引退前、学生を相手に戦う最後の機会であった全日本大学選手権(全日本インカレ)を終えた4年生たち。4年生に常に寄り添ってきた監督と選手たちに、優勝したときの気持ちや全日本インカレの振り返り、後輩たちへのメッセージを伺った。
松井泰二監督(平3人卒=千葉・八千代)
――優勝した今の気持ちは
最後、本当に4年生らしさが出た試合でした。自分らしさを追求していった結果だったのではないかなと思います。慶大戦では硬くなりすぎてしまって、あまり自分たちらしさが出せませんでしたが、近大戦にしても今日の試合も、全部受けずに攻めていったので。それは気持ちの変化があって、特に4年生が中心になってやってくれたからですね。下級生ものびのびとできたのではないかなと思います。
――4年生の中でも、MIPを受賞された山田選手(大貴、スポ4=静岡・清水桜が丘)について監督の目から見ていかがですか
大貴は本当に頼もしいエースでした。やはり人間なので自信がない時はあると思いますが、自分の悪いところは見ても良くはならないから、良いところを見るという考えにさらになっていけばいいですね。それを最後に理解したからあのようなプレーをしたのではないでしょうか。
――6試合、出し切って戦うことが難しいんだとおっしゃっていましたが、実際選手たちは出し切れていましたか
出し切れていましたね。調整をしながら上手く戦わなければいけないという中でしっかり出し切りました。振り返ってみたらあっという間の6日間でした。
――プレー面での振り返りをお願いします
ディフェンスでは、リベロ賞を取った荒尾(怜音、スポ4=熊本・鎮西)のレセプションが安定していました。アタックでは、今回全員に合格点がつけられるくらいみんな集中して持ち味を発揮できていたと思います。前田(凌吾、スポ2=大阪・清風)に関しても、非常に落ち着いてプレーできていたので、ひとつ自分の中で自信がついただろうし、前田らしさが出ていたと思います。合わせて布台(駿、社4=東京・早実)が、ディグリベロとして良いところで拾ってくれていました。全員の良いところを出し切って勝てたと思います。
――4年生へメッセージ
4年間お疲れさまでした。大学1年生はコロナで大会が一つしかない中で頑張ってくれました。2、3年生では観客が制限された大会も多かった中で、こうして今正常に戻ってきたという辛かった環境だったと思います。それに加えて昨年負けてしまって、どうしたらいいかわからないという気持ちでいた中で、その次の3位決定戦で、水町(泰杜主将、スポ4=熊本・鎮西)自身が1番落ち込んでいたと思うのですが、1番はつらつとしてプレーしていたんです。それを見て、「これはもしかしたら次の年、優勝できるかもしれない」と実は思っていました。ただやはり、もうあのような思いはさせたくなかったので、今年は少し厳しめに言ったりしましたが。最終的には厳しい言葉に耐えて、自分たちの良さを理解してくれたことが結果につながったのだと思います。本当に、100点じゃすまないくらいの、最高の点数をあげたいと思います。
――来年、どういったチームをつくっていきたいですか
それを考えられないくらい、すごく寂しいですね。この代と試合がもっとしたいし、終わりたくないと思うチームなので。このチームが新チームになにか新しいものを残してくれる天皇杯になるかなと。そして、3年生以下は4年生が何をやっているのかということをしっかり目に焼き付けて、大会を終えて欲しいと思っています。
水町泰杜主将(スポ4=熊本・鎮西)
――優勝した今の気持ちは
同期と後輩たちと優勝することができて本当に良かったと思います。
――準決勝を経て、今日の試合にどのような気持ちで臨みましたか
大学生と戦う最後の試合になるので、悔いを残さないように全部出し切ろうという気持ちで臨みました。
――チーム全体を振り返って
秋からやってきたブロックもすごく良かったし、早稲田の全員の良いところが出た試合になりました。
――「出る幕がなかった」とおっしゃっていましたが、他のメンバーの方々を見ていていかがでしたか
本当に全日本インカレの6日間を通して、すごいなと感じたのが率直な意見で。準々決勝くらいまで自分を温存していけたらいいよねという話はしていましたが、気づいたら決勝まで温存されていたという(笑)。それくらい、大貴も吏玖(伊藤、スポ4=東京・駿台学園)も気迫がこもっていたし、かける思いを自分が肌で感じることができてよかったです。
――不完全燃焼感はないですか
同期が輝いてくれたら僕は別に良くて。このチームでやってきてよかったなと思うので、全然僕は大丈夫です。
――主将としての1年間を振り返って
