これぞ天皇杯 怒涛の追い上げで心躍る展開に! 今季最終戦を終え、日本一への夢は次世代へと託された

男子バレーボール

 天皇杯全日本選手権(天皇杯)2回戦、早大はV1所属の堺ブレイザーズと対戦した。早大は試合開始から、格上相手にチャレンジャーとして果敢に食らいついていく。自分たちのかたちで得点した場面や、粘り強いつなぎ、学生らしい雰囲気など良さを発揮し、流れをつかむ場面もあった。また第1セット、第3セットではどちらがセットを取るかという接戦を演出する。だが、V1の意地を見せつけられ、競った展開をものにされるとセットカウント0-3(23-25、21-25、26-28)で敗北。4年生は引退となり、3年生以下は新たなチームへ向けた礎を得て、今季最後の試合を締め括った。

サーブを打つ重藤

 立ち上がりから早大は猛攻した。OP重藤トビアス赳(スポ4=神奈川・荏田)が難しい体勢から得点を決めると、その後もリベロ荒尾怜音(スポ3=熊本・鎮西)がレセプションをしっかりと上げ、OH山田大貴(スポ3=静岡・清水桜が丘)のパイプへとつなげると、8ー6とリードを奪った。だが、相手の高いブロックと攻撃に対応できず、10-11と逆転されてしまった。

 ここから相手のサーブミスで同点とすると、荒尾が飛び込んでつなぎ、OH水町泰杜(スポ3=熊本・鎮西)がスパイクを叩き込む。それでも相手につながれ、ボールは再び早大コートへ。ここでセッター前田凌吾(スポ1=大阪・清風)がラリー中でもしっかりとクイックを使い、ブロックを惑わすとMB秋間直人(スポ4=愛知・桜台)が決め切った。

 堪らず相手もタイムアウトを要求。この後、樋口裕希(堺ブレイザーズ)にサービスエースを決められ、流れを断ち切られる。それでも3枚ブロックでシャットアウトを決めると、水町が高いブロックに対しても上手く狙い打ちし、ブロックアウトを奪う。MB伊藤吏玖(スポ3=東京・駿台学園)もCクイックを決めるなど、早大は終盤まで食らいつき、20-20に。ここからサイドアウトの応酬(おうしゅう)となる。点の取り合いも最終局面に突入したところで、相手にサービスエースを決められ、23-25。惜しくも第1セットを落とした。

スパイクを打つ水町 

 

 第2セットは序盤から堺ブレイザーズに主導権を握られた。早大は何度もブロックタッチを取り、ボールを全力で追いかけつなぐが、相手ブロックの完成度と高さに苦しめられる。圧力のかかる3枚ブロックに対しても水町が、上手くスパイク、フェイント、リバウンドと対応力を発揮した。さらに重藤に代わりコートに入ったOP中島明良(法4=京都・洛南)がスパイクを決め、早大の雰囲気を盛り立てる。また相手の強烈なサーブを山田が上げ、水町がスパイクを打ち切ると、伊藤がクイックを打ち、山田もサイドから追撃。3年生を中心に得点を挙げ、徐々に差を詰めていく。後半に追い上げを見せたものの、要所で相手にしっかりと流れを切られ、21-25で第2セットも落とした。

ブロックをする中島(左)、秋間(中央)、水町

 後がなくなった第3セット、序盤から相手に大量リードを許し、1-8に。やはりここまでか…と思わずにはいられなかった。だが一時は7点にまで開いた差を終盤にかけて早大が追い上げていく。

 水町がブロックに対してもしっかりと得点を奪い、さらに壁が薄くなった時には、空いたスペースにスパイクを突き刺す。サイドだけではなく、センターから秋間がクイックを決めると、中島がブロックを決め、さらに山田もスパイクで追い打ちをかけた。また途中交代のリベロ布台駿(社3=東京・早実)が好レシーブを上げ、山田が何度も高く飛び、打ち切った。さらには水町のサーブを起点として、山田、水町、山田と両OHが終盤に止められない勢いで打ち続け、一気に5連続ブレイク。19-17と終盤に点数をひっくり返した。

 ここから追いつかれては得点を奪い、終盤にかけて試合はさらに白熱する。山田のサービスエースで23-22。だが山田のサーブミス、そして水町のスパイクがシャットアウトされ23-24、マッチポイントを握られた。ここで中島のブロックタッチからつなぎ水町が立て続けにスパイクを決め、25-24。次は早大がセットポイントを握る。だがまたもブレイクできず、お互い1点ずつ追加し、26-25。ここで決め切れば、次のセットへとつなげられる、重要な局面。会場の注目も集まる中、ここでブレイクしセットを奪いきったのは堺ブレイザーズだった。最後はV1チームの強さを見せつけられ、26-28。力及ばず、ストレート負けを喫した。

得点を喜ぶ山田(左)、荒尾

 

 リバウンドからの切り替えしや、ブロックタッチからのつなぎ、サーブやスパイクで手応え、自信を各々の選手が得たことだろう。何度もつなぎ、ボールを全力で追いかけ、頭一つ高いVリーガーにもひるむことなく立ち向かった。その姿勢を最後まで見せ、バレーボールのワクワクを最後まで届けてくれた早大メンバー。この大会を持って4年生は引退となり、『日本一』を目指す襷は後輩たちへと託される。「同じベクトルを向き、一つの目標に向かって一つずつ歩んでいくようなチームを」(荒尾)。「まずは応援してもらえるようなチーム作りを」(水町)。4年生からもらったさまざまな養分を成長への肥やしとして、また次の世代が作り上げていく『早稲田のバレー』。来年はどんなチームが、そしてワクワクが待っているのか。それぞれの道を歩む4年生、そして未来の早稲田を背負っていく世代のこれからが、輝きに満ちていていることを願いたい。描いていく未来に期待を膨らませながら――。

