中盤にかけ、サイドからの攻撃と真ん中からの攻撃を有効に使い分け、ブレイクを重ねていく。OH徳留巧大(スポ1=長野・松本国際)や菅原が攻めるサーブでポイントを獲得すると、OH佐藤遥斗(スポ2=東京・駿台学園)のブロックが決まり15-9となったところで近大が1回目のタイムアウト。しかし、その後も攻撃の手を緩めず、畑のサーブのターンで得点を稼ぐ。連続サービスエース、そして強気なサーブで相手を崩したところを徳留が見逃さず、2本目にバックアタックを打ち込み4連続得点。終盤にも徳留がパイプ攻撃でコーナーにボールを突き刺すなど、早大がリードを保つ。最後は相手が連続してスパイクアウトし、危なげなくセットを先取した。

勢いをもたらした畑のサーブ

 第2セットは両校の意地の戦いとなった。前のセットに引き続き菅原のクイックが高い決定率を見せるも、近大はバックアタックや鋭いスパイクで応戦。早大もMB麻野堅斗(スポ2=京都・東山)のサーブでチャンスボールを返させたり、ネット際に上がったボールをセッター前田凌吾主将(スポ3=大阪・清風)がワンハンドでクイックにつなげるなど、1点への執着を見せる。1点リードで終盤に突入したが、クイックをネットにかけ逆転を許すと、そのまま点を返すことができず、2点差でこのセットを献上した。

 続く第3セット、リベロ布台聖(スポ2=東京・駿台学園)の完璧なレセプションを起点に佐藤がバックアタックを放つ。相手のクイックに対してはワンタッチを取り後ろで拾い、ブロックとフロアの関係性の良さを見せた。そしてまたも畑のサーブが走り、9-3と序盤から点差を離す。タイムアウトを取り立て直しを図る近大だが、その後も佐藤のサービスエース、前田の意表を突くツーアタックなどでブレイクを重ねる早大。セット後半には、佐藤、麻野がバックライトからのスパイクをシャットアウトする。勢いを加速させる早大に対し、焦りもあってか近大はミスを連発し、このセットは早大のものとなった。

バックライトからの攻撃をブロックする佐藤と麻野

  いい流れで迎えた第4セットだが、序盤に畑、菅原が相次いでブロックに捕まる。しかし、その直後に菅原が再びクイックを打つ。今度は相手のブロックの上からコーナーに放ち、修正能力の高さを感じさせた。麻野のCクイック、畑のサービスエース、佐藤の軟打で3連続得点を決めるなど、順調な出だしに見えたが、やはり一筋縄ではいかず、ここから一進一退の攻防が展開される。徳留が相手の強烈なサーブを綺麗に上げ、着実にサイドアウトを取るも、近大もブロックアウトを狙ったプッシュやツーアタック、バックライトからのスパイクで得点し返す。対する早大は、ラリーの場面では布台がしっかりとブロックフォローに入り、佐藤がブロックを打ち砕く。前田は体を捻りながら麻野にトスを送るなど丁寧なプレーを見せる。硬直状態が終盤まで続いたが、畑のライトからのスパイクで一歩前に出ると、前田、麻野のブロックで23-20。最後は相手のレフトからのスパイクをまたも前田がブロック。そのボールが近大コートに落ち、意地の戦いを制した。

勝利を決め喜びを分かち合う選手たち

 勝利が決まった瞬間、選手の目からは笑顔とともに涙があふれた。メダルを取れたことへの安堵、それとは裏腹に決勝の舞台に立てなかったことへの悔しさ、様々な感情が入り混じった涙であっただろう。この6日間、「もしかしたらここで終わってしまうかもしれない」、そう感じる場面もあった。それでも最終日まで戦い抜くことができたのは、何よりもこのチームの想いの強さの証明ではないだろうか。そしてその中心となった4年生。全カレ連覇中の早大バレー部を志し、険しい道を4年間走り続けてきた彼らの、その集大成は本当に望んだかたちではなかったかもしれない。それでも仲間を想い、仲間のために戦うその姿こそがこのチームを築きあげてくれた。コートに立てない悔しさもあったに違いないが、後輩のために自分たちができる精一杯を尽くしてきた。その4年生の想いに報いるために、後輩たちはすでにこれからを見据え、この経験を己の強さに変えようとしている。この1年、苦悩の連続であった。それでも「Hand in hand」、ともに手を取り合い過ごしてきた1年間は、必ず後輩たちがこれからにつなげてくれると信じている。4年生のために戦った後輩、そして早大の歴史を紡いできてくれた4年生に、まずは労いの拍手を送りたい。

(記事 町田知穂、写真 井口そら、井口瞳)

笑顔で全カレを締めくくった

セットカウント
早大 25-16
23-25
25-15
25-20
近大
スタメン
アウトサイドヒッター 佐藤遥斗(スポ2=東京・駿台学園)
アウトサイドヒッター 徳留巧大(スポ1=長野・松本国際)
ミドルブロッカー 麻野堅斗(スポ2=京都・東山)
ミドルブロッカー 菅原啓(教2=山形南)
オポジット 畑虎太郎(スポ3=福井工大福井)
セッター 前田凌吾(スポ3=大阪・清風)
リベロ 布台聖(スポ2=東京・駿台学園)
途中出場
浅野翼(スポ4=宮城・東北)
馬渕純(スポ4=岐阜商)
滝谷照(スポ4=宮崎・日南振徳)
梶村颯汰(スポ3=東京・安田学園)
伊東昌輝(商2=山梨・日本航空)
個人賞
MIP賞 前田凌吾(スポ3=大阪・清風)
スパイク賞 菅原啓(教2=山形南)

 ※コメントは後日まとめて掲載いたします。