高校からエース級、中心となってきた選手が集まってくる中でそれぞれが我を持っていて、こうしたいという気持ちが強いから(笑)。それをまとめあげるというのは非常に難しくて。後輩からは泰杜さんはなにも考えていないってよく言われるんですけど、考えていないように見せて、実はいろいろ考えていました(笑)。そんな中で、駿が僕の主将という立場としての支えになっていて、駿がいてくれたから頑張れた部分もあります。本当、大貴・吏玖、怜音もそうですけど、同期に恵まれたなと思っています。
――4年生対談の際には、荒尾選手が水町選手について口に出すのが苦手とおっしゃっていました。意識的に変えようとしていた部分はあったのですか
4年生がみんな優しいと言われていて、みんな言えるタイプではないので、僕が腹をくくってやろうと思ったし、多分そう厳しいことを言ったところで、僕に嫌な思いを寄せるチームではないと思いました。そこは、割り切ってできていたのではないかなと思います。自分ではできていたのかはわからないけど(笑)。頑張って、言いたくないこともいうようにはしました。
――後輩へのメッセージ
来年は本当に難しい代になると思っていて。今の3年生が4年生になるということで、出ているメンバーは少ないのですが、4年としての存在・やるべきことがあるし、後輩も今の3年生を4年生として立てないといけない部分があります。それが崩れてしまうと「仲がいい」と、「ゆるい」は紙一重な部分があるので、そこだけちゃんとやれば、みんな仲が良いし大丈夫かなと思います。
伊藤吏玖副将(スポ4=東京・駿台学園)
――優勝した今の気持ちは
今日は決勝の日で、自分たちが1年間練習してきたことがしっかりと出せたのは結果としてとても良かったと思います。最後にこうして勝って笑顔で終われたことはチームとしても良かったですし、自分としても人生の大きな財産となりました。
――今日の試合にどのような気持ちで臨みましたか
順天堂大学さんの試合は前日に観ていたり、高校の同期でよく知っている選手がいて、相手のやってくることはよく分かっていたので、自分たちがやるべきことはしっかりと整理して試合に臨めました。
――集大成となる今日の試合のディフェンス面をチームとして振り返って
相手の分析をよく行なっていたので、ディフェンスはしっかりとできたと思います。このインカレの中でベストな試合ができたと思います。
――今日のご自身のプレーについて
若干クイックが決まらない場面はありましたが、2セット目から決まり始めて、ブロックもミスが少なく、いいディフェンスの役目ができたと思います。
――4年間を振り返って、どのような4年間でしたか
早稲田に入って、基礎、基本からしっかりやることだったり、日頃の練習1回1回を妥協せずにやってきたので、入学時と比べてプレーが上達した実感もありますし、人間的な成長もできた4年間だったと思います。
――新体制対談の際、水町選手を支えたいとおっしゃっ将ていました。副将としての1年間を振り返って
何をやったかと言われたらはっきりと言えないのですが、泰杜の下でチームとして自分ができることを探していて。声を出すことや盛り上げること、後輩を下からサポートすることをやってきて、これに関してはできたりできなかったりというのが正直な感想なのですが、最後のこの全日本インカレではしっかりできたと思います。
――後輩へのメッセージ
自分たちのやってきたことを信じて、日々の練習から妥協せずにやっていってほしいです。早稲田のやっていることは決して間違っていないので、自分たちのことを信じて毎日毎日突き詰めてやっていくことが大事なので、それを頑張ってほしいなと思います。
赤坂樹里(人4=東京・成蹊)
――優勝した今の気持ちは
今まで、春季リーグ戦や秋季リーグ戦、東日本大学選手権では優勝させてもらった感があって。全部人事ではないんですけど、勝っても第三者の目線で、 「あ、勝ったな」って思ってたんですけど、今日初めてやっと自分ごととして捉えられたというか。良いことばっかりではなかったし、むしろ嫌なことの方が多かったんですけど、綺麗事抜きで、ほんとに今まで頑張ってよかったなって最後に思えて安心しました。
――トロフィーを受け取り、赤坂さんが涙を流す場面がありました。4年間の思いが溢れてきましたか
見ないでください(笑)。自分の性格的にもなんですけど、一応スタッフなのであまり前に出ないようにして、どちらかと言えば端っこにいるような感じだったんですけど、まさか4年生の横に並ばせてもらえて、それだけでもすごく嬉しいことなのに、「トロフィー受け取っていいよ」まで言われると思ってなくて、(感情が)ぐわっときました。