(記事 山田彩愛、写真 町田知穂)

 

セットカウント
早大 23-25
21-25
26ー28
堺ブレイザーズ
スタメン
アウトサイドヒッター 水町泰杜(スポ3=熊本・鎮西)
アウトサイドヒッター 山田大貴(スポ3=静岡・清水桜が丘)
ミドルブロッカー 秋間直人(スポ4=愛知・桜台)
ミドルブロッカー 伊藤吏玖(スポ3=東京・駿台学園)
オポジット 重藤トビアス赳(スポ4=神奈川・荏田)
セッター 前田凌吾(スポ1=大阪・清風)
リベロ 荒尾怜音(スポ3=熊本・鎮西)
途中出場
中島明良(法4=京都・洛南)
浅野翼(スポ2=宮城・東北)
芳賀雄治(商4=山形南)
布台駿(社3=東京・早実))
 
コメント

リベロ荒尾怜音(スポ3=熊本・鎮西)

――今日の試合を振り返っていかがですか

 格上の相手でしたが、挑戦するという意味で思いっきり試合ができました。ですが、最後も2点差がとりきれず、また収穫があったという気持ちが半分と、2点差を取りきれなかった悔しさが半分です。

――いいレシーブがたくさん見られましたが、ご自身のプレーを評価していかがですか

 サーブレシーブは良かったのですが、特定のサーバーへのシフト作りがいまいちで、最後までチームの土台ができなかったのが申し訳ないです。ディグはコースには入っていたのですが、ブロッカーとの連携があと一つ二つ足りなかったので、良かったとも悪かったとも言えない、微妙な感じです。

――相手の高さに対して守備はどのような意識で臨みましたか

 サーブで押されることは最初から分かっていたので、そこをどうにか切ろうと思いました。3セット目は入りが悪かったのですが、それ以外はついていくところはついていけたので、あとは小さな精度や、とれる時のみんなの雰囲気が必要だと思います。

――レセプションの時に山田選手(山田大貴、スポ3=静岡・清水桜が丘)に声かけしている姿が印象的でしたが、どのような意識を持っていましたか

 達宣さん(大塚達宣副将、スポ4=京都・洛南)は自分で(ボールを)受けて、自分で打つのが好きなのですが、大貴は打つことが得意で、拾うことは苦手なので「大貴の範囲を狭めて自分がカバーする代わりに大貴が決めてくれよ」と言っていました。実際にその通りに決めてくれました。ただ、(自分は)ボールをあまりあげられなかったので、スパイカーに申し訳ないな、と思います。

――今年のチームで挑む最後の試合でしたが、来年は4年生としてどのようなチームを作りたいですか

 結果は絶対に日本一をとりたいのですが、それだけに囚われず、チームがひとつの組織となり、同じベクトルを向き、一つの目標に向かって一つずつ歩んでいくようなチームを作りたいです。そのために自分たちの学年でまとまって、みんなを上からも引っ張るし、周りからも包んで同じ方向に向かせていきたいです。

 

OH水町泰杜(スポ3=熊本・鎮西)

――今日の試合を振り返って

 Vのチームと戦って、最後の4年生とできる大会ということで楽しもうという気持ちで臨みました。ですがもっとVを倒そうというガツガツした気持ちが足りなかったのかなと感じますね。

――V1チームと対戦してみて、通用すると手応えを感じた部分はありましたか

 調子は悪かったのですが、サーブについては入ればイーブンにはなってたのかなと思います。あとはやっぱり高いブロックに対しての攻撃の仕方で、学びがありました。上手くいかないところもあったのですが、通用する部分をもっと伸ばせていけたらなと思いました。

――相手のブロック高かったですが、やはり威圧感は感じられていましたか

 それはもちろんそうですね(笑)。本当に打ちたくないなってくらい圧があったのですが、良い意味で厚いブロックが来た時の練習だと思ってやっていたので、上手くいった時はすごくうれしかったですね。

――崩れた時にハイボールを託される場面が多く、前田(凌吾、スポ1=大阪・清風)選手との信頼関係を感じました

 来年はもっと信頼されるようなサイドスパイカーに僕と大貴がなっていかなければいけないなと思っています。コミュニケーションをしっかりとって、凌吾と上手くバレーを作っていけたらなと思っています。

――来年は最高学年になりますが、どういうチームを作っていきたいですか

 まずは4年生がチームの顔というか、一番上に立つのでしっかりとやっていきたいです。4年生としては同期がしっかりしているので、大丈夫だとは思うのですが、下級生が伸び伸びとバレーできる環境というのを4年生を中心に作っていけたらなと思います。

――4年生がチーム作りにとても苦戦を強いられていたところも見ていた中で、今はどういう気持ちですか

 4年生ってやることも多いし、重圧もある立場だと思うのですが、この3年間を通して同期が一つになることがすごく大事だということを学びました。だからまずは同期と一緒に強い意志を持って最後まで戦い抜きたいと思います。

――水町選手はプレッシャーがかかる場面を多く経験されていますが、それでもプレッシャーは感じますか

 どうですかね(笑)。それなりの場数を踏んでいて、こうなっている感じです。ただ最後に1点が取れなかったりするので、個人的にももっともっと精度を高めていきたいなともいます。

――今年最後の試合ということで、来年にむけた意気込みを最後にお願いします!

 強いチームというよりかは、応援してもらえるようなチーム作りをして、後輩に良い思いをさせてあげられるように4年がしっかりとして、チームを引っ張っていけたらなと思います!