――最後自分ごととして捉えられた理由はありますか
今回の全日本インカレは、今までの中でみんなに何かしたいなって1番思ってて。普段から結構どの部員の方もデータを欲しいとか、見たいと言ってくれるんですけど、今回の大会は特にみんなずっと体育館の近くに泊まってて。早稲田は1試合目だったので、翌日の対戦相手のデータはどうしても後にしか渡せなかったんですけど、体育館出た後に、もう1回集合したり、「データもらえる?」とわざわざ連絡くれた選手もいますし、試合の時だけじゃなくて、試合以外の時でも毎日頻繁にいろいろな選手とやり取りとかしていました。多分そういうのが今までよりも濃かったから、自分ごととして捉えられたのかなと思います。
――今日の試合にどのような気持ちで臨みましたか
もちろん全日本インカレ中も苦労して大変なこともあったはしたんですけど、 昨日までの内容が良すぎて、今まで苦労して苦労して勝ってきた分、(全日本インカレの)試合内容だけ見ればうまくいきすぎてるところが逆にあって。自分ではそれが信じられないというか、びっくりして、だからそれが崩れるのが怖いな、このまま行けたらいいなと思ってました。でも、試合前はできることも限られていると思いながら入って。試合が進むにつれて、昨日までの自分たちの試合内容は運が味方したとかではなく、自分たちがやってきたことが今年は報われたのかなと思いました。
――今日の選手たちのプレーはいかがでしたか
4年生が全員試合に出ていることが、まず単純にすごいうれしくて。それは1年生の時からずっと、漠然とそういう姿が見れたらいいなと思っていたので、それはすごいうれしかったです。でも、4年生だけが頑張ったとかじゃなくて、凌吾のブロックとかもありましたし、後輩すごいなって。ありがとうという気持ちです。
――この4年間を振り返って
きついの一言です。何かちょっと嬉しいことがあっても、すぐなんか大変なことがまた待ってるみたいな感じで。 ただ、この全日本インカレ中の1週間は、大学4年間の中で1番純粋にバレーボールを楽しめた期間です。最後こういう気持ちにになるための今までの4年間だったなと思ったり、思わなかったりします(笑)。
――苦しい時期もあったんですね
そうですね。考え始めたら終わらないというか、ここまでやればいいみたいのがないので、(やることが)どんどん出てくるので。ここまでやろうと決めて、どんな結果になっても後悔しない選択だったと思えるような行動をどうやったらできるか考え続けて、それを行動に移すのが、ほんとにしんどかったですね。アナリストだけではなく、歴代の先輩方の背中を見て、自分は先輩たちがやってきたように、人のために行動しなければいけないことを感じました。先輩方の背中を追ってきたからこその苦労がありました。
――アナリストの最上級生としての1年間を振り返って
今までで1番、アナリストの人数が 多かった時で、単純に仕事量に対して人数が多ければ楽になるかって、そういうわけではないのですが、周りから見れば人数がいるんだからって思うと思います。だから、いかに人数を生かしてやるか。でも、私が人に指示を出したりするの得意じゃないので、自分の性格と、本当にやらなきゃいけない狭間の葛藤みたいのがすごかったです。多分、そこは多分後輩も組んでくれてるところがあったと思いますし、私の不安定な情緒に文句も言わず付いてきてくれた後輩たちだったなと思います。私がアナリストの4年としての仕事ができるのは、後輩たちのおかげなので、後輩の選手だけじゃなくて、アナリストの後輩にも助けられたかなと思います。
――後輩へのメッセージをお願いします
めっちゃ生意気なやつばっかりだったんですけど、アナリスト含め(笑)。1年生なのにタメ口をきいてきたり、方向音痴だの言われ続けてきたので(笑)。私に生意気した分、来年ちゃんと私に良い報告がほんとによろしく頼みましたよという気持ちです。私よりよっぽど根性がある人しかアナリストにはいないですし、大丈夫だと思います。もちろん選手もすごい人しかいないので、自信を持ってやってほしいなと思います。
荒尾怜音(スポ4=熊本・鎮西)
――優勝した今の気持ちは
長い1年間だったので、最後にいい景色が見られてホッとしています。
――今日の試合にどのような気持ちで臨みましたか
勝っても負けても最後というのは今大会ずっとそうだったのですが、今日の試合は自分が大学だけではなく、小学校の時からやってきたこと全部を出せるように、どんな時も楽しんでやろうと思っていました。
――この6日間を振り返って
自分に焦点を当てることなく、周りに焦点を合わせてチームとして勝てるようにどう動けばいいのかを常に考えられた6日間でした。
――リベロ賞を受賞した気持ち
正直びっくりしています。今年に入って1度も(リベロ賞を)取れていなくて、高校の最後の学年の時も取ることができなかったので、1回でも取りたいと思っていましたが、他にも上手い選手がたくさんいるので、(リベロ賞は)自分じゃないなと思っていました。なので、取れて嬉しいですし、これからもこの賞にふさわしい選手になれるように頑張らないとなと思っています。
――ご自身のプレーについて、出し切ることや自分らしくプレーすることはできましたか
日によっては少し粗くなる日もありましたが、トータルでは自分の役割を果たせたと思います。
――最後まで2枚リベロで試合をすることに難しさはありましたか
難しさというよりかは、駿も初めてのインカレだったので、バタつくシーンも多かったのですが、サイドアウトの時の1本目を大きくするなど、自分ができる工夫をしました。その結果、自分もいい波に乗れたし、チームもいい方向に進んでいけたので、難しさと打開策を見つけられたインカレになりました。
――4年間を振り返って
学生バレーは本当に色んな気持ちになって、振り返ってみても濃すぎる4年間でした。バレーに対する知識もそうですし、フィジカル面、栄養面、コンディショニング、全ての面においてレベルの高い学校でバレーをさせてもらったので、いい経験もできたし、たくさんの学びがありました。
――後輩へのメッセージ
4年生が一気に抜けてしまうのですが、それは関係なくて。みんなの持ち味や強みで来年も楽しんでもらえればいいなと思います。
布台駿(社4=東京・早実)
――優勝した今の気持ちは
嬉しいです。長かったです(笑)。
――今日の試合にどのような気持ちで臨みましたか
泰杜のためにというところで、出せる力を全部出し切ろうという感じで。緊張はあまりしなかったですね。
――ご自身のプレーについて
今日はあまりボールが来なかったので、何もないです(笑)。
――4年間を振り返って
長かったですね(笑)。でも生きていく上で、今後の生活に活きる日が来るのかなと思います。
――主務とプレーヤーとしての1年間、両立は大変でしたか
やらないほうがいいなと思いますね(笑)。マネジメントに関しては、1個下の安田(治揮、商3=新潟一)が僕以上にチームのことを動かすためにはどうしたらいいかということを考えてどんどん主体的にやるようになりました。来年はマネジメント面は問題ないなと思うほど、安田には助けられました。
――後輩へのメッセージ
来年も期待しています!
山田大貴(スポ4=静岡・清水桜が丘)
――優勝した今の気持ちは
嬉しいです!優勝というのは形なのですが、自分たちがやってきたことが間違いではなかったということが結果として表れたので良かったと思います。
――今日の試合にどのような気持ちで臨みましたか
天皇杯はありますが、最後の全日本インカレということと、最終日ということもありますし、ここ(決勝)に来るまでにいろんな過程がありました。大変なことがたくさんあったけれど、それを今日で全部昇華させる、良い思い出にするという気持ちで臨みました。
――ご自身のプレーについて、出し切れていましたか
出し切れていたと思います。自分の役割は点数を取ることなので、自分が打つため、専念するために、みんながレシーブもすごく頑張ってくれたし、ブロックも頑張ってくれたし。自分が攻撃しやすい環境を作ってくれたので、みんなのおかげで出し切れました。
――MIP獲得ということで、どんな気持ちですか
点数をとることはバレーボールで大事だから、ぱっと目立つんですけど、自分の場合、それ以外のことは他の人が頑張ってくれているので。個人賞としていただけだのは嬉しいんですけど、それまでの過程をみんなが頑張ってくれたから、いただけたのかなと思います。
――エースとしての1年を振り返ってみていかがですか
本当に情けないなと(笑)。最後、みんなを助けられるエースになることができたんですけど。1年を通したら、逆にみんなに助けられるエースでした。1年間で自分の中で良い形で終わらせられたのでよかったです。
――後輩へのメッセージ
みんなもそうだと思うけど、自分自身大変な4年間でした。それぞれ大変さは違うと思うけど、絶対に楽しいことばかりではないし、少ないけど、自分に厳しくやっていけば最後、良い形でみんな笑顔で終わることができると思います。きついこともチーム全員で乗り越えて、来年またこの舞台でみんなが笑顔で終わることを期待しています。
(取材・編集・写真 五十嵐香音、町田知穂、渡辺詩乃)